らずべりー(戯画)

 月丘学園と日向女子学園の間にある橋の真ん中に建つカフェ、ムーンラビッツ。そこは学生の憩いと働きの場であり、両校を結ぶ文字通りの架け橋であった。ところが、両校の理事長は姉妹でありながら張り合う日々。初めは些細なことであったが、やがて学生をも巻き込んだ騒ぎになってしまう。プールを使った規定及び創作競技で両校の施設を奪い合うという洒落にならないものに。
 そんなところへ間の悪いことに丘野幸一(変更不可)は転入してきてしまう。理事長の親戚であるという生まれの不幸の呪うしかなかった。スポーツ万能である幸一は紆余曲折の末、両学園のコーチを引き受けることになる。事実上の女学園での学生生活は必然的に(?)ハプニングの連続で……。

 もはや定番の企画となってきた感のある戯画のカフェ(制服)もの。デモは神月社、ボーカルはI’veと韻を踏んでいるかのように徹底しています。
 購入動機はねこにゃん氏の原画のみ。シナリオには期待せず、原画も2人で担当と躊躇う要素はありましたが、それでもスルーはできませんでした。
 初回特典はサントラ。これも今ではすっかり定番。

 戯画ですから、と言っては語弊があるかもしれませんが修整ファイルが出ています。そこそこ重大なものからシステムのフォローまで色々とありますからプレイ前にあてておきましょう。セーブファイルが抹消されますので要注意。

 システムはいつも通りのアドベンチャースタイル。特に目新しい点はなし。
 足回りは地道な進歩を果たしていながらもどこか抜けてるいつもの戯画風味。メッセージスキップは既読未読を判別して標準程度のスピード。スキップを多用するゲームなので選択肢後も継続してくれるとありがたかったのですが。
 バックログは別画面にて行います。かなりの分量を戻れるのですが、スクロールバーがないので実際に大きく戻ろうとするとかなり大変であるのは残念。マウスホイールに対応、ボイスリピートも可能になってます。
 ここまでは必要充分なんですが、タイトル画面からコンフィグ画面に入れないのは不便です。特にスクリーン設定をなぜか記憶してくれないだけにフルスクリーン派はかなり面倒。この仕様のせいでフルスクリーンでデモを鑑賞することができなくなっています(モニターの解像度をいじれば話は別ですが)。

 シナリオのなさはあらすじ通り。これを読んでシナリオで唸る出来を期待する人はあまりいないと思いますが、そうはいっても戯画のカフェものと言えば「ショコラ」という名作の前例もある訳で、何事も蓋を開けてみるまではわかりません。ライターも違うとはいえ同じ企画屋の方ですし。しかし、残念なことにそういう出来なんですが。
 真面目に分析すると本作は前半と後半でバッサリと寸断されてしまっています。つまり、ハプニング連続の両学園の対決と個別ルートとに。前半部分が共通ルートなので仕方ない面もあるとはいえ、そこで騒動が一件落着してしまうので個別ルートは後日談というか、すでに違う話になってしまっているんですね。それでもしっかりした尺を持った読める物語が用意されていれば話は別なんでしょうが、ボリューム、レベルともに切ない仕上がりで。それだけでなく扱うネタが各シナリオで似通っているのもそうしたイメージを強めてしまっています。
 前半パートが2周目以降、スキップの連続で完全に作業化してしまうのも困りもの。フラグ立てだけは序盤からしっかりとやらなければならないので面倒さだけが目立ちます。もう少しフラグによる変化があると良かったのですが。
 1周目限定であれば王道のぽろり、チラリネタ、何をしでかすかわからない無茶さ加減が楽しめたりします。いっそ全編こういう弾けたノリの方が良かったのではないか、という気もします。オマケシナリオもあとがきとも言い訳とも取れる興ざめな内容なのは残念なところ。
 Hシーンは各キャラほぼ均等に2回ずつ。この2回という数字がシナリオ的には微妙だったり。1回目と2回目の間を無理して繋ぐ文章を用意しているといった感があります。エロ度はテキスト的には非常に厳しい限り。

