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「自分にできること、か・・・」 メルキオールの言いたい事はマヤにもよく分かる。 背伸びをする必要も、無理をする必要もない。 一人一人が、自分にできることをすればいい。 だがそれは、理屈の問題である。 現実には、それで果してうまくいくのかという、そんな不安があった。 普通なら、自分にできる精一杯をすれば、たとえ結果がどうであれそれでいい、という事にもなるかもしれない。 だが、今回の場合失敗はそれすなわち世界の滅亡を意味する。 結果こそが、もっとも重要視されるこの状況で、やれるだけの事をやったからそれでいい、というのはあまりに無責任であるようにマヤには思えた。 だが、その思い込みこそが、間違いである事に彼女は気付かない。 もちろん、責任を放り出していい、という事ではない。しかし・・・ 「ずいぶん、悩んでるみたいだな、マヤちゃん。」 「あ、ああ。」 マコトのそんな呟きに、シゲルはそう気のない返事を返した。 「なんか、言ってやれよ。」 そういうマコトには、今のマヤにどういう言葉をかけてよいか、実のところ見えていた。 それはシンジ同様、守るべき者、あるいは心の拠り所となるべき存在が、彼にもあるからなのだろう。 守るべき者があるから頑張れる、けれど、そこに必ず帰らなければならないと思えば、必要以上の無茶はしない、結果、自分の足元がよく見える。 自分がいったいなにをすべきか、それを見誤る事はないのだ。 そういった考えは、もちろん人との触れ合いの中で自然に身についた事ではあるのだが、同時に、そこに葛城ミサトや加持リョウジといった存在もあったかもしれない。 マヤやシゲル、あるいはトウジといったところももちろんミサトたちとの面識が薄いわけではないのだが、シンジやマコトは、そういった事をより強く感じられる位置にいた。 ミサトを通して加持を感じられた、という事もあったかもしれない。 無論当のミサトや加持が、今のシンジやマコトほどに事態を見る事ができていたか、といえば、加持はともかくミサトの方は疑問であろう。 実際今のマヤ並みにミサトは思い悩んでいた部分があったといっても過言ではない。 が、加持の存在があって、最終的には答えにたどり着く事ができた、それを傍で見ていたシンジやマコトだから、分かる事というのがあるのだ。 今、シンジやマコトが、あの頃の加持やミサト以上に物が見えているかもしれないというのは、先に彼らの存在があるからに他ならない。 人の意志、というのはそうして繋がっていくものなのだろう。 ただ、残念ながらまだまだシンジやマコトは、それを実感として感じられない部分があるし、それをうまく言葉に表す事ができていない。 あの頃、加地リョウジが幾度もシンジにしてみせたように、彼らがシゲルやトウジに諭すような事ができないという事が、こうした現状を作り上げていた。 だから、そういう彼らの意図がいまいち伝わらないからこそ、シゲルにしてみても、 「なんで、俺なんだよ・・・。俺がなにか言っても・・・俺じゃ・・・駄目だよ。」 そういう思いしか抱けないのである。 それはトウジというよりもある種ヒカリの心情に近い。 その頃、ヒカリはそのネルフにいた。 こういう場にヒカリがいる、というのは実のところ不思議な話ではない。 ネルフ、といってもかつてあった同名の組織とはまったく趣は違うし、大体、設備だって天と地ほどの違いがある。 今もって尚、伊吹マヤのノートがメインコンピュータの代わりをしているような状況なら、施設の管理だのセキュリティだのといった話などはまったく無縁の事であった。 誰でも自由に出入りできるし、また、施設が整っていないゆえに、部外者が出入りしたとて見られて困るようなものなどありはしない。 