ToHeart2 XRATED(リーフ)

 河野貴明(変更可能)が学園で迎える2度目の春。1年生を締めくくり、そして迎える別れと出会いの季節。その中には思わぬ再会も含まれていた。桜に包まれて、貴明には予感めいたものがあった。何かが変わり、何かが起こるような。

 2004年末にPS2版で発売された作品の18禁バージョン。前作が18禁であったのになぜその続編がコンシューマーなのか、という声が発売後も多かったようです。ユーザーの声に後押しされる形で発売となりましたが、初めから想定していたと感じさせる節もゲーム内にありました。
 購入動機はやはりPS2版で感じた不満を少しでも払拭されることを願って、というところ。新キャラにも期待するものはありました。このへん18禁→コンシューマーという流れにはない期待要素です。
 初回特典は原画設定資料集。
 
 詳細は不明ですが修正ファイルが出ています。不具合に心当たりのある方はあてておきましょう。

 「ToHeart2 XRATED」というタイトルにはアドベンチャーの本編の他にシューティングの「スーパースイーツスクランブル」、落ちものパズル「ドキドキぱにっくライブラリー」が収録されています。が、本編には全く関係ないので2つに関する記述は省略します。てっきり本編に絡むミニゲームだと思っていたので無関係と知った時はさすがに唖然としました。ちなみにインストールもアンインストールもプログラムとしては別個にはできません。自分で勝手にやれ、ということなのでしょう。

 システムは「2」というくらいですから前作と同じビジュアルノベル。
 足まわりはPS2版からは考えられないほど改善されています。というか、PS2版があり得ないほど駄目だった、ということで全体的なレベルから考えればごく平均的なラインです。
 メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢後に継続しないことと開始のためのアイコンが小さくてクリックしにくいことが重なって使い勝手を悪くしているのが残念。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。戻れる量も必要充分。

 シナリオは全9本。ライター4人制の弊害か各シナリオのボリュームに大きな開きがあります。事前の打ち合わせとかしないんでしょうか、というくらいの差に戸惑いさえ覚えるほど。隠しシナリオ以外で倍以上も違うとかさすがにどうかと。
 弊害はそれだけでなくキャラクター間の横の繋がりにも表れています。ヒロインたちはほとんど他人同士なのでおよそ絡むことが珍しいくらい。9人以上も擁していながら複数人による会話を碌に用意できないのは素材を無駄にしているとしか思えません。PS2版に対するテコ入れのはずの新キャラ久寿川ささらシナリオの強引かつ少量の絡ませ方が本作のキャラクター同士の希薄な関係を如実に示しています。前作の長所といって良かった部分だけにこの退化ぶりは目に余ります。
 主人公の特徴である「女が苦手」という要素。わざわざ用意したこの設定がシナリオによって濃度に差があり、なおかつうまく活用できているとは言い難いです。終盤の恋へと至るための説得力不足の要因にしかなっていません。目的が見えないというのが実際のところ。
 「To Heart」に特徴的な3月から4月というゲーム期間。もちろん本作でも踏襲されていますが、意義ある使われ方をしているとは言い難いです。半分くらいのキャラに3月の意味がなく、春休みも全くもって無意味。学園イベントも希薄です。もう少し反省を活かした作りを期待したいところでしたが。
 ビジュアルノベルという体裁でありながら事実上、シナリオよりもキャラ性を重視している作りにはひどく疑問を感じます。画面一杯に文字が出るビジュアルノベルに対して頻繁に変わる表情演出は不向きではないかと。横の繋がり同様、キャラクターに魅力があるからこそ有効活用できていないことが悲しくなります。
 続編ものならではのお遊びというかサービスは控えめに存在。知らなくとも問題はないというか、楽しみにする程のものでもありません。非常に淡々と書かれているので。
 Hシーンはその追加箇所も含めて付け足しの印象が強いです。シナリオのラストに1回だけという構成なので。加えてその描写が1度で通常なら複数回をこなさなければ書けないであろう関係の変遷をも書いてしまっているのでどうも詰め込み過ぎな感じを受けます。
 Hシーン以外の追加シーンはほとんどなし。メイドロボ姉妹もデザイン画のみで次女と三女は登場しません。

 CGはさすがにリーフというべきでしょうか、実に美しい仕上がりです。PS2版では解像度の問題から物足りない面がありましたが、その鬱憤を晴らすようなクオリティ。ただ、甘露樹氏の手がけた追加CGだけは原画といい塗りといいハッキリと雰囲気が違ってしまっているのは残念。
 立ちCGは表情、ポーズとも多彩でキャラクターの魅力を存分に発揮しています。衣装はボリュームを考えるとやや少ないかも。

 音楽はかなりの数の曲を前作から引き続き使用しています。雰囲気の継承ということなのかもしれませんが、学園そのものに特色らしい特色がなく、ヒロインのカラーにも類似性が見られないので逆に違和感を感じてしまいやすいです。新曲との調和という意味では問題なし。
 ボイスは主人公以外フルボイス。ただし、主人公の名前を変更してしまうとボイスのフォローはなくなります。演技はキャラクターによって差が出ています。特にHシーンになると実力差が出やすいように感じました。同じ声優という職業でもやはり餅は餅屋でしょうか。

 まとめ。続編の意義を問いたくなる作品。実際のところ、本作は「To Heart」シリーズにする必要があったのでしょうか。そうでなければ売れなかったのでしょうか。正直、そうは思えませんでした。普通に学園もの新作で良かったのではないかと。
 PS2版からはほとんど改善要素が見られず厳しいです。一応は1年経っているのだし、もう少し高い完成度を望みたかったところ。
 お気に入り:まーりゃん先輩、柚原春夏
 評点:60

 日記の方で書きたいことは概ね書いたのでキャラ別感想はありません。