2000年 8月22日
加筆・修正 2001年10月25日
HARIの妄想設定

ツイマッド社の光と影



 1年戦争当時、ジオン公国のMS最大手MSメーカーだったジオニック(ZIONIC)社の影に隠れ、MS-09ドム/MS-R09リックドム(注1)が量産化されなければその名は広く一般に知られなかったであろう、ジオン公国第二位のMSメーカーであるツイマッド(ZIMMAD)社。
 本稿では、ともすればジオニック社の影に隠れ、話題になる事が少ない「ツイマッド社」について語ろう。

・出遅れたMS開発
 
 ツイマッド社は、MS開発では大きく出遅れた。
 これは、紛れもない事実である。
 ジオン公国国防省からの「有視界戦闘における汎用戦闘兵器」の要望に、ジオニック社は「人型兵器」(のちのMS)を提案したのに対して、高出力エンジンと装甲に強いツイマッド社は、「重装甲高機動戦闘攻撃機」を提案したといわれている。
 また、ジオン国防省からジオニック社の提案を聞いた時のツイマッド社の反応は多くの「大笑いした」メンバーと少数の「青ざめた」メンバーの二つに別れたという。
 後にMS-09ドム/MS-R09リックドムなどのMS開発に携わったツイマッドの技術者ブライト・T・ハリー氏はジオニックの提案を初めて聞いた時、「そんなアニメみたいな兵器の企画はすぐに潰れると思っていた。」と証言する。
 彼はその後に笑って「僕は、先を見る目が無かったんだね」と付け加えたが、ツイマッド社だけではなく、軍関係者でも同様な感想を持つ者がほとんどだったという。
 しかし、ジオニック社の提案は採用され、開発は本格的に開始された。
 多くの関係者が「果たして成功するのか」疑問視していたMS開発であったが、軍の資金面および人材面での協力な後押しによりMS-01の開発は(様々な問題はあったものの)一応の完成をみる。
 最初は「ジオニック社が(MSの開発失敗で)自滅する」のを待っていたツイマッド社であったが、軍関係者からの情報によりMS開発が完成する見込みがたった事を聞き、急遽MS開発を開始する。(注2)
 しかし時すでに遅く、ジオン軍兵器体系の主流と認識されたMSは、対連邦への切り札として量産が開始される。
 ツイマッド社も、軍からの要望(実質的には、命令)によって、MS生産ラインを立ち上げ、MS-05及びMS-06系MSの生産を行う事となる。(注3)
 
 (注1)リックドムの形式番号については、「MS-R09」とする説と「MS-09R」とする説があるが、本稿では「MS-R09」で統一する。
 また、バリエーションによる識別記号(例:MS-06FのFなど)は、基本的には省略する。
 
 (注2)ツイマッド社は、ジオン国防省のシンパより、ジオニック社のMS開発状況を把握しており、またジオニック社の極秘資料さえ入手していた、と言われている。
 これは、MSを兵器として評価をしていたが、ギレン・ザビ総帥と近い関係にあったジオニック社のMS独占を嫌ったキシリア・ザビ少将が裏にいた、といわれている。
 
 (注3)ジオニック社のMS生産能力では、軍からの要望を満たせなかった為、「やむおえず」ツイマッド社に生産の一部を依頼した。(当然、ジオニック社は生産ラインを大幅に増強していたが限界があった。)
 この決定にも、ジオニック社のMS独占を嫌ったキシリア・ザビ少将が裏にいたと言われている。
 ツイマッド社は、これによって「MS量産設備」を(自社MS完成前から)立ちあげるに入れることになる。
 この生産設備によって、大戦中期の主力となったMS-09ドム/MS-R09リックドムの早期量産が可能となる。