むろん、ここ最近起きている事態について知られてはならないという部分はあるが、大体ここ20年の間に起きてきた事を考えるなら、少々の異常事態でパニックになる事もないのだから、核心中の核心さえ抑えておけば、どうなるものではないのだ。 そしてその核心とやらを、マヤやシンジが知ったのがつい今さっきの事でしかない。 だいたいトウジを筆頭にシンジやマナなど、親しい人間がこれだけ関わっていればヒカリとてもはや"部外者"と呼ぶには事に関わりすぎている。 仮にヒカリが真相を知ったとて、彼女自身がその事を知る事自体には、もはや問題はないかもしれない。 だが、それはマヤやシンジたちのようなものから見た話であって、当のヒカリにしてみれば、まだまだ自分は"部外者"、いやどこか住む世界が違うような、そんな感覚があった。 無論それは、マリィやトウジの事があった上での、彼女の個人的な感情でしかないのだが。 「あ、ヒカリお姉ちゃん。」 不意に、そんなヒカリに話し掛けてくるものがいた。 お姉ちゃん、というその言葉に、ヒカリは妙な戸惑いを覚える。 他人であっても、目上の女性を"お姉ちゃん"と呼ぶような事は、ことにそれが幼い子供であるならば、それも別段不思議な事ではない。 くわえてノゾミという存在があればヒカリにしてみれば姉、と呼ばれる事に慣れていない、というわけでもない。 無論それとこれとは関係ない話ではあるのだが、普段から呼ばれなれていれば、そして、状況を考えれば、それは別に気に留めるような問題ではないはずなのだ。 その相手が、ハルナでさえなければ。 ハルナの言いように他意はない、少なくとも、ヒカリはそう思っていた。 だが、そう思おうとしている事こそが、そもそものヒカリの戸惑いの元でもある。 そんなヒカリの細かい心境は、もちろんハルナには分からない。 が、少なくとも、ヒカリがなにかに悩んでいて、そしてその元凶がなんであるかを、彼女は良く知っていた。 ハルナは、見かけの通り幼い子供である。 身体も心も、参号機に取り込まれてしまったあの頃から、変わってはいない。 幼い子供であったがゆえに、ユイやアスカの母キョウコのように、エヴァの中で明確な意識を持てずにいたし、たとえそれがあったとしても、今の彼女はそのことを覚えてはいない。 だから、見かけ通りの心を持つ事ができているし、それはある意味彼女にとっては幸福だったかもしれない。 けれど、エヴァに取り込まれるその以前から、彼女は−手のかかる兄のせいもあってか−年齢の割にしっかりした部分があった。 ある種ヒカリに通ずるほど、そしてシンジやアスカやそして何よりトウジと比較して、彼女の方がきちんとした考えも持ち、それを口にする事ができていたとも言えた。 その上で、当人は覚えていなくともエヴァの中でいろいろなものを見聞きしてきたというものが、心の奥底から消えたわけでもなければ、他人への思いやりというもの、人の心を察するという能力は、突出しているといってもいい。 それを、子供も無邪気さで口にできるというのは、大人から見ればうらやましい事なのかもしれない。 そんなハルナの状況は、ある意味ヤマトの対極に位置するものであるのだが、それに気付くものはいない。 それが、今起きている事態の、突破口になりうる可能性があるかもしれないという事も。 ただ、ヤマトたちの事は別にして、少なくともハルナの存在は、ヒカリも含めたネルフの人々にとって、事態を変えさせる力があったのは、確かであった。 「やあ、洞木さんに・・・ハルナちゃん、だったね?」 ネルフに来たはいいが、結局手持ちぶさたなヒカリは、ハルナと共に休憩所でジュースを飲んでいた。 休憩所、といっても長椅子と自動販売機があるだけの一区画でしかないのだが、旧ネルフでもそれがほぼ同じ設備であった事を、ヒカリはもちろん知らない。 その小さな一角で、ヒカリの知らないドラマがあった事も。 そして、同じような出来事が、今度はヒカリを中心に繰り返されようとしていたことも。 ただそれは、ヒカリにとって悪い事ではなかったのだが。 