「五つ折れ三味線」

 

    
戦前、三味線は携行性の面から棹の部分が二本に分かれるの物
 が普通でした。現在では一本増え、三本に分かれるものが主流と
 なり、携行性は更に高められました。
 これは俗に三つ折れと呼ばれています。
 今回は更に二本多い、五本に分かれる五つ折れ三味線をご紹介
 しようと思います。
  左図が五つ折れの三味線です。下図の三つ折れのものと比べると
 一本一本がかなり短くなっています。
 三味線は継ぎ手と呼ばれる凹凸で繋がれています。
 接着剤や釘など一切使用しないので、自由に分解することが出来るわけです。
 三つ折れでも45×32×15(cm)のトランクで持ち運ぶことが出来ますが、
 五つ折れは更に小さなトランクで持ち運ぶことが可能です。
 しかしこの継ぎ手を作るためには、寸分の誤差も許されないほど繊細な技術
 が必要です。
 継ぎ手の数が増えると、木を成形するときはもちろん、
 仕上げの際にも素早さと的確さが不可欠になります。
 熟練の職人でなければ、作ることはまず不可能でしょう。
  良い物をより小さくより使いやすくといった意識と、
 それを可能にする職人の努力。
 五つ折れ三味線は、いかにも日本人らしい気質から生まれた楽器だと思います。



↓中木の継ぎ手。ほぞが二本になっている。
 普段は見えない場所に凝った技術を使う所に粋を感じさせる。
一本に繋ぎ合わせた状態。
間近で見ても、継ぎ手を見つけるのは難しい。↑