2006年10月5日 |
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| 平成18年度参議院政府開発援助調査派遣報告書 |
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| 重要事項調査議員団(第四班)報告書 団 長 参議院議員 矢野 哲朗 同 平田 健二 同 魚住裕一郎 同 行 憲法調査会 事務局総務 星 明 課長 本議員団は、ベトナム社会主義共和国、ラオス人民民主共和国及びカンボジア王国における政府開発援助に関する実情調査並びに各国の政治経済事情等視察のため、平成十八年七月五日から十一日までの七日間、これら三か国を訪問した。 日程は、次のとおりである。 七月五日(水) 東京発 ホーチミン着 七月六日(木) ・タンソンニャット国際空港ターミナル視察 ホーチミン発 ハノイ着 ・ニエン前外務大臣との会談 ・チョン国会議長との会談 ・ズン首相との会談 七月七日(金) ハノイ発 ビエンチャン着 ・ポンサワット外務副大臣との会談 ・トンルン副首相兼外務大臣との会談 ・ブアソーン首相との会談 ・トンシン国民議会議長との会談 ・ 国際協力研修センター、日本ラオス人材協力センター視察 七月八日(土) ビエンチャン発 シアムリアップ着 七月九日(日) ・ アンコール遺跡修復視察(バンテアイスレ イ寺院) ・シアムリアップ上水道施設視察 シアムリアップ発 プノンペン着 七月十日(月) ・チア・シム上院議長との会談 ・フン・セン首相との会談 ・国立医療技術学校視察 ・ ハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣 との会談 プノンペン発(シンガポール経由 機中泊) 七月十一日(火) 東京着 一 始めに 本院は、決算重視の観点から種々の改革を推進しているが、その一環として、ODAに関する取組を強化している。まず、参議院改革協議会の提言を受けて議員の海外派遣制度を見直し、平成十六年度から、従来の議会間交流、重要事項調査等に加え、ODA経費の効率的運用に資するため、新たにODAに関する専門の調査団を派遣している。次いで、本年一月召集の第百六十四回国会において、民意を代表する国会のODAに対する関与を深める等の観点から、各会派の総意により、政府開発援助等に関する特別委員会(以下、「ODA特別委員会」という。)を設置した。ODA特別委員会は、対政府質疑のほか、平成十七年度実施のODA調査団及び国際会議に合わせて来日したソマレ・パプアニューギニア独立国首相から意見を聴取するなど、積極的な活動を行った。 今回の派遣は、こうした本院におけるODAに関する取組を踏まえ、過去のODA供与実績等から最も我が国と関連の深い東南アジア各国を視察するとともに、政府首脳及び議会議長との会談を通じて、訪問国の現状・要望等を政治レベルで把握し、本院における今後の取組の参考に資するために実施されたものである。 議員団は、今回の派遣がより実りあるものとなるよう、出発前及び帰国後の二度にわたって、今回訪問した三か国の在京大使と意見交換を行った。 以下、視察先及び各国要人との会談について、その概要を報告する。 二 ベトナム (一)概況 ベトナム国会は、一院制で、定数四百九十八名、任期五年である。共産党による一党支配体制を堅持しつつ、八六年の第六回共産党大会において採択されたドイモイ(刷新)政策路線の下、市場経済化及び対外開放に努めている。八九年頃から成果が上がり始め、九五〜九六年には九%台の高い経済成長を続けたが、九七年のアジア経済危機の影響で一時停滞し、その後〇二年〜〇四年は七%台、〇五年は八・四%を達成し、新たな発展軌道に乗っている。しかし、ドイモイ進展の裏で、貧富の差の拡大、汚職のまん延等も生じている。本年四月の第十回共産党大会では、ドイモイ政策二十年を総括し、同政策の継続、低開発状態からの早期脱出、汚職追放が確認された。外交では、地域・国際社会への統合を推進しており、九五年にASEANに加盟した。九八年にはAPECに加盟し、本年十一月には、ベトナム主催によるAPEC首脳会議の開催がハノイで予定される等、国際社会における地位は向上しつつある。また、WTOへの加盟交渉を進めており、十一月のAPEC首脳会議までの加盟を目指している。 