そんなヒカリとハルナに話し掛けてきたのは、シゲルとマコトであった。 「えっと日向さんに、青葉さん、でしたよね?」 二人に向かってヒカリが、どこかよそよそしい口調で答える。 二人や伊吹マヤ、冬月コウゾウといった面々とはもう既に幾度もあっているし、シンジやマナ、それにマリィといったところが彼らと親しげに話している場面も幾度か見ている。 けれど、やはりヒカリにしてみれば遠い存在なのだ。 が、ハルナにとっては違った。 「お兄ちゃんたち、こんなところでお仕事サボってていいの?」 「ハ、ハルナちゃん!」 不意に口にしたハルナの言葉に、焦ったのはヒカリだけであった。 子供だから、というせいもあるだろうが、当のマコトとシゲルはそれに苦笑いを浮かべるだけである。 どこか、ハルナの言葉があたらずとも遠からずであるという部分が、あるからかもしれない。 「サボってるって訳じゃないけどね・・・、今の俺達には、何もしてやれない、って言うのも・・・事実なんだろうな。」 シゲルがそんな言葉をポツリと漏らす。 その言葉に、日向だけが複雑そうな表情を見せた。 さすがに、そういう持って回ったような言い方のニュアンスというのはハルナには分からない。 そしてヒカリは、なにか戸惑いのようなものを覚えていた。 ヒカリの抱いていたネルフのイメージには、どこか非人間的であるとさえ思える部分があったのかもしれない。 世界を守らなければならない、という重い使命を帯びていれば、何事にも厳しくあらなければならない、そんな思い込みがどこかにあったのかもしれない。 シンジやアスカ、あるいは加持やミサトといったヒカリに近い人間は、少なくともヒカリが見ている限りではそういう部分はなかったように思うのだが、それはあくまで個としての付き合いがあったから、"個人"の部分を見る事ができていたからいえる話なのだと、無意識に判断していたのだろう。 だから、シンジもアスカも、あるいはトウジさえも、ネルフという枠組みに入ってしまえば、もっと厳しい中で生きているのだという、想像がそこにある。 伝え聞いた碇ゲンドウという人物の人物像も、そこには深く関係していたかもしれない。 そしてそれこそが、今まで抱き続けていた疎外感の正体であったとも言える。 シンジもアスカもトウジも、自分の知らないところで、自分の知らない厳しさを持っている。 だが、それはヒカリの勝手な思い込みでしかない。 そしてシゲルの微妙な言葉、というより、シゲルとマコトの二人が見せた反応が、ヒカリにそのことを感じさせようとしていた。 「なにか、悩み事でもあるんですか?」 いつものヒカリならまだしも、今のヒカリではシゲルの言葉の中の微妙なニュアンスには気付く事はできなかったが、少なくとも、なにかに悩んでいるといった風な、そんな部分だけは感じる事はできた。 「悩みっていうかな・・・、悩んでるのは俺じゃなくって、マヤちゃんなんだけどね。あんだけ苦しんでるのに、結局は、マヤちゃんがいないとどうにもならない。俺達じゃ、何もできない。それが、ね。」 辛いのだ、という事は、ヒカリにも痛い程よく伝わってきた。 自分も、同じだから。 だから、辛いのが"なにもできない"というその事実よりも、"なにもしてあげられない"相手が、"特定の誰か"だという事もヒカリにはわかってしまった。 もっとも、シンジやトウジほどに鈍くなければ、そんな物言いをされれば誰でも気付く事なのかもしれないのだが。 だから、ハルナにもこう言う事ができた。 「シゲルお兄ちゃんは、マヤお姉ちゃんの事が好きなのね。」 そのハルナのストレートな物言いは、当のシゲルのみならず、なぜかヒカリまでもドキリとさせた。 そのハルナの物言いは、なにかマコトに軽い衝撃のようなものを与えていた。 本当は、自分がシゲルに言わなければならなかった、けれど言えなかった言葉。 それを、幼い女の子があっさりと言ってのける。 いや幼い子供だから、できたのだろうという事は、マコトにもよく分かっていた。 