トマス・アクィナスによる 5つの「神の存在証明」
- 運動論 first way: the argument from Motion
いかなる物体も自分自身では動き出さない。 全ての物体は動作を与えられるのであるから、 一番最初に「自らは動かず、動きを与えるもの」が必要となる。 これが神である。- 存在原因 second way: causation of existence
いかなる物体も自らを創ることは無い。 全ての物体が先行する他の物体が原因となり創られるのであるから、 一番最初に存在の連鎖を開始した 「自らは創られず、存在を作るもの」が必要となる。 これが神である。- 偶発性と必然性 third way: contingent and neccessary objects
世界にある全ての存在は「偶然存在する」か「必然的に存在する」か いずれかである。 「偶然の存在」は原因となる存在を持ち、 全ての存在が偶然ではない以上、 偶然の存在の原因となる「必然の存在」が無ければならない。 これが神である。- 程度と完全 fourth Way: the agrument from degrees and perfection
物体の質は、一方より他方がより高い。 例えば、二つの大理石の彫像の一方は、他方よりも美しい。 従って、神性や美や知恵などの質において、 それら全てに尺度を与える最高の完全性を持つ基準が存在しなければならない。 これらは神に含まれる。- 知的設計者 fifth way: the agrument from intelligent design
常識的に見て、宇宙は知的設計者の設計意図通りに運行されている。 物理現象などの自然界の運行や、生命の有りようは、 一定の法則に従っており、 この法則を設計した知的な設計者がいなければならない。 これが神である。
循環論法による虚偽の論証
- 神が存在することは聖書に書かれている。
- 聖書は神の言葉であり、絶対である。
- 故に神は存在する。
宗教 神(信仰対象) 補足 キリスト教 父なる神、イエス・キリスト、聖霊 内在的三位一体論では、「神は唯一絶対だが、 父・子・聖霊という三つのペルソナを持つ」とされる。 ユダヤ教 エホバ神
(ヤハウェ YHWH)旧約聖書の唯一絶対神。(但し他の民族が他の神を崇拝することには関知しない。) 地球上のあらゆる存在を有らしめる者、『有りて有る者』。 モーゼに十戒を与えた。 イスラム教 アッラー 唯一絶対神。(イスラム教は、他の神は一切認めない純粋な一神教。) 仏教 仏性 永遠不変の一つのもの。自分の中に存在する「自者」であり、 この神性が宇宙の万物の本質である。 ヒンズー教
バラモン教ブラフマー 宇宙の根本原理であるブラフマンを 人格神として神格化したもの。 ヒンドゥー教の多くの神々は、 自然の驚異的な力を神格化したものであるが、 それらは最高神ブラフマーから発生したものとされる。 夫婦和合して生産に励むことを尊いとする思想に根ざし、 ヒンドゥーの神々はみな配偶者を持っている。 (ちなみに、ブラフマーの配偶者は、 知恵と学問の女神サラスヴァティー(弁才天)である。) ゾロアスター教 アフラ・マヅダ
(光と善の神)
アングラ・マインユ
(暗黒と悪の神)現在の世界を、天国と地獄の間にあって善神と悪神との 壮大な戦いが展開される場とする。 善の優位と勝利は確定しており、善神アフラ・マヅダは世界の終末の日に最後の審判を下し、 善なるものと悪しきものを再び分離する。 神道 八百万の神々 神聖な場所・物・現象にそれぞれ神が宿り、 神の怒りや喜びが、人間生活への災厄や幸福をもたらす。 人格神もあるが、他の宗教のように人間に命令をしたり 導いたりすることはない。
