Only You~世紀末のジュリエットたち~(アリスソフト)

 格闘部に所属しながら行方不明の兄の背を追う魔神勇二(変更可能)。新年を迎えたある日、勇二の知らぬところで彼が世界を破滅に導く者だと判明してしまう。世界を救うためと、各国の暗殺部隊から勇二は命を狙われることに。

 アリス初の会員専用ソフトは魂まで熱くする傑作でした。発表当初、このゲームが一般発売の予定だった頃から虎視眈々と狙っていました。もう見た瞬間から「買おう」と決意して。この頃のアリスにはそれに足りるだけの信頼感がありました。

 システムは一風変わっています。移動先を選択するタイプですが、そこには時間が設定されています。
 学園(5)
 といったような感じで。変わっているのは同級生に代表される時計タイプではないということです。1日は午前、午後、夜、深夜の4つの時間帯に分かれていて、それぞれに時間(数値)があります。勇二が移動すると、そのコスト分だけ時間が減り、ゼロになると次の時間帯に変わります。当然、イベントはこの時間帯に密接に絡んできます。
 このゲームでは大王カウンターというものがあり、これがゼロになるとエンディングです。あまりアバウトに移動を続けていると不本意なエンディングを迎えることになります。
 先頭はコマンド選択方式。敵によって有効な攻撃が異なる上に、ランダム要素もあってマンネリ化を防いでいます。レベルが一定に達すると必殺技を伝授されます。否応なく。

 シナリオは尊敬するイマーム氏が手がけていて、ギャグ(正確には、登場人物たちはいたって真剣ゆえにそれがおかしい、という感じ。)もシリアスも文句のつけようがない仕上がりになっています。
 特撮モノやGガンダムのお約束が随所に挿入されていて、このあたりのラインが好きな人にはたまらない出来かと。子供の頃に戦隊モノを見ていたような人や島本和彦氏の漫画が大好きな人にオススメです。

 CGは16色なので今見るとさすがに寂しいですが、むつみまさと氏の原画は変わらずに魅力を放っています。ヘアバンドへのこだわりも実に氏らしいです。

 音楽はこれ以上ないほどの素晴らしさ。さすがはShade氏です。FM音源全盛時にこのCD-DAの心にしみ入る曲は破壊力高すぎ。今でもまるで遜色ありません。っていうかハッキリと高レベルです。
 あー、ただそれだけにFM音源ではツライです。明らかにCD用に作曲されていますので。試しに聞いたら涙が出そうでした。まぁ、今からこのゲームをFM音源でやろうという人はいないと思いますが、必ずCD版を買うことを推奨します。や、もう絶対。もし、PC-98環境にある人ならWIN版ではなく、98版をインストールのこと。これ約束です。効果音があるとないとでは大違いですから(特に戦闘シーン)。

 まとめ。男の激しい生きざまを体感できるゲーム。どこまでも熱く燃えさせてくれます。
 女性キャラだけでなく、男性キャラに光る魅力があります。やはり男性キャラを粗雑に扱わないゲームは面白いことが多いです。
 しかし、残念なことに2001年4月現在、販売終了となってしまっています。今、プレイしたければ中古しかないでしょう。
 夏以降まで待つことが出来れば、大幅リニューアルされる「リ・クルス」が発売されます。ボイス付きになってくれるといいのですが。期待して待ちましょう。
 お気に入り:タイガー・ジョー(お約束)、鏡守真澄
 評点:92

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、秋月まゆ
 典型的な幼なじみですが、勇二の性格が性格なのでカップリングとしてはちょうどいい感じ。美咲とどちらかを選ばなければいけないのはツライ。たとえ、まゆ狙いでなくとも。理由は若人にはやりたくないから!
 不幸モードとてもは悲しいけれど、あそこから復活するシナリオが欲しかった。
 お父さんとお母さんがポイント。特に親父さんのキャラは高ポイント。まゆがどれくらい幸せに育ったかわかりますね。

2、仁藤美咲
 ジーンズ姿がイカス女格闘家。美咲を恋人にしてからの部屋での会話は実に良いです。恥ずかしくて。もちろん、若人にはやりません。
 まゆと同じく、いやそれ以上に不幸モードからの復活を切望してました。それでこそ、このゲームらしいと思うのですが。展開的には不可抗力だし。
 美咲はテーマ曲がいかにも、らしくて好きです。

3、杜若あやめ
 18禁ゲーム初の盲目のヒロイン。外道な親父といい、その薄幸ぶりは涙を誘う。このゲームで最も幸せにしてあげたいキャラ。
 イマーム氏がこだわりを持っているだけにそのシナリオは秀逸。神社の子供との追いかけっこといい、深い描写が多い。 
 不幸モードは最も悲惨。やはり愛とは唯一無二のものなのです。
 頑張ってあやめに良い服を着せてあげましょう。本当に可愛いですから。

4、天童来夢
 正直、恵に似ているようには見えないなぁ。
 過去、これほど「兄」を体感したゲームはありません。シナリオもよく練られています。
 不幸モードは見てはいけません。あやめに匹敵するひどさですから。
 ちなみに旧名は雪印ぴの。イカスー! そちらでも良かったなぁ(そう?)

5、ミュシャ・カレニーナ
 普段のおおぼけぶりもいいですが、弱った時とのギャップは愛しさ倍増です。バンドリーは許しません。ええ、絶対に。個人的にあの時が最も勇二が怒ってましたね。
 彼女との別れは涙が出そうになりました。
 エンディングのカットはお気に入りです。彼女の作る料理はどんな味なのでしょう?すごく興味があります。

6、鏡守真澄
 冷静なようでいて、じつはとてもおたおたしやすい彼女はこのゲームで一番のお気に入りです。勇二にしょっちゅう「落ち着け」なんて言われるのは真澄くらいでは?
 金の瞳に関するイベントもいい感じです。小さい頃の真澄は反則的に可愛いです。
 美咲以上に恋人になったあとの会話が○。赤面ものの恥ずかしさです(それがいいんですけどね)。特に御神酒のイベントがすごいです。
 巫女さんでなく、神主さんであるあたりがGood(まぁ、巫女の役目もあるんですが)。  
 しかし、しかし、こんなに素敵な彼女なのに「リ・クルス」では別人になっています。なーぜーでーすーかー。納得いきませんよ、絶対に。ひどいや、アリスさん。

7、軽井沢成美
 すいません。にゃるみは解いていないんです。切腹モノですか?

8、魔神恵
 妹は妹だから、恋愛対象じゃないから可愛いんです。ごはん山盛りは実に良いです。オープニングでは悲鳴が出そうでしたよ。エンディング手前のカットと恵が描いた勇二の絵がお気に入り。

9、タイガー・ジョー
 この人がいなければこのゲームは始まりません。数々の教え、しかと心に刻み込まれております。電柱の上に立つあなたは最高です(バックはもちろん稲光)。何度、笑わせていただいたことか。「リ・クルス」では益々のご活躍を期待しています。
 アンソロジーコミックの中の「華麗なる日常」は必読です。

10、魔神勇二
 主人公。いい奴です。これほど感情移入した主人公は他にいません。
 不器用で鈍いところ。誰にも負けない不屈の闘志。まさに男が惚れる男です。最終決戦前の告白は震えるほどの格好よさ。