「いやそれは・・・好きというか・・・なんというか・・・」 口篭もるシゲルではあったが、ハルナの言う事が事実であるという事は、他ならぬシゲル自身が一番よくわかっている事である。 ましてや、ハルナの真っ直ぐな、澱みのない瞳に見つめられては、『違う』と言う事など出来ようはずもない。 そして、それこそがヒカリをドキリとさせた理由である。 アスカやマナは言うまでもなく、シンジや、あるいはマリィも、ヒカリの気持ちなどはとうに知ってはいる。 今更否定する事でも隠す事でもないはずなのだが、それを、ハルナに見透かさせるのが、きっぱりと言い当てられるのが、正直ヒカリは恐かった。 が、そんなヒカリの心配をよそにハルナは言葉を続けた。 「何にもできないなんて思っちゃ駄目だよ。なにか一言言ってくれるだけでも嬉しい事ってあるんだから。特に女の子はね。ね、ヒカリお姉ちゃん。」 多少背伸びした風な、このくらいの年頃の女の子によくありがちなそんな言葉は、けれど、確かに正しかった。 マヤの現状にとっても、そして、ヒカリ自身にとっても。 シゲルの性格であるから、他の誰かにこう言われても怒ったり、無下に突っぱねたりという事はしないだろう。 ただ、もしこれがマコトであるなら、マコトであるからこそ、それは曖昧に、うやむやな返事をしただけだっただろう。 シンジやトウジといった面々が相手でも、反応は同じである。 マコトは、ある意味シゲルの心中をわかりすぎるほどわかるから、シンジやトウジは、それでごまかされてくれるから。 それならば、マナのような少女ならどうだろうか? シゲルの心情を察せないほど鈍くはないが、マコトと違いマナはマヤの心情も思いばかることができる。 そして何より、シンジやトウジのようにごまかされる事もない。 けれどマナも、もう大人であればそこにどうしても遠慮が生まれる。 相手の問題はあるにせよ、笑って逸らかされてしまえば、それ以上突っ込む事など出来はしないだろう。 けれど、そしてだからこそ、ハルナなのかもしれない。 「お前の負けだよ、シゲル。そう、何もかも自分の中だけで片付けちゃ駄目なんだよな。自分の頭だけで考えてちゃ、何もできない。時にはさ、結果を考えずに行動してみる事も必要なんだよ。結果を出すのは、お前じゃないんだから。」 ハルナの言葉に、苦笑いを浮かべながらマコトがこうつないだ。 本当はずっと前から、マコトがこう言うべきなのだとは、よくわかっていた。 シンジと共に、"あの人"から受け継いだ言葉を。 マコトの苦笑は、もしかするとハルナにやり込められているシゲルに対してのものではなく、ハルナのおかげでようやくこの言葉を口にできた、自分自身に対してのものだったかもしれない。 「でも・・・なにを言えば・・・。いや、それこそ考えちゃいけないのかもしれないな。いってから、マヤちゃんの前で、その時思った素直な気持ちを、口にすれば・・・」 そういってシゲルは顔を上げた。 その時、決意を秘めたシゲルに、不意に、ヒカリが話し掛けた、 「私も、ご一緒してもいいですか?邪魔は、しませんから。」 普通に考えれば、邪魔もいいところである。 どう考えても、ここはシゲルとマヤを二人きりにさせてあげるべきである。 積もり積もった悩みがあるからと言って、そんな初歩的な事が分からないヒカリではない。 けれどそれでも、ヒカリはなにかを見届けたかった。見届けなくてはならなかった。 シゲルの見せた人間的弱さ、あるいは優しさ、そんな物がなにか、自分がなにか間違った物の見方をしていたのではないかと、気付きかけていたからである。 それに対して、確信が欲しかった。 だから、 「あ、ああ、いい、けど。」 無下に断る事もできず、シゲルはそうとだけ言うと、ヒカリと共に歩き始めた。 「大人にはできない事、子供だからできる事って、あるもんなんだな。」 ハルナと共に、シゲルとヒカリの後ろ姿を見つめながら、ポツリとマコトはそう呟いた。 「子供だって、色々大変なのよ。」 