Rance 03-リーザス陥落-(アリスソフト)

 ヘルマン共和国とリーザス王国は隣国同士ながら間に挟まる峻険な山脈のためにほとんど矛を交えることがなかった。ところがLP2年,突如としてリーザス王城が陥落する。唐突にヘルマン軍が現れたためだ。手引きをしたのは魔人と呼ばれる存在。王女リアは囚われの身となり、密命を帯びた忍者・見当かなみは自由都市アイスへ向かった。そうあの男に全てを託すために。

 アリスソフトの新作は24年ぶりにリメイクされた「ランスⅢ」。旧作を知っていると時間の流れというものをつくづく感じさせられます。なんという進化、変身ぶりか。まさに生まれ変わった作品です。
 購入動機はランスシリーズだから、でしょうか。もちろん、懐かしさというものもあります。
 初回特典は特になし。

 リメイクということで色々な部分が大きく変わっています。およそ比較が無意味なくらいに。さすがにジャンルは変わることなくRPG+AVG。同じリメイクの「Rance 01-光を求めて-」をベースにしています。普段はMAP移動式のAVGで物語を進め、ダンジョンに入るとRPGスタイルに変わります。
 そのダンジョンは一風変わっていて、並べられたカードをめくってループする形式を採用しています。例外はありますが基本5枚のカードが奥に向かってずらっと並んでいます。選べるのは正面と左斜め前と右斜め前の3枚だけ。これ以外は選ぶことができず、戻ることや真横に進むこともできません。普通のRPGを想像するとちょっと納得しにくいシステムです。
 めくられたカードにはイベントや戦闘に罠などが書かれていて当然それに沿った内容が発生します。ちなみに全てのカードが伏せられている訳ではなく、最初から中身が見えているカードも多いです。そして、このルールでループしていくことによってダンジョンをすみずみまで探索します。中にはループしないダンジョンも存在します。
 戦闘も少しばかり変わっています。ランスシリーズと言えば気力制と言ってもいいくらいですが、本作もトータルではそれっぽい感じになっています。まず1ターンに行動可能な回数が決まっています。この枠にあらかじめ登録したスキルを使用して戦うことになります。スキルはひとり最大で4つになりますが、あくまでもキャンプモードで登録しておいたスキルしか使うことはできません。例えば回復魔法しか登録していないキャラクターは相手にダメージを与えることはできないのです。
 難しいのは何を登録していつ使うか。多くのスキルにはクールタイムというものが設定されていて、一度使うとこのクールタイムの数字のターン数は再び使うことができません。例えばクールタイム2のスキルはひとたび使うと2ターンは使用不可能になってしまうのです。毎ターン使えるのはクールタイムがゼロのスキルのみ。強力なスキルほどクールタイムは長くなります。
 いくらダンジョンを歩いてもクールタイムには関係ありません。あくまでも戦闘のターン数を経過させる必要があります。戦闘を終えるごとにキャンプモードには入れますが毎度のように変えるのは正直、面倒なので現実的とは言いにくく、これも悩みどころです。もちろん、煩雑さが気にならなければ戦闘ごとに変えるのがベストです。
 枠の数が決まっているというのはすでに触れましたが、これは別の事実も表していてスキルを登録していないキャラクターはそもそも戦闘に参加しておらず、ダメージを受けることもありません。なので不幸にしてキャラクターが倒れた場合、ハッスルという数値の人数(スキル)分だけ交代する形で戦闘に加わります。この場合、選ばれるキャラクターもスキルもランダムなのであまりあてにはできません。基本はひとりひとつですが、同時に何人も倒れてしまうとストックがなくなり同じキャラクターの複数スキルが選ばれることも。もちろん、これも選択できるわけではないのでおよそイレギュラーと言っていい事態です。
 敵は表示されるのが前列、中列、後列の3体まで。4体目以上がいることは中盤以降では珍しくありません。全体攻撃を用いても範囲に含まれるのは画面に映っている3列のみになります。敵の攻撃は種類が事前にわかるようになっていますのである程度は対応が可能です。ただし、シンプルな操作性を求めた結果として列に対する自由な攻撃ができません。スキルの条件次第。特に中列は全体攻撃以外では狙って攻撃することはできないのでポイントになりやすいです。
 シリーズおなじみの女の子モンスターはもちろん登場します。ただし、お楽しみの方法は過去作と比べてかなりお手軽です。その属性を持ったスキルでとどめをさすだけ。その方が経験値も高いだけに何度も見ることになるでしょう。
 キャンプモードでは様々なことが行えます。こちらもシリーズおなじみのレベル神ウィリスが登場します。レベルアップするとHPが回復する仕様も引き継いでいます。戦略に活用できる重要なポイントです。ちなみにレベルアップ可能な場合はダンジョン移動中などでもわかるようになっています。
 2周目以降の引き継ぎ要素はないようです。ただし、シナリオ最終盤でも自由度が高く、多くのイベントを回収することが可能になっています。