 
・MS-09ドムの誕生
 
 ツイマッド社の名を世間一般に知らしめたのは「高機動・重装甲」で名をはせたMS-09ドムであろう。
 ドムはツイマッド社が得意とする分野を、惜しみなく取り入れ、「(MS-06ザクの後継となる)次期主力MS」として開発が進められていた機体である。
 当初は、「宇宙空間用」として開発が進められていたが、連邦の宇宙戦力が「事実上壊滅」し、戦闘が地球圏に移った事から、開発途中であった「宇宙空間用」をベースとして(宇宙空間向けに比べて制限が多い)「地球圏用」を先に実用化し、そこから再度「宇宙空間用」を作る手段がとられた。
 (水陸両用MSについてはツイマッド社も軍から開発を命じられており、並行して「水陸両用MS(後のMSM-03ゴック)」の開発もスタートする。)
 しかしながら、多くの新技術を取り入れたドムの開発は当時の設計陣の一人、ブライト・T・ハリー氏の言葉を借りれば「何が問題で、何が原因だか分からない」ほど難航し、完成すら危ぶまれる状態に陥った。
 そこに、思いもかけない所から手が差しにべられる。
 ジオン公国国防省から「地球圏での飛行可能なMS」の試作を命じていたジオニック社が、ツイマッド社に共同試作を依頼してきたのだ。(注1)
 当時、ジオニック社は「水陸両用MS」やMS-06系のバリエーション、さらには「次期MS」の開発で手一杯の状態であり、余力がまったく無い状態であった。(注2)
 ツイマッド社は「高機動技術」と引き換えに、ジオニック社の「MSに関する大量の資料」を入手したのだ。(注3)
 これにより、ジオニック社のMS-07グフにツイマッド社が開発中であった高機動ユニット(脚部)などを付けたMS-07Hグフ飛行試験型が完成する。
 
 しかし、結果的には、「地球圏での飛行可能なMS」開発計画は失敗だった。(注4)
 だが、MS-07Hグフ飛行試験型の実験結果とノウハウは有効に生かされ、MS-09ドムが完成する。
 (このほかにも、グフの機体を利用してドムの各種部分の試験が行われていた。現存する写真では「ドム系の頭部を持ったMS-07-C-5グフ試験型」が、そのうちの一機である。)
 MS-09ドムは、即座に軍に対して公開され、その場で採用が決定される。
 また、その際に同席したドズル・ザビ中将はそのフォルムを気に入り、宇宙空間用ドムの試作を命じた。
 ツイマッド社にとっては、願ってもいないチャンスであった。
 元々、宇宙空間用に計画され、「地球圏向け」に設計されたドムは、ツイマッド社の計画通り宇宙に戻る事となったのだ。
 宇宙空間用での戦闘用に改修されたドムは、MS-R09リックドムとして即座に採用され、量産化される。
 
 MS-09ドム/MS-R09リックドムの成功は、ツイマッド社に大きな自信を与えたが、同時に開発能力の限界も知る事になる。
 ジオニック社並みの技術を認められたツイマッド社には、ジオニック社と競合させる意味も含めて多数のMS試作が命じられ、さらにはMS-06同様にMS-09もバリエーション展開(注5)が軍から要求されたのだ。
 元々、MS設計能力がジオニック社より劣るツイマッド社は軍に対して「バリエーション展開を優先するか、新機種開発を優先するか」詰めより、「新機種開発を優先」する方針をとった。
 また、生産能力についても、軍の要求はツイマッド社の生産能力を超えており(注6)、生産初期段階では地球圏のキャリホルニア・ベースでのMS生産開始(注7)でなんとか要求された最低限の機体を納品できる状態であった。
 
 (注1)当時、一からMSの設計を行う余力が無かったジオニック社は軍の要求(「MS-06以上の性能を持ち、単独で飛行し前線に突入できるMS」)を満たすMSが開発できるとは思っておらず、この為にツイマッド社へ案件を振ったと言われている。
 「飛行」という言葉に「ホバー走行」が含まれるならば、MS-09ドムは見事に軍の要求に応えたといえるだろう。
 
 (注2)あまりの勤務の過酷さに、過労で倒れる者が続出した。
 その中でもジオニック社及びジオン公国にとって最大の痛手はMS-06ザク、次期主力MS(後のMS-14ゲルググ)の基本設計を担当していたホリコシ主任技師の入院であろう。
 ホリコシ主任技師の入院によって、MS-14ゲルググの完成は数ヶ月遅れることになる。
 
