プリマ☆ステラ(アトリエかぐや)

 水泳大会に向かおうとした榊晃輔(変更不可)は青信号で突っ込んできた暴走車の先に幼児を目撃する。考えるよりも早く飛び出した晃輔は幼児を救う代わりにはねられてしまう。
 病院でリハビリの日々を過ごして戻ってくると思わぬ誘いが待っていた。
 交換留学生としてエトワールに来ませんか。
 それはまさに青天の霹靂だった。国内屈指の設備を備えたエトワールで全面的なバックアップを受けられるとは夢のような話である。しかも、女学院だというのにだ。
 どうやら幼児とともに事故から救った人物がエトワールで重要な位置を占めているらしい。戸惑いながらも晃輔は申し出を受けるのであった。

 アトリエかぐやの新作はお嬢さま学院に留学するアドベンチャー。
 購入動機はいつもの原画買いに加えて初回特典の存在やパッケージの大きさなど常とは違う匂いを感じたことも。
 初回特典はスペシャルファンブックとヒロインポスター7種類。

 それほど重大なものではありませんが修正ファイルが出ています。必要と感じた方は落としておきましょう。ただし、セーブデータが使えなくなることがあるようです。

 ジャンルは1話完結型のアドベンチャー。オープニングにエンディング演出と予告が各話ごとに用意されています。個別に入るとオープニングが変更されますがそれほど大きく変化はしません。アイキャッチ演出も用意されています。
 足回りはなかなか優秀です。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。2周目以降はいきなり個別ルートに入ることも可能になりますし、各話単位でスキップすることも可能になります。ただ、後者を活用するとフラグ管理がやや面倒です。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能でいつでも最初まで戻れます。当然、ロード直後にも使用可。ただし、いきなり個別ルートに入る機能を使った場合は共通ルートのものは閲覧できません。
 選択肢を選ぶ際に正解をクリックするとチャイムのSEが流れます。よって難易度はとても低いです。仮に鳴らずとも迷うような選択肢ではありませんが。

 本作は一見すると学園ものの萌えゲーに見えます。企画からしても初回特典の内容からしてもそんな雰囲気があります。しかし、それは大きな間違い。なんと言ってもアトリエかぐやですから、あくまで萌えゲーの「振り」をしているだけなのです。
 その証拠とも言えるのが共通ルートの内容。なんと恐ろしいことに個別ルートに入る前にヒロイン全員とのHシーンを済ませてしまうのです。法律的な視点で語るなら婚約前ならば何人と付き合おうが何の問題もないとばかりに主人公は手を出し続けて、恋仲になるかどうかは保留にしてしまいます。
 ヒロインの方も主人公に負けず劣らずの面を持っていて、バスタオル付きとはいえ男と平然と混浴するなど全体的にお嬢さまらしさに乏しいです。上記のような主人公の振る舞いに対して一切の修羅場が発生しないというのはあまりほめ言葉には値しないと思います。
 シナリオはかなりいい加減で細かいところは突っ込みどころが満載。およそしっかりしたシナリオと形容するのは難しく、ヒロインの魅力向上に寄与しているとは言えません。また一部のヒロインは個別に入ると没個性化してしまいます。
 日常の掛け合いはそれほど悪くはありませんが、立ちCGにフォローされている感が強いです。基礎的なところはできていますが印象的な会話回しは望むべくもありません。笑いもちょっと厳しいです。
 惹かれあう過程はかなり苦しく、主人公の基本スペックで一本釣りという感じです。何かがあったから好きになるのではなく、この男が来たのだから好きになる、というような。主人公もヒロインも貞操観念が怪しく説得力どころではありません。
 視点変更が頻繁に起こります。ヒロインだけでなくサブキャラにも用意されていますが、かなり節操がないだけでなく必要性に疑問を感じることも。アイキャッチを使用したシーン切り替えにも似たようなことが言えます。切り換えておきながらそのまま繋がっていることがほとんど。
 Hシーンは主人公が別人のようです。エロ度の高さは純愛系の範疇であればなかなかのものかと。尺もそこそこ長いです。シナリオやキャラに沿った「らしさ」にやや欠けるものも見受けられました。
 「秘密の小部屋」というものが用意されていて、後日談H、サブヒロインH、複数人Hなどが別枠としてあります。複数人は3Pが最大でハーレムはありません。各ヒロインのシナリオを終えるごとに5本の鍵が手に入り、その数だけ閲覧することが可能になります。つまり、小部屋のシーン数は20ということです。