我が国は、七三年に当時のベトナム民主共和国(北越)と国交を樹立し、その後、七六年の南北統一(ベトナム社会主義共和国成立)に伴い、外交関係を引き継いだ。七八年末のベトナムによるカンボジア進攻により、日越関係は永らく停滞したが、九一年の同問題の解決を機に両国関係は改善され、経済協力、文化等、幅広い分野での交流が進んでいる。我が国のベトナムに対するODAは、九二年以降再開され、〇五年度の援助誓約額は、千九億円(有償資金協力九百八億円、無償資金協力四十四億円、技術協力五十七億円)で、ベトナムに対する最大の援助国(トップ・ドナー)となっている。我が国の対ベトナム支援は、ベトナムがASEAN十か国の中で第二位の人口規模(約八千三百万人)を持ち、勤勉な国民性から力強い経済発展の可能性があること、天然ガスや石油等のエネルギー供給源としての潜在的可能性があること等から、インフラ整備、人材育成、教育、保健・医療等を重点分野として取り組んでいる。 (二)タンソンニャット国際空港ターミナル視察 まず、一行は、タンソンニャット国際空港ターミナルの建設現場を視察した。ベトナム経済の中心都市ホーチミン市に位置するタンソンニャット国際空港は、ベトナム最大の旅客取扱量を有し(同国の国際航空旅客数の七五%以上)、ベトナムのゲートウエイ空港として重要な役割を担っており、その航空需要は今後ますます増加すると見込まれている。同空港の現行の旅客取扱能力は国際・国内線合わせて年間五百万人となっているが、増加する旅客需要に対応するため、既存ターミナルを国内線専用とし、新たに国際線旅客ターミナルを建設しようとするものである。延床面積九万九千六百四十八平方メートル、地上四階建てのターミナルで、二〇一五年に年間旅客数七百万人を目標としている。我が国ODAの特別円借款により、二百二十七億六千八百万円が供与されており、工事は、日本の鹿島、大成、大林、前田の四社による共同事業体が請け負っている。この四社の案内で工事現場を視察したが、〇四年九月に着工し、本年九月完成の予定が、工事は遅れており来年三月末の完成を目指しているとのことであった。工事の遅れについて事業者からは、ベトナム側の意思決定の遅さを指摘する声が出された。議員団からは、建物の安全基準等について質問がなされ、最後に矢野団長から、日本の技術を結集して後世に残るものを作って欲しいとの激励がなされた。 (三)チョン国会議長との会談 冒頭、矢野団長は、今回の訪問の目的について、「任期六年で解散のない参議院は、長期的視点に立ち、日本外交の大きな柱の一つであるODAが世界各国でどのように展開されているかとの問題意識の下、本年一月召集の国会でODA特別委員会を設置した。日本のODAの一番の成功例として貴国を訪問し、現場から学ぼうということになった」旨述べた。 同議長は、「我が国会は、ベトナムが市場経済を維持しながら経済発展し、国際経済へ統合していくために必要な法整備に努力している。我が国の今日の発展は日本からの援助のおかげであり、改めて感謝の意を表したい。日本の援助は、社会基盤の整備等の分野で効率的に使われており、今後は、文化、科学技術等の分野への拡大を期待したい。また、国会及び政府間の関係強化が、両国間の企業協力の強化にもつながっていくことを期待する」旨述べたところ、矢野団長からは、「わが国のODAや直接投資が貴国の経済発展の一翼を担ったことに誇りを感じる。ベトナムは、近年、日本の若い女性にとって、人気の渡航先であり、日越関係は経済、文化、人的交流等すべての分野において順調に進んでいる。WTOへの加盟など貴国の国際社会への参加についても最大限支援したい。今朝視察した国際空港の開港を楽しみにしている」旨の発言があった。 平田議員は、「日越関係が今後更に深まることを期待する」旨、魚住議員は、「両国間における人的交流の促進が非常に重要である」旨、それぞれ述べた。最後に、チョン議長から、衆参両院議長の早期訪越を期待するとの意向が示され、矢野団長は、「両院議長も貴議長の訪日をお待ちしているものと推察される」旨述べた。 (四)ズン首相との会談 まず、矢野団長より、「貴首相は、経済担当の副首相として二期活躍されており、今回の首相就任は当然のこととお祝い申し上げる。新しい指導体制がスタートした直後のタイミングで訪問を受けていただき感謝する」旨述べるとともに、今回の訪問の経緯及び目的について言及した。