意外と単位に関係あるメモ

splecial thanks to 相原陽一郎 (あいたた) さま

■数の単位について(1) kilo-,mega-,giga-,…
■数の単位について(2) 億,兆,京…
■漢字単位・漢数字升、合 / 壱、弐、参…
コラム：漢数字とアラビア数字の使い分け
■長さの単位プランク長からハッブル半径まで
■大きな数いろいろ人間の細胞の数、宇宙の寿命、グラハム数…

■数の単位について(1)
◆大きい方

単位	読み方	英語標記	指数	語源
K	キロ	kilo	10**3	ギリシャ語の1000(chilioi/khikioi)
M	メガ	mega	10**6	ギリシャ語の「大きい」(megas)
G	ギガ	giga	10**9	ラテン語の「巨人」(gigas)
T	テラ	tera	10**12	ギリシャ語の「巨獣」(teras)
P	ペタ	peta	10**15	「５番目」の"penta"からNを取った
E	エキサ	exa	10**18	「６番目」の"hexa"からHを取った
Z	ゼッタ	zetta	10**21	ラテンアルファベットの最後尾
Y	ヨッタ	yotta	10**24	ラテンアルファベットの最後尾から２番目

以下、10**27(harpi)、10**30(grouchi)…… と続く。

◆小さい方

単位	読み方	英語標記	指数	語源
k	キロ	kilo	10**3	ギリシャ語の1000(chilioi/khikioi)
h	ヘクト	hecto	10**2	ギリシャ語の100(hekaton)
da	デカ	deca	10**1	ギリシャ語の10(deka)
d	デシ	deci	10**(-1)	ラテン語の10(decem)
c	センチ	centi	10**(-2)	ラテン語の100(centum)
m	ミリ	milli	10**(-3)	ラテン語の1000(mille)
mu(μ)	マイクロ	micro	10**(-6)	ギリシャ語の「小さい」(mikros)
n	ナノ	nano	10**(-9)	ギリシャ語の「小人」(nanos)
p	ピコ	pico	10**(-12)	スペイン語の「少し」(pico)
f	フェムト	femto	10**(-15)	デンマーク語の１５(femten)
a	アト	atto	10**(-18)	デンマーク語の１８(atten)
z	ゼプト	zepto	10**(-21)	ギリシャ語の７(sept)＋Z
y	ヨクト	yocto	10**(-24)	ギリシャ語の８(okto)+Y

以下、10**(-27)(harpo)、10**(-30)(groucho)、 zeppo、gummo、chico、…… と続く。

◆メートル法(metric system)
度量衡法で単位をそれぞれmeter,liter,gramとする。10進法により

ギリシア語系のdeca-, hecto, kilo- はそれぞれ10倍、100倍、1000倍
ラテン語系のdeci-, centi-, milli- は1/10倍、1/100倍、1/1000倍

を表す。

◆米語の単位

million 1,000の(1+1)乗＝10⁶
billion 1,000の(2+1)乗＝10⁹
trillion 1,000の(3+1)乗＝10¹²
quadrillion 1,000の(4+1)乗＝10¹⁵
quintillion 1,000の(5+1)乗＝10¹⁸
sextillion 1,000の(6+1)乗＝10²¹
septillion 1,000の(7+1)乗＝10²⁴
octillion 1,000の(8+1)乗＝10²⁷
nonillion 1,000の(9+1)乗＝10³⁰
decillion 1,000の(10+1)乗＝10³³
vigintillion 1,000の(20+1)乗＝10⁶³
trigintillion 10⁹³
quardragintillion 10¹²³
quinquagintillion 10¹⁵³
sexagintillion 10¹⁸³
septuagintillion 10²¹³
octogintillion 10²⁴³
nonagintillion 10²⁷³
centillion 10³⁰³
ducentillion 10⁶⁰³
trecentillion 10⁹⁰³
millillion 10³⁰⁰³
nanillion 10^3000000003
googolplex 10^10¹⁰⁰
googolplexplex (googolduplex) 10^{10^10¹⁰⁰}
googolplexplexplex 10^{10^{10^10¹⁰⁰}}

