サクラノモリ†ドリーマーズ2(MOONSTONE)

 ジョーカーを無事に打ち倒し、まどかとの切ない別れを終えた吹上慎司(変更不可)。街には平和が戻り、サクラノモリ・ドリーマーズも解散かと思われた。ところが、悪夢は再び鎌首をもたげてきた。終わらない赤い夢は限られた人々だけが記憶を残して毎晩、続いていく。夢の中での死は現実での死。徘徊する殺人鬼。慎司たちは再び桜之杜を守るために立ち上がる。
 そして、失われたはずのまどかとの日々。これは果たして一体……。

 前作からでも1年2ヶ月。ひとつ前の作品からだとわずかに7ヶ月。MOONSTONEの新作はタイトル通り2016年5月に発売された「サクラノモリ†ドリーマーズ」の続編です。
 購入動機は前作がそこそこ気に入ったのと秋津まどかがクローズアップされるようなので。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はエッチなドラマCD「まどか」。

 ジャンルは前作と同じくアドベンチャー。
 足回りはようやく進歩してくれました。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。ただし、使う機会はほとんどありません。
 バックログは別画面にて行います。2種類ではなくなりました。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能でいつでも最初まで戻れます。もちろん、ロード直後にも使用できます。この画面からシーンジャンプも可能です。
 ひとつ前の作品はアクティベーション認証システムが導入されていましたが、本作では再びなくなりました。とても良いことです。
 前回の続きから始める再開機能も搭載されています。

 シナリオは前作のように章構成ではなくなりました。おおよそ一本道で進行していきます。当然かもしれませんが、全体的な雰囲気はホラーアドベンチャーであった前作を踏襲しています。主人公以外の視点が意外と多いのも共通しています。さすがに頻度は少し下がりましたが。前作のフォローはほとんどないので「2」からプレイするのはかなり厳しいものがあるでしょう。
 今回も基本はシリアスなストーリーなので同様に緊張感を伴う展開がメインになります。笑いの要素は相変わらず期待できませんが、さすがにほんの少しは増量されました。章仕立てではないものの、ひとつひとつ事件を解決しながら手探りで真相に迫る流れはよく似ています。2つの物語が密接に絡み合い展開していく様子は前作のことも関係してかなり盛り上がります。ちょっと意地悪に感じるくらいのとある演出は前作をプレイした人には心に響くものがあるかもしれません。
 一方で本作のメインはやはり、秋津まどかのみ、という感じなので残りの4人はおまけに近いようなところがあります。本編でHシーンがあるのはまどかだけで、4人はエンディング後のエクストラシーンのみです。惹かれ合う過程も同様で、まともに描写があるのはまどかただひとりとなっています。というより、4人は前作で済ませた、という扱いかもしれません。ただ、前作にもあまり見当たりませんが。

 CGは今回も高いレベルで安定しています。前作と絵が異なる、ということもありません。ただ、いわゆるシリアスな面を担当しているサブキャラたちのCGは意図的なのか、少し見た目の雰囲気が変わっています。彩色も赤い夢の設定のこともあり、ややイメージが異なっています。衝撃的なCGも引き続きある程度、用意されているので苦手な人は今回も要注意です。

 音楽はほとんど前作と同じです。よって前作を思い出す一因になりつつ安心してプレイできますが反面、新鮮味は全く期待できません。初めて聞くならば、いわゆる非日常の曲がとても充実していて聞き応えがあります。緊迫感の醸成に多大な貢献をしてくれています。また、日常の曲との落差が大きなギャップとなり、より高い効果を上げています。
 ボイスは主人公のほか名前のないキャラには用意されていません。あっても用意されていないキャラもいます。演技の方は問題なく、脇役の方もしっかりとした芝居を聞かせてくれます。前作と演技が異なる、ということもありません。

 まとめ。前作のヒロインに不満な方向けの作品。これぞ続編という役目を果たしてくれています。前作で悔しい思いをした方はぜひ。ただ、よく短時間でここまで作ったとは思うものの、コストパフォーマンスを考えると諸手は上げづらいのも本音です。物語はきっちり締まっていますが、ボリュームは中編くらいなので。
 お気に入り:秋津まどか
 評点:75

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、桐遠暮羽
 エクストラシーンに入ってからの「そんなはずはないわね」に大笑い。4人連続って本当に大変ですが、本作は主人公の精力はどうやら現実よりなようで。怖い女ですよ。

2、衿坂美冬
 彼女に限りませんが存在感が薄いです。そもそも、活躍自体をほとんどしないし、せっかく能力が使われる場面でもお使いのように言われるだけで、とてもではないですが活躍とは言えない。罠かもしれないものに無警戒に突っ込むのが特徴というのも残念すぎます。

3、閑宮真幌
 能力強化によってルーラのような力にパワーアップ。おかげでほんの少し活躍の場がありました。しかし、拘束されていると使えないという理由はよくわかりません。

4、吹上初音
 両方の世界にまともに出番がある唯一の存在なのでわりと出番があります。旧バージョンも出てくるのでちょっと懐かしい感じも。すでに知っていることと能力がパワーアップしたので序盤はヒーラーとして重宝しました。ま、逆に言えば必要ない場面ではいてもなかなか喋らないのですけど。

5、秋津まどか
 まぶし過ぎるほどのまどかとの日々は嬉しい反面、常に嫌な予感と戦いながらテキストを追ってました。殺人鬼と対峙するしかなくなった場面は本当に恐怖でいっぱいでした。意地悪な選択肢の演出は悪夢再びでしたよ。もう泣きそうな感じで。それだけにハッピーエンドは本当に良かった。ファンディスクではなく、続編と位置づけた解釈も良かったと思います。重みが出たことでより喜びをかみしめることができました。Hシーンの存在が嬉しいなんて本当に久しぶりのことです。
 正直、最後に電話するのは苦しいとしか言いようがないですけど、本作ならこの不思議なノリも良いのではないかな、と思えました。前作から理屈で説明できないような出来事ばかり起きてますしね。