恋愛、借りちゃいました(ASa Project)

 新海幸(変更不可)と月の兄妹は早くに両親を失っての2人暮らし。生活も軌道に乗って幸が卒業後の就職を考え始めた頃、月からの進学せよ、という指令にプランの変更を余儀なくされる。シスコンの幸としてはそうでなければ自分も進学しない、と言われては選択肢はなかった。
 そんな時に目に入った、いかにも怪しい人材派遣のバイト。しかし、報酬の高さに目が眩んで思わず登録してしまう。その結果、幸のところに舞い込んだ依頼は恋人、兄、愛人という予想しない特殊な内容であった。

 ASa Projectの新作は初めて天都氏がライターから外れ、しかも、ただひとりで書いているという新しい方向性を感じさせる作品です。ちなみに天都氏は企画とディレクションで参加しています。
 ということがそのまま購入動機になっています。
 初回特典はオープニング&エンディングのフルバージョンとオリジナルボイスドラマ。

 修正ファイルが公開されています。それほど重大な内容ではありませんが念のためあてておきましょう。

 ジャンルは恋愛レンタルADV。
 足回りはいつも通りにもうひとつです。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢まで飛ぶ機能及び前の選択肢まで戻る機能が用意されています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがあまり戻ることはできません。ロード直後や次の選択肢まで飛んだ時は使えません。シーンジャンプ機能もありますが、これではあまり使いどころがないでしょう。
 前回の続きから始められるCONTINUE機能が用意されました。

 シナリオはライターがひとりになったことで安定感が出ました。共通シナリオと個別シナリオの間で差を感じる、ということがなくなり安心して読めるように。一方でこれもひとりライター制と関係あるのかわかりませんが、ASa Project特有のノリが若干おとなしくなりました。CGの方とも関連していますが、いわゆる顔芸がなくなったことと無関係ではないと思います。それでも、ギャグ中心のテキストであることに変わりはありません。シナリオ全般で程良く笑わせてくれます。
 惹かれ合う過程はそもそもの発端が発端であることもあって全体的にちょっと苦しいです。中には主人公自身が疑問に思うものがあるくらいでした。どうやらヒロインのうち2人が特別枠になっているようで、VS構図が主眼となっています。諦めないヒロイン像という部分に今までのASa Projectにないものを感じますが、それも2人だけです。サブヒロインにもオマケ程度にルートが用意されています。バッドエンド同然ですが。
 Hシーンは各ヒロイン5~6回。ASa Projectにしては頑張っていますが、やはりそれほどエロ度は高くありません。

 CGは顔芸がなくなったことでだいぶ印象がおとなしくなりました。それでも、普通の作品に比べたら描かれる表情はかなり豊かというか、ギャグ調のものが多く含まれていますが。一方でイベントCGに力が入っているように感じます。原画陣に大きな変化はありませんが、彩色も込みで見た目のレベルが一段上がったように見えます。ヒロインたちの表情がより魅力的になったような。おかげで立ちCGとの落差はそれなりに残っています。
 非常に個性的なSDカットは健在です。たまにどういう構図なのかわかりにくい時はありますが、いまやASa Projectの中で最も勢いがあるところかもしれません。

 音楽は今回もおとなしく、BGMに徹しているというか、それほど強いイメージを受けることがありませんでした。各キャラにテーマ曲が用意されたりもしてしますが、明らかなギャグ要員以外はこれぞ○○の曲という感じはしません。正直、単体で聞くとこの作品のものとは思えない曲が多いように思います。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は実にノリが良く、ギャグ主体の掛け合いをしっかりと盛り上げてくれます。

 まとめ。ASa Projectの新機軸、というにはインパクトの足りない作品。ただ、一定の成果は示せたように思います。これから2ラインっぽくいくのかわかりませんが、動向を見守りたいです。
 お気に入り:空路椿、小関桃子
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、瀬川絵未
 ほとんど八純の正反対に近い特性の持ち主なのでサバサバとしていて正直、付き合いやすいです。主人公のような人間にとっては特に負担になりにくいことでしょう。嘘がつけないところも安心感を抱きやすいです。八純がちょっとアレ気味なので良く見えているような気がしないでもないです。真面目な話、絵未は普通にモテそうですけどねぇ。

2、天満八純
 やっぱり、女子であっても「気がつかなくてもずっと見てる」はわりと怖いような気がします。これをストーカーではなく一途な人とするのは難しいような気がしますよ。ある意味、不可能がないのも困りますよね。怖さに拍車が掛かってしまいます。桃子や咲希がどちらかと言えば絵未寄りなことでかろうじてバランスが取れているようにも見えます。

3、泉ちなつ
 頭を撫でるとそこは性感帯なので何か危険なものが発動してしまいます。ここを受け入れられないとどう考えてもアウトだよなぁ。妹のせいですっかり突っ込みの達人に成長してしまいました。しかも、それが面白いのはある種の才能ではないでしょうか。

4、泉こなつ
 わかりやすい変態さんですが、過去作のキャラに比べればずっと御しやすいのでましでしょう。本音のところでは姉のことを考えているあたりが意外な感じで泣かせます。

5、空路椿
 廃ゲーマーとしての生活を維持したいから愛人を募集ってすご過ぎます。将来、月と同居になって一番困るのは間違いなくこの人。リアルに考えると結婚した後の親戚づきあいがとても大変そう。

6、美浜咲希
 処女ビッチ言われすぎてちっとも名前を覚えられませんでした。サブヒロインとは思わなくてびっくり。

7、小関桃子
 下手したらヒロインよりもキャラが分厚く充実している人。八純との絡みやバッキーとのオンライン仲間にメイン2人を支えるサブヒロインでもあり、2人の兄がいるから月ともシンパシーを感じられるとか八面六臂の活躍ぶりデスヨ。

8、雛山夢乃
 どうも存在価値がよくわかりません。泉姉妹のライバル役、なのか?

9、雛山呉郎
 主人公以外の唯一の男子ということで意外なほど使えます。主人公にとっても貴重な友人。八純が嫉妬するくらいならもっと面白かったような。

10、遠山愛季
 これが上司とは……、ちょっとどころでなく地獄ですな。

11、新海月
 まさに目に入れても痛くない妹さまですが、全体的にはどうも味方っぽくないような気がする……。あまりオチに絡んでくれないのは結構な不満です。で、詰まるところ何歳なんですか? どうも表現が控え目でよくわからないです。なんか発育不良っぽくも見えますけど。