 足回りはRPGにしてはかなり良い仕上がりです。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。あまり使う機会は多くないでしょうが。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にも使用できます。バックシーン機能が用意されているので500クリック分まで遡ることができます。

 シナリオは大枠はそのままに細かいところはかなり変更しています。後発作品に登場するキャラがフライングするように出てきたり、なんて嬉しい変更も。Hシーンももちろん、変わっているのであっさりしすぎ、なんてこともありません。全体的に程よくリファインされている印象を受けました。旧作を知っている人でも新たな気持ちで臨めそうです。先を知っているのに早く先が読みたくなる、そんな新鮮さがありました。
 掛け合いも豊富でキャラの人数の多さがプラスに繋がっています。シリーズものならではの同窓会のような嬉しさがしっかりと感じられます。
 Hシーンは人数制限や回数制限が窺えてちょっと残念でした。これは本作をどの程度の規模であるかと考えているかでイメージが変わってきそうです。大作と考えていると「01」メンバーがほぼ短いテキストしかなかったり、レギュラークラスもほぼ1回しかないことでがっかりしてしまいそう。
 演出が非常に強化されたので戦闘シーンだけではなく、全体的な迫力が大きく増しています。戦争を扱っているだけにこの変化はとても大きな効果を挙げています。

 CGは差分抜きで96枚と普通の作品ならば十分ですが、ランスシリーズということを考えるとやや寂しい数字です(この中には1枚に数えるのはどうか、というものもあります)。プレイ時間に対する比率で考えた場合もけして多いとは言えないと思います。正直この枚数では女の子モンスターに費やすのがもったいないくらいです。必要なところで用意できていないようにも感じられます。なまじCGそのものの出来はすごく良いだけにもったいなささえ覚えます。
 立ちCGはイベントCGに負けない魅力的な仕上がりです。それだけに表情差分がないのがなんとも惜しまれます。長いプレイ中でも見飽きることがありませんでした。

 音楽は旧曲と新曲がバランス良く用意。そして、アリスはいつもここがすごいのですが長時間くり返し聞き続けても飽きることのないBGMを実現しています。また曲数も多く単純に聞き応えもしっかりとあります。作品ごとにサントラを出しているのは伊達ではありません。
 なんとランスシリーズなのにボイスがあります。遂に導入されてしまいました。これもリメイクだからなのでしょうか。長い年月の末に入っただけにキャスティングはかなりインパクトがあります。演技も十分すぎるほどで各キャラのイメージを尊重していることが感じられました。そういう意味で難しいのはやはり主役のランスでしょう。最も賛否があるかと思います。残念ながら個別のオンオフはできないので心配な方は体験版をチェックするといいでしょう。ランスの声はシステムボイスのみとなっていますが、戦闘前や終了時など普通の文章が用意されているので、これなら通常時もあってもいいのでは、というくらい。戦闘時は強い感情も出ますし、配慮としてはさほど意味がないですね。

 まとめ。満足度の高いリメイク作品。新生と言って良い内容は完成度が高く、アリスソフトの並々ならぬ気合を感じます。万人向けになっているところもポイントです。この出来ならばぜひ「Ⅳ」も「Rance 04」としてリメイクして欲しいです。
 お気に入り:フェリス、ミリ・ヨークス、スー・プロヴァンス、ALICEMAN LADY
 評点:80

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、ランス
 賛否はあるでしょうが、やはりボイス付きの衝撃は相当なものがあります。システムボイスのみでこれなのですからフルボイスになったら多くのキャラクターが霞んでしまいそうです。主人公に相応しい存在感ではあるのですが。
 今回はまだ3作目だからなのかランスアタックが控えめです。超とかついてるのになんと単体にしか効きません。おかげでリックのバイ・ラ・ウェイとの差が物凄いことに。というか、比較対象にならないくらいですね。
 ゼロスリースキル獲得の戦闘がなくて残念でした。

2、シィル・プライン
 こちらも3作目だからでしょうか、信じがたいほど弱いです。ゼロスリースキルが早い段階での取得だったこともあって普通のスキルを全然、使っていません。なにより問題点は全て単体にしか使えない魔法。操作性の簡略化のためだそうですが防御や回復の魔法をランダムのような形で運用されてもねぇ。よしんば選択式であってもパーティーが5人以上もいる中で1人だけに使ってもねぇ。本作は1回しか効果がないんですからなおさらです。それで1とはいえクールタイムがあるんですから。
 途中でサテラに誘拐されたことで使わない度が跳ね上がりました。自由都市Mランドのボス戦でハッスルを使って出てきた時に遠距離に使うファイヤーレーザーを持ってきた時は殺意が湧きそうでした。本当にたまたまなんですけど後ろにいる奴がまさに魔法無効の相手でした……。しかも、もしこれが炎の矢であったなら全滅しなさそうでした。

