雪語り(Tarte)

 学園主催の7泊8日のスキー教室。興味のなかった主人公、新見孝志(変更可能)だが悪友の強引な誘いでいつの間にやら参加することに。
 開催地であるスキー場、姫神山。そこは古くから雪女伝承の残る土地であり、孝志にとって少なからず縁のある場所だった。

 新ブランドTarteのデビュー作。もはや新ブランドの逃れえぬ運命とでもいうべきなのか、今作にもバグが搭載されています。特にインストーラーの不具合は致命傷になりかねないので今後は気をつけて欲しいところです。二種類ほど修整ファイルが用意されているのでダウンロードしておきましょう。

 初回特典にはサウンドトラックと描き下ろし2002年カレンダーが付属しています。カレンダーは2ヶ月に1枚の6枚綴り。うち4枚が原画家左氏によるもの。太いラインが本来の氏らしく魅力的ですが、本編よりも良いと感じてしまうのは気のせいということにしておきましょう(まぁ、このタッチでエロゲーを作るのは英断が必要になりますしね)。ちなみに残る2枚はそれぞれ別のスタッフが描いたのか、本編と比べても同じゲームのキャラとして認識するのは極めて困難です。

 システムはおなじみのアドベンチャースタイル。選択肢は実にわかりやすく、かつ少ないです。詰まることはあり得ないと言い切ってもいいでしょう。これ以上簡単にするには「Sweet Pleasure」などのように解答を選択肢につけるしかありません。
 足回りはかなり優秀と言っていいと思います。メッセージスキップはなかなか高速ですし、既読未読をきちんと判別してくれます。ただし、これはウインドウ枠の方の話でメッセージウインドウにあるアイコンは私の環境ではコンプリートしたあとも無反応でした。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位ですが、かなり前まで戻ることが出来ます。ロードしたポイント以前に戻れるのは非常に便利ですし、ボイスの再生が可能なのも嬉しい仕様です。

 シナリオはシステムの完成度に比べるととても優秀とは言えません。その理由は複数あります。
 まず日常会話。特に序盤に顕著ですが、非常に固いです。仲の良い人間同士の会話というにはどこかぎこちなさがあり、そうとは感じさせてくれません。軽妙な会話とはほど遠いです。
 次に「それから色々な話をした」というような文章が数多く見られること。出会って間もないというのにこれを繰り返されたらキャラの個性など感じられるはずもありません。他愛ない会話にこそキャラの個性は見えてくるものです。
 さらに共通シナリオの長さ。シナリオそのものが長ければそれほど感じないかもしれませんが、お世辞にもシナリオが長いとは言えない今作でほぼ半分がそれに当たるというのは問題です。スキップを使用すると1時間ほどで終わってしまうあたり、キャラごとの密度がわかるかと(このゲームはボイス付きです)。
 シナリオの短さ(スキップ未使用で3~4時間)に加えてヒロインの少なさ。ボリュームに欠けるシナリオで4人というのはいくらなんでも少な過ぎるのではないでしょうか。
 最後に物語があまりにも淡々と進み、強引または安直に展開、帰結すること。上述した日常会話からもわかることですが、意外性のかけらもありません。

 CGはなかなか良い出来だと思います。時々、首の角度がおかしいようなカットが見られますが。
 背景はイベントCGのものは良好ですが、通常シーンのものはやや弱いです。
 立ちCGはカット数こそそれほど多くありませんが、キャラごとの喜怒哀楽はうまく表現されています。なぜかオープニングデモ版とは異なっていますが、良くなっているので問題なしです。

 音楽は雪山が舞台ということもあってか、切ない曲調のものが多いです。
 ボーカルは2曲ですが、ゲーム中にはエンディング曲しか使われていません。理由はわかりませんが、オープニングにあたる曲はデモともども未使用。音楽モードとサウンドトラックでのみ聞くことが出来ます。
 ボイスは名のある方々が担当しているので安心ですが、一人だけ新人なのか演技の安定していない方がいます。この方だけは要レベルアップって感じです。

 まとめ。デビュー作にしてもツライ仕上がりです。これがエロを重視したお手軽ゲーであるならばそれほど気にしませんが、純愛ゲーですからねぇ。どうにも私にはフォローの出来るシロモノではありません。
 お気に入り:あえて言えば来生紫苑かなぁ(自信なさげ)
 評点:45

 以下はキャラ別感想。ネタバレってほどでもないかと。







1、青柳千歳
 この人、ヒロインじゃないんですよねぇ。かなり騙された気分になりましたよ。声優の長崎みなみさんは久しぶりに少し違う演技でいい感じでした。

2、海老原睦月
 最も安直なシナリオ。なにもかもが見たまんま、というある意味素晴らしいストーリーでした。
 事故と判明したきっかけの帽子はどう考えても変ですよねぇ。この女、帽子を二重に被っているってことですか?
 パッケージにある「泣き虫な大トロ系幼なじみ」ってなんか脂がのってて美味しそうなんですけど……。

3、来生紫苑
 そういや、どうして名字で呼ばれることを嫌がったのでしょうか? 雪女だから名字はなくて、つまりは偽名だからってことなんでしょうかね。いやまぁ、別にどーでもいいですけど。
 最後に奇跡が起こったあらましを「気がついたら」で済ませないでください。お願いですから。キャッチャーを立たせるほどの逃げですよ、それは。

4、高荷朔夜
 なんつーかこの人は説明調で教えてもらわなければわからないことが多過ぎです。どうにもキツイのはその事実が特にユーザーの知りたいものではない、ということ。
 巫女の設定もほとんど無意味だしなぁ。つーかこの人は狂言回しですよね。主人公の疑問に答える便利なキャラ。

5、新倉明日香
 シナリオの展開そのものは安直だが、各キャラの行動理由は宇宙人が考えたのかと思うほど無茶苦茶。酔っぱらって徹夜明けにでも書いたんでしょうか。
 どうしてそうなるんだと突っ込むこと十数回。1本のシナリオに疲れるほど突っ込んだのは久しぶりです。ていうかこのシナリオはギャグなのか? と終わったあとで真剣に悩みましたよ。