幼なじみとの暮らし方(ハイクオソフト)

 極めて人為的な障害にあって3年間、音信不通であった結城誠(変更不可)と猫宮のの。策謀を乗り越えて懐かしい母校で再会した2人は遂に恋人同士に。それどころか一気にステップアップして同棲にまでこぎつける。しかし、そうそう上手くいくばかりのはずはなく、お目付役が現れる。彼女こそ人為的な障害の元凶。のの の成績が下がれば同棲解消のお達しが出てしまうのだった。

 前作「よつのは」で圧倒的な人気を誇ったヒロイン猫宮ののに焦点を当てたファンディスク。人気こそが正義と言わんばかりに他のヒロインの出番はわずかたりともありません。新キャラはおれども攻略対象は猫宮ののただ一人。
 購入動機は書くまでもないでしょうが、「よつのはDVD」をプレイしてのんさんが一番のお気に入りであったから。
 初回特典はパッケージに入らない幼馴染成分100%ファンブックとアレンジサウンドトラック。

 ジャンルはパッケージによると幼なじみとの半同棲生活ADV。内容としてはごく普通のアドベンチャーです。メールシステムなんてものがありますが、携帯端末が画面に表示されるだけで特別、変わったところはありません。
 足回りは不便さが目立ちます。メッセージスキップは既読未読を判別してくれるものの、カットイン表示の度に停止してしまいますし、その速度もあまり速くありません。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。戻れる分量も多く、ロード直後にも使用できます。しかし、モードを抜ける時に画面左の方では右クリックが使えず、これが意外と不便です。

 シナリオは完全な一本道。メールシステムは一見して選択肢らしく感じられますが、展開に変化はありません。
 本作は見方によってはタイトルに偽りあり、と感じる可能性があります。確かに幼なじみと暮らしているのですが、行動を限定された特殊条件下にあり、生活がすれ違い気味なこともあって実感は薄くなりがちです。また形式的な意味においては同棲ではありません。そして、晴れて障害を克服するとエンディングです。この先こそが「幼なじみとの暮らし方」ではないでしょうか。
 ほんわか関西弁遣いの魅力は少しも褪せることなく健在、むしろパワーアップしています。相変わらず世話焼きであり、相変わらず料理好きであり、相変わらずつるぺたであり、相変わらずチビッコであり、相変わらずの のんさんです。一緒に暮らすようになって距離も近くなり、これまでにはなかった会話も見られるようになります。
 誠:「のんのんのののん、のんのんのーん」
 のの:「もー、のんのん言わんといてー」
 ある意味、この会話が本作の全てを象徴していると言っても過言ではないかも知れません。
 もったいないと感じるのは「よつのは」のヒロインたちやしっかりと脇を固めていたサブキャラたちの誰にも出番がないこと。格好の冷やかし要員であるだけに、また世界を膨らませるに向いた人材であるだけに残念です。
 さらには書かれている物語期間が非常に短いこと。せっかくの ののファンディスクなのですからもっと多様な日々が見たかったように思います。例えば台風の日に慌てて窓に木を打ちつけようとするのんさんであるとか(アパートなのに)、あるいは耐震強度データなどを持ち出して我が住まいは大丈夫と、まーくんに薄い胸を張ってとくとくと説明するのんさんであるとか。
 Hシーンは対象が一人であることもあってさすがに多いです。「よつのは」では見ることの叶わないシーンが数多く用意されています。エロ度としては相変わらず微妙ですが。

 CGは立ちCGなど新たに追加されています。続編に近い位置づけなので当然といえば当然ですが、ファンからすればやはり嬉しいものです。ただ、残念なことにいい味を出していたSDのカットインの追加はありませんでした。
 イベントCGはシナリオと同じく「よつのは」では見ることのできない姿を見せてくれます。しかし、ののCGが差分抜きで23枚というのは税込み6090円という価格を考えるとちょっと少ないのではないでしょうか。

 音楽は鑑賞モードがないのでハッキリとはわかりませんが、基本的に「よつのは」の曲をメインに使用しています。場所も違えばジャンルも違うことを考えればおかしな気もしますが雰囲気を継続するという意味ではよろしいのではないかと。作品が作品だけに穏やかで優しさを感じさせる曲が数多く揃っています。
 ボイスは女性陣のみフルボイス。本作の命とも言うべき榊原ゆいさんの ののボイスは印象が変わることもなく、ファンディスクとしての期待に応える演技を聞かせてくれます。

 ADVを終えるとおまけが遊べるようになります。肝試し編と称されたこれは「よつのは」の舞台である学園での一夜の物語。マウスカーソルを懐中電灯の光として学園内を探索していきます。肝試し編というだけあってちょっとホラー要素あり。イベントCGも何枚か用意されています。内容的には外伝というか、「よつのは」にはほとんど関係ありません。難易度はほどほどでしょうか。

 まとめ。紛れもないののファンディスク。とにかくののが好きという方専用。「まぁ、よつのはの中ではののが好きかな」、ぐらいの方は止めておいた方がいいかもしれません。
 クオリティは問題ないだけにボリュームが難点。この価格ならもうちょっとくらいは望みたいところです。いっそ8800円で気合を入れて作ってしまっても良かったかも。そこまですれば「よつのは」というゲームもより意味が生まれたことでしょうし。
 お気に入り:猫宮のの(書く必要さえ本当はありませんよね)
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、鹿山ヒカリ
 えっと頼りにならないことはどうでもいいんです。ただ、どう見ても彼女は大学生に見えません。ゲーム開始から終了までひたすらにそれが気になってましたよ。というか、あまりあまり存在意義がないよねぇ。

2、南菜々美
 無駄に体型がいいあたりに悲しさが漂っています。別にHシーンが欲しいと思う訳ではないけれど、なんだかねぇ。役割はヒカリと合わせて1人で十分だと思います。見せたい内容が違うとはいえ、ボンや山本先生に比べると明らかに役者不足。攻略ヒロインでもないのに新キャラを出す意味はあるのかなぁ(くどいようですが攻略させろという意味ではありません)。

3、猫宮のの
 ファンブックの話は驚きました。本当に榊原ゆいさんあっての のんさんだったんですねぇ。そりゃ、キャラデザにも絡んでいるとあればあの演技も納得がいきます。たとえようもないほど活き活きとしていますよ。
 正直に言えばキーワード的にはそれほど好みではないんですよ。強いて言えば関西弁くらいで。ただ、ひとつひとつの要素が綺麗に溶け合って猫宮ののという存在になると途端に輝きを放ち始めるような、そんな感じです。バランスがいいのかもしれません。
 ただ、ねぇ。これだけの魅力あるヒロインをスタッフは扱いきれていないように思います。もっともっと人を魅せるだけのポテンシャルがのんさんにはあると思うデスヨ。多彩なリアクションを引き出すような選択肢が用意されていればねぇ。悔やまれます。