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シンジの決断。 シンジらしい、といえばあまりにシンジらしいその決断は、つまり、何もしないことであった。 これって決断とは言わないのでは。 ご指摘ごもっとも、ただ状況に流されているだけである。 つまりシンジ君お得意の逃げである。 逃げることで、マナを忘れようとした。 消極的、という非難もあるだろう。 だが、シンジにとってはこれでも精一杯だったのだ。 初恋、と呼ぶにはあまりに辛い、苦い記憶を消し去ろうと、シンジはシンジなりに頑張っていたのである。 だが、エヴァンゲリオンという作品を知る方ならご存知であろう。 この作品、シンジが努力すればするほどにその逆の結果を生む。彼の苦労が報われた試しはないのだ。 今回もまた、彼の努力(?)は報われないことになる。 もっとも、結果的にその方が彼にとって幸せだったのは、なんとも皮肉な話だが。 ![]() にわかに、シンジの周りはにぎやかになっていた。 傷心のシンジを慰めてあげよう、という周りなりの配慮、に隠れたそれぞれの思惑があったためである。 特に以下の3人。 葛城ミサト、伊吹マヤ、そして惣流・アスカ・ラングレー。 もっともその目的は3人とも一致している。 この機に乗じてシンジをものにしようというのだ。 だが、先のマナの事件に際して、この3人のとったスタンスはまるで別のものであったが。 アスカの場合は、説明するまでもないだろう(鋼鉄のガールフレンドをプレイした人なら)。 シンジを好きなのに、それを素直に伝えられず、突然現れたライバルに訳もなく苛々とする。 ようは分かりやす〜いラブコメのヒロインそのものである。 その点マヤは大人である。シンジへの好意を表には出さないが、マナへのいらつきも出さず、静観していた。 大人の余裕というやつである。 さてもっと大人(失礼!)なミサトであるが、彼女は策士であった。 実のところ、マナの正体についてミサトは早い時機からその事実を掴んでいた。 それゆえ、やがて二人が引き離される、ということも計算済みであった。 それを踏まえた上で、ミサトはシンジとマナに理解を示すよきお姉さんを演じ、シンジに対しポイントを稼ごうと目論んだのである。 この目論見は半ば成功した。訳もなくいらつくアスカや、父ゲンドウへの反発も手伝って、唯一理解を示してくれたミサトへの好感度はかなりアップしたはずである。 ミサトにとっての唯一の誤算は、加持が最後にシンジをマナに会わせてしまったことぐらい(だから、アスカを炊き付けシンジをマナに会わせまいとした。いわゆる加持エンディングってやつですね・・・)だが、それも何とかかわした。 すべてミサトの計算どおりにことは進んでいた。 だ、が・・・・・・ その日、そんな3人の思惑、ことにミサトの策略を根底から覆すような事件が発生したのである。 「「フォースチルドレン?」」 ゲンドウとリツコの報告を受け、思わずアスカとミサトは叫んだ。 「なんで?まだ四号機もアメリカ支部も消滅してないじゃない。順番間違ってるわよ。」 アスカ、それを言っちゃあ・・・。 「何を言ってるの。この話は本編の流れとは関係なく進むのよ。」 「なにいってんのリツコ。」 「作者の言い訳よ。」 どうもすみませんねぇ。 「どっちにしろ、あのジャージバカなんでしょ、4人目は。」 実も蓋もないぞ、アスカ。 そのころシンジは、 『ジャージバカって誰のことだろう?』 ボケていた。 「紹介するわ。彼女がフォースチルドレンよ。」 そういってリツコが紹介したのは・・・。 「マナ!」 「フォースチルドレン、霧島、マナです。よろしくお願いします。」 「ってなんでアンタがここにいるのよ!」 「フォースチルドレンだから。」 「そうじゃなくて、軍に追われるからとか何とかいって、名前を変えて、知らない街で一人で暮らすとかなんとか言ってたじゃないの。」 「碇司令の判断よ。」 激昂するアスカを冷静に一蹴するリツコ。 全員の視線が一気にゲンドウへと集まる。 「どういうことですか、碇司令!?」 激しく詰め寄るミサト。内心、かなり焦っている。 「やっぱり、私がいるとご迷惑でしたか?」 そのマナの一言でミサトは我に返る。そしてこの状況が彼女にとって甚だ不利であるということに気付く。 ここで手のひらを返したようにマナを責めれば、せっかく築き上げた信頼を一気に崩してしまうことになる。 