オリュンポス12神 The 12 Gods of Olympus
名前 属性 補足 ゼウス
Zeus
(Jupiter)天空の支配者・神々の王・雷の神 ゼウスは神々と人間の支配者たる最高神である。 人間が選択不可能な運命はゼウスの怒り、神々の気紛れである。 ゼウスは大変な浮気者で、正妻ヘラの嫉妬から逃れるため 様々なものに姿を変えて求愛した。 ヘラ
Hera家庭生活の女神 ゼウスの姉にして正妻。神々の女王。 結婚、母性、貞節を司る。 ヘラとゼウスの婚礼は「聖なる婚姻」としてギリシア各地で行われた。 浮気物のゼウスへの嫉妬は大変なもので、 腹を立てて一人で生んだヘパイストスは不具であった。 デメテル
Demeter大地の母・穀物の女神 穀物・農業の守護神。 基本的には優しい性格。 しかし、デメテルの森から勝手に木を切り出し制止を無視した エリュシクトンには、罰として永遠の飢餓感を与えている。 エリュシクトンは最期には自分の身を貪り食い死んでしまう。
クロノスと レアの娘であり、ゼウスの姉妹。ポセイドン
Poseidon
(Neptune)海と泉の神 威力の象徴として三叉の戟を持ち、大地を揺るがし津波を起こす。 様々な生き物を創る才能があった。 気分屋で、闘争好きだが、愛情豊かな面もある。 船乗りや漁師たちに恩恵を与える一方で、気が変わると、 嵐を起こし、船を難破させたりした。 アテナ
Athena
(Minerva)知恵と戦争の女神 ゼウスは巨人族の女神メティスを妊娠させたが、 メティスの子が父親を殺すという予言を知り、メティスを呑み込む。 その後ゼウスは頭痛に見舞われ、ヘパイトスが頭を割ると アテナが生まれた。 ゼウスの頭から生まれたアテナは知恵の象徴とされる。 技術の守護神でもあり、発明品には戦争の道具もあった。 軍神アレスと違い防御的な平和の回復のための戦争を行い、 知略・戦略は軍神アレスを凌駕する。 アテナイの守護神でもあり、永遠の処女であった。 知恵ある鳥とされている梟(ふくろう)はアテナの使徒である。 アポロン
Apollon太陽・芸術の神 医術、音楽、詩、数学、農業、牧畜の守護神。 輝くばかりの美しさを持つ、 ギリシア青年の男性美の理想を体現する神。 永遠の若さ、強さ、暖かい心、冷静な頭の持ち主。 つねに中道を説き、過度をいましめた。 アルテミス
Artemis
(Diana)月・狩の神 アポロンの双子の妹で、母レト Leto から生まれて直ぐに、 アポロンを産むのを助けたことから出産の守り神ともされる。 銀の鎖で潮流を操ることが出来る。 狩猟の神でもあり、森の精たちを率い、銀のサンダルをはいて森を駆け、 銀の弓を引き、銀の光の矢を放つ。 自分たちが食べられる以上のものを殺す者に対しては、罰を与えた。 アルテミスの矢は痛みなしに突然の死をもたらす。 幼いときに父ゼウスの膝に乗って、アテナに倣い処女の誓いを立てた。 アフロディーテ
Aphrodite
(Vinus)愛欲と美の女神 恋が職業であり、仕事は欲望をかきたてることだけ。 ゼウスとヘラにより、背が低く醜い鍛冶の神ヘパイトスと結婚させられたが、 多くの浮気もした。
時の神クロノスが、父親であるウラノスを殺し海に投げ捨てた時、 その身体から出た血が白い泡となり、 そこからアフロディーテが生まれたとされる。 アフロディーテとは「泡から生まれた」という意味。ヘルメス
Hermes
(Mercury)商売と通信の神 明け方に生まれ落ちると昼にはアポロンの牛を盗み、 二日目に竪琴を発明して怒ったアポロンをなだめた。 ヘルメスはずば抜けて聡明であったので、 ゼウスに気に入られ、使者に任命される。 また、死者の魂を黄泉の国へと導く案内役にも任命された。 ヘルメスは人間に眠りを与えるものでもある。 伝令の神、嘘吐きと泥棒の守護神でもある。 ヘパイストス