同首相は、「今回の訪問が、日越間の相互理解の更なる発展に貢献することは間違いなく、政府を代表して歓迎するとともに、高く評価したい。我が国は、引き続き現在の対日政策を維持し、日越関係を友好的、協力的に発展させていく決意である。首相就任後すぐ、私の訪日を早期に実現するよう指示したところである」旨述べた。これに対し、矢野団長は、「貴首相の我が国に対する思いは、帰国後十分に伝えさせていただく。我が国も九月末には、新首相が誕生するであろう。両国の新首相が友好関係を確認するのは素晴らしいことであり、貴首相の早期の訪日実現に尽力したい」旨発言した。 次いで、同首相は、「日本のODAは、我が国に対する日本国政府・国民の心を表したものと理解しており、その効率的な使用こそがベトナム政府の責任である。信頼を失わないよう努力していく」旨述べた。また、視察したタンソンニャット国際空港の開港が当初の予定より遅れていることについて、議員団からベトナム側の努力を要請したのに対し、同首相は、「遅れの原因は日越双方にあると認識している。日越共に学びながら、来年三月までの開港に努力したい」とした。 チョン議長及びズン首相は、本派遣団が訪問する直前の六月末に国会において選出されたところであり、就任後間もない時期の両者との会談は、時宜を得た大変有意義なものとなった。 これに先立ち、議員団は、ニエン前外務大臣を訪問した。矢野団長から、「外相退任後も人脈、経験を駆使して、日越関係の更なる発展のため、高い見地から御指導いただきたい」旨述べたところ、前外相は、「国会議員として日越関係発展に尽くしたい。後任のキエム外相は、自分の対日外交政策を踏襲していくと信じている」旨述べた。また、魚住議員からは、「公明党の創立者である池田大作先生は、昨年九月、ハノイ国家大学から名誉博士号を頂いたが、ODAのみならず、このような人的、文化的交流が進んでこそ、真に日越関係が 深まっていると言える」旨の発言があった。 ベトナムにおいては、以上のほか、外務次官及び商工会議所会頭等と懇談した。 三 ラオス (一)概況 第二の訪問国であるラオスは、七五年、左派(パテート・ラオ)による革命により王政を廃止し、人民革命党による一党支配体制となった。議会は一院制(国民議会)で、定数百十五名、任期五年である。内政では、八六年に「新思考」政策を導入し、市場原理導入等の経済開放化政策を推進しているが、内陸国という地理的条件と長期間にわたった内戦の影響等により経済発展は遅れており、後発開発途上国の一つである(〇四年の国民一人当たりGDP四百九十一ドル)。〇一年の人民革命党大会において従来の経済開放化政策が継続されるとともに、二〇年までの後発開発途上国からの脱却と国民一人当たりGDPの三倍増を目指す長期開発計画が打ち出された。外交では、内陸国という制約条件を克服するため、地域の経済統合・協力に積極的に参画しており、九七年にASEANに加盟し、今後は、APECやWTOへの加盟による更なる発展を目指している。 我が国とは五五年に外交関係を樹立して以来、一貫して友好協力関係にあり、九一年以降、我が国はラオスに対するODAのトップ・ドナーとなっている。ラオスに対する我が国ODAの重点分野は、絶対的に不足している人材の育成強化、病院の改修・機材整備等を中心とした基礎生活分野の施設整備、農村基盤施設(コミュニティ道路、小規模灌漑等)の整備、運輸インフラ、発電・送電システムの整備等である。ラオスに対する〇四年度のODA実績は、有償資金協力三十三億二千六百万円、無償資金協力三十億千七百万円、技術協力二十七億七千三百万円である。 (二)ポンサワット外務副大臣との会談 矢野団長より、「参議院においては、ODAを外交上の重要なツールとして位置付けており、貴国での我が国ODAの展開を視察するとともに、率直な御意見を伺うことが今回の訪問の目的である」旨述べたところ、同副大臣より、「我が国で日本のODAは広く認知されており、評価も高い。ODAの受入れに当たっては、計画立案から調査、実施、活用に至るまで、日本ラオス間で緊密に連携がとられている」旨述べた。 矢野団長が、「ODAの供与までに時間がかかり過ぎることはないか。また、我が国の無償資金協力によりメコン河に建設されたパクセー橋が貴国の一万キープ紙幣の図柄になったことに感謝するが、ラオス国民に対し、我が国からの支援の更なる周知をお願いしたい」旨述べたところ、同副大臣から、「ODA供与までの時間は、日本の機構上、必要な時間であると認識しており、問題ない。