 CGは玉石混淆と表現していいのかどうか。原画家は2人で分担しているのですが、この2人の間にレベル、知名度ともに差がありすぎるように思います。通常こうした場合はメイン、サブと分かれるものですが、そうした配慮もないのでツライ面ばかりが目立ってしまっています。それを最も端的に表しているのがホームページの人気投票。メインヒロイン6人の結果が順位、票数の両面でいっそ気の毒なほどに現実を示してしまっています。
 エロゲ界では確かな知名度と実力を誇るねこにゃん氏の担当したカットはエロさと可愛さが同居する申し分ないものが多数用意されています。一方の二兎氏の担当したカットは構図は問題ないものの、デッサンの段階から気になるものが散見されます。顔が一定していないのも厳しいですが、なによりは常にねこにゃん氏のカットと比較される状況にあること。
 CG的には(シナリオとは反対に)チラリ、ぽろりネタでなくHシーンのカットを重視した方が良かったのではないかと思います。各ヒロイン2回が充分な量とも思えませんし。
 立ちCGはポーズ、表情に衣装も豊富に用意されていて確かなこだわりを感じます。かすかに頬を染める柚木早苗のカットなどイベントCGに負けない仕上がりのものも見られました。戯画はこれだけの仕事をしているのですから、いい加減に立ちCG及び背景CGの鑑賞モードを用意して欲しいです。
 背景も丁寧な仕事ぶりが光ります。主人公の部屋やプールなど状況によって細かに変わるのはエロゲーには珍しく好印象。
 エロ度に関しては補足が必要な面も。本作は半脱ぎ属性の人間を喜ばせたり悲しませたりと忙しい作品だったりします。私服、両学園の制服にカフェ・ムーンラビッツの制服と色々と用意されているのですが、主人公は脱がす時だけ几帳面な性格が浮きでることがあるようで「全て着ている」→「下着のみ(ストッキング含む)」→「全部脱がす」というCG構成でまさに半脱ぎ属性泣かせ。半数くらいは効果的なものもあるのですが、最終的には全部脱がす、一番可愛いムーンラビッツの制服の有効なものが少ないなど「わかっていない」悲しい扱いも。こういうのってライターの指定なんでしょうか。資源は有効に使おうよ……。

 音楽は主題歌、BGMともいつもの戯画カフェものに相応しい仕上がり。良くも悪くもでありますが。主題歌はそのえろっちぃ歌詞がわかりにくいのがややネックでありますが、ノリは充分。BGMの方は単独で聞くにはやや厳しいですが、場面に応じた曲は用意されています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。声優はあまり聞いたことのない名前が揃っているせいか、レベル的にはもう一歩というところ。キャスティング的にもキャラに合っていない配役があるように感じました。

 まとめ。由緒正しき原画買いソフト。それ以外に活路は見出せないかと。購入動機を踏まえても個人的には色々不満もありますが、かろうじて及第点は越えたかと。
 お気に入り:柚木早苗
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、牧野木ノ葉
 パンツ見せすぎ。それが彼女に対する嘘偽りのない感想だったり。1回目のHシーンの脱がし方はまさに血涙もの。何のための制服だと。

2、片桐シェリル
 ツンデレとしてはイマイチどころかイマサンくらいですな。というかシェリルをツンデレと認めるのも厳しいかも。彼女に限りませんが絵はいいのにキャラがねー、というヒロインが多すぎます。まぁ、身も蓋もなく言ってしまえば全員なんですけど。「ショコラ」という優れた前例があるだけにキツイなぁ。
 シェリルは私服が可愛いだけにHシーンは無念ですた。制服は良かったですけどねー。

3、柚木早苗
 早苗さんは1回目、2回目ともHシーンは悲しい仕上がり。カットそのものはエロ可愛くて良いのですが。責任者は一歩前に出るように。雨宿りのカットとか大層エロいのに何も起きないし。

4、村上姉妹、佐伯鈴菜
 2軍につき省略。

5、桑原香梨
 このゲームを楽しんだ数少ない人には嫌がらせのようなシナリオですな。作品の締めにこんなものを読まされて喜ぶ人が果してどのくらいいるんでしょうか。香梨ファンにも納得いかないシナリオでしょうし。エロ的にもやはり全脱がしだしなぁ(ため息)。