 CGは本作の魅力の大部分を担っています。可愛さとエロさが高いレベルで両立できているのではないでしょうか。原画の安定度は増しましたが、それでも崩れを感じさせるカットが幾つか見られます。
 立ちCGはポーズ変化は少ないものの、表情は驚くほど多くのカットを用意していて掛け合いの魅力増に貢献しています。
 SDカットは序盤にのみ投入されていて中盤以降は全く出てきません。数そのものもとても少ないので効果は薄いです。あくまでもアクセント程度。
 HシーンはCGの大部分を占めています。設定から考えるとエロ度の高さはかなりのものです。ただし、本編の1シーンのイベントCG枚数が2~3枚なのに対して秘密の小部屋は原則1枚なので好みのシチュエーションがあっても物足りなく感じる可能性がありそう。
 今回は部分アニメーションはありません。

 音楽は雰囲気重視なのか、あまり我を張らない曲調が多いように感じました。ただ、数少ないアクションシーンの曲はお世辞にも出来が良いとは言えません。
 ボイスは主人公を除いた名前のあるキャラにしか用意されていません。この無名キャラは非常に多いので印象としては3割くらいはボイスなしに感じます。メインに配置されたメンバーの演技に隙はありません。安定して聞くことができます。

 まとめ。萌えゲーの皮を被ったエロ重視作品=いつものかぐや作品。キャラ表現を重視しているようなところがありながら、シナリオがそれに追随していないという不思議さ。ベクトルが分散しているように見えるのはスタッフにとって本意なのか不本意なのか。もし、エロ萌えを目指しているならもっと高いレベルを望みたいところです。アトリエかぐやなんですから。
 お気に入り:日秀巴
 評点:68

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、東方院静歌
 お嬢さまらしさが探さないと見つからないヒト。個性も弱く4人の中では最も苦しい。個別シナリオに入ってからはさらに評価を下げるだけのシナリオ展開という切なさ。最後なんて雅化してますます自己を失ってしまう始末。純粋にネタがないのかと思ってしまうのは気のせい? 正直、CG鑑賞の一番手は荷が重いです。

2、苧島久住
 ダダ甘な姉ちゃん。しかし、すずねえに代表されるような実力者と一瞬でも比べてしまうときつい。痴女なところと母乳くらいしかアピールポイントがありません。見た目とのギャップを楽しむとか? 甘やかせとか基本能力も低いしなぁ。当然のようにお嬢さまらしさは薄いです。

3、高鷲雅
 共通ルートは他との差別化という意味においては色々と良かったと思うのですが、個別に入ると一気に一般人化が進んでしまって残念な結末に。芸能人だけど普通の女の子、というのは個性を捨てるも同然の結果で悪い方向の目が出てしまいました。結局、他のアピールポイントも用意できない。やっぱりお嬢さまらしさは足りない感じ。

4、日秀巴
 庶民派お嬢さまというだけで他とは一線を画しています。後輩キャラをしっかりとこなしていて、テニスに挫折したというネタもあり一人だけ輝いています。シナリオも普通のスポ根ものでややあっさりではあったけれど、他とは段違いに読める内容でした。主人公とどうやって接近するかも一番、印象的だったと思います。お嬢さまらしさはありませんけど、そういうイレギュラーキャラなので問題ないでしょう。実際、お嬢さまではないんだし。
 ところで、巴さんの胸は原画的に不安定なのか、それとも秘密の小部屋で語られたように発展途上で説明がつくのか。微妙なところのように思います。一応は前半に配されたものが小さめになっているように見えなくもないですが。

5、桐島悠
 頼りになり過ぎる方。彼女がヒロインであったならば主人公は依存症になっていたと思います。実は最もお嬢さまらしいかも。秘密の小部屋の冷遇ぶりが悲しい。

6、小早川美雪
 フェロモン出しすぎなシスター教諭。スタッフに愛されているのか秘密の小部屋では6シーンも用意されていて、連作小シナリオにさえなっていて驚きです。説教するために混浴してしまう教師としてはなかなかに駄目な人。