また、国民への周知に関しては、現在、ベトナムからミャンマーまでインドシナを東西に横断する『東西回廊』構想の一環として、タイ・ラオス国境のメコン河に第二メコン橋を建設する作業が続いているが、日本からの円借款によるもので、完成後は切手にすることも考えている。また、日本のODAサイトには日本の国旗やODAマークを付け、国民への周知を図っている」旨述べた。 今後の支援について同副大臣が、「ラオス東北部のシエンクアンには観光資源となり得る古代の巨大石壷があるが、不発弾が散乱し観光開発の障害となっている。不発弾はラオス全土に残っており、この分野での支援も検討していただきたい」旨述べたところ、矢野団長は、「意見交換を十分にしながら、適切な援助を行いたい」旨述べた。 (三)トンルン副首相兼外務大臣との会談 冒頭、矢野団長から、副首相兼外相への就任のお祝いと、両国関係の一層の緊密化を図りたい旨述べたところ、同副首相は、「ラオスは、内陸国の状況を逆に活用し、近隣諸国との架け橋としての発展を目指しているが、日本のODAが果たす役割は大きく、特に、貧困削減、民生の向上、投資の増進という発展の三条件において、大きな貢献をしていただいている。また、日本の援助は、国際機関等を通じた支援もあり、高く評価している。日本の支援が、いかに役立っているかを日本国民にも理解していただき、引き続き第一位の援助供与国であり続けることを希望する」旨述べた。 これに対し、平田議員は、「対ラオス援助がラオスにおいて高く評価され、感謝されていることを実感した。また、日本国民に対し、ラオスへの支援の重要性を周知させる必要性も感じた」旨述べた。矢野団長からは、「閣下のお話を伺い、日本の対ラオス政策に間違いがなかったことが確認できた。このことは帰国後、国民に報告したい。早い時期の貴副首相の訪日を希望している」旨述べたところ、副首相は、「本年中に訪日することを約束したい」旨述べた。 (四)ブアソーン首相との会談 矢野団長より、首相就任へのお祝いと、今回の訪問の目的について述べたところ、同首相からは、「二年前に、我が国がASEAN首脳会議を主催した際の日本からの支援を特に称賛したい。その際、重要な会合の場として使用された国際協力研修センターは、日本の無償資金協力により建設されたもので、現在も国際会議等に効果的に使用されている。日本は我が国に対する第一位の援助国であり、その援助は、経済、社会・文化、人材育成等多岐にわたっているが、今後は、我が国に対する投資を一層促進して頂きたい。また、日本人観光客が増加することにより、我が国の文化や伝統を理解して頂く機会が増えるので、日本の観光客に対する査証免除について現在検討中である」旨の発言があった。 これに対し、矢野団長は、「究極的には、自助努力により経済発展を成し遂げ、平和の配当を国民に行き渡らせるよう貴首相が努力されるべきものであるが、我々としても協力関係をより強固なものとしていきたい」旨、また、魚住議員は、「貴国の第六次社会経済開発五か年計画及び二〇年までの開発目標を達成するためには、貴首相の役割が最も重要であるが、我々も出来る限り協力していきたい」旨述べた。 同首相は、「我が国の二〇年までの開発目標への支持を表明していただき感謝する。ラオスは貧しく、一人当たりの収入は一日一ドルに満たない。収入額が基準以下の者が国民の三割を占める現状である。我が国民及び資源を用いて自助努力により、開発を達成していくとの認識であるが、その上で、貴国の引き続きの支援を願う」旨述べた。 (五)トンシン国民議会議長との会談 矢野団長より、今後のODAのあり方等について意見を求めたのに対し、同議長から、「日本の小学校建設への援助は、最も効果的である。我が国は六歳で小学校に入学し、十五歳までに初等教育を終えるよう義務付けているが、日本の援助により、国民に教育が行き届きつつある。日本の援助はラオスの貧困削減に資する大変効果的なものである。その一方で、人々の経験や知識不足のため、例えば、建設された当初は素晴らしい道路が、維持管理がしっかり行われず、長期にわたって利用できるような補修が行われていないことがまれにある」旨述べた。 平田議員からは、「今回の訪問により、我が国のODAが貴国の発展に貢献していることを確認できた。