祝福の鐘の音は、桜色の風と共に。(すたじお緑茶)

 母と早くに死に別れ堀田秀治(変更不可)とその父は絶賛貧乏中であった。遂には夜逃げも止むなしか、となった夜に珍しく借金取り以外の来訪者がやってきた。執事を連れた男は秀治の祖父と名乗り自分の家を継げと迫ってきた。実は母は資産家の娘であったが、父と駆け落ちしたために勘当状態にあったのだ。借金の肩代わりという見逃せない特典もあり秀治は祖父の提案にのることに。

 すたじお緑茶第8弾はこれまでとは違ってあんまり尖ったところのないアドベンチャー。
 購入動機は決め手に欠け悩みながら。前作のファンディスクがナニな出来だったので不安がありました。
 初回特典はスペシャルマキシCD。予約キャンペーン特典は祝桜原画集。今回もきつくはなりますが、パッケージにしまうことができます。こういうのは他のメーカーも見習って欲しいですね。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
 足回りはあまり進歩していません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。ただし、デフォルトのままではスキップするのに(機能メニューが画面上に一切ないため)いちいち右クリックからメニューを呼び出してから行わないといけないので面倒です(既読文を自動でスキップに設定すれば緩和されます)。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
 前回の続きから始まる自動ロードは便利ですが、タイトルも何もかも省略すると慣れるまでさすがに驚きます。それとセーブ後にタイトル画面に戻ったりすると無効化してしまうのは残念な仕様です。

 シナリオは驚くほど短いです(前作をプレイしているとさらに短く感じそう)。そのボリュームはコストパフォーマンスが気になるくらいでエロ重視の作品に匹敵するほど。ちょっと集中してプレイしてしまえばすぐに終わってしまいます。
 もちろん、そのあたりは中身にも影響を与えています。共通、個別ともに短く非常に淡々としています。具体的な描写が乏しいため、困難が起こってもハラハラする前に対策がたてられて実行も素早いため あっという間に解決してしまいます。
 個々のイベントもとてもあっさりしていて気がつけば終わっていた、というくらいに薄味です。エンディングもエピローグもこの例に漏れず、最後と気付かずスタッフロールに入り、余韻を感じる間もなくタイトルに戻ってしまいます。
 ヒロインのキャラが弱く、テキストでの肉付けがあまりうまくいっていません。通り一遍の会話が多く面白味に欠けるので飽きやすいです。実際、ワンパターンなネタが短い中でも多くなっています。笑いも期待しない方がいいでしょう。
 主人公をヒロインが過剰に持ち上げて同時に悪友のサブキャラをこき下ろすということをやっているのでどうも嫌な気分になりやすいです。それが日常というくらいに頻繁に繰り返されるのでさすがにちょっと困ってしまいます。
 惹かれあう過程はほとんど見受けられません。よくわからないけど(選択肢で)聞かれたから答えるとそれが決定打となってしまうような唐突さがあります。選択肢で向かった先にたまたまその相手がいたから、という感が強いです。
 Hシーンは各ヒロイン4回ずつ。尺はやや短めでエロ度はそれほど高くありません。

 CGは演出的に色々とおとなしくなりました。前作の立ちCGによる賑やかさはほとんどなくなくなり、動きも目を引くようなものはありませんでした。
 食堂の背景にフェイスウインドウを配置して食事風景、というのを自宅と学園の2ヶ所で行っています(正確にはホールでパーティーなど他にも同様のものはあります)。これも動きがほとんどないため意義が感じられません。お金持ちの世界という本作の設定からすると相反するような演出に感じられます。
 イベントCGは綺麗ですが印象的なカットがほとんどないように感じました。イベントの薄さがここでも影響していると思います。SDカットも同様で基本はとても可愛いのですが、全体ではネタ不足を感じさせるようなカットが散見されます。それと些細ですがテキストと食い違うものが1枚ありました(金魚鉢のようなパフェという表現があったものが普通のパフェでした)。

 音楽はややおとなしいながらも場面に応じた曲は用意されています。ただ、シーンに先んじて曲が始まることが多いため、その選曲から次がどんなシーンかがわかってしまうことが何度もありました。
 エンドロールが真っ黒な背景に白い文字だけというのはかなり寂しいのではないでしょうか。さすがに珍しくて驚いてしまいました。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。思わず心配になる作品。前作「恋色空模様」からどうしてこうなるのか不思議でなりません。アンケート葉書の内容(要望)を100%聞いてしまうと確かにこんな感じになってしまいそうですけど。作品として尖りが一切なくなってしまったようでとても残念でした。
 お気に入り:特になし
 評点:50

 思い入れが生じようもなかったのでキャラ別感想はありません。