 (注3)皮肉な事に、この時ツイマッド社から提供された「高機動技術」を利用してジオニック社はMS-06R高機動型ザクを完成させる。
 もっとも、ツイマッド社としてもジオニック社から入手した技術が無ければMS-09ドムの完成は難しかったのだから、痛しかゆしというところか。
 
 (注4)MSの飛行運搬が可能なドダイやガウの開発成功により、MS自体に「飛行機能」を組み込む必要が無くなった為である。
 
 (注5)例によって、軍は様々なバリエーションを要求した。
 現存する資料からは、以下のMS-09バリエーションが計画された事になっている。
 
 ドムキャノン:ドムと作戦行動を共に出来る「砲兵」として計画されたが、砲兵関連装備による重量増でホバー機動が不可能になる事が判明し、計画段階でキャンセルされた。
 
 ドムバルカン:当時のMSが地上戦闘で悩まされた「対地攻撃機」に対抗する為に考えられたバルカン砲装備の「対空仕様」ドム。ドムキャノンと同じ理由でキャンセルされた。
 
 ピーピング・ドム:強行偵察仕様のドム。カメラやセンサーを機体各所に増設されており、通常のドムから少数が改造され実線投入された。MS-R09にも同様な任務の為の機体(ピーピング・リックドム)が存在するが、こちらは「偵察ポット」を装備した通常のリックドムを指す。
 
 ドム高機動型:装甲を薄くする代わりに、機動力と航続距離の強化を狙った機体。コードネーム:ドム・キャットの名前で計画されていたが、詳細は不明。MS-R09も同様な機体(リックドム・ライト)が計画されていたが、こちらも詳細は不明。
 
 リックドム・ツバイ:MS統合整備計画によって大戦後期に製造されたリックドムの最終モデル。ジオニック社MSなどと部品の共通化を図るとともに、その時点で対応しきれるだけの改修を行った機体であった。
 
 補足:MS統合整備計画
 大戦後半、戦況が切迫したジオン軍は試作レベルのMSすら投入し始めた。この為、多機種のMSが配備された部隊の兵站が大混乱に陥り、稼動MSの低下を招いた。(当時の資料では、装備していない機体のメンテナンス・パーツを補給された部隊すらあった。)軍は部品共通化を図るため、既存MSの新規製造分からメーカーを超えた部品の共通化を指示した。
 
 (注6)軍は、ツイマッド社が想定した以上の機体を発注したのであった。
 (これには、連邦のMS量産を察知し、「MS消耗戦」を考えての発注であった。)
 ツイマッド社の「ジオニック社MS(MS-06系)生産ライン」は、すでにMS-09系へと切り替えていたが、軍からの発注量は生産量を上回っていた。
 当然、ジオニック社の生産ラインに余裕がある訳も無かった。
 
 (注7)実際には、機密保持の観点から主要部品は「半完成の状態」で地球圏に運ばれ、キャリホルニア・ベースでは汎用的な(機密にならない)部品の生産と最終組み立て工程及び修理・仕様変更を担当していた。
 しかし、完成品をツイマッド社から地球圏に移送するよりも効率は良く、MSの修理はもとより、大破したMSを「部品取り」にして利用する事も可能となった。
 また、ツイマッド社からも技術者が派遣され、バリエーションも独自開発された。
 だが、地球圏での生産体制が軌道に乗ったのもつかの間、ジオン地上軍はジャブロー攻略戦およびオデッサ作戦で大きな痛手を受け、後に地球から撤退する事となる。

 
 