また、貴国国民が我が国のODAを高く評価していることを帰国後日本国民に伝えたい」旨述べた。最後に、矢野団長が、同議長を日本にお迎えしたい旨発言したところ、トンシン議長は感謝の意を表し、会談を終了した。 (六)国際協力研修センター視察 我が国の無償資金協力(七億九千万円)により施設の建設及び必要な機材の供与が行われ、〇四年に完成したもので、公務員を中心とした人材育成のためのセミナー・研修及び政府や国際機関等による大規模な会議の開催が可能となった。一行は、同センターのトンルン所長の案内で、建物内に備えられている大小さまざまな研修室・会議室を視察したが、ここでは、〇四年十一月にラオスがホスト国を務めたASEAN関連会議のうち、日中韓首脳会議や各種外相会議等ハイレベルかつ大規模な会議が実施され、国際社会の一員として必要な会議実施能力の充実にも貢献しているとのことであった。 (七)日本ラオス人材協力センター視察 ラオス唯一の国立総合大学であるラオス大学のキャンパス内に、我が国の無償資金協力(十一億八千六百万円)によって建設された。ラオスにおける市場経済化の推進等のために必要とされている人材育成を目的として建てられたもので、〇一年に完成し、現在はJICAの技術協力プロジェクトの下で、日本とラオス両国によって運営されている。具体的なプログラムとしては、民間企業や政府機関に勤務する同国ビジネスマンを対象に実践的な経営戦略、人事管理等の講義を行うビジネスコースと、ラオスの大学生、社会人を対象とする日本語コースが設けられている。また、教職員や政府機関職員を対象としたコンピュータ講習も行われている。これまでの受講者数は、ビジネスコースで約千八百名、日本語コースで約二千八百名に達している。また、日本ラオス間の相互理解を促進するため、お茶会や書道教室、日本映画の上映等を行うなど、日本とラオスを結ぶ架け橋としての役割も果たしているとのことである。 以上のほか、ラオスにおいては、スリヴォン計画投資委員長及びポンメーク保健大臣と夕食会において親しく懇談した。 ラオスでの日程終了後、一行は、最後の訪問国であるカンボジアに向かった。なお、魚住議員は、所用のためバンコク経由で日本に帰国した。 四 カンボジア (一)概況 七〇年のクーデタ発生以降約二十年に及んだ内線が九一年のパリ和平協定締結により終結し、九三年に新生カンボジア王国が誕生した。議会は、九九年に上院(定数六十一名、任期六年)が新設され、国民議会(定数百二十三名、任期五年)との二院制となった。〇三年の国民議会選挙の後、連立政権をめぐる駆け引きが長引いたが、〇四年にフン・セン首相率いる第一党の人民党とフンシンペック党の連立政権が発足した。外交では、各国との二国間・多国間関係の強化に努めており、九九年にASEANに加盟し、また、〇四年にはWTO加盟を果たしている。 九七年のアジア経済危機の影響等で一時、経済成長率が鈍化したものの、その後は五%後半から七%台と安定した成長を保っている一方で、経済インフラと法制度の未整備により外国投資の誘致が不十分であること、縫製品以外にはめぼしい国際競争力ある輸出製品がないこと、長く続いた内戦の影響により人材が不足していること等抱える問題は大きい。〇四年の国民一人当たりGDPは約三百ドルで、先に訪問したラオスと同じく後発開発途上国の一つである。我が国は、八〇年代末より、カンボジアの内戦と混乱を東南アジア最大の不安定要因と位置付け、同国の和平、復興、内政安定等に向け積極的に協力をしてきており、九二年、九三年にはPKO法による初の要員派遣も実施した。〇四年度のカンボジアに対するODA実績は、有償資金協力七十三億四千二百万円、無償資金協力六十五億七千百万円、技術協力四十億二千八百万円で、トップ・ドナーとなっているほか、UNESCOを通じたアンコール遺跡保存修復等の支援を行っている。 今回、一行は、アンコール遺跡の中でも繊細な壁画彫刻で知られるバンテアイスレイ寺院をアプサラ機構(カンボジア政府の遺跡管理組織)のロス・ボラット局長の案内で視察した。同寺院は九六七年建造の歴史ある遺跡で、一行は、ヒンドゥー神話をモチーフに紅色砂岩に施された壁画彫刻の優美さに感動すると同時に、壊れやすい紅色砂岩からなる同寺院の保存修復の難しさも実感した。