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さてさて、結局もめにもめた挙げ句、ゲンドウの一存で、マナはシンジとともに初号機に乗ることとなった。 え、なんでそうなったかって? それはゲンドウだけが知っている。 決して、後ろでユイがにらんでたからとか、ユイにそうしろと脅されたからとかいう理由ではない。 と、いうことにしておこう、ゲンドウの名誉のために。 裏の事情がどうあれ、仮にもネルフの最高司令である。 納得はできなくとも、その決定には従わざるをえない。 しぶしぶながらもアスカたちはそれに従った。 ゲンドウを見るレイの視線が妙に冷たかったのが印象的であるが。 ちなみにいうと、一番不幸だったのは初号機を2人乗りに改造する羽目になったリツコと、それを手伝わされるマヤであったことを付記しておく。 ![]() さて、これで問題が収まったかと云うと、実はこの後にもっと大きな問題が控えていた。 マナの住む場所である。 建前上の問題もあるので一人暮らしというのはまずい。 一応は監視、という名目の元、誰かと一緒に住まわせる必要があった。 といっても加持、青葉、日向などといった若い男性陣は、(特に加持の場合は)いくらなんでも危険なので論外。 残るはゲンドウ、リツコ、冬月、マヤ、そしてミサトである。 レイと二人暮らし、という線もあるのだが、一応更なる建前として、"保護者"という肩書きが必要となるので同い年のレイは却下。 というわけで上の4人のうちの誰かがマナを引き取ることとなるのであった。 ここでまたもめる。 まず真っ先に切り捨てられるのはゲンドウ。実のところ加持以上に危険である。 ゲンドウとしてはそういう思惑もないではなかったが、さすがにユイが怖いのでそれは止めた。 安全、といえば冬月は安全なのだろうがゲンドウもそうだが何しろ冬月は家に帰らない。 監視、保護者、など建前に過ぎないし、マナなら一人でもやっていけるのだが、それではわざわざ引き取る意味がない。 そういった意味で、リツコも外れる。 残るはミサトとマヤであった。 普通に考えればミサトが引き取るのが妥当なのだが、ミサトとしてはそれは避けたい。 もちろん、この時だけはアスカも反対する。 ミサトが引き取る、ということは必然的にシンジと一緒の家に住むということになるのだから。 が、マヤとしては甚だ迷惑な話である。 シンジを狙っている、という点では彼女もミサトやアスカと同じ立場なのだからマナを引き取る、ということに関しては実は問題ない。 問題なのは次の一言であった。 「シンジ君も一緒なら、ひきとってもいいです。」 「ちょっと、何でそこでシンジが出てくるのよ。」 「そ、それは。」 さすがにミサトやアスカばっかりずるいから、とは言えない。 「まあ私は、シンジと一緒ならどこでも。」 妙なところからマナの援護。 「ほ、ほら、マナちゃんもそういってるし。私はマナちゃんとはあんまり親しくないから、シンジ君がそばにいたほうが安心するかなぁ、なんて。」 「却下よ、却下。」 「だいたいあたしとシンちゃんだって最初っから親しかったわけじゃないわよ。それでもうまくいってるんだから大丈夫よ。」 うまくいってるのはミサトにとってだけだろうが。 「えー、でも私やっぱりシンジと一緒がいいです。シンジはどう、どっちと住みたい?」 一同の視線が一気にシンジへと集中する。 「え、っと、ぼ、僕は別にどっちでも。」 相変わらずの優柔不断な意見にガクッとするミサト、アスカ。 「あんたねぇ、男だったらはっきりしなさいよね!」 実はシンジの心は決まってた。だいたい今の状況と比べれば、マヤ、マナの元にいるほうか遥かにいい。 マヤもマナも家事はそこそこできるのだから、シンジが一人で苦労する必要はないし、何よりミサトにからまれることも、アスカにどつかれることもなくなる。 天国のような状況ではないか。 