White Princess(feng)

 慌ただしく過ぎた一学期だった。迎えた夏休み、芝原圭介(変更不可)と○○の仲は少しだけ進んだ。そして、二学期。学園祭に向かって色々と忙しくなる。そんな中でまた夏休みのようなことはあるだろうか、○○だけでなく□□や△△とも。

 1年3ヶ月ぶりのfengの第2弾。発売延期なし、バグなしの2大公約を掲げていながらそれを2つとも破るという堂々たる姿を披露。低姿勢を示していますが、その態度が果たして次回作以降に結果として反映されるのでしょうか。公約を破るのは政治家ばかりとは限らんのですなぁ。ため息をつきながらも、笑わせてもらったのも確かなので購入しました。

 2003年11月23日現在、Ver.1.02まで修整ファイルが出ていますが、それでもまだまだ多くのバグが残っています。イベントCGの背景が矛盾している(バグ?)、スクリプト指定ミス、誤字などなど。ちなみに当てないことにはゲームにならない可能性もあるらしいので必ずダウンロードしておきましょう。ちなみに前作とは違ってゲームのCDがなくとも修整ファイルを当てることは可能になってます。さすがにあんな意味不明の仕様は改善されたようで。

 システム的にはごく普通のアドベンチャースタイルながら「一途にイっても浮気してもOKなご都合主義学園恋愛アドベンチャー」なんてジャンル名がついてます。上のあらすじが伏せ字になっているのはこのジャンル名のせいなのです。
 足回りはそれなりに優秀。メッセージスキップは既読未読を判別した上で平均程度には早く、選択肢後も継続されるので便利。ただし、既読判定が甘いのか既読文章であるのにスキップが止まる(改めて試せばスキップされる)ことがありました。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。それなりに戻れてボイスのリピート再生も可能ですが微妙な点も。このモードから復帰するのに右クリックが使えずに左でクリックしなければなりません。それだけならどうってことないんですが、この状態ではカーソルがウインドウにあればボイスリピート、そうでなければ復帰という仕様なので若干、使いにくく感じました。

 シナリオはまさに看板に偽りあり、といった風情。売り文句が誇大広告もいいところで、それに相応しい中身をまるで備えていません。
1、ゲーム開始時から恋人がいること。最初からラブラブな空気が味わえます。
2、絡みルートの存在。ヒロインを一人に絞れない方にオススメ。
3、ご都合主義の極み。何でもありのパラレルルート。
 売り文句はざっと書いてこんな感じ。順番にいきますとまずは1。あらすじに書いた通り、物語の始まりは二学期から。始業式のこの日に主人公が一学期を振り返るという形でキャラクターを紹介していきます。その中で夏休みのイベントがあり、ここのたったひとつの選択肢で選んだヒロインが恋人ということになると思うんですよ、恐らく。
 なぜ、恐らくなのかと言えばここで発生するイベントは誰であってもただのキスシーン。しかも、主人公はこれを彼氏彼女の成立とは考えていないのです。相手もどうやら同じ考えのようで。もちろん、周囲から公認なんてこともありません。このままゲームは開始される訳ですからこの時点で1はありえないことに。改めて書くまでもありませんが、主人公もその相手も恋人だと思っていない以上、ラブラブな雰囲気が発生する道理もありません。
 実際、誰を選んだところでテキストに全く変化はないのです。呼び名が変わったり、クラスメイトから冷やかされたりなんてことは。ただ、個別イベントが挿入されるだけ。その中にあっても恋人らしさはまるでなし。どう見てもただの友達同士にしか見えません。
 次に2。これの説明の前に本作の浮気の実態、定義が必要です。1で書いたように主人公に恋人はいないんですが、メーカーはそうは考えていないようなので、最初の選択肢で選んだ相手を恋人として見なします。
 その場合、主人公には本命意識がまるでありません。よって浮気をするのは心理的にも形式的にも不可能。では実際にどう発生するのかと言えば、選択肢ひとつで勝手に、が正解。中にはHシーンに入るとは想像しにくいものも。もちろん、この際にも浮気に対する後ろめたさや自分を納得させるといったような人間らしい感情の動きはありませんし、恋人が嫉妬したり怒ったりなんてことも同様にありません。泥沼の三角関係なんてもっての外。
 本当にこれが浮気なのかという疑問は残りますが、他にそれらしいものはないので、これと考えるしかないでしょう。個人的にはこういう間柄はセフレというじゃないかと思いますけど。ちなみにパッケージには「彼女がいてもいいから私と付き合ってください」などというセリフが書かれていますが、もちろん本編中にそんなものはありません。
 以上を踏まえた上での絡みルートですが、これはルートにしてルートにあらず。入ったら選択肢のひとつも存在しない、ただのエンディングでした。Hシーン的に見てもどれもひとつしかないのでルートとは言えないかと。
 最後に3。もうわざわざ書く必要もないかも知れませんが、これも2と同じ。ルートとは名ばかりのエンディング。しかも、後味はどう見てもバッドエンドという存在意義を疑いかねないもの。
 かように本作はシナリオの整合性を初期段階から切り捨てており、バグだけでないやる気のなさがハッキリと見えます。ジャンル名のご都合主義とは自分たちにとって都合の悪いものからは目を背ける、というメーカーの姿勢表明を指していたようです。
 他にも気になる点は幾つか。
 前作同様、「間」というものが苦手というか改善する気がないようで、日付表示を筆頭に演出された間というものが一切なし。テキストは区切りというものがなくだだ漏れな感じ。
 メッセージウインドウの文字の収め方、改行の仕方が非常にいい加減。今時、ここまで全く気を配っていないゲームというのも珍しいです。ただでさえ、良いとは言いかねるテンポが悪くなっています。
 シナリオ後半の展開が切り揃えたように一緒というのもどうかと思います。どのシナリオでも一様にヒロインが悩みを抱え、主人公が聞いてもだんまりを決め込み、最後の最後までけして答えることがない、とあまりにも一貫しています。どうして悩み方まで同じなんでしょう。
 シナリオ面に関しておよそ良いところがほとんど見つけられない本作。あえて上げれば日常会話ですが、これも恋人らしさを棚上げしたい上でのものですから長所というのも微妙なところ。