また、文化遺産の保存修復に対する援助は、国際機関を通じた援助が主流であるが、これは、専門的な知識や豊富な経験・ネットワークを利用できるというメリットがある反面、遺跡の保存修復方法に関する支援国間の考え方の違いにより、遺跡全体の統一性、調和のとれた保存修復が困難であるとの問題点も認識した。 (二)シアムリアップ上水道施設視察 シアムリアップ市は、世界的に有名なアンコール遺跡群の南五キロに位置しており、同遺跡を訪れる外国人観光客が年々増加している一方で、都市インフラはぜい弱で、特に上水道施設は老朽化等のため約三千二百人(給水率一〇%)に対してしか水を供給できない状況であった。本施設は、我が国の無償資金協力(供与限度額十六億千百万円)によって取水用井戸及び浄水場、導水・送水・配水管等が整備され、本年三月に完成したものである。これにより、〇八年までには給水人口が二万六千人と現在の約八倍に増加し、また、安全で衛生的な水の二十四時間給水を実現することにより、水因性疾患(下痢、コレラ等)り患率の低下と観光産業の発展にも寄与するものと期待されているとのことである。ただ、本施設の計画から完成までに十年以上の年月を要したとの説明に対し、議員団からは疑問の声が出された。また、各住民が給水を受けるための設備の整備に要する費用は、住民の自己負担で七十五ドルとのことであり、負担を軽減する方策の必要性が指摘された。 (三)チア・シム上院議長との会談 矢野団長より、「今回の訪問で、日本カンボジア関係の一層の強化に向けた方向付けが出来たらと考える。昨日は、バンテアイスレイ寺院を視察したが、この素晴らしい遺跡を世界共有の財産として日本がその保存に協力することの重要性を再認識するとともに、文化遺跡保存等のための二国間支援についての体制が未整備ではないかとの問題意識を持った。これは、参議院に設置したODA特別委員会で取り上げるべき良いテーマになると思う。期待を持って本特別委員会の動きを見守っていただきたい」旨述べたところ、同議長より、「ODA特別委員会はODAの監視を通して政府の活動にも資するもので、参議院のイニシアチブを歓迎する。貴国は、カンボジアにとって第一位のドナー国であり、我が上院も、施設の修復や事務機器の供与など四回にわたり総額百万ドル相当の支援を頂いている。この機会に感謝の意を表するとともに、我が国はその支援を正しく活用していくことに意を用いていることをお伝えしたい」旨述べた。さらに、同議長は、「最近、上下両院は、五百条からなる民事訴訟法案を成立させたが、これも日本が起草を支援してくれたものである。また、貴国の無償資金協力により完成した『きずな橋』は、メコン河の上流側に位置しているが、現在、政府は下流側にあるネアックルアンの橋梁建設を要請している」旨述べた。 これに対し矢野団長は、「メコン架橋を含むインフラ分野の整備要請については、実施の決定に遅れがないよう努力したい」旨述べた。また、平田議員も「メコン架橋に対する協力については、矢野団長と同意見であり、実現に努力したい」旨述べた。さらに、矢野団長は、クメールルージュ裁判に言及し、「日本の野口元郎氏が裁判官に任命されており、同裁判の成功に貢献することを期待している。貴国の民主化への展開や法治国家への歩みに期待するとともに、惜しみない支援をしたい」旨述べた。最後に、矢野団長から、「扇参議院議長が招待している貴議長の訪日を早期に実現していただきたい」旨要請したところ、同議長は、「外交ルートで具体的時期をお知らせすることとしたいが、年内に訪日できればと思う」旨述べた。 (四)フン・セン首相との会談 冒頭、首相より、「我が国は、経済面では〇四年に経済成長率が八%に達し、〇五年には一三・四%と過去最高を記録した。これは、日本を始めとする援助国の協力があってのことである。貴国の協力で進められているシハヌークビル港及び国道一号線の整備などは順調に進んでいる。また、合意には達していないがネアックルアンの第二メコン架橋建設については、日本政府にも優先度の高いものとして認識して頂いている。今後の課題としては、汚職対策、司法、行政及び軍改革の四つの改革を推進していく必要がある」旨述べた。矢野団長は、今回の訪問目的について言及した後、「参議院に設置されたODA特別委員会では、いかにODAを取り上げ、どの国を重点国として位置付け、どのような戦略で進めるべきか、今後しっかりと方向付けを行っていきたい。