流星ワールドアクター(Heliodor)

 第七共和国。そこは世界でも唯一の複数種族を公的に受け入れた国。理論上はあらゆる職場にあらゆる種族がいる可能性がある。それは警察も同じこと。その警察の中のお荷物部署の十三課。さらにそこでお荷物扱いの刑事、日流ルカ(変更不可)はエルフ族の新米刑事クラリスを相棒にあてがわれる。
 万事につけやる気のない、昼行灯の見本のようなルカの刑事生活は徐々に変化をみせ始めていく。

 新ブランドHeliodorのデビュー作はエロゲーというよりテレビアニメの企画のような大風呂敷のアドベンチャー。
 購入動機は世界観設定に惹かれて。
 初回特典かはわかりませんが、設定資料集が同梱されています。予約キャンペーン特典はちょっとえっちな色紙。

 ジャンルは毎度おなじみのアドベンチャー。設定は変わっていてもそこは変わりません。
 足回りは2019年になっても新ブランドだからなのか、お世辞にもよろしくありません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、なぜか画面下部のアイコンにはスキップが見当たりません。上部の方にはありますが、そもそもなぜ上下二分割する必要があるのかわかりません。被っている機能もありますし。次の選択肢まで飛ぶ機能及び前の選択肢まで戻る機能は用意されています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。この画面からシーンジャンプできますが、戻れる範囲が限られすぎているのであまり意味がないでしょう。
 CONTINUE機能は残念ながら搭載されていません。
 ウインドウサイズなら問題ありませんがフルスクリーンだとゲームを終わらせるのもなかなか手間がかかります。まずタイトルに戻らねば終わらせられず、タイトルに戻るためにはセッティング(コンフィグのこと)画面を開かなければなりません。残念ながらセーブ&ロード画面からはこれが実行できません。ちょっと考えなくとも、よそのゲームをプレイしたことがあればこんな設計は考えつかないような気がします。改善を望みたいところ。

 シナリオはどれもこれも中途半端なところで終わっていて完結していません。ようやくこれから本当に大事な章が始めるというところで小休止とばかりにエンディングに突入してしまいます。まぁ、エロゲーにある程度、慣れた人ならライターの名前を見てこのパターンを予想していたことでしょう。そして、実際にやっぱりそうなった、と。これを繰り返してお仕事があるのですから、これはこれで稀有な才能なのでしょう。
 他種族が入り交じる第七共和国の警察の日常はよく雰囲気が出ていて、その様子を追うだけでもそれなりに楽しめます。キャラクターの数もなかなか多いので掛け合いは賑やかです。ただし、主人公は基本的に物語の進行を邪魔する存在なので(だいたい主人公を説得するところから始めないといけない)、合わない場合は要注意です。なにせ主人公ですからいつでもプレイヤーと一緒ですので。
 世界観同様に基本的なノリはシリアス寄りなので笑いの要素はそれほど多くありません。たまに顔を出す程度ですし、爆笑を期待できるものではないでしょう。
 惹かれ合う過程は唖然とするくらい何もありません。日々の様子を垣間見ていて、この作品に恋愛要素があるとは到底、信じられないレベルです。無理矢理にも程があるでしょう。納得感はどこにもありません。実際に身も蓋もないような突っ込みが各所で入ることもしばしばあります。また、普段は恋愛に興味のない主人公が急に発情したようにヒロインに手を出そうとするので違和感があります。
 ということなのでHシーンに期待するのは初手から難しいです。なぜそうなっているのか、よくわからないのですから。尺も短めなのでどのみちエロ度はそれほど高くなかったでしょう。各ヒロイン4回ずつ用意されていますが、構成のせいかヒロイン毎にあまり平等なイメージはありません。

 CGは一番のアピールポイントでしょう。世界観に恥じないだけのものが数多く用意されています。雰囲気作りに大きく貢献しています。それでも、細かなシチュエーションが多すぎるのか、背景は足りていないようです。中には路地裏のカットが室内扱い、なんて悲しいものもありました。
 イベントCGは全体的に攻めていて印象に残るものが多かったように感じます。テキストの笑いの弱さを補ってくれるカットも何枚か見られました。差分抜きで100枚以上と数字的にもなかなか見応えのある量です。

 音楽はバージョン違いを含めるとなんと60曲も用意されています。正直、聞く機会の少ない曲も多いのでそれほどの数にはあまり感じませんが、ドラマを意識したような曲が多く用意されているようです。そのせいなのかは不明ですが、中にはHシーンなどいかにも過ぎて思わず笑ってしまうような曲も幾つかありました。使用目的に対してイメージ通りすぎると言いますか。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。もはやお家芸の未完成作品。文句を言うよりも「やっぱりな」という感想の方が先に来るというあたり、もはや見慣れた光景です。みんなある程度以上はそれを予測しながら買うのですから優しいものですね。知らなかった人はこれを機会に覚えましょう。さて、今回は続編が出るでしょうか。それとも、これっきりでしょうか。
 お気に入り:四ノ宮小町
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、クラリス・ツァインブルグ
 主人公の相棒で作中では数少ないエルフですが存在感が薄いです。メリッサの方が相棒という言葉に相応しいからかもしれません。本当は足して2で割ったくらいの存在がよろしいのですが。定時帰りにこだわるあたりをもっと掘り起こせばキャラ立ちも少しは良くなったかもしれません。仲が良くなっても知ることがほとんどないのですよね。
 どう考えても主人公を好きになる理由がないように思います。過去のことも結局は思い出していない訳だし、とても怪しいように思います。書かれ方も中途半端ですしね。

2、メル
 恋の相手として最もましなのがメルというあたり、ね。しんどいのも当たり前です。
 主人公の子供が例の力を継承してしまうのはいいんですかね? 全く気にしている様子がなかったですが……。まぁ、そんなゲームではない、と言ってしまえばそれまでですけど。
 色々な意味でハールソンが気の毒。守ってきた甲斐がないですよね。

3、四ノ宮小町
 合コンの女帝なのにファーストキスもまだ。主人公に捕まらずともロクでもない男に捕まるか、行き遅れになったと思います。アグレッシブなイベントCGの数々が良い感じです。
 小町の銃を構える立ちCGは使い方と場所がおかしいですよね。先に発注してしまって使いどころがなくなってしまったのでしょうか。あまりにも強引すぎて引くレベルですよ。

4、シフォン・マクドゥーガル
 ひとり外伝状態の娘さん。明らかに世界が違っています。比喩ではなく本当の意味でも。デルーガはシフォンシナリオ以外ではほとんど出てきませんからね。どうにも取ってつけたような設定に見えて仕方ありませんでした。
 寝相のCGはインパクト抜群です。これがHシーンにつながる遠因とはお釈迦様でも気がつかないでしょう。それにしても、土下座が似合うヒロインですねぇ。