・二つのドワッジ
 
 ドムの完成後、すぐさまツイマッド社はドム後継機の設計に着手した。
 このMSは、ドムをベースとして最初から同一機種で「宇宙向け」「地球圏(地上)向け」の両方に対応出来る事(注1)を目標とした。
 これが、「MS-10 ドワッジ」開発プロジェクトである。
 しかし同じ時期に、軍は秘密プロジェクト「ペズン計画」(軍直轄の「MS研究開発機関」、次章「・ツィマッド社のMSたち」も参照)の設立に伴う技術者の出向をMS開発各社に要請(事実上の命令)する。
 ツイマッド社は、当時進行していた複数の開発プロジェクトの中から2つを選択し、そのメンバーを軍へ出向させた。
 (当然、軍としては「ペズン計画で設計し採用された機種の量産は、開発メンバーの所属会社とする」という「飴」を用意していた。)
 
 そのプロジェクトの一つに、「ドワッジ」開発プロジェクトが選定されたのだった。
 「ドワッジ」開発プロジェクトが、海の物とも山の物ともつかない「ペズン計画」に選定された理由は「軍の時期主力MSの要求仕様をドワッジでは満たせない」とツイマッド社幹部が判断した為だった。
 (注2、及び次章「・ツィマッド社のMSたち」の注3参照)
 だが、ここで問題が発生した。
 「ペズン計画」では、「地球圏(地上)向け」MSは研究対象外とされれていたのだ。
 そこでツイマッド社は、苦肉の策として「ドワッジ」の「地球圏(地上)向け」開発メンバーを、ドムの改修・開発の為、地球に派遣する。
 ここで彼らはドムの改修を精力的に行っていくのだが、ここで設計・改修された「ドム」について、彼らは「ドワッジ」の名称を与えたのだった。(注3)
 それとは別に、「ペズン計画」でも引き続き「ドワッジ」をMS-10として開発を進めていた。
 こちらのドワッジはドムの改良型ではなく、ドムをベースとした「新設計」のMSであり、ドムとは異なった外見を持つMSであった。
 この為、「ドワッジ」の名称を持つ、異なるMSが世に出る結果となった。
 
 今日では、単にドワッジと呼ぶ場合は実際に戦果を上げた「地球圏(地上)向け」ドワッジに敬意を表して「MS-09Gドワッジ」を指し、計画のみ(注4)で終わった「ペズン計画」にて設計・開発されたドワッジを「MS-10 ペズン・ドワッジ」と呼ぶのが慣例となっている。
 
 
 (注1)実際には、「共通部分を多くする。」レベルに留まったであろう事が考えられる。
 
 (注2)もう一つのプロジェクトは、後のガルバルディとなる「軽量低コストMSプロジェクト」である。
 これは、高価となっていく傾向にあった「主力MS」を補う為の、低コストMSとして立案されたプロジェクトである。
 (20世紀後半〜21世紀前半のアメリカ合衆国空軍の「ハイ・ローミックス構想におけるF15とF16の関係」を目指した、と言われている。)
 ツイマッド社としては、次期主力MSの選定で不採用になった場合の保険としてこのプロジェクトを立ち上げた、とされているが、開発メンバーが不足していたと言われる。
 この為、軍の協力が得られる「ペズン計画」へ移管したらしい。
 
 (注3)全力を傾けて開発していた「ドワッジ」開発プロジェクトを「ペズン計画」に取られ、取り残された彼らの、精一杯の抵抗だったのであろう。
 また、ペズン計画を知らない軍関係者は、この命名を受け入れてしまった。
 
 (注4)実際に試作機(ドムからの改修型とも、単なるモックアップとも言われている)が作成された、との説もある。

 
 
・ツィマッド社のMSたち
 
 ツイマッド社は、MS-09ドムと並行してMSM-03ゴックも開発している。
 MSM-03ゴックは、、爆雷攻撃や深々度潜航に耐えるべく重装甲となったが、地上での機動力を重視しない機体(注1)であった事や、水(海水)を冷却剤としてふんだんに使用できた事もあって、設計開始こそMS-09より遅かったが、開発は順調進んだ。
 特筆すべきは、地上での作戦行動時間を犠牲(注2)にして搭載した高出力エンジンの搭載により、ジオン軍MSとしては最初にビーム兵器を搭載した量産MSとなった。
 また、戦争末期には(連邦を欺く為に)形式番号はMSM-03を採番されたが、ゴックの実質的な改良型「ハイゴック」がごく少数ではあるが生産された。
 
