サルバとーれ!(ライアーソフト)

 その男は帰ってきた。硬派な応援団になぜかイタリア仕込みの応援を身につけて。しかし、肝心の部は団長の失踪によって解散していた。失意に陥ったのも束の間、長岡翔(変更不可)は自らが団長になって再建すればいいとプラス思考。部室に住み着いていた不法入国者、もとい留学生をだまくらかし活動を始める。果たして学生会長の魔の手をくぐり抜け応援団を復活させられるのか。

 ライアーソフト第16弾。久々に馬鹿に徹したゲームということで、その手のゲームを好む血が騒いで購入を決意。
 初回特典の類は特になし。

 画像修正パッチなるものが配布されています。あてずともクリアは可能です。

 システムはいつも通りのアドベンチャーにリズムゲーム風の応援パートと双六パートが付加されています。ゲームはアドベンチャーパート→パートナーを選択→双六パート→アドベンチャーパート→応援パート→アドベンチャーパートといった流れで進行。これが1話分になります。予告やオープニング、エンディングといった演出はありません。
 双六パートは読んでの通りでパートナーを選んでから開始します。マス目は様々な種類があり応援団の小イベント、パートナーとのイベント、臨時応援パート、ライアーらしいバッドエンドイベントなどが発生。目的は知名度を上げることで、ゴールに至るまでに要求される数値をクリアできないと特訓イベントが発生します。3回まで発生させてしまうとヒロインルートに入れなくなってしまうようです。このパートは2周目以降もプレイする必要があります。
 この双六パート、小ネタ満載のイベントは各キャラの個性も出ていて良いのですが、ゲームとしては非常に面倒で退屈な上、望むイベントを見るのが難しいのが泣きどころです。見ていないイベントあるのかどうかがわかりにくい、わかってもなかなか見られない、というのは改善の余地があるように思えます。
 応援パートのミニゲームは2種類を用意。リズムゲーム風のものは減っていくゲージに設定された数本のライン、これに合わせてキャラ毎のアイコンをタイミング良く押すこと。成功すれば良し、失敗すれば連打が命のマウスに優しくないもう1種類のものにて挽回する必要があります。2つとも後半にいくほど難しくなっていきますが連打の方はそれほどでもないのでクリアできないということはないかと。このパートは2周目以降クリア済みのものはキャンセル可能です。
 この応援パート、アクセントとしては問題ないですがゲームとして多くのものを要求してはいけません。あくまでリズムゲーム「風」ですから。2周目以降、飛ばせるのは良いことですが、「次の選択肢へ」機能と相まって空恐ろしいほどの作業プレイになってしまうことがままあるのが玉にきずです。酷い時には一度も応援パートをプレイすることなく新規シナリオ終了なんてことも。

 シナリオはかなり使い回し度が高いです。基本ストーリーが固定であるため1周目と2周目以降で読むテキスト量に相当の開きがあります。個別シナリオというほどのものはなく、同一シナリオ上の差分くらいに考えていた方が無難です。
 馬鹿なことを真面目にやる応援アドベンチャーということでネタはマニアックなものが多いです。それらは低く見積もっても25禁という感じ。わかる人にだけわかる狭い笑いが満載。ツボにはまればかなり楽しめるでしょう。
 もちろん、年齢を問わないネタも多く用意されています。キャラが立っているので日常の掛け合いはテンポ良く読み進められます。このあたり、ライアーソフトのお家芸が発揮されているという感じです。
 問題となるのが恋愛描写。普段からふざけた会話ばかりしかしていないので、いきなりシリアスになられてもプレイヤーは全くついていけません。恋愛観のようなものに一切、触れることなく唐突に心情を吐露するのは無理があるのではないかと。
 Hシーンは各キャラ1回ずつ。内容は「まぁ、ライアーですから」とか苦笑いしたくなるような仕上がり。ここに期待する人もいないでしょうからこれはこれでいい、のかな?

 CGはメインキャラとサブキャラで綺麗に分担作業がされています。純粋に人物同士を比べるとサブの方はいかにもサブに見えてツライですが、応援パートのコミカルなカットは作品の馬鹿なノリに合致していて大変よろしい感じです。
 立ちCGに大きな変化は少なく、代わりにフェイスウインドウが躍動してしっかりとカバーしています。特にSD表現はなかなか秀逸で掛け合いを盛り上げる役に立っているのではないでしょうか。
 Hシーンは回数だけでなく枚数的にもけして多くはなく。パッケージの「もちろんHもいっぱい!」の表記に反していると言わざるを得ません。もう少し頑張りましょう、ってな具合です。

 音楽は作品のお馬鹿なノリほどには弾け切れていないようです。名作揃いのライアーソフトにしては珍しく印象に残る曲がほとんどありません。
 ボイスはパートボイスで男性キャラには一切ありません。いつものことですが、味のある男性キャラに声がないのは寂しい限りです。一方で女性陣の方は特に問題はなく安心して聞いていられます。中でも河野穂香役のかわしまりのさんの演技はメリハリがあって非常に聞き応えがあります。確実にキャラの魅力増に貢献しているのではないかと。

