ソルネア(スタジオ・ルクス)

 戦火も及ばぬ辺境の村にいつものように遠路を越えて商隊がやってきた。だが、いつもとは異なり、みな一様に傷だらけであった。村人が事情を尋ねると女ばかりの盗賊に襲われ、同行していた神官の娘をさらわれたと言う。
 狼狽するばかりの村人たちの中にただひとりだけ、胸を躍らせる男がいた。男の名はブリッツ(変更不可)。村でも評判のトラブルメーカーである。ブリッツは退屈な日常に別れを告げ、刺激を求めて神官の娘を救いに向かうのだった。

 雨後の筍のように増え続けるブランド。それは2002年になっても変わりません。スタジオ・ルクスもまたそんな中で生まれてきた新ブランドのひとつです。
 デビュー作であること、ボイスがないことの二点で迷ったのですが、原画家さんがわりかし気に入ったので結局、購入。

 システムは定番のアドベンチャーですがやや変則的な面も。キャラクターのセリフは通常のメッセージウインドウに表示されますが、ト書きはどういう訳だかビジュアルノベル方式で表示されます。
 どうも狙いがわからない区別の仕方です。個人的にはあまり良いスタイルとは思えませんでした。
 足回りはいかにもデビュー作らしい作り。ウインドウの設定項目(コンフィグ内容)を記憶してくれません。よって立ち上げる度に自分に向いた環境にセットアップし直さなくてはならず、たいへん不便でした。おまけにメッセージ速度を「速い」(ノーウェイト)に設定しても、選択肢を通過したりメッセージスキップを使用すると元に戻ります。これ本当にテストプレイしましたか? いえ、していないと言われた方がまだましかと。テストプレイしてこの仕様で良いと思うならそっちの方が問題です。
 メッセージスキップは画面効果のスピードがほとんどそのままなので、あまり速くありません。既読未読もどこ吹く風でひたすら飛ばしまくり。メッセージの巻き戻しはなし。今時にしては珍しいかも。
 ロードがタイトルからしか実行できないのもかなり面倒。特定のシミュレーションのように頻繁にロードさせたくないゲームではないのですから、もう少し考えて欲しかったです。

 シナリオは3人のヒロインごとに雰囲気がかなり異なります。ミューズはほのぼのギャグ系、クレアは痴話ゲンカ系にソミュアはダークでシリアス系といった感じで。
 どのシナリオでも共通しているのは全体的に描写が淡白というか不足気味ということ。勢いで押し切ってしまおうという箇所がよく見受けられました。細やかな心理描写がないので意外な展開になったりするとプレイヤーは置いてきぼりをくいやすいかと。なぜそうなるの、なぜそう感じるの? と思うことが多かったです。
 もうひとつ。シナリオそのものがすごく短い。短編シナリオと言った方がしっくりくるくらい。そのわりに話だけは壮大というのも気になります。
 せっかく設定したキャラクターも世界の中であまり有効に動いていないように感じます。序盤に顔を出して以降、出番がないというのはあまりにも……。

 CGについてはキャラクターはなかなか魅力的に描けていると思います。しかし、背景はもう一歩。森など自然の様子はいいのですが、街の様子がどうにもネック。全ての建物が(材質がなんであれ)金属的に見えます。加えて背景内にモブキャラが一人も描かれていないのは不自然ではないでしょうか。これで大都市とかいわれてもねぇ。
 イベントCGに比べると立ちCGはややおとなしめ。どうにも魂が感じられません。
 フェイスウインドウはキャラにもよりますがなかなか豊富。マンガ的にかなり激しい落差で喜怒哀楽を表現しています。特に主人公とミューズ。しかし、そのために使えるシナリオ、シーンが限定されてしまっているのが残念。

 音楽はアドベンチャーというよりロールプレイングを想起させるような曲が多いです。妙に勇壮というか。

 まとめ。RPGのシナリオだけ抽出したようなアドベンチャー。というかRPGにした方が良かったのではないかと思います。色々な意味で。
 一部シナリオのキャラの掛け合いはなかなか楽しいですがそれだけではどうにも不足気味。
 お気に入り:ミューズ
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレは特になし。







1、ミューズ
 シナリオ的には面白味はないですけど、ブリッツとの会話はなかなか楽しいです。フェイスウインドウもころころ変わってくれますし。複数回Hがないのがなんとも残念。こういう初々しいキャラの方がありがたみがあると思うんですけどね。
 にしても護衛の依頼中に修行に励むのはどうかと思います。ミューズが寝ている深夜や早朝ならわかりますが。

2、ソミュア 
 あってなきが如しのHシーンが涙を誘います。まぁ、全てが解決した後だからというのもあるのでしょうが、それにしてもねぇ。
 ティアもそうですが、過去の傷がどうにも画一的すぎる印象が。もう少し違うネタを用意しても良かったんじゃないかと。

3、クレア
 このシナリオだけ浮いているような気がします。いつの間にか大切な存在だったという独白に最も違和感が(ソミュアも似たようなものか?)。おまけに最もご都合主義なシナリオですな。
 一番の問題は3人娘に全く出番がないこと。ミューズシナリオにはあるのにこちらにないというのはどこか間違っています。せっかくのいいキャラクターたちなのに。