思い残すことがあるとすれば、ペンペンのことぐらいだが、彼はシンジが来る前から葛城家にいたのだからなんとかなるだろう。 だが、シンジにはそれを口にすることはできなかった。(怖いから) 「シンジ、私のことキライ?」 悲しそうな顔をシンジに近づけるマナ。 「そ、そんなわけないじゃないか。す、好きだよ。」 「じゃあ、私と一緒に暮らそ?」 「え、あ、あの。」 『うん。』と言いそうになるが、鬼の如き形相のアスカを見つけ、なんとか思いとどまる。 ちなみにマヤは、不本意ながらマナを応援していた。 「どっちにしろ、私はシンジのお嫁さんになるんだから、一緒に暮らしても何も不自然じゃないでしょ。」 「そ、そうだね。」 実は深く考えてないシンジ。例によって状況に流されているだけである。 つくづく主体性のないやつだな。 そして、言ってから自分の言葉の意味に気付く。 「て、ええー!」 気付くの遅すぎ。 「ほ、ほら、だからやっぱりマナちゃんとシンジ君は一緒にいないと。」 本当は気を失うほどショックだが、とにもかくにもシンジの身柄を確保しなければならないマヤ。 悔しいがここはマナを利用することにする。 「わかったわ。」 こちらも大人の(ふりを必死で装う)ミサト。 「霧島さんはうちで引き取ります。」 「で、でも、それじゃ葛城さんが大変でしょう。」 「大丈夫、マヤ、あんたはアスカを引き取ってくれれば。」 「て、ちょっとミサト、何でアタシが巻き込まれなきゃいけないのよ!」 「しょうがないじゃない(あたしとシンちゃんの生活を守るためには)。うちだって広くはないのよ」 「じゃあミサトが出て行けばいいじゃない。加持さんのところへでも。」 「あそこはあたしの家!」 「何なら俺がシンジ君を。」 「「却下!!!」」 おそらくはこの場における最良の意見を口にした加持であったが、あっさりと却下される。 「仕方ないわね。間を取って碇君はうちで暮らすということで。」 「なんでそこでいきなりファーストがでてくんのよ。」 「子供は引っ込んでなさい!」 「おばさんこそ黙ってて。」 「誰がおばさんよ!あたしゃまだ30前なんですからね!!」 「でもおばさんだわ。」 結局また収拾がつかなくなる。 「どうなるんスかね。」 「さあね。」 人事のようにお茶をすする日向、青葉、加持、そしてリツコ。 ちなみに同世代のミサトがおばさん呼ばわりされていることも他人事のようである。 というか自分は関係ないと思っているらしい。 この事態を収拾できるもの、不本意であるがそれは一人しかいない。 知らず知らず視線はゲンドウへと集まる。 「仕方あるまい。葛城三佐、君が3人とも面倒を見たまえ。」 「3人とも、ですか?」 「家については私のほうで手配する。少しの間我慢したまえ。」 「はあ。」 ゲンドウにそういわれてはミサトも承諾するしかない。 もっとも落胆していたのはミサトよりもむしろ、マヤとレイのほうだったが。 「ふう。」 葛城家、シンジの部屋。 喧騒から解き放たれ、ようやく一息つくシンジ。 落ち着いて今日の事を考え直してみる。 「なんであんな騒ぎになっちゃったんだろ?」 考えるだけ無駄だった。 「でも、マナが、帰ってきたんだ。」 冷静になって考えてみれば、それはとてもとても嬉しいことである。但しシンジにとってだけだが。 「マナ…」 「なに?」 「って、うわぁ!」 考えていたところに当の本人が現れ、大袈裟に驚くシンジ。 マナが自分の家にいることなどすっかり忘れている。 「私のこと呼んだ?」 「ち、違うよ。」 「なあんだ、つまんない。」 そう言ってマナはうつむく。 「やっぱり、迷惑だった?」 それがマナの本心である、はしゃいで、シンジにひっついてみても、結局彼女の中にはそう言う不安がある。 「そんなことないよ。マナが帰ってきてくれて、ほんとに嬉しいよ。」 そう言って笑顔を見せるシンジ。