ED4




「バカシンジ!シャンプーの買い置きがないじゃない!!」
その日の葛城家の朝は、そのアスカの叫びから始まった。
朝食をとるため、食堂に集まっていた一堂は、風呂場の方を見やる。
「ちょっとシンジ!」
バスタオル一枚の姿で飛び出してくるアスカ。
朝っぱらからシンジに難癖をつける。
だからさあ、文句言うぐらいなら少しは家事を・・・手伝うともっと大変か。
文句を言いながら、あまりに激しくリアクションをとったため、巻いていたバスタオルがハラリと床に落ちる。
「あらま、だいた〜ん。」
「きゃー、エッチ、変態!」
自分から見せといてそれはないでしょう。
文句をつけつつ、その視線はちらりとシンジを見る。
が、
「シンジくん、不潔よ。」
「碇君、目が腐るわ。」
「私以外の女の子の裸なんて見ちゃ駄目。」
3人がかりで目隠しをされていた。
「うう、何も見えない。」
「ちょ、ちょっとアンタたち、何してるのよ!」
「ひょっとしてアスカさん、シンジに見てもらいたいんですか?」
鋭いマナの突っ込み。
「不潔。」
「そ、そんなわけないでしょう!アンタじゃあるまいし。」
「私の場合はいいんです。いずれシンジのお嫁さんになるんですから。ね?」
ね、っていわれてもねえ。どうする、シンジ君。
「え、ああ、うん、そうだね。」
「なによ!バカシンジが!」
パシッ、と結局見ようが見まいがひっぱたかれる運命のシンジであった。







「おす、シンジ。」
「ようシンジ、おはよう。」
「おはよう・・・」
「どうしたんだシンジ?その顔。」
「べ、別に何でもないよ。ケンスケ。」
腫れた頬をさすりながらシンジが答える。
「アタシの素肌を見た罰よ。」
後ろからきたアスカが、ぶっきらぼうにそう言う。
「なに?本当かシンジ。」
目隠しされていたので、実は見ていないシンジ。
「み、見てないよ。」
「男らしく認めなさい!」
ほんとに見てないのにねえ。
「第一アスカの裸なんて見る価値はないわ。」
「そうそう、シンジには私がいるんだし。」
おんなじ声で火に油を注ぐ人たち。
「ま、続きは教室で、ということにして。そういや知ってるか?今日転校生が来るんだってよ。」
なぜかそういった情報に詳しいケンスケ。
女の子が転校してきて、自分にも彼女が、という淡い、実に淡い期待があることは言うまでもない。
悲しいな、ケンスケ。






「短い間だとは思いますが。よろしくお願いします。」
控えめな声で、山岸マユミはそう挨拶をした。
「山岸さんの席は、洞木さんの隣が空いていますね。」
促され、マユミはヒカリの横の席につく。
『転校生、か。』
そんなマユミをシンジはボーっと見つめる。
そのシンジの視線に気がついて、マユミのほうがシンジの視線から目をそらす。
思わず気まずい思いをするシンジ。
だが今、自分が置かれている状況がそんな些細なことよりよっぽど大変だということには気付いていない。
え、どんな状況かって?
そりゃもう。
背中にメラメラと嫉妬の炎をしょったアスカと、対照的に絶対零度かと思えるような冷たいオーラを放っているレイ。
でも一番怖いのは、にこにこと笑いながら、シンジの腕をつねっているマナかもしれない・・・