■数の単位について(2)
◆大きい方

単位	読み方	指数
十	じゅう	10**1
百	ひゃく	10**2
千	せん	10**3
万	まん	10**4
億	おく	10**8
兆	ちょう	10**12
京	けい	10**16
垓	がい	10**20
[禾弟]※	し	10**24
穣	じょう	10**28
溝	こう	10**32
澗	かん	10**36
正	せい	10**40
載	さい	10**44
極	ごく	10**48
恒河沙	ごうがしゃ	10**52(56)
阿僧祇	あそうぎ	10**56(64)
那由他	なゆた	10**60(72)
不可思議	ふかしぎ	10**64(80)
無量大数	むりょうたいすう	10**68(88)

「恒河沙」以降の指数は、「塵劫記」寛永11年版、カッコ内は寛永8年版の値。
「無量」と「大数」は別の単位に分けるという説もある。 (宝暦本)
「し」の漢字表記は時代ごとに色々変わっており、何が正しい、という定説は無い。のぎへん「禾」に「弟」の左下の払いのない文字、とか、のぎへん「禾」に「予」などの文字が割り当たっているケースが多い。漢字コードとして存在している「杼」を紹介している文献もあり、この場合、読み方も「じょ」としていることが多い。
恒河沙とは、ガンジス川の砂の数という意味。

◆小さい方

単位	読み方	指数
分	ぶ	10**(-1)
厘	りん	10**(-2)
毛	もう	10**(-3)
糸	し	10**(-4)
忽	こつ	10**(-5)
微	び	10**(-6)
繊	せん	10**(-7)
沙	しゃ	10**(-8)
塵	じん	10**(-9)
埃	あい	10**(-10)
渺	びょう	10**(-11)
漠	ばく	10**(-12)
模糊	もこ	10**(-13)
逡巡	しゅんじゅん	10**(-14)
須臾	しゅゆ	10**(-15)
瞬息	しゅんそく	10**(-16)
弾指	だんし	10**(-17)
刹那	せつな	10**(-18)
六徳	りっとく	10**(-19)
空虚	くうきょ	10**(-20)
清浄	せいじょう	10**(-21)

空虚、清浄は、虚(10^-20)、空(10^-21)、清(10^-22)、浄(10^-23)と分ける説もあり。
更に阿頼耶(あらや)(10^-24)、阿摩羅(あまら)(10^-25)、涅槃寂靜(ねはんじゃくじょう)(10^-26) と続く、とする説もある。
0.1を「分」から開始する文献と、野球の打率のように0.1を「割・分・厘」から開始する文献がある。ここでは、「分」の方から始めている。 (「割」というのは、江戸時代以降に日本ローカル・ルールで割り込んできた単位。本来は「分」が0.1の単位です。「五分五分」とゆーのは、「0.5、0.5(50%,50%)」の意味ですね。)

■漢字単位・漢数字
※参考文献:竹内均「現代語版塵劫記」(同文書院) 【体積】

単位	読み方	指数
石	コク	10**(-0)
斗	ト	10**(-1)
升	ショウ	10**(-2)
合	ゴウ	10**(-3)
勺	シャク	10**(-4)
抄	サイ	10**(-5)
撮	サツ	10**(-6)
圭	ケイ	10**(-7)
粟	ゾク	10**(-8)

「升」が1.8リットルである。（豊臣秀吉が定めた１升枡の容積４寸９分正方×深さ２寸７分が由来。正確には1.804リットル）
「粟（ゾク）」は1.804[mm³]（約２ミリ立方）、まさに穀物一粒の大きさと言える。

■数字の書き換え・誤読を防ぐ書き方。

数字	新字体	旧字体	異体字
１	壱	壹
２	弐	貳	貮
３	参	參
４	肆
５	伍
６	陸
７	漆(質)		(貭)
８	捌
９	玖
１０	拾

■コラム：漢数字とアラビア数字の使い分け

公式ドキュメントを書いている時、漢数字とアラビア数字を、どう使い分けるのが正解なのかと悩むことがある。たとえば、「１個」「二重化」「３層構造」「四分割」「５秒以上」「六価クロム」「１０大ニュース」「二十余年」………。これらについても、漢数字とアラビア数字の表記を逆にした時、違和感のあるものと無いものがある。使い分けを表す一般的なガイドラインも見当たらないため、以下に整理を試みる。大まかには、先ず『横書きの場合、違和感が無い限りアラビア数字で表現する。』という方針を念頭に置き、その「違和感」の類型化を試みている。