 生産ラインも軌道に乗り、MS-R09ドムの開発も一段落つくと、ツィマッド社は次の機体の開発に取り掛かった。
 この頃になると、ジオン国防省は「汎用型」では連邦の「量」に押し切られると考え、様々なMSの試作を各メーカーに要求し始めた。
 
 「次期主力MS」
 MS-06ザクに続く、次の主力MS。(MS-R09リックドムは、「繋ぎ」であると考えられていた。
 「これに採用されればジオニック社を抜きジオン第一位のMSメーカーとなれる。」そう考えたツィマッド社は、MS-09ドム以上の意欲で「次期主力MS」の開発に挑んだ。
 連邦がMSを実線投入した結果、「MS同士による白兵戦」という「まさに、子供向けアニメの様な戦い」がしばしば発生した。
 この為、白兵戦に主眼を置いたMS、MS-15ギャンを開発する事になる。
 (この為、ツイマッド社は前章「・二つのドワッジ」でも触れたように、開発中の「ドワッジ」を自社設計からペズン計画に移管している。)
 だがMS-15ギャンは、全くコンセプトが異なるジオニック社の「MS-14ゲルググ」と「次期主力MS採用」の座をかけて争い、敗れる事になる。(注3)
 だが、その白兵戦性能の高さとデザインは一部の高級幹部に好まれ、数機が実線配備された。
 
 「強襲MS」
 ごく少数のMSよる連邦軍の基地に対しての攻撃(強襲)を行う計画が立案された。
 この計画の為の特殊部隊向けMSとして開発された機体がMS-18ケンプファーとなる。
 終戦間際に実線投入された、といわれているが詳細は不明である。
 
 「ペズン計画」
 各MSメーカーから優秀な技術者を集め、メーカーの枠を超えた「軍直轄のMS開発計画」として開始された計画。
 ツィマッド社の技術者は「MS-10ドワッジ」「MS-17ガルバルディ」などを設計したが、一部の試作機が完成した段階で終戦となる。
 (前章「・二つのドワッジ」も参照)
 
 (注1)海水が冷却材として使用できる水中での行動を主眼に置き、水中(港や海岸などを含む)から、艦艇や軍港や港湾施設、ドックなどの連邦軍海軍兵力への攻撃を主目的とした。
 
 (注2)地上では高出力エンジンが発する熱に対して冷却が追いつかない為、短時間しか行動できずに事実上水際でしか運用できなかった。
 しかし地上での戦闘力も十二分にあった為、敵を深追いしすぎてエンジンがオーバーヒート・強制停止してしまい、撃破されたり、捕獲された機体も少なくない。
 この為、日系のジオン軍兵士からは、「河童(川に住み、頭部のお皿が乾くと死ぬと言われた日本の妖怪)」と呼ばれていた。
 
 (注3)ビーム兵器を運用出来なかった事が最大の敗因といわれているが、ツイマッド社の勢力拡大を快く思わない国防省のジオニック社シンパが、「国防省は白兵戦に強いMSを望んでいる」との誤った情報を流した、とも言われている。
 この話が正しければ、こうまでコンセプトが異なるMSが同じ「要求仕様」から作られた事に対して納得がいく。
 

 
・敗戦でも生き残る。
 
 ジオン公国の敗戦は、「MS最大手」ジオニック社にとって致命的であった。
 連邦は「戦争初期に連邦軍を壊滅させた張本人であるMS-06ザク」と「戦争末期にビーム兵器を運用したMS-14ゲルググ」を生み出したメーカーであるジオニック社をそのままにしておくつもりはなかった。
 一部では、「ジオニックの研究資料は軍がすべて没収、主要技術者は軍の監視下におき、飼い殺しにする。」動きもあったという。
 しかし、ジオン残党のゲリラ活動が懸念され、さらにはメーカー・職種を問わず、優秀な技術者が集団でアクシズに逃亡した事が判明した事もあって、連邦としてもMS技術の向上の声が大きくなった。
 アナハイム・アレクトロニクス社は「大手のMSメーカー」になる為にはジオンの優秀な技術者を丸ごと得る事が必要と考え、積極的に連邦首脳に働きかけた。
 ここで、連邦とアナハイム・エレクトロニクスの思惑が(表向き)一致し、ジオニック社はアナハイム・エレクトロニクス社に吸収合併されてしまう。
 
