巣作りドラゴン(ソフトハウスキャラ)

 竜族には色々あった。その色々のせいで男女のバランスは崩れ、能力も数も女ばかりが増えた。男は種馬ならぬ種竜であり、種族を守るために巣作りをしなくてはならない。それは竜族の落ちこぼれブラッド(変更不可)も例外ではない。しかも、最強にして最凶の竜リュミスがその相手なのだ。ブラッドは恥も外聞もなく怯えた。幼少の頃よりこの世で最も恐れる相手なのだから無理もない。よってブラッドの思考は果てしなく後ろ向きだった。巣が完成したら結婚ということは巣が完成しなければ結婚には至らない。つまりは永遠に巣を作っていればいいという小学生のような結論。それでごまかせると巣作りに旅立った。もちろんブラッドはすぐに世の中の厳しさを思い知ることになる。果たして巣作りの行方は。

 相変わらず攻めの姿勢を崩すことのないソフトハウスキャラは前作「レベルジャスティス」からわずか半年で新作をリリース。「真昼に踊る犯罪者」以来のファンとしては頼もしく嬉しい限り。もうソフトハウスキャラだから、が鉄板の購入動機です。

 いつものようにラフ・設定資料集が付属しています。今回は製作期間の短さのせいか、あまり貴重な感じのするものはありませんでした。少し残念。ちなみにネタバレはありません。カレンダーもなし。

 ジャンルはタイトルからもわかるように巣作りシミュレーション。目的としては非常にわかりやすく結婚式コマンドを実行すること。各ヒロインの条件さえ満たしていれば選択式でエンディングに向かいます。選択式というのが今回の大きなポイント。条件が曖昧でわかりにくかった「レベルジャスティス」に苦労した記憶が新しいだけにこれは嬉しい配慮。まぁ、結婚式に自分の意思が反映されるのは当然なんですけども。
 ゲームは繰り返しプレイを前提としていて3つのモードに分かれています。モードが進むに連れて数々の特典がつくようになり、結果として簡単になっていきます。本当は入門編→応用編→総合編という感じで逆を目指していたのではないか、という気もしますけど。
 基本行動は巣作り、部下召喚、街攻撃、H練習、ヒロインとの会話、休憩の6つ。各行動は1ターンに1つしか選ぶことができません。
 巣作りは11に分かれたエリアに様々な施設を財宝を使って作ります。エリアによって作れる施設は異なります。また巣には豪華度というパラメータがあってこれを上げていくことも目的のひとつになります。
 部下召喚は自分の巣を守るモンスターを雇います。竜であるブラッドが戦うと却って巣の被害が大きくなるというのがその理由。どのみち侵入者は多数で攻め込んでくるのでこちらも数は必要になるのですが。本作ではこうした細かいところに一般のRPGのなぜ? に対して独自の理由が用意されていてなかなか面白いです。
 上の巣作りにおいてはこのモンスターが戦う待機部屋を用意する必要もあります。
 街攻撃は唯一、巣から離れての行動になります。魔力を用いて村、街、城などを攻撃します。加減が重要で攻撃結果によって貢ぎ物や侵入者のレベルが変わってきます。攻撃度はメーターのようなものでわかりやすく表されます。
 H練習は身も蓋もなくいえばHシーンを用意するためのもの。ヒロイン以外の相手とのものが用意されています。街攻撃などの貢ぎ物にはお金だけでなく、こうした相手も含まれます。
 ヒロインとの会話は説明不要かと思いますが、条件を満たさないとコマンドが現れないヒロインもいます。
 休憩も読んで字の如く。主に魔力を回復させるために選択しますが、他にも色々なイベントが発生したりします。
 行動選択後はケースに応じて巣での戦闘が起こります。作り上げた巣の中でチビキャラによる戦闘シーンが繰り広げられます。これが戦闘だけでなく罠の発動など見ているだけで面白いです。速度も3段階から調整可能。
 戦闘が終わると収支結果の報告があって1ターンが終了します。ちなみに財宝を根こそぎ略奪される(マイナス収支)と一発でゲームオーバーです。
 一連の行動は全て巣作りに集約されていて、目的に対して常に見た目で手応えとして却ってきます。巣のレイアウトを考えること、どんなモンスターを雇ってどんな風に守るか、街にどんな攻撃を与えるか、どのヒロインとのイベントを進めるか。ゲーム全体のスピーディーさのおかげもあって考えながらゲームをプレイすること自体が純粋に楽しいです。

 足回りはしっかりと進化しています。メッセージスキップは遂に既読未読を判別するようになりスキップボタンも用意されました。速度も充分なスピード。
 バックログは別画面にて行います。かなり戻れることができてリピート再生も可能。戦闘シーンを挟んでも問題なく戻れます。ホイールマウスにも対応していますが、バックログのスタート時に使用できないのはちと残念。