慣習、歴史的背景、法的制約、事務的都合がある場合は、それを優先する。
原則、縦書きでは漢数字で表記する。横書きではアラビア数字で表記する。
(例) 横書きでは「一一月」は「１１月」と書き改める。
原則、桁数の多い数字はアラビア数字で表記する。
(例) 「千三百六十三平方キロ」→「1,363 km²」
桁数の多い数字で、厳密性より大きさの表現を優先する時、位取りに漢数字を使う。
(例) 「100,000,000」→「１億」または「一億」
一連の外来語表記に由来する数値は、そのままアラビア数字とする。
(例) 「Ｇ７」「ラッキー７」
一連の漢字の熟語に含まれる漢数字は、そのまま漢数字とする。
(例) 「統一」「一石二鳥」「三々五々」「五臓六腑」
(例) 「一部」（全体に対する部分という意味を表現する場合）
一連の漢字の固有名詞に含まれる漢数字は、そのまま漢数字とする。
(例) 「三重県」「山田五郎」「六価クロム」「七五三」「九十九里浜」「三六協定」
(例) 「第二次世界大戦」（歴史的事実としての固有名詞として表現する場合）
(例) 「週休二日制」（定着した一般的制度として表現する場合）
一連の漢字の表現で数量・順序の増減の可能性を示唆する時、アラビア数字で表記する。
(例) 「一部」→「１部」（「２部」以上も考えられる文脈で）
(例) 「二重化」→「２重化」（「３重化」以降も考えられる文脈で）
(例) 「二分割」→「２分割」（「３分割」以降も考えられる文脈で）
(例) 「二層構造」→「２層構造」（「３層構造」以降も考えられる文脈で）
(例) 「週休二日制」→「週休２日制」（「１日」「３日以上」も考えられる文脈で）
(例) 「第二次世界大戦」→「第２次世界大戦」（「１次」「３次以降」も考えられる文脈で）
一連の漢字の表現で数量より全体としての意味を表現したい場合は、そのまま漢数字とする。
(例) 「二十余年」「百点満点」
敢えて厳格性や正式性を表現するために漢数字を用いる。
(例) 「二〇〇六年十月八日より執行」「金壱億円を寄付」

■長さの単位

プランク長 (Planck length)
空間が量子力学的な振る舞いをし始めるスケール。 l_p=(Ｇｈ÷ｃ³）^1/2 =1.616012 x 10^-35 m
これが私達にとって意味のあるもっとも小さな長さである。
ボーア半径
水素原子の基底状態（最低エネルギー状態）の電子軌道半径。
a₀=ε₀ｈ²÷πｍｅ² =0.529177249 x 10^-10 m
天文単位(astronomical unit)
地球と太陽の距離。
1.4959787066 x 10¹¹ m
パーセク(parsec)
「地球と太陽を底辺として頂角が１秒(=1/3600度)となる位置にある物体」と太陽の距離。
3.08568025 x 10¹⁶ m
ハッブル半径(Hubble Radius)
宇宙が開闢から光速度で膨張し続けてきたと仮定(近似)し、宇宙の大きさを「ハッブル半径」＝「光速度×宇宙の年齢」と表したもの。宇宙の年齢は２００３年２月のＮＡＳＡの発表によると約１３７億年であるので
ハッブル半径=1.37 x 10¹⁰ y x 9.46 x 10¹⁵ m/y = 1.296 x 10²⁶ m
となる。これが私達にとって意味のあるもっとも大きな長さとなる。現在ハッブル半径以上離れている二点の観測者はお互いを気付き合えず、いかなる影響も与え合わない。従って両者が現に存在していたとしても互いには無意味である。

