竜翼のメロディア-Diva with the blessed dragonol-(Whirlpool)

 かつて聖竜と邪竜の戦いがあった。戦いののち人間は聖竜と共にひとつの国を作った。それがヴェストリア王国。歴代の女王は聖竜と契約することでレクトという特別な力を行使できた。
 音楽院に通うリュート・カーライル(変更不可)はふとしたことから街娘を装っていた王女に出会い、家の前には聖竜の子供が堕ちてきて、妹は歌の力を見込まれて王家にスカウトされた。これから何が起こるのでしょう。

 Whirlpool第7弾は歌姫と竜の世界のアドベンチャー。もう作品間で世界観共有するのは止めたんでしょうか。
 購入動機はテックジャイアンの紹介バージョンがほどほどであったから。前作の出来からすると不安もありました。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はオリジナルアルバム。

 修正ファイルが出ています。それほどたいした内容ではありませんが気になる方はあてておきましょう。

 ジャンルはいつも通りのアドベンチャー。
 足回りはやっぱり弱さが目立ちます。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、すごく遅いです。ハッキリとテキストを読めてしまうくらいで使い勝手はお世辞にも良いとは言えません。大したことではありませんが、たまに未読のテキストが既読扱いのカラーになることがありました。
 適当なところから始められるシーンジャンプという機能もありますが、残念なことにスキップの遅さをあまり緩和してはくれません。地道なセーブデータが大事になるでしょう。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがあまり戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
 「前の選択肢に戻る」機能はありますが、不思議なことに「次の選択肢に進む」機能がありません。明らかに片手落ちなのでもう少し考えて欲しいです。
 タイトル画面から使用できる「前回の続きから」機能は今回も実装されていてとても便利です。ロード画面を開くことなく続きから始められます。
 いつものように作中の単語を紹介するTIPSという機能が用意されています。プレイ中にいつでも閲覧可能で進行と共に項目が増えていきます。特に読まなくとも問題ありません。

 シナリオは最初から最後まで淡々と進みます。予定調和という言葉が相応しく、あんまり起承転結という言葉通りになっていません。全体だけでなくヒロイン毎のシナリオでもそれは同じで、総じて見せ場に乏しく単調で飽きやすいです。
 物語は最後まで引っ張る魅力に欠けていて、マルチシナリオの良さもあまり活かせていません。また、ご都合主義も激しく納得感もあまりありません。
 世界観の構築がとても脆く、説明も不十分で少しでもツッコミを入れるとあっさり崩壊してしまいそうです。設定に対してのテキストでの裏付けが弱く、読み手に安心感を与えるということがありません。小さなことでもあまり想像力を働かせることなく書いたのではないか、と思えるような文章が散見されます。
 テーマのひとつであろう歌に対しても中途半端さを感じます。具体性に乏しい描写が目立ち、ただひたすらにすごいと褒め称えるのみ。登場人物が盛りがるほどプレイヤーは醒めていきます。演出に関しても同じようなことが言えて、ボーカル曲が入らない箇所ではBGMひとつ満足に変わらずにヒロインの歌声がみんなを引きつけると言われても共感できません。肝心の中身もあまり状況にそぐわない曲調や歌詞があるように感じました。
 本作はなぜか、後出しで色々と語ることが多く、その割には伏線が全くないので読んでいて頻繁に驚かされます。
 日常会話の掛け合いはおよそ盛り上がるということがなく退屈。笑いにも気を配っていないのか、およそ無縁です。ヒロインの個性も完全にCGとボイス頼みでキャラを膨らませるということがありません。
 惹かれ合う過程はなんだか不自然です。あるポイントを過ぎると何の契機もなく突然、恋仲になることを前提に主人公が動くようになります。しかも、共通シナリオから好きだったとなっていることが多く、よりいっそう混乱します。
 Hシーンは各ヒロイン3回。なぜか1回は本編から切り離されて鑑賞モードに配置されています。尺は短めであまりエロくはありません。いずれも終盤の方に固まっていて、用意する場所に困っているのではないか、と思わせるものもあります。

 CGは宝の持ち腐れ感があります。基本的な出来は十分なのですが、印象的なイベントが少ないせいか、どうも後から見てわかりにくい構図のものが多いです。どんなイベントであったのか思い出しにくいような。
 立ちCGは相変わらずのWhirlpool形式。リアル等身で顔の輪郭の中でSD調の目などを入れるのは率直に怖いと思います。
 こもわた遙華氏が手がけるSDカットはメイン原画を食うほどのクオリティの高さです。ごくわずかな笑いはここに詰まっています。中にはイベントCG用ではないのか、と思えるようなシーンのカットまで採用されています。本作の良心と言っても過言ではないでしょう。
 Hシーンは半脱ぎ要素が弱いです。豪華な衣装のヒロインではありがちなことですがとても残念。

 音楽はシーンに応じた曲は用意されているものの、同じ曲を聞き続ける機会が多いように感じました。また、結果的にヒロインの歌をボーカルなしで演出することが多いため、もっと多様な曲が必要ではないかとも。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。キャラにもうまく合致しています。

 まとめ。停滞を感じる作品。売りが売り足り得ていません。読ませるシナリオにはほど遠く、ヒロインの魅力も弱いまま。かなり厳しいものを感じます。
 お気に入り:特になし
 評点:60

 特に思い入れもないのでキャラ別感想はありません。