その笑顔がどれだけマナを安心させるか、そんなことにはまったく気付いていない。 なお、くどいようだが嬉しいと思っているのはシンジだけである。 「シンジ…」 「マナ…」 次第にお互いの距離が近づいていく。 しかし、 「こんにちはー!」 思わす離れる二人。 ま、コメディなんてそんなもんだ。 「はーい。」 なぜかシンジが玄関へと出る。 なぜならミサトやアスカはそういったことを含め、家の事を何もしないからだ。 玄関に立っていたのは、 「綾波、にマヤさん。」 微妙なその順番に、むっとするマヤと、嬉しそうな表情を見せるレイ。 「どうしたんです、こんな時間に。まさか使徒?」 「そ、そうじゃないのよ。」 見ると何やら大きな荷物を抱えているマヤ。 「えーとね。」 「あら、マヤにレイ。何しに来たの?」 玄関での話し声に気付き、ミサトとアスカも出てくる。 「あ、あの、葛城さん一人じゃ大変だろうと思って、私もここに住むことにしました。」 「はあ?」 「だって、一人で3人の面倒を見るのって大変でしょう?」 そんなことはない、なぜならミサトのほうが面倒を見てもらっているからだ。 大変なのは一人でこの家を切り盛りしているシンジのほうである。 マナの加入、というのは面倒が増えるというより、むしろ減るといったほうが正しいかもしれない。 「で、ファーストはなんでここにいるのよ。」 例によって敵愾心をむき出しにして、アスカが問う。 「だって、夫婦は一緒に住むものだって碇司令が。」 「あのひげおやぢ、って誰と誰が夫婦なのよっっ!」 「私と碇君。」 「あんたねえ!」 「ひどいわシンジ、私というものがありながら、綾波さんにまで手を出していたなんて!」 「ち、違うよマナ、誤解だって。」 「誤解…碇君は私のことがキライなのね。」 「あ、綾波。そんわけないじゃないか。」 「やっぱり二股かけてたのね。」 所詮シンジにこいつらを制御できるはずもない。 「ま、百歩ゆずって一緒に住むのはいいとして。」 これで自分が家事をやらなくてもいいと前向きに考えるミサト。 もっとも今でもやってるわけではないと思うのだが。 「うちも空いてる部屋がないのよ。あんたたちどこで寝るつもり?マナちゃんだって寝るとこないのよ。」 「「「それは(シンジorシンジ君or碇君)の部屋で。」」」 異口同音に答えるマナ、マヤ、レイ。 「アンタたちねえ!」 「ま、いいわ。」 激昂するアスカに対し、やけにあっさりと承諾するミサト。 「で、シンちゃんはあたしの部屋で寝ると。」 「なんでよ!」 「シンちゃんの部屋に4人も寝れるわけないじゃない。3人が限度ね。」 言ってることはもっともだが、やろうとしてることは鬼畜なミサト。 だが、 「いやです。」 珍しく、実に珍しく、きっぱりと拒絶するシンジ。 「なんでよシンちゃん!」 嘘泣きするミサト。 「ミサトさんの部屋は人の住むところじゃありません。」 じゃあミサトは人じゃないのか… 「そんな、作者の部屋だって同じようなもんじゃない!」 余計なお世話だ。 「語るに落ちたわねミサト。作者の部屋と同じという時点でそこは人の住処ではないわ。」 「そうね、何しろ作者の部屋は、12畳という広さを誇りながら、足の踏み場がないという壮絶なものだもの。」 ほっといてくれ。 「とにかく、僕は自分の部屋で一人で寝ます。」 「シンちゃん、そんな我が侭が通ると思ってるの?」 いや女5人に男1人ならこの方が当然では… 「えー、私と一緒じゃないのー。」 「碇君、私と一緒はいやなの?」 「シンジくん、1人だと危険よ。」(なにが?) 「とにかく、バカシンジはアタシの言うことを聞いてればいいの。」 意見などまったく聞いてもらえないシンジであった。 だが、しかし。今日のシンジはここからが一味違っていた。 さすがに身の危険を感じたのが、すばやく自分の部屋へともぐりこむ。 そして襖をぴしゃりと閉める。 「そんなことをしても無駄よシンちゃん。」 