てのひらを、たいようにAB(Clear)

 記憶が間違いでなければClear初のファンディスク。4作目にして初というのは地力がついてきたのか、それとも単純に本編がよく売れたのか。なんにしろ本編の5ヶ月後に発売というのはなかなか良いタイミングではないでしょうか。
 特典としてオリジナルサントラと「Moon Light」のアレンジCDが同梱されてます。ちなみにこのサントラが購入動機だったり。

 コンテンツと書くほど多彩な内容を備えてはいません。後日談を描いたAFTER編と本編よりもずっと昔の物語BEFORE編、それにおまけのEXTRA1、2の全4編から構成されてます。

 システムは言うまでもなく本編と同じアドベンチャースタイル。ただし、BEFORE編の方は選択肢が存在しないのでゲームとは言い難いですが。
 AFTER編をプレイしていると、シーンが変わって新しいCGやメッセージウインドウが表示されるまでに妙な間が開く時があります。BEFORE編ではこんなことはないんですけど、どうしてなんでしょうね。違うプログラムで動いているんでしょうか。
 足回りは本編と同様なんでそちらを参照のこと。短所も長所もそのまんまです。スキップ使用時のフラグ管理は丁寧なものになったと思います。「てのひらを、」編的と感じました。

 シナリオは本編と同じように微妙。そして、ファンディスクの意義を疑うような内容になってます。
 まずは前半の理由から。これはもうなんともわかりやすく、AFTER編の担当者が冬雀氏でBEFORE編の担当者が秋津環氏であるから。相変わらず両者の間にはかなりの技量の差があると私は感じました。わかりやすく書くならAFTER編のテキストは好感を抱くレベル、一方のBEFORE編は……、ということです。
 続いて後半の理由。それは用意されたシナリオの中身の問題。
 AFTER編は「てのひらを、」組のエンディング後の穏やかな一日。すでに書いたようにテキストは何の問題もなく、ようやく訪れた平穏を心ゆくまで堪能できます。こんな何気ない一日の大事さは本編を終えた人ならば十二分にわかるかと。しかし、逆に言えばこの内容はファンディスクではなく、本編に搭載して欲しい内容のように思います。本編ではできない、実現しにくいものがファンディスクの意義ではないでしょうか。色々と言葉を弄してますが、早い話が蓮見まりあのHシーンもなければ、ハーヴェストの2大ウエイトレスの親子丼もないんですよ。特に前者はソフト製作中のホームページのカットがその存在を予期させるものであっただけに落胆者も多いのではないかと。後者はおーじ氏のホームページの特集に元ネタとしてあったものでやはり期待しても不思議なものではないと思います。
 BEFORE編はかつてあった昔の物語。いわゆる前世ネタな訳ですが、こんなものをファンディスクで書く意義は奈辺にあるのでしょうか。そもそもネタからして重要であるならば本編に盛り込まなければならない物語であるはずです。しかし、実際には盛り込まれていないことからこの話の必要性がわかります。加えて18禁シールを張りたいがためとしか思えない取ってつけたようなHシーン。シナリオの流れを阻害すること夥しいです。
 まぁ、制作者サイドに作りたい物語があるのはわかります。しかし、これはファンディスクです。ファンの期待に応えることこそ第一義ではないでしょうか。少なくともこのBEFORE編がファンの最も望むものだとは思えません。

 CGは部分違いを除いて26枚。定価5800円でこれはちょっと少ないんじゃないでしょうか。いくらなんでももう10枚くらいあっても罰は当たらないと思います。原画的にもおーじ氏の絵が微妙に変わってしまったのか、顔が微妙に違うキャラがいるような気がします。
 さすがにBEFORE編は昔の話ということでヒロインは縞パンを履いていません。

 音楽は本編と同じものを使用しています。100%同じかはわかりませんが、音楽モードがないことから新曲はないのではないかと。時代の違うBEFORE編くらいは新曲を用意しても良かったように思います。
 そういえばサントラに「癒されぬ傷を抱き」という曲が収録されていません。どうしてなんでしょうね。

 まとめ。省エネファンソフト? どこをとってみてもユーザーへの還元という要素は見当たらなかったように思います。このタイトルを買って非常に満足したという人はどれくらいいるんでしょうか。
 お気に入り:本編と同じく「てのひらを、」編の4人組
 評点:45

 書きたいことは本編のゲーム感想で書いたのでキャラ別感想はなし。