3、リア・パラパラ・リーザス
 ランスに助け出された時にマリスと共にすげぇ元気だったんですけど、あれって演技だったということなのでしょうか。さすがに説明が必要なくらい違和感が残ったんですけど。
 レアアイテム「ザ・欠けスター」が限られていたためにまるっきり育てていません。よってゼロスリースキルも知らないまま。ノーマルスキルもひとつしか開いていません。ひょっとしなくても「Rance 03-リーザス陥落-」あるあるですかね?

4、マリス・アマリリス
 唯一のイベントCGがアレという悲しさ。さすがにモブなみの扱いはちょっと可哀相な気がします。顔出てないですよ……。
 クールタイムを考えるとヒーリング3はあまり使えないのですが、状況的に意外と使う機会がありました。もうセルさんがいない状態となると必然的に使ってしまうような感じに。ゼロスリースキルの「順番シャッフル」は発動するかしないかでボス戦の難易度が天と地ほども違います。初めてのノス戦の時、本来なら相手にならないくらいのレベル(たしか全員レベル40未満)だったのにマリスが飛ばしまくったおかげで第3段階までいってました。まぁ、おかげでそのあとの長く辛い修行期間となった訳ですが。善戦がゼロスリースキルのおかげと気付いたのも倒した時でしたね。

5、見当かなみ
 スーに憧れの視線を向けられてこっそり、にやつくシーンが素晴らしかったです。個人的にはボイスがついて最も印象的になったのはかなみでしたね。声優さんの演技がとても良かったです。
 「01」では敵だったせいかすごく強かった火丼の術ですが、味方になった本作では案の定、弱くなってました。彼女個人も序盤はましでしたが中盤以降はパワー不足が顕著でした。結局、レベルも限界を超えることなく40でストップしたまま。

6、フェリス
 明らかにシィル以上の正真正銘の奴隷。扱いも悪いので役満レベルの気の毒さ。同情もあんまりされないし。しかし、どうしてか昔から好きなんですよねぇ。しかし、今後を考えると本作はまだまだ幸せですよねぇ……(遠い目)。
 最強の筋力の持ち主もクールタイムが長すぎて使い勝手は悪かったです。それでもよく使ってましたが。特に序盤と魔法使い不在の時は頼りになりました。壁役としても良かったですしね。ちなみに「色仕掛け」は覚えるの遅すぎて使う暇がありませんでした。

7、マリア・カスタード
 今回は何と言ってもチューリップ3号でしょうね。これぞ24年の歳月が過ぎた証とばかりに目立っておりました。まさか同じシステム上で戦闘があるとは思いませんでしたよ。そして、強いこと強いこと。ずっと乗っていられたら攻略も楽だったでしょうにね。イベントCGも力入りまくりでした。
 その反動って訳でもないでしょうがマリアは微妙なお役立ち具合。鉱石がなかなか手に入らないために仲間よりもスキルが遅れがちな上、ようやく手に入ってもそんなに強くはないという。クールタイム1にしてはあまり強くなかったですね。まぁ、考えてみるとマリアは歴代タイトルで大抵そんな感じな気もしますが。使えるときがあってもその他の機会で上書きされてしまう。「戦国ランス」の時は強かったっけ?
 「陣地構築」のスキルの方が重要でした。マリアがレギュラーなのはこれのおかげです。ま、全員分だからこそ、ですね。1人だけでは何の意味もないです。クールタイム4がポイント。アテン・ヌーの方が能力値的には良かったのだけれど、あちらはクールタイム5でしたからね。

8、魔想志津香
 魔人アイゼルとの絡みがあったせいか、どうもパッとしない今回の志津香さん。シナリオライターも苦慮したようで、そりゃランスにも疑われるよな、と。
 魔法はとにかく役に立ってくれました。威力のわりにクールタイムが短めなのが嬉しい。しかも、ゼロスリースキルの「高速詠唱」がたまに発動するとさらにお役立ち度がアップ。それはいいのですけど、このあたりがフェリスとの差になってしまっているのが惜しいところです。なんか不当にフェリスの扱いが悪いように見えてしまう。これもあるあると言えそうですが「極魔想」は未使用。