【メートル】

単位名	単位名(日本語)	記号	メートル換算
yoctometer		ym	1 x 10^-24 m
zeptometer		zm	1 x 10^-21 m
attometer		am	1 x 10^-18 m
femtometer		fm	1 x 10^-15 m
fermi		F,f	1 x 10^-15 m
picometer	ピコメートル	pm	1 x 10^-12 m
nanometer	ナノメートル	nm	1 x 10^-9 m
millimicron		mμ	1 x 10^-9 m
micron	マイクロメートル	μm	1 x 10^-5 m
millimeter	ミリメートル	mm	1 x 10^-3 m
centimeter	センチメートル	cm	1 x 10^-2 m
decimeter		dm	0.1 m
meter	メートル	m	1 m
decameter		dam	10 m
hectometer		hm	100 m
kilometer	キロメートル	km	1 x 10³ m
megameter		Mm	1 x 10⁶ m
quadrant			1 x 10⁷ m
gigameter		Gm	1 x 10⁹ m
petameter		Pm	1 x 10¹⁵ m
zettameter		Zm	1 x 10²¹ m
yottameter		Ym	1 x 10²⁴ m

【ヤード・ポンド法等】

単位名	単位名(日本語)	記号	メートル換算	補足
thou		thou,mil	2.54 x 10^-5 m	1/1000inch
French		fr	3.33333 x 10^-4 m
point	ポイント	pt	3.5146 x 10^-4 m
pica			4.21752 x 10^-3 m	パイカ活字の縦長,12point
inch	インチ	in	2.54 x 10^-2 m	1/12feet
palm (UK)			7.620 x 10^-2 m	3 inches
hand (UK)			0.1016 m
span			0.2286 m	[由来]親指と小指を張った長さ
foot	フィート	ft	0.3048	(複数形はfeet)
cubit (UK)			0.4572 m	[由来]大人の肘から中指の先
yard	ヤード	yd	0.9144 m	3 feet [由来]棒を計測に使用した
fathom		fath	1.8288 m m	2 yard
rod	ロッド	rd	5.02921005842 m	pole, perch
rope (UK)			6.096 m
mile (international)		mi(int.)	1609.344 m	1 mile = 80 chane = 1760 yard
mile (nautical, international)	海里	mi(naut., int.)	1852 m
mile (geographical)		mi(geogr.)	7421.59 m

【物理単位】

単位名	単位名(日本語)	記号	メートル換算	補足
atomic unit of length	原子長	a.u.	5.29177 x 10^-11 m	first Bohr radius
angstrom	オングストローム	Å	1 x 10^-10 m
light-second	光秒		2.99792458 x 10⁸ m
light-minute			1.79875 x 10¹⁰ m
astronomical unit	天文単位	AU	1.4959787066 x 10¹¹ m
light-hour			1.07925 x 10¹² m
light-day			2.59021 x 10¹³ m
light-year	光年	ly	9.460730473 x 10¹⁵ m
parsec	パーセク	pc	3.08568025 x 10¹⁶ m	[由来]Parallax Second
kiloparsec	キロパーセク	kpc	3.08568 x 10¹⁹ m
hubble	ハッブル		9.46053 x 10²⁴ m	10⁹ ly