そんなマコトに、大人びた口調で、ハルナは屈託のない笑顔を見せた。 その笑顔は、マコトにとってもどこか救われるような、そんな笑顔であった。 「青葉さんに・・・洞木、さん?」 その時マヤは、正直奇妙な取り合わせだと思った。 ここに至るまでの経緯を知らなければ、確かにそう思うのも無理はないだろう。 ましてやその経緯の中枢に、自分の事がある事など、よもやマヤが知る由もなかった。 「あー、えーと、その・・・」 いざマヤを目の前にして、まるで昔のシンジのようになってしまったシゲルを見て、思わずヒカリは苦笑いを浮かべた。 けれど同時に、そのシゲルの姿は彼女の中の確信をより強めさせる。 「なにもさ、自分一人で何もかも、背負い込まなくてもいいんじゃないかな。」 「え?」 唐突なその言葉に、マヤは目を丸くし、外見とは裏腹のその話の持って生き方の稚拙さに、ヒカリは口元を抑えた。 だが、稚拙で、飾りのない言葉だからこそ、心に響く言葉というのはある。 ましてや、そのシゲルの言葉は、今のマヤにとって一番必要な言葉であったのだから。 それは確かに、シゲルの言葉である。だが、なぜかマヤは、この言葉こそが、メルキオールの言いたかった事なのだと、そう思った。 「自分一人で・・・」 「あ、だからさ、なんでもかんでも自分の中だけで片づけるのはよくないよ。うん。ってまあ、俺もさ、マコトにそうさっき言われたんだけどさ。」 それで、マヤは妙に納得がいった。 多分、マコトにその言葉を伝えたのは、他ならぬメルキオールなのだろうから。 二人が、どこかそういう関係にあったらしい事は、リツコから聞かされて知ってはいた。 自分自身で気付けないというのが、いかにもマヤらしい話ではある。 「人の思いって、どこかで繋がっていくものなのね。」 「し、司令だって、マコトだって、シンジくんたちだっているんだから・・・。それに、俺も、さ・・・」 普段なら、こう言う事はシンジやトウジ並に疎いマヤであるのだが、なぜかこの時だけは、シゲルの気持ちが分かる気がしていた。 たった一言、そのたった一言が、確かに彼女の中で何かを変えつつあった。 「ありがとう。」 そう言ってマヤは、柔らかな笑みを浮かべた。 思い悩むマヤを見て、それに手を差し伸べるシゲルの姿を見て、改めてヒカリは確信していた。 ここにいる人たち、かつて、そして今もネルフと呼ばれるその組織。 ヒカリにとって、それは雲の上の存在であり、尊敬すべき人々であり、そして、自分とは違う人々であった。 それが理由のすべてではないだろうが、そこに、マリィへのコンプレックスの原因があったのかもしれないのだと。 シンジもマナも、そして何よりトウジも、何らかの形でそのネルフという組織と関わってきた。 だが、自分は違う。 そこに、違う世界を勝手に作り出していたのかもしれない。 だが、今彼女の前にいるマヤやシゲルの姿は、自分と何一つ変わらなかった。 自分の無力さを嘆き、告げられなかった想いに迷い、葛藤する。 それは、ヒカリが思い描いていた、雲の上の人々の姿ではない、 自分と同じように悩み、自分と同じように誰かに想いを寄せ、そして、それを告げられずにいた。 なにも、変わらないのだ。 違うのは、自分を変えていこうとしたか、そうではないか。 それは何も、大層な決意を必要とするものではない。 自分の意志で、自分一人で変わっていこうとするのは、確かに大変かもしれない。 けれど、何もかも自分一人でやらなくとも、よいのだ。 自分には何もできない、というのは勝手な思い込みである。 確かに、自分一人ではなにもできないかもしれない。 けれど、人は一人ではないのだから。 無意識のうちに自分は何もかも一人でやろうとしすぎていたのかもしれない。 自分は一人だと、そう思い込んでいたのかもしれない。 そんな現状は、彼女に彼女の親友を思い起こさせた。 「私は、同じ過ちは繰り返さないから。だから、見ていてね、アスカ。」 |