それを避けるためには、表向きとは言え、シンジとマナの仲を応援する。よきお姉さんでなくてはいけない。 ミサトは自らの策で墓穴を掘ったことに気づいた。 それにしても恐るべきはマナである。 彼女の言動はミサトのように計算されたものではない。 天然であり、これが彼女の"素"なのである。 だから余計に始末がおえない。 「野放しにするより、ネルフの監視下に置いたほうが安全だと考えたからだ。」 不意にゲンドウがそう言い放った。 だが、その結論こそがそもそもおかしい。 それは散々シンジやミサトがゲンドウに進言したことだからである。 もっともミサトは、その意見が一蹴されると、見越した上で進言していたのだが。 そしてミサトの思惑通り、ゲンドウはその意見を却下した。 ではなぜ、今になって? 話は昨夜に溯る。 「あなた、あなた!」 深夜、自分を呼ぶ声に目を覚ますゲンドウ。愛用の眼鏡を掛け、あたりを見渡す。 すると、そこにいたのは、 「ユ、ユイ!」 そこにいたのは、彼の妻、碇ユイであった。 その表情は心なしか怒っているように見える。 いや、その表現では適切ではない。額に青筋が浮かんでいるのだから間違いなく怒っているといったほうが正しい。 「あなた、何であの子をシンちゃんから引き離したんですか?」 口調こそ穏やかだが、静かな怒りが込められている。 ちなみに、ここでいう"あの子"とはもちろんマナのことである。 「い、いやそれは、作戦上というか、ネルフの機密を守るためというか・・・」 嘘である。 大体あのゲンドウがこれだけうろたえているのだ。ユイに頭が上がらないという点を除いても、何か心にやましいことがなければここまでうろたえたりはしない。 ほんとのところはユイによく似たマナが、シンジといちゃついているのが腹が立つから、なのだが、無論そんな事をユイの前で言えるはずもない。 「とにかく、あの子を連れ戻して下さい。」 いわなくともそんなことは百も承知のユイ。冷たく言い放つ。 「い、いや、しかし。」 「あの子はシンちゃんのお嫁さんになる子です。つべこべ言わずに連れ戻しなさい。」 なぜここまでユイがマナの味方をするかというと、これまた自分に似ているからである。 自分の息子が、自分に似た子を恋人にした、というのは母親としてなんとなく嬉しいらしい。 似ている、というならレイのほうが似てるはずなのだが、どうやらユイは自分の欲望のためにゲンドウが作り上げたレイが、お気に召さないようだ。 「は、はい。」 ユイに冷たく見下されるゲンドウ。この状況で、ユイに抵抗できるはずもなく、ゲンドウは不承不承ながらマナを連れ戻すことを了承した。 以上が事の顛末である。 無論、ネルフ司令としてのゲンドウが、そんな事を言えるはずもない。もっとも、 『ユイ君に脅されたな。』 『ユイさんに脅されたわね。』 冬月とリツコにはしっかり見透かされていたが。 「でも・・・」 今までおとなしくしていたマヤが口を開く。 「マナちゃん、何に乗るんですか?」 もっともな疑問である。エヴァは現在3機。たいしてパイロットは4人。当然一人あまる。 「いいです。私シンジと一緒に乗りますから。」 笑顔で、しれっとマナはそう言い放つ。 もちろん牽制とかは考えていない。ただ単にシンジといつも一緒にいたいという素直な欲求の表われである。 「「「「絶対に駄目!」」」」 当然この突っ込みが返ってくるが。あれ、一人多いな。 「しょうがないわね。」 おもむろにアスカが口を開く。 「あんたには弐号機を貸してあげるわ。それでもって私がシンジと・・・」 ドゲシッ アスカが台詞を言い終わる前に、何者かの蹴りがアスカの後頭部を直撃する。 「いったーい。誰よもう。」 そう言って振り返るアスカ。 「ゲ、ファースト。アンタいたの。」 そこにいたのはレイであった。昨晩のユイと同じところに青筋が浮かんでいるのは偶然だろうか。 「碇君は私と一緒に乗るの。」 唐突なレイ。 「あんたねえ。人に蹴り入れといていきなり何を言い出すのよ。」 だが、そのアスカの台詞も、まったく意に介さないレイ。というかはなからアスカのことなど眼中にはない。 「碇君、あなたは大事なことを忘れているわ。」 どっかで聞いたなぁ、この台詞。 「父さんから与えられた使命のことだろ?」 さすがに同じやり取りも2回目ともなると、スムーズに答えを返せるシンジ。もっとも言いつつ自分の言葉に納得しているわけではないが。 「違うわ。」 「え?」 「あなたは、私のお婿さんになるの。」 