■大きな数いろいろ

１秒間に人間の体内で死に、また補給される血液細胞の数
3.5×10⁶個（３５０万個）

人のゲノムに含まれる塩基対
3.0×10⁹個（３０億個）
宇宙の現在年齢
10¹⁰年 (１３７億年±１億年)
人体を構成する細胞の数
6×10¹³ …６０兆（３００種）
人体に存在している細菌の数
10¹⁴ …１００兆（５００種）
麻雀の「場合の数」
- 和了の場合の数
  1.2×10¹³ (12兆8590億7820万7674通り)
- 配牌の場合の数
  4.2×10¹⁸ (425京0305兆0291億6821万6000通り)
１光年（光が１年間かけて走る距離）
9.46×10¹⁵m （約９４６兆メートル）
（天の川銀河の直径は約１０万光年、アンドロメダ銀河までの距離は約２３０万光年。典型的な銀河団の直径は約１５００万光年。宇宙の大規模構造を為すグレートウォールに囲まれた超空洞 void の直径は約２億光年、宇宙の大きさの指標となるハッブル半径は約１３７億光年である。）
アボガドロ定数
6.0221367×10²³[mol^-1] … 約6022垓1367京個
（¹²炭素１２ｇ中に含まれる原子の総数）
インターネットのＩＰアドレスの数
- IPv4のアドレス数(32bit)
  4.3×10⁹ (43億)
  1981年に制定された、インターネットにおける、（シンプルで汎用性の高い通信プロトコル。）
- IPv6のアドレス数(128bit)
  3.4×10³⁸ (340澗)
  （インターネット利用の急激な拡大や多様化に対応するべく 1998年に標準化された通信プロトコル。）
ルービック・キューブの「場合の数」
- RUBIK'S CUBE (3x3x3)
  4.3×10¹⁹ (4325京2003兆2744億89859000通り)
- RUBIK'S CUBE REVENGE (4x4x4)
  7.4×10⁴⁵ (74載0119正6841澗5649溝0186穣 9874杼0939垓7449京8574兆3360億00000000通り)
- RUBIK'S CUBE PROFESSOR (5x5x5)
  2.8×10⁷⁴ (2828709無量大数4227不可思議7741那由他8565阿僧祇3618恒河沙 0333極1071載5032正8293澗1277溝3198穣5672杼1347垓2153京 6000兆通り)
- Chiris Hardwick's Rubik's Cube (20x20x20)
  
