■集合的無意識 collective unconscious
人間が集団として共通に持っている無意識。 潜在意識よりも深い位置にあり、 個人的に獲得・意識されず、遺伝により存在する。 ユングによると、集合的無意識の構成要素には、 下記のような「元型 archetype」がある。
- 仮面 persona
外界に対して装われた外面的な自分の姿。 傷つきやすい心を外界から守る機能。 職業、生活における役割など。- 影 shadow
様々な可能性を持つ人間が、 成長の過程で切り捨てた人格。 成熟し形成された自我と相容れずに 無意識の比較的表層部分に押しやられた「自我の影」。- アニマ anima
男性の無意識に潜む理想の女性像。エロスの機能。 人間が持つ性の可能性のうち、生物学的に男性となった者が、 実現しなかった「女性」を無意識の奥深くに封印したもの。- アニムス anims
女性の無意識に潜む理想の男性像。ロゴスの機能。 人間が持つ性の可能性のうち、生物学的に女性となった者が、 実現しなかった「男性」を無意識の奥深くに封印したもの。- 老賢者 old wise man
自我を導く「智恵」の象徴。 理性的・権威的・威圧的な機能。 父親、僧侶、教師、老人、仙人、山、大木 などのイメージとして現われる。- 大母 great mother
絶対的な優しさと安全感を持つ「母なるもの」。 あらゆるものを包含する機能であり、 「慈しみ育てる」「呑み込み殺す」という両面性を持つ。 母親、聖母、海、大地、洞窟、地下室 などのイメージとして現われる。- 始源児 miracle child
未来への大いなる可能性を秘めた子供。- 永遠の少年 puer aeternus
肉体的に成熟していても心は未熟であり、 様々な可能性を秘めつつも何者にもなれない存在。- 道化 trickstar
新たな価値観を創造する体裁の破壊者。 認められ英雄となるか、さもなくば社会的に抹殺される。 破壊の後に想定外の結合が生じて創造を促す機能。- 自己 self
元型の総体。マンダラ。 意識と無意識を含めた全体性を表し、全ての元型が畳み込まれたもの。
制御装置 説明 深層心理学 (フロイド)との対応 連合野 言語のような、高次の精神的な機能を生み出す。 人間は連合野が大きく大脳皮質の実に四分の三を占める。 超自我(スーパーエゴ)。文化的・宗教的な、道徳や倫理といった 規範によってエゴやイドを制御・抑制している。 感覚運動機能 大脳皮質にあり、外界から得た情報を 脊髄・脳幹よりも精密に分析し、 結果として非常に複雑なパターンを形作る。 自我(エゴ)。外の世界と調和して社会性を形成する。 イドを制御・抑制している。 生得的行動 食欲や性欲といった本能行動を司る。 様々な複合運動が組み込まれている。 脳幹の置くにある「報酬系」は、行動結果が「快」に繋がると その行動を強化するように働く。 イド。本能的で、非常に衝動的な快楽追求型の心理層。 複合運動 単なる反射行動を組合せ、より高度な行動を実現する。 歩く、走る、泳ぐ、咀嚼する、視線を調整する、など。 反射 外界の刺激に対して機械的に反応する。 光に対して瞳孔が小さくなるとか、膝の下を叩くと足が上がるといった 反射が良く知られており、人間の身体には約100種類の反射がある。
調整装置 説明 睡眠・覚醒 脳のエネルギーを補給する。 高等生物にあっては脳内の情報整理の役割も大きい。 小脳 脳幹・脊椎の制御装置と連携して適応性を与える。 また、大脳皮質と連携して運動を学習し、熟練することを助ける。 小脳は人間の挙動に関する内部モデルを保持する。 大脳基底核 同時多発的に脳の挙動が進行しないように 脳幹・大脳の挙動を制限する。 大脳辺縁系 報酬系の上位構造として働き、価値判断の切り替えを行う。 大脳辺縁系に含まれる扁桃体に 障害が起こると、外敵による危機や 不潔なものに対する判断も出来なくなることがある。 脳幹の大脳への付け根を取り囲む部位で、 進化的には非常に古く、基本的な要素である。
脳波 周波数 説明 δ波 0.5〜3.5Hz 夢を見ないくらい、ぐっすり眠っている、 完全な無意識状態で非常に強く現われる。 δ波とθ波は合わせて「徐波」という。 θ波 4〜7Hz ゆっくりした波であり、 人間の創造性、夢、幻想などと強く結びついていると言われる。 瞑想状態や半醒半睡の状態で優勢となる。 一方、健常な13歳ではθ波が優勢で、 子供の創造性が豊かである可能性もある。 性科学ではオーガズムとの関係も指摘されている。 α波 8〜13Hz リラックスしている時の、成人の脳の通常のリズム。 穏やかな空想に耽っている時や、一つのことに集中している時に強く観測される。 後頭部優位に出現する。 無意識的な活動と関連している可能性もある。 よく集中している時には9〜11Hz(α2波)が優位となる。 β波 14〜25Hz 人間が、やや緊張気味に、意識的な活動や 情報処理を行っている時に強く観測される。 注意深く物を見たり聞いたりしている時に優勢となる。 γ波 25Hz〜 怒っている時、強い不安や興奮を感じた時に優勢となる。 β波とγ波を合わせて「速波」という。
昔々、荘周は胡蝶になった夢を見た。 ひらひらと飛び、楽しくのびのびとした気持ちになり、 自分が荘周であることを忘れてしまった。 突然目覚めると、なんと自分は荘周であった。 荘周の夢で蝶になったのか、蝶の夢で荘周になったのか、分からなくなってしまった。 しかし、荘周と胡蝶とには、必ず区別があるはずで、これを、「物化」という。「荘周であること」も「胡蝶であること」も、究極的には一つのことであるが、 これが化けて形ある物となっているから区別がつく。 万物斉同の境地においては、現実と夢、生と死は、 一つの概念に包括されるものだが、無秩序に交じり合うものではなく、 何らかの形を持っている。 しかし、それ以上にことさら現実と夢を分け隔てる必要も特に無い。