Hephaistos火と鍛冶の神 ヘラが一人で生んだ子供とされるが、身体がねじれて醜かったため、 生まれて直ぐにヘラにオリュンポスの山から突き落とされ、両足を折ってしまう。 海の女神テティスに拾われ育てられるが、 その後、ヘラはヘパイストスを連れ戻し、鍛冶屋の仕事場を与える。 彼はゼウスに雷電を作り、英雄たちに武器を製造し、 人間には大いに尊敬された。 アレス
Ares
(Mars)戦闘の神 戦争と破壊の神。 龍や巨大な猪など、破壊的な魔獣を支配下においている。 残酷な性格で、オリュンポスの神々から嫌われており、 思慮に欠け、知性で戦いを導く女神アテナにはいつも敗れていた。 彼の戦車を引く馬の名前は「火」「炎」「災難」「恐怖」。 ディオニュソス
Dionysos
(Baccus)葡萄と酒の神 ぶどうの神、祝祭の主、エクスタシーを与える本尊。 バッカイと呼ばれる信女たちをつれて信仰とブドウを広めた。 ディオニュソスは人間を愛し、彼の催す祭りは格別に楽しかった。
その他の登場人物
名前 属性 補足 プロメテウス
Prometheus火の神 プロメテウスは、ゼウスに命じられ様々な生物を作る中で、 自らの姿に似せて泥と水で人型を創った。 兄弟であるエピメテウスが人間に与えるべき能力について迷っていると、 プロメテウスは禁を破り人間に「火」を贈った。 ゼウスはこれに怒り、プロメテウスは岩肌に鎖でつながれ、 禿鷹に毎日肝臓をついばまれ続ける刑に処された。 プロメテウスはティタン神族で不死のため、 この拷問は永遠に続くかと思われたが、 後に英雄ヘラクレスに助けられることになる。 パンドラ
Pandora最初の人間の女性 神々から知恵や美貌の全てを贈られ創られた、最初の人間の女性。 プロメテウスが人間に火を与え、人間が神々に近づくのを見たゼウスが、 ヘルメスを使わせ、 パンドラに「決して開けてはならない箱」と「好奇心」を贈った。 パンドラが好奇心に勝てず箱を開けると、病気・貧困・怨念などの あらゆる災厄が飛び出した。驚いて直ぐに蓋を閉じたので、 辛うじて“生涯の不幸を全て知ってしまう「前兆」” という名の災厄だけは閉じ込めたままにできた。 人間には、辛うじて希望だけは残されたことになる。 エロス
Eros
(Cupid)愛の神 アフロディーテの息子。 弓矢を持ち、二種類の矢の一つは最初に出会った者に恋をさせる黄金の矢、 もう一つは嫌悪させる力がある鉛の矢である。
ある王国の三姉妹の末娘プシュケ Psyche の美貌に嫉妬したアフロディーテに命じられて、 プシュケが醜い男に恋するよう計るが、 うっかり黄金の矢で自分の指を傷付け、 プシュケに激しく恋をし、結婚してしまう。クロノス
Chronos時間神 歳をとらない時間の神。 ウラノスの子にしてゼウスの父親であるクロノス(ΚΡΟΝΟΣ)と、 時間の神であるクロノス(ΧΡΟΝΟΣ)は別の神であり、 時間神クロノスの方は中世に発案されたが、 発音の類似性から混同されたものであるらしい。
発音以外にも、クロノスが自分の子を呑み込んでしまうこと (→時間は生み出したものを滅ぼすこと)、 父ウラノス(空間)と子クロノス(時間)が対立すること (→時間により変化が生じ政権が交代すること)、 といったアナロジーから、両者は同一視されるようになったとの説もある。
「神が存在すること」または「神が存在しないこと」を 理性的に証明することはできないとする言葉。 神が存在しないと主張しているのではない。 むしろ、カントは「自然の合目的性」「道徳的に正しい行動」「秩序正しい認識」 の根拠としての神の存在を(理性的には証明は出来ないが)積極的に認めている。 (道徳論的証明)
