新体操(仮)(ぱんだはうす)

 体育教師である戸黒肉助(変更不可)はちょっとした人物だった。姿形はまるで教師に見えず不衛生。激しく自己中心的で歪曲した価値観を持ち、相手を問わずにそれを押し通す。加えて経済観念は皆無に等しく、生活は常に破綻。止めに生徒を劣情の対象にする機会を随時、狙っている……。見方を変えればちょっとした傑物と言えないこともない。
 そんな肉助のもとに一通の手紙が舞い込んだ。その文面によると、広い世の中には少女たちが淫らな演技を競う「闇の新体操」なるものがあり、肉助がそのメンバーに選ばれたというのだ。入会を希望するなら口座に10万円振り込めという指示に、肉助はなにも迷うことなく従った。

 原画家さとう氏の絵に惹かれて購入。本人も「カラフルピュアガール」のインタビューで語ってましたが、高橋しん氏に少し似ている(影響を受けた)ところも魅力。
 新生を謳う「ぱんだはうす」の第二弾。マニュアルにあいさつが載っているというのも珍しいですね。
 初回特典にはスタンドカレンダーがついてます。ブックタイプで右がカレンダー、左が写真を入れられるようになっていて、デフォルトではメインヒロイン二人のどちらかをいれるようになっています。
 特典としては珍しいですが、使えないことに違いはありません。こんなのを飾っていたら家族にどんな不安をいだかせるやらわかりません。まぁ、これに彼女(彼)の写真を入れるのも、それはそれでアレな感じでいいのかもしれませんが。

 システムはオーソドックスなアドベンチャースタイルに特訓パートをプラスしたもの。夜に行う特訓パートは複雑さとは無縁で、演技項目をただ選ぶのみ。選手にパラメータもありますが、ほとんど飾りでシミュレーション的な意味はありません。このあたりはあくまで雰囲気作りというところでしょうか。
 選手候補、つまり特訓パートがあるのはメインヒロインの二人のみ。残りのヒロインは選択できません。
 バッドエンドを除いた全てのエンディングを見ることで、ご褒美的なエピローグシナリオが始まります。どうも一度しか現れないようですが。
 足回りはそこそこ優秀。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますし、速度も充分に速いです。メッセージの巻き戻しはロード直後には使えません。加えて選択肢の前にも戻れないので少し不便かも。ボイスも巻き戻して再生させることは出来ません。
 コンフィグ項目には変わったものがあり、システムボイスを設定することが出来ます(「ロードします」とか「CG鑑賞です」のような)。種類はノーマルとメインヒロインの全3種類。しかし、メインヒロインはその声優さんがただ喋るだけで、キャラクターを演じている訳ではないのが残念。一人は関西弁なので少しもったいないです。

 シナリオは意外とあっさり風味。主人公のねじ曲がった思考推移は読む人を選ぶかもしれませんが、描写はそれほどしつこくありません。もっとねちねちしているかと思っただけにやや肩すかしの印象かと。
 主人公は調教と言っていますが、その実態はあくまで行き過ぎた特訓、演技指導に過ぎません。調教が好きな方には注意が必要です。また、テキストは笑える方向ではありません。
 
 CGはこのゲームで最も輝いている要素でしょう。原画家の描きたかったものが伝わってきます。特訓パートはシナリオでも書いたように闇の新体操の演舞なので、露出は少なめ、フェチ方向が重要視されています。
 難点はその枚数。差分抜きで72枚は最近のゲームにしては、ちと少な過ぎるのではないでしょうか。タイトルから考えても特訓パートのCGをもっと増やすべきだったのではないかと。
 もうひとつ。どうしてだか、目を閉じているカットの表情がみな同じに見えます。普段の描き分けがしっかりしているだけにもったいないです。
 立ちCGは通常とバストアップの2種類。バストアップの方は細かくかつ、魅力的に変化しますが、通常のものはほぼ変化なし。

 音楽はCD-DA。おとなしめの曲が多く、あまり印象に残りませんが、主人公が学校を徘徊するときの曲は変質者っぽい感じが出ていて好感がもてます。

 まとめ。CG買いが正しい基本姿勢。それ以外には期待しない方が無難。もっともそれでもボリュームのなさは覚悟しなければなりませんが。
 マニュアルによると、ぱんだうすはこの勢いに満足しているようです。ということは今作に不満たらたらな方は……。
 お気に入り:羽丘みく(和歌山生まれの関西弁だから)
 評点:42

 以下はキャラ別感想……、ではなくいつもとは趣向を変えて「Sweet Pleasure」(Cronus)との比較でもしてみようかと。理由は私が持っているソフトの中で新体操キャラがいる唯一のゲームだから(たぶん)、というのとそれによって上の感想とは違う形で「新体操(仮)」というゲームを浮き彫りに出来たら、と。似ているようで似ていないゲームだと思うので。

 システムはこの際、あんまり関係ないんで飛ばします。と思ったのですが、ひとつだけ。
 システムボイスは明らかに「Sweet Pleasure」の方が良いです。普通に考えれば当たり前だと思いますが、きちんとキャラの演技として収録しているので。ただし、意味合いが違うので「新体操(仮)」とは異なる場面で喋るケースが多いし、ランダムなので設定もできません。

 最も端的に現れているのがシナリオ。主人公が傍若無人であることは共通ですが、その先が異なります。
 「新体操(仮)」は強引な展開に繋げるために、主人公の常人には理解しにくい思考を順序立てて説明されます。
 対して「Sweet Pleasure」は強引な展開に繋げるためのいい訳じみた思考描写などありません。即行動、という感じなので常識からズレたその行動が笑いを誘います。長所か短所かは微妙ですが、同じ展開でもシナリオが短くなるのが特徴です。

 キャラクターの感情変化も対照的。
 「新体操(仮)」はメインヒロイン同士が少なからずリンクしていることと、理事長の孫娘という便利な肩書の持ち主であるため、エンディングまで感情変化が起こりません。代わりにサブヒロインたちがそのあたりを担当しています。
 対して「Sweet Pleasure」はキャラ同士の絡みがないという欠点を抱えているものの、この場合は好都合ということか、ストレートに変わります。「堕ちる」というよりは「惚れる」なので本格派な方には不評な訳ですが、そこは「新体操(仮)」のサブヒロインも同様です。

 作品としての方向性にもハッキリと違いが現れています。
 「新体操(仮)」はあくまで本物の新体操がエロく見えるというところから出発した企画なので、どのように見えようとも演技として体裁を失う訳にはいきません。また、主人公も(理由があるとはいえ)演技を完成することを目的としています。
 「Sweet Pleasure」の場合はコスチュームエッチが企画の元なので、必然的に目的が異なってきます。コーチするのは手段でしかなく、身悶えするような都合の良い理屈で相手を丸め込み、目的であるHに突入する訳です。
 このあたりはCGでの表現、構図にもはっきりと差異が現れています。体型の差はたまたまだと思いますが。

 まとめ、というほどのものでもありませんが、これを書いたのは別にどちらのゲームが優れているのか、とかそういうことではありません。両者の違いが少し面白かったと、それだけです。
 ただ言えることは「Sweet Pleasure」の方法論で「新体操(仮)」を作ったなら間違いなく、お手軽ゲーになるということ。
 個人的にはギャグがないのに笑えるお手軽ゲーの方が好みではありますが(よって最近のCronusはどうも、ね)。