私の邦楽初めて物語 其の壱

〜全ては基本から〜

私はこのホームページを管理している「株翠ョ」の、いち女性社員です。

和楽器の老舗である柏屋にいるというのに、和楽器を演奏したことはあり

ません。それどころか柏屋に就職するまで和楽器には触ったこともありま

せんでした。音楽といえば、学校で習ったこと以外では、子供の頃に少し

ピアノを習っていたことはあります。が、その時の先生に「君は小指が内

 側に曲がっているからピアノには向いていないと思うよ」という理由から、

ヴァイオリン(これも弦楽器ですネ)を勧められ、それなのに「キラキラ

星行進曲」一曲しか習わなかったという経歴の持ち主でもあります。なん

とそんな私が、お客様の集まりでの「お三味線勉強会」に同僚と参加させ

ていただける事になりました。直接、先生にお三味線の稽古をつけて頂け

る!なんて素晴らしいことなのでしょう!!この物語は音楽そのものに今

現在あまり携わっていない私の邦楽体験記であります。さて、どのように

 成長していけるのか、キチンと一曲でも弾けるようになるのか、イヤイヤ、

その前に音を出すことができるのか…の始まり始まりでございます〜

 

まず、全てにおいて初めてずくしの私たちは、M先輩からお三味線への

「糸掛け」から教えてもらいました。糸をかける前に胴掛を三味線の胴に

付けなければなりません。胴掛に胴ヒモを通し胴にくくりつける。そして

その次に「音緒」を下ざおにつける。それから糸を音緒にくくりつけて糸

巻に通してゆくという順でお三味線となってゆきます。糸をかけるだけで

も一苦労です。私たちはひとつひとつの基本をキチンと教えてもらいなが

ら「本当に自分たちが三味線を習うのだわ」っと実感がわいてきました。

この「糸掛け」ひとつにしても、『三味線基礎教本』という本を参考に、

糸の向きを見ながら音緒に通していき、ねじれないように注意しながら糸

巻までのばし、糸巻の穴に通し、その糸巻にもキチンと糸をとめながらま

いてゆく…何もかもが初めてのためうまくゆかず、何度も何度も繰り返し

やってみる。基本を覚えておけば、例えお三味線が弾けなくても(やる前

からこんな気持ちでいいのかしら?)人様がお困りの時とかに「あっ、糸

かけですか?私がかけましょう」なんてちょっとカッコイイかな?なんて

思ったりして。                         .

私は、何事も基本的なことをちゃんと覚えておけば、自分のためには必

ず役立つことがある…と子供の頃から思っているので、「せめて基礎だ

けは真剣に覚えたい」と。それが「私の一番の目標」であります。

そんな「初めて物語」の私たちにお三味線をご指導下さる「先生」は始

めにこう教えて下さいました。                  .

「基本が一番大事です」

 と。

 

何事も基礎が大事です。例えば今日ひいた曲とかそういうものは忘れて

しまってかまいません。でもバチの持ち方とかそういうものは忘れないよ

うに…と初心者の私たちに話してくださいました。         .

まず、お教室は正座でのお稽古です。椅子の方がラクチンでいいなぁ。

…っと、密かに願っていた私には最初の大試練!!ここでも先生はこんな

風におっしゃいました。                     .

「今は椅子とかでお稽古をなさっている方もいらっしゃるけれど、今の

人達は正座なんて今時あまりしないでしょう?それでもお三味線は元々正

座で弾くもの。せめてお稽古の時くらいは我慢しましょう。」っと笑って

いらっしゃいました。                      .

そうですよね?お三味線って昔は正座で♪〜チントンシャン〜っと爪弾

いていたものですよね?はじめからラクをしようと考えていた私が間違っ

ていました。正座だって大事な基本!今からラクしようなんて、そんなで

どうするのよっと心の中でイカンイカンと反省しながらお稽古が始まりま

した。                             .

そうそう、もちろん株翠ョは営業しています。ので、私たちは2時間の

勉強時間を前半後半に分かれて、お客様の勉強の邪魔にならないように…

と、そっとまじらせて頂くことに。私は後半の部になった。     .

仕事をしていても、かすかに流れてくるお三味線の音色。正直「いいな

ぁ」って感じました。ちまたにはいっつも「音」がはんらんしていて、ど

こへいっても音の洪水。ともすれば、話し声さえ聞き取れない事も…。そ

んな中、きれぎれながらも届くお三味線の音色がとても心地よく響いてき

ました。                            .

とうとう1時間がたち、私たち(糸掛指導のM先輩と一緒です)の番と

なり、はやる気持ちを抑えてお教室へ…間近で聞くと、ビンビンとお腹に

響くお三味線の音。そんな体験も初めての私はそっと同僚の

Nさん(女性)

を見学。普段の彼女からは想像できない程?の真剣さである。そんな中「

Nさん、バチの持ち方がちょっと…。苦戦しているよ」っと、これは同じ

く前半組の方のお話。んー難しそうだ。大丈夫かしら?私。      .