有限存在である人間自身が 「人間自身を超えるもの(人間でないもの)」の真偽を証明できない事情は 不完全性定理と同じ構造である。
天才数学者集団ブルバキの創始者の一人にして、 数論、代数幾何学の分野で多大な功績を残した 20世紀を代表する数学界の巨人ヴェイユが、 不完全性定理が 証明された以降の数学の状況に対して述べた言葉。
代数的整数論や行列式理論で大きな業績を残したクロネッカーの、 数論にしか数学的価値を認めない立場からの言葉。 微積分を扱う解析学を軽視し、無限を扱う集合論を徹底的に批判した。 整数から有限の演算で得られる数以外は存在しないと考え、 円周率の超越性の証明には「美しいが、超越数など実在しないのだから無意味」 と述べている。 (超越数 transfinite number とは、 整数係数のいかなる代数方程式の解にもならない数値のこと。)
『ツァラトゥストラかく語りき』の中で宣言された言葉。 人間を神の隷属から解放し、人間が本来持つ意思力を発揮すべきであることを主張した。 絶対的真理を否定し、真理は一つの解釈に過ぎず、 人生の究極的な目標は外部から与えられるものでは無いとする。 ちなみに、ツァラトゥストラとは ゾロアスターの ドイツ語読み。開祖の名前は、通常古代ペルシャ語読みでザラスシュトラと言われている。
バクーニンは革命的無政府主義の創始者であり、 個々の人間が、自由性と善良な心を発揮するには 神と国家を否定する必要があると考えた。 暴力手段による国家権力と政治機構の破壊の必要性を説き、 自らも幾度と無く革命を企てている。
主著「天体力学論」をナポレオンに献上する際に、 「神はどこに出てくるのか」との問いに対する答え。 神のような存在を仮定せずとも、天体の力学を描写できるのだ、 という意志を篭めた言葉。
物理的な実在性を固く信じるアインシュタインが、 量子力学の 不確定性原理に対する 嫌悪感として述べた言葉。
神の視点からすれば全てが決定論的に定まっているとする 古典物理学的な考え方に対して、 神は自分でも結果を予想できないサイコロを、 人が見ていようが見ていまいが、あちこちで常に振っている、という意味で、 「未来が、古典的な考え方では確定しない、量子力学的な世界観」を言い表した言葉。
キリスト教思想を哲学的体系上に再構築したトマス・アクィナスは、 その思想の集大成である『神学大全』第1部で、 万物の根源である神の存在を、 5つの方法で証明している。 いずれの証明も、常識的な見地から第一原因が存在することは明らかであり、 (具体的にそれが何者であるかには沈黙しているが) 神が存在すること自体は我々には分かっている、という論述になっている。
ハイデッガーは、神の存在を仮定せず、 人間の問題は人間自身に即して考えるべきだという態度を貫いた。 第一原因としての神を放棄する以上、 人間存在は不可解で不条理なものにならざるを得ない。 しかし、人間本来の生き方をするために、 神や信仰や永遠や不死の魂を否定し、 限られた時間のみを生きる存在としての自己を直視する真剣さ、 それこそが尊い、と主張している。
1961年、有人宇宙船ヴォストーク1号で大気圏外の地球周回軌道にある時に 語った言葉とされているが、正式な交信記録は無いらしく、 ガガーリン自身による以下のジョークが由来であるらしい。
ロシア正教総主教曰く「宇宙で神の姿を見たかね」 ガガーリン「いいえ、見ませんでした」 総主教「そうではないかと心配していた。この事は決して口外しないように。」 またある時、ソ連大統領が尋ねてきて、 大統領曰く「宇宙に神はいたかね」 ガガーリン「(総主教との約束を思い出し)はい、いました。」 大統領「神を信じるアメリカが勢いづくといけない。 この事は決して口外しないように。」