昨日のバンテアイスレイ遺跡の視察を通し、文化遺跡保存・発掘調査への支援を積極的かつ抜本的に進めるための方策を検討し、その骨組を作る必要がある」との考えを示した。 また、矢野団長は、シアムリアップ上水道施設の視察に触れ、「調査を開始してから建設に至るまでに十年以上を要したと聞く。もう少し速やかに実現できなかったものかと思う。また、第二メコン架橋建設については、その実現に向けて積極的に協力することを約束する」旨述べた。これに対し、同首相は、「上水道施設の整備に時間を要したのは、過剰な地下水の利用により地上の遺跡に影響が生じないようJICAに詳細な調査を行ってもらったためである。また、第二メコン架橋の実現に努力するとの発言に感謝する」旨述べた。 (五)国立医療技術学校視察 最後の視察先となった国立医療技術学校において一行は、花束を贈られるなど関係者の大歓迎を受けた。同医療技術学校は、五〇年に設立され、四職種の医療従事者(看護師、衛生検査技師、理学療法士、助産師)の育成機関として、また、全国の在職看護師等に対する幹部看護師の育成や研修機関としてカンボジア国内の医療従事者育成の中核機能を果たしてきたが、X線技師育成コースがないほか、狭小な施設、機材の老朽化・不足といった問題が生じていた。このため、我が国の無償資金協力(供与限度額七億七千四百万円)により、校舎の新築・改修、X線装置等医療教育用機材の整備を行い、本年二月に新校舎が完工し、現在、X線技師養成コースの本年十月開設に向け準備中とのことである。 また、我が国は、〇三年から五年間の計画として医療従事者の質を高めるためのプロジェクトを推進しており、我が国の医療機関等から専門家を同学校に派遣し、カリキュラムの作成、学校運営の指導、既存教員の再教育、臨床実習の強化等を行っている。本年七月までに、長期専門家六人、短期専門家十四人が派遣されているとのことである。同学校の学生数は、六百五十一名、これまで合計で七千四百人余の卒業生を輩出している。 (六)ハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣との会談 副首相からは、「貴国の幅広い分野での多様な支援に感謝する。国の開発を実現して行くためには、経済援助のみならず、直接投資が必要であり、今後は、援助とともに、貴国からの投資を促進していただきたい。投資先の決定にはその国の人口規模が着目されるが、千三百万人のカンボジア国民のみならず、四億人のASEAN全体を見て欲しい。また、第二メコン架橋の建設と水力発電ダムの建設に対する支援を検討願いたい。水力発電ダムについては、多くの建設候補地があり、ベトナムやタイなどに電力を売却すれば十分採算の取れる事業を行うことが出来る」旨の発言があった。 矢野団長は、「私も平田議員も二度目の訪問であるが、その変ぼう振りに目を奪われた。これは現政府の下で政治的安定が達成され、適正な経済運営が行われている成果であると思う。また、今回の訪問で強く感じた点は、貴国の重要な観光資源である文化遺産の保存・発掘に対する、より積極的な支援・協力である。そのため、我が国のODAの骨格を見直す必要性があることを感じた」旨述べた。さらに、矢野団長は、「メコン第二架橋の建設については、よりスピードアップを図って進めていきたい」との考えを示した。 以上のほか、一行は、昼食会においてウット・ソムヘン社会問題大臣と親しく懇談した。 五 終わりに 以上が今回の本議員団の報告であるが、一行は、今回の視察及び会談をとおして、日本のODAが訪問国の経済・社会の発展に寄与しており、訪問国政府及び国民から感謝されていることを実感する一方で、援助の対象国・分野等の選定過程の透明性を確保し、その効率的かつ効果的な実施及び国民の理解を促進するために、今後、参議院ODA特別委員会における審議の充実等、ODAに対する国会の関与をいかに強化していくべきかとの思いも強くしたところである。 最後に、今回の調査においては、訪問した各国において数多くの要職にある方々と会談したが、いずれも終始和やかな雰囲気の中で親しく意見を交換することができた。多忙の中、快く会談に応じていただいた方々、また、仲介の労をお取りいただいた在外公館の方々に改めて感謝の意を表したい。 |
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