お姉ちゃんの3乗(Marron)

 大学に通う有坂未空(変更可能)は従姉妹のお姉ちゃんと2人暮らし。思う存分、甘やかされ生活を送っていたが、ある日突然、時空の歪みによってお姉ちゃんが異なる姿の3人に分裂してしまう。これまでの人生比3倍の甘やかされ生活の末に待つものは。

 Marron第2弾。実に2年ぶりの新作になります。Bonbee!といい、このペースでゲームを作るだけで生活していけるなら、まさにホビボックスはスパシーバというところでしょうか。
 初回特典はまな板が付属してます。何かの冗談のようにも思えますが、間違いありません。実際にも使えそうです。料理をしない方はマウスパッド代わりに使うのも一興かと。初回なので欲しい方はお早めに。
 購入動機は前作「秋桜の空に」が面白かったから。正確には他の要素を評価しないとしても、買う気になるほどテキストが面白かったから。

 前作をプレイした人の大方の予想通り、修整ファイルが出ています。が、その内容は予想に反しておとなしいものです。しかし、なぜか動作が極端に遅くなるケースがあり、それに対する対処法もアップされています。ちなみに、
 1、CD、CD/Rドライブが複数搭載されている
 2、仮想CDドライブソフトがインストールされている
 3、DirectXのバージョンが古い
 というケースにおいて発生するそうなのですが、私の環境ではいずれの条件にも合致していないのですが、画面切り換えがかなり遅いです。ただ、「極端に」なのかと聞かれると微妙なので、もしかしたらこれが仕様なのかもしれません。ちなみに扱いやすいことで有名なNscripterを使用しています。それでどうしてこれほど遅いのかはかなり謎。

 システムはごくごく普通のアドベンチャー。ただし、プレイ順序がそれなりに制限されている模様。
 あらすじのところで軽く触れているように名前、愛称を変更できるのですが、2周目以降に全く保存されないのがどうにも不便。途中でセーブしておけば、という問題でもないように思います。
 足回りは前作に比べれば遥かに進歩しています。メッセージスキップは実用に耐えうるスピードで既読未読も判別してくれます。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。ホイールマウスにも対応していますが、あまり戻れません。ボイスなしのゲームにしては少ないように思います。
 プレイしているとメッセージスピードが唐突に変わることがありました。立ち上げ直すと戻ることもあれば戻らないことも。これに対する修整ファイルは特に出ていないようです。

 シナリオは前作と比較してなお特殊なカラーを醸しだしています。テキストは変わらずに面白い、と言いたいところですが前作に比べて暴走に磨きがかかった感じ。ブレーキが壊れています。笑えることは笑えますが、抑えが効いていないのでより人を選ぶようになったかと。
 シリアスパートへの移行は前作に比べて伏線もないに等しく、丁寧さが明らかに欠けているといった印象。また、4人目以降は実質おまけに等しい扱いなのが残念。ボリューム的にも前作を下回っているように感じました。
 メーカー曰く、「甘やかされADV」ということで登場するヒロインは全てお姉ちゃんキャラ。メガネであろうが、ロリであろうが、ファミレスであろうが、とにかく姉。なにがなんでも姉。よって個性という意味では前作よりも薄いです。ヒロインの対応は弟に向けたものだけになりますし、主人公の対応も自然、姉に対するものだけになるので。加えて基本的なアピールポイントは前作において既出であるため、インパクトの面でもややツライと感じる可能性も。
 Hシーンはかなりコアというか別格。普通の純愛系ゲームではありえないシチュエーションであることに加え、主人公の性格が180度変わって、ヒロインがマジ泣きするまで責めるのでかなりの異世界風味。しかも、それは天然で意図的ではないというあたり……。

 CGは前作と比較してさらに苦しい仕上がり。個人的にはテキストでフォロー不可能な域に到達しているかと(特に分裂姉3人)。随時、優しい目で見て、気持ちを揺らさないことで色々と耐えておりました。取りあえず、一向に感情移入を誘われない絵でありました。
 そういった面に目をつぶるにしても部分違いなしで53枚は少なすぎるのではないかと。低価格ゲームではないんですから。
 立ちCGは種類も豊富でよく変わってくれます。もちろん、この原画を許容するという大前提のもとで、ですが。個人的にはイベントCGよりもよく描けているような気がしました。
 背景は相変わらず。期待してはならないレベルかと。

 音楽は今回もCD-DAで鳴らしてます。いわゆるギャグパートの曲は良くなったように思いますが、逆にシリアスパートの曲は退化したように感じられました。あまり誉められない出来であるのは相変わらずです。

 まとめ。テキストで全てを牽引するにも限度があると実感させてくれる作品。少なくとも思い入れという意味において原画は重要。1周目は楽しいが2周目以降は……。
 自分の属性についても考慮の余地あり。「すずねえだけが必要なのか」、それとも「カナ坊もはるぴーも同じかそれ以上に必要なのか」。後者である人は私と同じ感想を持つ可能性があります。
 お気に入り:鎌倉ドリ子、タケル姉妹
 評点:52

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、春崎シスターズ
 価値を感じないのでひとまとめ。エピソードの唐突さを無視するにしても、あの姿では同情さえ厳しかったデスヨ。それに私はすずねえが好きではあっても姉属性の持ち主ではないので。Hシーンも笑うポイントだというなら、なかなか良かったとは思いますが。

2、鎌倉ドリ子、タケル
 こちらもシナリオは同じなのでひとまとめ。3段活用は前作になかったネタということもあって面白かったですわ。よもやそこに理由があるとは思わなかったんで感心することしきり。立ちCGの使い方も良かったかと。
 タケルはこれが彼女になったら、という意味では果てしなく微妙ですが、親友というか、相棒としては最高。いつでも望むボケやツッコミが得られそうですよ。このゲームで最も多い回数を笑わせてくれたのは間違いなく彼女。
 終盤はタケルの生死に関してシリアスな展開になるのかと思ってハラハラしていましたが、実際にはそんなこともなく。これはきっとこれで良かったんだと思います。

3、奈乃菜先輩
 言葉遣い以外は良識派に見えて実は……、というあたりが魅力。しかし、シナリオがないのはあまりに痛恨。なぜ?