「大体鍵もついてないのに立てこもってどうするのよ。」 「シンジ君、何もしないから。」(嘘である) だが、鍵もついてないのは事実だし、アスカたちのパワーを持ってすれば、防ぎきれないのもわかりきっている。しかし。 「こんなこともあろうかと。」 懐から何かを取り出すシンジ。あのね、真田さんじゃないんだから… 取り出したものを襖に取り付ける。 「開けるわよ!」 そういってアスカは襖に手をかける。 が、予想に反し、襖はビクともしない。 「ちょっとシンちゃん。なにをしたの!?」 フフフ、と部屋ん中でほくそえむシンジ。 「リツコさんに頼んでちょっとした鍵を作ってもらっらんですよ。タイマー式のね。朝がくれば自動で開きます。」 どういう原理で襖に鍵をかけたかは謎。まあリツコの作るもんだし。 「開けなさい!」 「無駄ですよ。一度掛けたら僕にも解除はできないんです。朝までね。」 「先輩ったら、余計なことを。」 「はん、鍵を掛けたって、襖ごとぶち抜きゃ問題ないわ!」 そういってアスカは、助走をつけ、飛び蹴り喰らわす。 だが、 バシィッという音とともにアスカが跳ね飛ばされる。 「ATフィールド!?] 「無駄だといったでしょう。EVAでも持ってこない限り、ここを打ち破ることはできません!」 いくらなんでもそれはできない。部屋の中で勝利を確信するシンジ。 「くっ、今日のところは仕方がないわね。」 どうやら、第一戦はシンジの勝利に終わった、ように見えた。 「ふう、これでゆっくり寝れるよ。」 「「そうね。」」 その声に慌てて振り向くシンジ。 「マナ、に綾波…」 いつの間にやらしっかりとシンジの部屋にいる二人。 逃げよう、と咄嗟に思ったが、何しろ鍵は朝まで開かない。 シンジ、絶体絶命の危機である。 「さあ、もう寝ましょう。明日も早いわ。」 「寝よ、シンジ。」 「ちょ、ちょっと待ってよ。」 そんなシンジなどお構いなしに、服を脱ぎ出す二人。 「な、なんでそんなかっこ。」 「だって、パジャマとかもってきてないし。」 「いつも、寝る時はこの格好だもの。」 下着姿のまま平然としている。 うろたえてるのはシンジばかり。 「と、とにかく、二人ともパジャマを貸すから、それ着てベットで寝てよ。」 「シンジは?」 「僕はいいよ。その辺で毛布にくるまって寝るから。」 「駄目よそんなの。」 「そうね駄目ね。」 妙に気の合うマナとレイ。 当人たちもその事に気付いたらしく、 「綾波さん、一時休戦にしません?」 「そうね。」 その雰囲気にさすがにシンジも危険を感じたが、何しろ逃げ場がない。 あっさり捕まって両脇を捕らえれれてしまう。 「さ、寝ましょ。」 あっさりとマクー空間、もといベットの中に引きずり込まれるシンジ。 考えようによっては、いや考えなくとも間違いなく、羨ましい状況なのだが、シンジには違ったようだ。 「誰か助けてよぉー」 声は外に筒抜けなので、突入したいのは山々なのだが、何しろリツコ印の超強力ATフィールド付きロックによって、頼みの(?)アスカもミサトも中へ入ることができない。 結局シンジは一晩、眠れぬ夜を過ごすことになった。 翌朝彼らはこう語ったという。 「シンジったら激しいんですもの(はあと)」 「碇君があんなことするなんて(ポッ)」 「誤解だー、僕は何もしてない!」 なにがあったかは読者の想像に任せるとして。 「それじゃなお悪いじゃないですか。」 どっちにしろアスカやミサトが見逃してくれるはずもないわけで。 翌朝の彼女たちの追求、もとい拷問は熾烈を極めたという。 教訓。策士策に溺れる。馴れないことはするもんじゃない。 「助けてぇ。」 −つづく <次回予告> マヤとマナのおかげで家事から解放されるシンジ。 彼は束の間の平穏な時を迎える。 その状況を挽回すべく、アスカとミサトも料理に挑戦する。 次回『女の、戦い』 シンジは、生き延びることができるか。(永井一郎調で) 「なんで僕ばっかり。」 |