 CGは薄めの塗りが気になるところですが、原画家の絵には合っているかと思います。ただ、顔は可愛く描けているんですが、体のラインが全体的に安定していません。あまり描き慣れていないのではないか、そんな印象を受けました。他にも風呂場でのHシーンなのに背景は部屋のベッドの上なんていうシナリオとの不整合がありました。
 立ちCGはイベントCGと同様。ポーズ、表情はほどほどに変化してくれて、その表情も可愛いんですが、体のラインはやはりどこか奇妙で。デモの最後に立ちCGの全身像が揃うシーンがあるんですが、これがなんとも言いようのない違和感があるばかりでした。
 背景は標準より下がるくらい。商店街のカットはパースが狂っているように見えますし、教室のカットは後ろからの視点のものしかないので教育実習ヒロインは常に後ろに立って授業をしているという珍妙な事態になっています。
 本作は複数回Hを搭載していながら信じ難いことに半脱ぎHが妙に少ないです。それはもう不自然なほどに。ヒロインに生粋の巫女さんを配置していながら、それがないなんて信じられません。
 数少ない半脱ぎHシーンを見直し、続いて他のものも見直したことであることに気付きました。推測でしかないんですが、恐らく正しいと思います。それはわざわざデザインした制服の脱がし方がわからない、あるいは内部まで設定していないということ。その他の衣装も詳細がよくわからないから描いていないというように見えます。真実がどうあれスタッフには猛省して欲しいものです。

 音楽はまさに可もなく不可もなく、な印象。プレイが終わった現在、本気でどんな曲であったか思い出せません。
 ボイスは数少ない好感触ポイント。各ヒロインの声はイメージによく合っていたと思います。ただ、ボイスは前触れもなく発声されなくなることもありました(再起動すると改善される)。

 まとめ。デビュー作を下回る怪作。公約とか言い出すにはそもそもの基本レベルが足りていないような。どういうことなんでしょうね、ホントに。
 お気に入り:当然というか、いるはずもなし
 評点:30

 本文で疲れたのでキャラ別感想はなしということで。