さて、とうとうバトンを受け待ちに待った私たちの番である。前半の方

々は「調子のとり方」から教えて頂いたそうだが、受け取った三味線はす

でにキチンと調子がとれているので、私達は正座の仕方、バチの持ち方、

お三味線の持ち方などから教えて頂いた。(ちなみに調子は始めに「調子

笛」という笛のようなものを吹いて、それに糸の音色を合わせる方法で音

を整えます)                          .

さて、まずは正座。すわってみて女性は股のところに「こぶし1個

分」くらいひらく。そうするとゆったり、どっしりとラクにすわれるそ

うだ。確かにゆったりと座れます。が、しかし、この正座が思っていた以

上にキツイ。シビレはやはり…いかんともせん…私にとっては、本日いく

つめかの?試練でありました。これは自分の体重オーバーのせい?っと、

ちょっぴりショックを隠せないわたしがいました。          .

次にバチの持ち方。薬指と小指の間にばちをはさみ、手首を垂直に握る

こと。それがまずは基本だそうです。またこれは手首、指等ツル感じがし、

とてもこわばり、まるでロボットのような動き。このバチを自由自在に操

らなければいけないのだ…といっても握っているだけでも精一杯の自分。

うっかりするとバチが変な方向へ向いてしまい先生に指摘されます。多分

手が痛くなるから自分でかばっているせいでしょうか?同僚のNさんはそ

こを指摘されていたらしい。お三味線を持ち弾く方に気をとられるとバチ

がおろそかになる。バチをみているとお三味線自体がねてしまう状態にな

っていく…という具合に初心者はっというより私が?蟻地獄におちいって

いくようです。                         .

さて、最後にお三味線の持ち方です。右ひざの上に胴をのせて、右手を

そっと胴の上にかける感じにして天神(糸巻のついている方、「天神」と

いいます)を上にむける。左手は添える感じでそっと棹を持つ。ちゃんと

持てていると胴を押さえている右手だけでも、お三味線はシャンとしてい

ます。                             .

 

この三点が、まず初心者の私たちにとって「大切な基本」となります。

 

私の場合、バチの持ち方の方はなんとか大丈夫みたいだったのですが、

お三味線自体がねてしまっていて、これがいけない。格好よくお三味線を

膝にのせて弾きたいのではありますが、私はバチに気がとられてしまって

いるらしく、気付くと天神がだんだんと下にきてしまって胴と同じ位の高

さに…。何度が注意を受け、自分でもいけないと思いながら、シャンとす

るのですが、やはりだんだんと天神が下をむいていってしまう…何故??

焦りの中、基礎だけでもきちんと…と思いながら、このままでは何一つと

して覚えられないのではないだろうか?と弾きながら(っというより糸を

パンパンとただきながら?)「大丈夫だろうか…」っという不安ばかりが

大きくなってゆきました。                    .

ここまで読んで下さった方の中にはお分かりの方もいらっしゃるかと思

いますが…私たちは最初から「曲」を弾く形でお三味線を教えていただい

ています。そのことにとってもビックリしました。ピアノ然り、ヴァイオ

リン然り、始めはドレミを習うものではありませんか?しかしこの勉強会

ではそうではなく、いきなり「曲」で教えて下さるのです。多分「習うよ

り慣れろ」ということなのかも知れません。            .

初心者の私たちがちょっとでもお三味線をひけるようになるために、こ

こで登場するのが「譜尺」(ふじゃくと読みます)です。お三味線の棹に

直接はるタイプの…そうですね、一口にいうならば、お三味線のドレミ表

のようなものです。それを貼ることによって、譜本(洋楽でいう楽譜のこ

と)を見ながら、一人でもおさらいができます。次回はこの譜尺を貼らせ

ていただこうっと決心している私です。そうしたら少しは弾き方もマシに

なるのではないかと密かに願っているところです。          .

初めてお三味線を触って、今現在教えて頂いている曲は「松の緑」です。

本来なら最初に習う曲は違うそうです。ただ、今の人達は最初からテンポ

のある曲を弾きたがるから…というのが「先生」のお言葉でした。先生は

私たちのために、少しでもお三味線を楽しんで覚えていけるように考えて

下さっているのだと思いました。ただ、正直私はこの曲を知りません。で

は他の曲は?と聞かれても知らないのですが…           .

今はまだ前奏を「ひぃふぅみぃ…」っと習い始めのところなのです。そ

して次回はこの曲のうたいだしの部分に到達できるかどうか…。次回まで

に教えていただいた所を少しでも思い出しておさらいをし、私たちに教え

て下さっている先生の為にも、せめて「基礎だけはキチンと覚えています

。」と胸を張ってお答えしたいと思っている私…          .

さあ、次回はどこまで到達でき、少しでもお三味線が弾けるようになっ

ていることを願いつつここいらへんで「おひらき」とさせて頂きます。

長々とご拝読、まことに有り難う存じました。

次回もどうかご拝読の程を…お願い申し上げまする…