しばし時間が経過して、体育の時間。
男子はグラウンド、女子はプールで水泳の授業をしていた。
そういやいつも女子だけ水泳だな。
ま、男の水着姿なんて見たくもないからいいけどさ。
シンジもそう思ったのかどうかは知らないが、知らず知らずのうちにその視線はプールのほうに向いていた。
そして、こういうことに過敏なのが約一名。
「バカシンジ!なにアタシのこと見てんのよ!!」
本当は見て欲しいくせに、と思ったのはマナやヒカリばかりではないだろう。
「べ、別にアスカの事なんて見てないよ!」
言い訳としては実に正しいが、アスカの気持ちを考えればまったくの逆効果になる。
でも、見ていた、って言ったらきっとモップが飛んでくるんだろうけど。
「自意識過剰ね。」
「あ、綾波さん。」
きついレイの一言に、うろたえるのはやはりヒカリただ一人。
「そうよね。だいたいシンジが見てるのはと決まってるんだから。うん。」
シンジの愛情を微塵も疑わないマナ。
「ア、アンタたち!」
「ああー、アスカもマナもやめてよ〜」
そんなヒカリの叫びも空しく、第?次直上会戦が勃発する。
使徒よりおっかなそうだな。
「えーと僕の立場は?」
呆気に取られるシンジ。
そしてマユミもまた、このノリにはついていけなかった。






そして昼休み。
昼食を終えたシンジは、珍しく図書室に来ていた。
この時代になると、本もすべてデータ化されているため、本物の本、というのを読む者は少ない。
ただ、懐古主義、というかそういった本の雰囲気を楽しみたい者もいて、学校から図書室がなくなとこともなかった。
ただし、それがごく少数であることも確かで、図書室は普段から人影のないところになっている。
古びた本棚の間を、そこに並べられた本を見上げながら、シンジは歩いていた。
すると、
「あっ。」
よそ見をしていたため、誰かにぶつかってしまう。
「ご、ごめんなさい。」
慌ててぶつかった人の方を見る。
「君は。」
そこに倒れていたのは、今日来た転校生。名前は確か、山岸マユミとか言っただろうか。
ぶつかった拍子に、持っていた本が床へと散らばる。
「す、すみません。私の方こそ。」
マユミは慌てて起き上がると、散らばった本を拾い集める。
「手伝うよ。」
「本当にすみません。」
そういってマユミは顔を上げる。
「あなたは、確か同じクラスの・・・」
「碇、碇シンジ。」
話ながらであったためか、その瞬間、思わず二人の手が触れ合う。
「「あっ」」
「ほ、本当にすみません。」
真っ赤になって謝るマユミ。
「なんだか謝ってばかりだね。」
自分に似てるな、とシンジは感じた。
「そうかもしれませんね。本当にすみませんでした。」
最後にもう一度マユミは謝ると、出口の方へ走っていく。
図書室で走ってはいけません、というチャチャはおいといて、シンジはその後ろ姿を見つめていた。
さて何かお忘れではないだろうか?
そう、この話がここでまともに終わるはずはないのである。
さて教室に戻ろうかと振り返ったシンジの目に映ったものは・・・
「ゲッ、ア、アスカ・・・ひょっとして見てた?」
「ゲッ、とはなによ。」
鬼の様な顔をして立ちふさがるアスカ。
その軒並みならない雰囲気に思わず後退するシンジ。だが、
ムニュっという感触がして、後ろに下がれない。
恐る恐る後ろを振り向く。
「もう、シンジッたらエッチねえ。」
声こそ穏やかだが目が笑っていないマナ。
そして、
「裏切ったわね。碇君。」
いつの間にかこの世のものとは思えぬ形相で、レイが目の前に立っていた。
シンジの運命はもはや風前の灯火であった。
合掌。