 シナリオは竜と様々な形で出会うヒロインの日常が描かれています。種族も違えば立場も違うヒロインたちとの日々はただ読んでいるだけで楽しめます。会話がそのまま世界観の紹介という感じで。巣の内容に応じた会話が発生したりするのも面白いところ。この様々な会話を発生させるためにゲームを進めるといっても過言ではありません。
 贅沢を言えばもう少し巣から離れたイベントがあったりすると良かったかも。よりヒロイン毎の違いが明確になったでしょうし、個別のシナリオを膨らませることができたのではないでしょうか。
 おまけシナリオの存在も重要。どちらかというとシリアスな本編では不可能なノリもありなかなか笑えます。しかし、リュミス関連のものは本編に組み込んでも問題なかったように思います。リュミスモードは裏モードくらいに割り切って。
 周回プレイに対する配慮もよくなりました。モード毎に最大プレイ期間を設定したので同時攻略を1周目から行うのはほぼ不可能になっています。1周にかかる時間も前作までと比較して大幅に短縮されたため繰り返しプレイも全く苦になりませんでした。
 Hシーンはやや後退気味でしょうか。「レベルジャスティス」が良かったからそう感じるのかも知れませんが、やや少ないように感じました。特にフェイやルクルは会話が可能になってからのHシーンバリエーションが少ないので好きな人にとってはやや厳しいかも。

 CGは今回も頑張ってます。舞台がダンジョンということで暗い配色にならないよう、彩色にしっかりと気を配っていると感じました。またキャラクターデザインの方向に若干の変化が見られてなかなか新鮮でした。
 立ちCGはポーズ変化こそ少ないものの、表情はかなり豊か。会話シーンが重要なゲームなのでここは大事です。中には非常にレアなものもあったりして、もったいないと感じることも。
 オープニングムービーは今回もバランスの良い出来。およそプロモーション的な意味において申し分ありません。これを加工したオマケのデモムービーもお遊びが効いていて二重丸。かなり笑えました。

 音楽はシステムの成熟に負けないくらい良くなってきたのではないでしょうか。単独でもかなり聴ける曲に仕上がっていると思います。特に戦闘関係の曲はそれぞれに違いが出ていて良い感じ。ボーカルは相変わらず弱め。一種独特な曲であることは確かなんですけどね。
 ボイスは今回もフルボイス。戦闘シーンのチビキャラにも用意されていて好感がもてます。あれがあるとないとでは大違いですから。ヒロイン陣は鉄壁のキャスティングで問題なし。中でもリュミスの裏表が実に聞き応えがあります。

 まとめ。更なる進化を果たした秀作。前作から半年でこれを作ってしまうんですから恐れ入ります。今後もソフトハウスキャラの飛躍の道程を見続けたいです。もちろん購入して。
 お気に入り:ルクル、リュミス、クー(というか全てのキャラがお気に入りといっても間違いじゃないです)
 評点:84

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、ユメ
 今回最もデザイン的な冒険が見られるキャラかもしれません。最初に全ヒロインの立ちCG一覧を見た時には佐々木珠流氏とは思えませんでした。
 ユメは各キャラとの絡みが面白かったですが、設定を考えると戦闘に参加して欲しかったような気もします。

2、フェイ
 汚名を晴らす、という展開はこのゲームとしては違うんだろうなぁ、と思いながらつい期待してしまいました。期待が大きいだけに反動も大きかったような気もします。
 それにしても竜の騎士ですか。額に紋章が浮かび上がったり、ドラゴニックオーラやアバンストラッシュが使えたりするんでしょうか(違。思わずそんな戦闘シーンを妄想したりしていました。見かけは変わらなくてもボイスだけはー、とか。
 ウチのフェイは狂戦士のスキルを覚えたおかげで獅子奮迅の働きでした。もうほぼ毎ターンレベルアップしてましたから。

3、ルクル
 最初は捕獲の方法を思いつかなくて幾度かイベントが間に合わないよー、とか喘いでました。あのダミーイベント(?)は実に巧かったと思います。そして、方法を思いついて成功した時には(かなり失敗しましたが)相っ当に嬉しかったです。まさかなぁ、と半信半疑でトライしていただけに。
 ルクルも会話可能後のHシーンはイマイチなんですが、会話そのものは大層楽しめました。素直じゃないところがいいですな。

4、リュミス
 相手を死なせかけるほどの強烈な照れ隠しがとっても素敵。あれじゃ気付かないのも当然ですな。
 リュミスモードにおいてはもっと出番が増えても良かったのではないでしょうか。おまけシナリオのネタをまんま搭載していても問題はなかったと思うんですけどねぇ。もったいないような気がしますよ。

5、クー
 正直、最初はヒロインとは思っていませんでした。バニーさんイベントが起こってからようやくヒロインなのかも思った次第で。
 恐らく1回しか出ないと思われるクーの立ちCGの困り顔がお気に入り。あれはちょっと反則だよなぁ。