 それに対して、ツイマッド社は、企業としては幸運だった。
 戦争中期に正式採用され量産されたMS-09ドム/MS-R09リックドムが投入された時点では、連邦は「RGM-79ジム」を実戦配備しており、「連邦首脳に対してのインパクト」が小さかった。
 連邦首脳にドムのスペックは伝わっていたが、「重装甲とはいえビーム兵器を運用できない(注1)」ドム系は「ビーム兵器を標準装備している」ジムの敵ではないと判断されていた為である。(注2)
 (もちろん、前線の兵士達に対して「高機動の重モビルスーツ」ドム系は「スカート付き」と呼ばれ、恐れられていた。) こも為、「ジオン公国残党のゲリラから共和国を守る」名目で設立されたジオン共和国軍(注3)は、連邦からの指導もありMS-R09リックドムを主力MSとして採用される事も決定した。(注4)
 
 しかし、ジオン公国第二位のMSメーカーを、そのまま放置する程、連邦は甘くはなかった。
 ツイマッド社の「MS研究・開発・設計」部門の大部分は連邦の指導によりアナハイム・エレクトロニックに売却される。
 (この部門がジオン公国時代の試作機を基にした「ガルバルディβ(ベータ)」やガンマ・ガンダムこと「RMS-099リック・ディアス」などをを設計している。)
 また、ツイマッド社自体も、アナハイム・エレクトロニクス社の傘下におかれた。
 とはいえ、ジオニック社に比べてツイマッド社は幸運であったといえよう。
 ツイマッド社は生き残る事に成功したのだ。
 
 宇宙暦0087現在も、アナハイム・エレクトロニクス社の一部門としてツイマッド社はMSやMAを製造しつづけている。
 
 (注1)実際には、ツイマッド社でMS-R09用「ビーム・バズーカ」が終戦間際に開発・実用化されていたが、その存在を知っている者はツイマッド社・ジオン公国軍国防省の「極めて限定された」メンバーだけであった。
 これは、MS-14ゲルググ系MSのビーム兵器の生産が優先されていたのと、ジオンの敗戦を察知していたツイマッド社の「今、この兵器を表に出すのは(自社にとって)良くない」との判断があったといわれている。
 また、共和国軍となった後でも「軍首脳」は「共和国政府首脳にも秘密で」ビーム・バズーカを保持していたらしい。
 
 (注2)この判断には、連邦のエース部隊「第十三独立戦隊」の活躍が大きく影響している。
 特に、ライブで放送されたサイド6周辺空域での「コンスコン艦隊」との戦いは、実に3倍以上の戦力差を持つ敵に対して第十三独立戦隊が完勝 (「第十三独立戦隊の損失なし、コンスコン艦隊全滅)しており、(現場を知らない)軍首脳に「ドム恐れるにたりず」の印象を大きく与えた。
 
 (注3)ジオン共和国より、「ジオン公国残党からジオン共和国を守る為」連邦軍の駐留または自衛軍の設立を要請された連邦は、軍事費の負担によるジオン共和国の国力衰退を狙って、自衛軍の設立を許可した。
 
 (注4)当初、ジオン共和国軍はMS-14ゲルグルの配備を希望していたが、「ジム系MSより高性能でビーム兵器を運用できる」ゲルググの配備を連邦が許す訳もなく、「ビーム兵器が運用できない」「ジオニック系MSでない」ドム系MSの配備で決着し、「共和国軍向け」に機体、部品共に戦後も生産が続けられることになる。
 これにより「純正部品」がジオン公国残党に「不正に」供給され、長らく「ドム系MS」が運用できる原因となった。
 



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