そのころ、
「碇君、か。」
そんなシンジの惨状などつゆ知らす。マユミはシンジのことを思い返していた。






「パターン青、使徒と確認。」
ネルフ司令室にマヤの声が響き渡る。
モニターを前にミサトとリツコは怪訝そうな表情を浮かべていた。
久しぶり、というか初めてじゃないか?こんな真面目そうなミサトって。
「ここ数日地下に潜っていたものの正体はこいつだったのね。」
「モグラ使徒と命名してあげましょう。」
「ちょ、ちょっとリツコ。そんなこと言ってる場合じゃ。」
「真面目にやったって見せ場があるわけじゃないもの。」
そんな実も蓋もない。
「それもそうね。」
それで納得するなよ。
何を納得したかは置いといて、ミサトはケイジと連絡を取った。
「愛しい愛しいシンちゃーん。聞こえてますかー?」
・・・返事がない。
「こらシンジィー!」
「ミサトさん、怒鳴らないで下さい。シンジは今日調子が悪いんですから。」
シンジの代わりに一緒に初号機に乗っているマナが答える。
ちなみにシンジの調子が悪いのは・・・3人がかりで拷問を受けたからなのだが・・・
ああ、痛々しい。
当然自分のやったことは棚に上げ、マナはシンジをいたわる。
アンタもやっとったろーが。
「とにかく出撃!」
あまり長引かせるとまたマナとシンジがいちゃつくので、ミサトは出撃命令を出す。
戦闘中ならいちゃつく暇もないだろうというのがミサトの考えであった。
甘いぞミサト。作者がマナちゃんの味方である以上、どこででもいちゃつくチャンスはあるのだ。
ま、そんなことはおいといて、そういやゲンドウはなにしてる。アンタ司令だろう。
「全ては葛城三佐に一任してある。」
単にこの間の騒ぎ以降、信頼が失墜しているだけじゃあ・・・
「問題ない、全て予定通りだ。」
ああそう。


そんなネルフの内情はともかく、とにもかくにも使徒は倒さなければならないわけで、ズタボロのシンジ&マナの初号機、アスカの弐号機が出撃する。
レイはお留守番。
さてただでさえ独断専行型のアスカ。今日なぞ初号機のメインがマナなので協調しようなどという気はさらさらない。
当然の様に突進し・・・危機に陥るのであった。
「無様ね。」
「やられるまでの所用時間27秒。新記録ね。」
「アスカを助けなきゃ。」
心配しているのはシンジのみ。でもよかったね、シンジが心配してくれて。
だが、
「まってシンジ。」
アスカを助けに入ろうとするシンジを止めるマナ。
エントリープラグの中はお世辞にも広いとは言えないので、当然体が密着する。
役得だねえ、シンジくん。
「ああ、シンジ、もっと・・・ってそうじゃなくって!!」
ほんとはそのまま身を委ねていたいのだが、かろうじて理性がマナを押しとどめる。
そして、
「あそこ!」
モニターには、使徒の足元で右往左往しているマユミが写っていた。
「山岸、さん・・・」
その微妙な物言いに、ちょっとムッとするマナであったが、ともかく人命優先である。
まあ、ほんの少しだけ、マユミを踏み潰したい衝動もあったが。
「って、アタシはどうなるのよ!」
「「「「民間人が優先に決まってるでしょう。」」」」
マナだけでなく、レイ、ミサト、果てにはマヤにまで突っ込まれるアスカ。
どうやら見捨てられたらしい。


結局マナの判断は正しく、マユミは無事救出。使徒もシンジとマナの力によって撃退された。
「見たか、愛の力。」
そう、エヴァンゲリオン初号機は愛の力で動いている・・・ってそんなわきゃないだろ!
「ちなみに決まり手は石破ラブラブ天驚拳でした。バーイ霧島マナ。」
違うだろーが!


ちなみに見捨てられたアスカは・・・
「私はいらない子なのね・・・」
いじけていた。




−つづく




<次回予告>
再びあらわれる使徒。
転校生、山岸マユミに秘められた謎とは?
シンジは、マナは、マユミを救うことが出来るのか。
次回『遥かなる福音(後編)』
来週もこのページで、ファイナルフュージョン、って一週間で次の話が出来るのか?





あとがき

ジェイ:見ての通りセガサターン版。
マユミ:ようやく私にも日の目が。
ジェイ:当たると思う?
マユミ:ですよね・・・しくしく。
アスカ:いいじゃない、アタシよかマシなんだから!
マユミ:比較対象がアスカさんじゃあ、救いにならないです。
マナ:さて次回は?
アスカ:あ、こら、かってに話を進めるな。
ジェイ:次回はちょっとシリアス目に。ほんとーにシリアスに、シンジ、マナ、マユミ中心で。
アスカ:アタシの出番は?
マナ、マユミ:きっとないでしょう。
アスカ:やっぱりアタシが一番不幸。しくしく(←ウソ泣き)







新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。

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