 まとめ。1周目と2周目以降で大きく印象の変わる作品。せめてもう少しヒロイン毎に差をつけるとかできなかったのかなぁ。物語が代わり映えしなさ過ぎ。キャラは良いのにそれを掛け合い以外で全く活かしていないというのはもったいない限り。「行殺新選組」あたりと比べてしまうとかなりツライです。向こうにはちゃんと個別シナリオがあったのになぁ。
 お気に入り:河野穂香
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、押川凛
 世間一般とエロゲーの常識の板挟みにあった不幸なヒト。赤いブルマの上に学ランというのはどう考えても駄目な側の人間の出で立ちであり、常識の申し子としては残念ながら全てが不足しています。まぁ、「ぶるまー2000」のライアーソフトとしては外せなかったのかも知れませんが、ツッコミ役の見た目が他と同じ道化というのは効果的と言えないのではないかと。
 兄を心配するばかりで恋愛方面の心情描写が全く足りておらず最終章の反応は相当に唐突。あの格好をしっかりと想像した上でテキストを読んだのでとても辛かったです。っていうか、やっぱり最大の問題は主人公が外面的な要素だけで中身のことがてんで描かれていないってことなんですよね。だから終盤に恋愛描写が始まるとまるで浮足立つようにキャラが安定しなくなる。

2、エルナ・インブリー
 乳担当。ライアーソフトとしては原画のゆりかわ氏の乳描写をかなり特別なものとして認識しているようですが、個人的には彼女も彼女以外も特に何も感じませんでした。ま、ミヤスリサ氏あたりと比較してはいけないんでしょうけど。
 恋敵の存在がライアーソフトにしては笑いでもストーリーでも意義が薄く残念。基本ストーリーが完全に同一であることが敗因か。もちろん、主人公の描写が薄いことはここでも響いている。早い話が手抜きっぽいんだよねぇ。シナリオ量とかこれまでのゲームに比べてどうなんでしょ。
 彼女の貧しい日常というか生態描写は非常に楽しめたのだけれど、それだけなのがなぁ。結局、リーダー部に対して抱いた誤解が解けることなく終わってしまったし。

3、橋戸春奈
 にこやかな黒い笑いが素晴らしいのですが、それ以外はなんともパッとせず。正直、凛に勝とも劣らぬ驚き担当になってしまっているのがなんとも。シニカルなキャラであるのにまるで相反するような組み合わせが厳しい。個別ルートで語られる応援団への愛着エピソードも考えるとどうも長所を潰しあっているような。
 エロゲー的に誰とでも寝るヒロインは不利であるのにそれを覆す設定も用意されていない。ありがちなヒロインを出したくないってことなのかもしれないけど、それがプラスにならず他に加点もなしではこだわりも感じられないんですけどねぇ。

4、河野穂香
 容姿といい性格といい、ツンデレとしてなかなかの逸材。
 昨今もてはやされるこの属性ですが、ツン要素が弱すぎるヒロインが多すぎてどうにも納得がいっていませんでした。また、デレ状態に入ると人前でさえもツン状態が消滅してしまうヒロイン(つまり性格が変わってしまっている)が大半を占めていていつもガッカリしていました。
 そんな中にあって会長は骨のあるキャラでたいへん満足度が高かったです。苛烈なまでの舌鋒は鬼の副長とまではいかないものの、それを彷彿とさせるくらいにはインパクトがありました(声優同じ)。ちゃんと理に適った態度であったのも好印象。きっかけのイベントは不満でしたが、それ以降の応援団に巻き込まれ流されるうちにたがも緩み、良いところも目に入るようになるというのは自然で良かったです。ツン状態が崩壊ってこともなかったですしね。また、体力面という明確な弱点があったのもメリハリがあって二重丸。
 ええ、キャラは良かったんですけどね~。これでシナリオがもっとまともに書かれていたらなぁ。個別シナリオの弱さは他のヒロインと変わらず、突然に発情しているように見える両者には困りものでした。やはり、主人公がねぇ。笑いは良くとも恋愛に対してはそれまでの描写がゼロ同然ではねぇ。

5、岡崎
 ある意味ジョーカー的なキャラであるため、ある程度以上は活躍できないのがもどかしい。エロゲーであるため(主役はヒロイン)、主人公を食ってしまうのはまずい、の二原則はやはり重い。事実上、声がないも同然なのもライアーソフトの仕様とはいえ悲しい。ボイスに関する限りは間違いなく後進国だよなぁ。
 バッドエンドの妹エンドは良かったけれど、さすがにネタを使い回しすぎな気もしますな。

6、吉央川信敬
 用務員で笑いをとるよりも理事長(学園長)でも規則は規則と会長にへこまされていた方が良かったように思います。どのみち尊敬されないなら役職は高かった方が効果も大きいでしょうし。