「「「「ええー!」」」」 さすがに驚く一同。そうかレイの大切なことってそうだったのか。ということはマナがいるときに不機嫌そうな顔してたのはひょっとしてやきもち? 「ちょ、ちょっとなんでそうなるのよ。」 アスカの疑問はもっともである。 「だって・・・」 ポッと顔を赤らめるレイ。 「私、碇君に裸を見られた上に、押し倒されて、胸までもまれてしまったんですもの。」 「な、なにー!!!!」 ひときわ大きな声を上げるゲンドウ。そのこぶしは怒りに震えていた。 だが、一同はそんなゲンドウのことなど既にかまっちゃいない。 「あ、あたしだって裸ぐらい見られたことあるわよ。」 対抗意識を燃やすアスカ。それにしてもいったい何を張り合ってるんだか。 「わ、私なんか一緒にお風呂までは言って、キスだってしたんだから。」 マナも続く。 あれ、でもこれおかしいぞ。温泉とキスはシナリオ上両立しないんじゃ。(鋼鉄のガールフレンド参照) 「いいんです。温泉でキスしたんです。」 あ、そうですか。 「裸ぐらい、いつだって見せてあげるわよーん。」 とはミサト。言いつつおもむろに服を脱ぎ始める。 「「「おおー!」」」 思わず興奮する男性陣。 「ナニ馬鹿なことやってんのよ!」 だがアスカがすかさずミサトに突っ込みを入れ、止めさせる。 「チッ。」 思わず舌打ちをするゲンドウ。 『まあいいわ。シンちゃんを誘惑するチャンスはいくらでもあるし。しかし結構シンちゃんもやるわねえ。』 おとなしく引き下がったと思ったらこんなことを考えているミサト。 一方、 『不潔よ、不潔だわ。でも、シンジ君をものにするためには私も脱がなきゃいけないのかしら。ああ、でも、こんなみんなの前で・・・』 妄想が暴走しているマヤ。ま、それはそれで嬉しい展開かもしれないが。 「あのー。」 とうとつに青葉。いたのかこいつ(ひでぇ)。 「なんか論点がずれてきてるような気がするんスけど。」 その言葉でハッと我に返る一同。とりわけゲンドウの立ち直りは早く、すかさずいつものポーズを取る。 「問題ない。」 『何が問題ないだ。そもそもおまえがユイ君に頭が上がらんのが原因ではないか。』 と冬月は思ったが、さすがに口にはしない。 「何か言ったか、冬月。」 「い、いや。」(冷汗) 自分の悪口には妙に敏感なゲンドウであった。 「アメリカから参号機をもらう手はずが整っている。」 「参号機、ですか?」 思わず聞き返すミサト。その横でなぜか嬉しそうなアスカ。 「霧島マナ、これであんたも終りね。参号機は使徒に取り付かれ暴走、あんたはシンジにめちゃめちゃにされるのよ。」 勝ち誇ったようなアスカ。だから本編は関係ないってゆーとろーが。 「シンジに、シンジに・・・」 動揺しているようなマナ。 「シンジに犯されちゃうなんて!」 結構めげない子だねぇ。それにしても、犯される、といいつつその表情はなぜか明るかったりする。 「ちがう!死にそうな目にあって、片足を失う羽目になるのよ!」 ご丁寧に説明をしてくれるアスカ。 「で、罪の意識を感じたシンジは、一生私のそばにいると誓う、と。」 やっぱりめげないマナ。だがその指摘は実に的を得ていたりする。 というかシンジの性格を見抜いているとも言うが。 そしてアスカもその指摘の正しさに気づく。 「ちょ、ちょっとタンマ。あたしが参号機に乗るわ。」 下心みえみえのアスカ。 「で、碇君に殺されるのね。」 「死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤー、って何でアタシだと殺されなきゃなんないのよっ!」 「それが作者の方針だから。」 い、いや別にそんなわけじゃないんですけど。 「とにかくシンジはアタシのなの!」 「いいえ、私のよ。」 「いやでも設定上私が恋人なんだし」(どこぞに書いてあったが、公式にシンジの"恋人"という設定があるのってマナちゃんだけなんだよね) 「中をとってお姉さんが。」 「おばさんは黙ってて。」 「あ、あの、わたしは。」 「若作りしたってあんたもシンジと10歳も違うじゃない、却下よ却下。」 (以下延々と続く) さてそのころ、当の碇シンジは。 「はぁ。」 これから始まる阿鼻叫喚の日々を思い、途方に暮れていた。 −つづく <次回予告> 安息の日々は終りを告げた。 シンジの横をめぐって新たな戦いが巻き起こる。 果たしてシンジは誰を選ぶのか。 次回『究極の、選択を』 君はシンジの涙を見る。 「誰か助けてよぉ」 |