  1.3×10¹⁴⁷⁷＝７！・３^６・（２４！）^９０
  （４！）^４８６
宇宙の寿命　(宇宙が永遠に膨張していく(開いた宇宙の)場合)
- 10¹⁴(100兆)年後
  最終世代の輝く星の寿命が尽き、星の残骸からなる暗い宇宙になる。
- 10¹⁸(100京)年後
  銀河が銀河中心の巨大ブラックホールに飲み込まれていく。
- 10³²(1溝)年後
  物質が崩壊し、光子、電子、ニュートリノだけが残る。
- 10¹⁰⁰(1googol)年後
  ブラックホールも蒸発し、僅かな光や素粒子が漂うだけの、ほぼ何も無い超希薄な宇宙になる。
現在の宇宙にある全てのバリオンの数
10⁸⁰個
エディントン数（宇宙に存在する全陽子の数）は 136×2²⁵⁶≒1.574×10⁷⁹程度。
現在の宇宙にある全ての光子の数
10⁸⁸個
googol(ゴーゴル)
10¹⁰⁰
米国の数学者エドワードカスナー(Edward Kasner) の甥であるミルトンシロッタ (Milton Sirotta) による造語で、『Mathematics and the Imagination (数学と想像力)』という著書で広く知られるようになった。
検索サイトとして有名な Google の名前も googol にちなんでいる。ちなみに、70の階乗はグーゴル数に比較的近い。 (70 ! ≒ 1.19785717 × 10¹⁰⁰)
不可説不可説転
10^{37218383881977644441306597687849648128} (=10^7×2¹²²)
『大方広仏華厳経の巻第四十五、阿僧祇品第三十』で述べられている巨大な数のうち最大の数。
不可説不可説転は約3.7×10³⁷桁(37澗桁)の数であるので、１桁の数字を１[cm]で記述するとした場合、現在の宇宙の直径（ハッブル半径の２倍）が1.89×10²⁵[m]だから、たかだか1.97×10¹²個（約２兆個）の宇宙を一列に並べた程度の長さの紙を用意し、1000000000………と書いていけば、不可説不可説転をいつかは表記し切ることができる。
googolplex(ゴーゴルプレックス)
10^10¹⁰⁰ (10のゴーゴル乗)
グラハム数 (Graham's Number)
人間脳が創造した「有限回の手続きで構成できる、意味のある数」としては史上最大の数。 1980年のギネスブックに「数学的証明に使われた世界最大の数」として掲載された。 “↑”(tower)という「何回演算操作を繰り返すか」という記号を用いて以下、順を追って雰囲気を説明する。（“↑”が１個の場合は普通の冪（べき）乗計算と定義する。すなわちＸ↑Ｙ＝Ｘ^Ｙ。）（冪乗は英語で"power"だが、、冪乗を塔を建てるが如く再帰的に繰り返す演算を"tower"と呼ぶのは英語的なシャレなのか。）
- 3↑↑↑↑3 (＝Ｃ)
  ＝３↑↑↑３↑↑↑３
  ＝３↑↑↑Ｂ
  ＝３↑↑３↑↑３………３↑↑３
  ここで何気なく「………」と書いているが、３↑↑３という演算が、なんとＢ回繰り返されているのである。
  引き続き最後尾から順に“↑↑”を“↑”(普通の冪乗）に両替していこう。
  - ………３↑↑３↑↑３＝ ………３↑↑（３↑３↑３） (※３回)
    末尾の（３↑３↑３）は上で見た通りＡである。(約7.6兆の数)
  - ………３↑↑３↑↑Ａ＝ ………３↑↑（３↑３↑…↑３） (※Ａ回)
    末尾の（３↑３↑…↑３）は上で見た通りＢである。
  - ………３↑↑３↑↑Ｂ＝ ………３↑↑（３↑３↑…↑３） (※Ｂ回)
    末尾の（３↑３↑３………３↑３）は、３の３乗の３乗の…とＢ回繰り返すという事に改めて注意。（Ｂは、上で見た通り、計算過程の最初の方で桁数の桁数が約1.7兆である数値を軽く突破した暴力的に大きい数である。） “↑↑”という演算を繰り返すことの破壊力が良く分かる。
  こうやって末尾から順に毎回毎回爆発的に(3↑3↑3…3↑3)の個数を増していきながら、この操作自体をＢ回頑張って繰り返す。Ｂがいかに暴力的に大きな数でも可算有限回であるので、最後には“↑↑”という記号は無くなり
  ３↑３↑３………３↑３＝ 3^{3^{3^{3^{3^{3^………}}}}}
  …という見慣れた形になる。指数の「…」の部分をこの調子で書いていたら、たとえ宇宙の果てまで書いても最初の一歩にもならない。（でも、「宇宙の果てまで」という比喩では、余りに小さ過ぎる。
  プランク長の数字(0,1,2,…,9)をハッブル半径に敷き詰めてもたかだか8×10⁶⁰桁（8那由他桁）程度の数値しか表せない。桁数を表す数の桁が高々60では、上述の3↑3↑3↑3↑3、すなわち桁数を表す数の桁が1.7兆の数にすら全く届かない。）
  この、果てしない３の３乗の３乗の………と、どこまで続くのかその回数ですら想像不可能な数値を、実際に計算して一つの整数にして、初めて「３↑↑↑↑３という数」になる。この、発狂的な超々巨大数をＣと置く。これで、やっとグラハム数への入り口である。
- Ｇ(4) = 3↑↑………↑3 (↑の数が“3↑↑↑↑3”個(Ｃ個)ある。)
  “↑”の数が４つに増えただけで発狂的な超々巨大数(Ｃ)になったのに、今度は“↑”の数、それ自体をＣ個分並べようというのである！もはや、その絶対値がいかに巨大な数か、というイメージの領域を離れて、いかに大きな数が組みあがっていくプロセス(手続き)を考えているのかに、驚嘆するのが精一杯である。
- Ｇ²(4) ＝ 3↑↑………↑3 (↑の数がＧ(4)個ある。)
- Ｇ³(4) ＝ 3↑↑………↑3 (↑の数がＧ²(4)個ある。)
  この、幽体離脱を誘う驚愕的な巨大化のプロセスを６３段続ける。
- Ｇ⁶⁴(4) ＝ 3↑↑………↑3 (↑の数がＧ⁶³(4)個ある。)
  この数がグラハム数である。
たかだか３７兆個程度の細胞で構成される人間が、わずか１０００億程度しかない脳細胞を用いて、このような超巨大数について、その超巨大さを、おぼろげながらでも感じることが出来る、という事、それ自体が、驚異であり、神秘的ですらある。
（なお、現在も、数そのものの巨大さというよりは、いかに少ない手順・表記・関数で急激に自然数を巨大化・発散させるかの構成方法が世界中で競うように検討されており、このレベルから見れば、グラハム数は極めてミクロな数と言える。）

◆参考文献