9、ミリ・ヨークス
 ああ、やはりミリがいるとランス君に緊張感のようなものが生まれていいですね。掛け合いもひとあじ違ったものになるので楽しいです。ま、鈴女がいると違った意味で緩和されるんですけど。未来がないだけに出番を貴重なものとして感じながらのプレイでした。これもまた24年前とは違うところですね。
 うちでは加入から最後までずっとレギュラーでした。ノス戦でも「万人斬り」で貴重なクールタイム0のスキルとしてダメージを与えてました。まぁ、終わってから考えれば代わりにマリスを使っていればもっと楽に勝てたのではないかと思いますけど(苦笑)。

10、ミル・ヨークス
 ボイスが加わったせいでずっと可愛くなった気がするミルです。愛着という意味では過去作とは比べ物になりません。
 戦力としても意外と使えるのが大きかったと思います。これまではいるだけ感が半端なかったですからね。結局そこまでは使わなかったものの、その理由は人数制限上の問題ですからね。あとはHPが低めで死にやすいからくらい。

11、セル・カーチゴルフ
 セルさんは役にはたたないストッパーということであんまり好きではないです。お約束としてランスが手を出せないということも決定している分だけどうでもいい度が高まります。
 通常戦では全員回復の「超回復の慈雨」をよく使ってました。ただ、非常に死にやすいのでボス戦ではまず使わないというか、使っても最初に死ぬのでほとんど意味がないという有り様で。もちろん、最終戦には帯同せず。ハッスルでは出てきましたが。

12、バレス・プロヴァンス
 加入した時にすでにレベル限界。アリスソフトの無情っぷりが窺える設定に戦慄しました。スーを養女に迎えるところがなんか好きですね。スーがその影響を受けるあたりもまた。
 スキル「居反り棒銀」を使ったのは偶然だったと思います。ゼロスリースキル取得時にはすでにレギュラーとして固定されてました。正確にはその手前まで育てていなかったので急遽、鍛え上げるためにランス君とただ二人、どんな時でもパーティーから外さない扱いとなったのですけど。ボス戦には大きな威力を発揮。不意に遭遇した強敵にも効果は十分。バイ・ラ・ウェイとのコンボは凶悪でした。

13、スー・プロヴァンス
 キバ子さんと被り気味ではありますが可愛い娘さん。喋るところが大きな違いだそうです。
 素直なために周囲の影響をたいへん受けやすくスキルはそれ系ばかり。しかし、本作は「先手0三銀」のように説明を読んだだけでは意味がわからないスキルが多いですね。どっちみちそういうのは使う機会がほとんどないんですけど。

14、リック・アディスン
 死神は3作目であっても強いです。いなければクリアがどれくらい遅れたことか、わかったものではありません。頼れる将軍です。
 スーと同じく意味がわからないスキルが多い。名前は攻撃なのに実際は補助魔法のような扱い。結局、攻撃方法は1種類しかないという事実に驚きます。バイ・ラ・ウェイがなかったら他の3つは何の意味もない。

15、メナド・シセイ
 予想を超えた出世を果たしていく門番さん。もしかして「10」に出たりするのでしょうか。ひょっとしてチルディの強力なライバルになったり?
 セルさんのスキルにもありましたが本作でとどめを刺さないことにどんな意味があるのでしょう。わりとよく使いましたが最後はレベル限界が壁に。

16、ユラン・ミラージュ
 メナドほどではないにしても驚きの出世。こちらは「RANCE QUEST~ランス・クエスト~」に出たからでしょうか。闘技場スキルである4点セットは驚きの強さ。レベル34しかないのに50前後の他メンバーを圧倒する威力7000超のダメージ(今、試しました)。しかし、その代償はクールタイム9という空気の読めなさっぷり。ひょっとしてリプトンとかノスとか一部のボスが連戦形式なのはコイツのせいでしょうか。こんなん真面目に育てていたら普通のボスなら瞬殺じゃないですか。

17、レイラ・グレクニー
 最初にいた頃はとっても強くて頼りになるけれど、間を置いて帰って来た頃には……、というこれもアリスのパターン。けして弱くはないですが他を押し退けるほどとはちょっと言い難いものがあります。特に「無現剣」は筋力の低さもあって威力が弱いです。しかし、気付かなかったのかもしれませんけど、即死系のスキル一度も成功しなかったような。

18、ジュリア・リンダム
 うーん。見たことはある。でもどこだったかなー。思い出せません。親衛隊なのも覚えているのになぁ。

19、アテン・ヌー
 まさかのアテン・ヌー降臨。「RANCE QUEST~ランス・クエスト~」の引きこもりの魔女がこんなところで出演を! 個人的には意外と好きなキャラだったので愛用してましたがすぐに帰ってしまって、それでも使ってやっぱりすぐに帰られての繰り返し。今回はちょっと弱いですが大丈夫! 帰りませんよ。
 果たして今回の出番で「10」に繋がるのか。それとも今回が「10」に出ないがゆえの出番なのか。注目です。