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15年前に話は戻る。 「マナが、死んだ?」 それは、あまりにあっけない、死であった。 ただの事故。 ただ、階段から落ちた、それだけの事である。 ほんの少し、運と、打ち所が悪かっただけ。 だが人の命などというものは、往々にしてあっけなく終わるものであった。 「マナ、マナ。」 愛する人の亡骸を前に、シンジはただ、泣くことしか出来なかった。 ![]() 「約束したじゃないか、僕の、お嫁さんになってくれるって。」 むう、いつの間にそんな。 でもチャチャを入れる雰囲気じゃないな。 だが、後ろで控えるミサト、レイ、アスカたちのおでこには、確かに青筋が浮かんでいる。 怒ってる怒ってる。 「しょうがないわシンジくん。何を言っても、死んだものは帰ってこないのよ。」 そう慰めるミサト。 だがそういうミサトの心の中は、実は喜びと怒りが半々であった。 前者はもちろん最大のライバルがいなくなったため、後者はいつの間にかシンジとマナは結婚の約束をしていた、と知ったため。 どっちにしても不謹慎である。 だが、内面はどうあれ、ミサトの言っていることは、実に正論であった、 人はいずれ死に逝くものである。 それが早いか遅いかの違いしかない。 そして例外なく、死んだものは帰ってこない。 死んだものを悔やんでいても、何も変わりはしないのだ。 死んだものにとらわれて、生きているものまで人生を捨てる必要なないし、死んだものとて、そんな事を望んではいない。 だが、確かに正論であっても、それが今のシンジの耳に届いているかどうかは、定かではなかった、 余談であるが、あくまでマナは事故死である。 ミサトが突き飛ばしたとか、レイがATフィールドで弾き飛ばしたとか、アスカがとどめを刺したとか、マヤが一服盛った、とかいう事は、多分、ない。 リツコが何かの実験に使った、とかいう事は・・・否定できないな。 その日を境に、シンジは見る見るやつれていった。 それも無理のないこてであろう。 彼の受けた精神的なショックは、他人にはわりうるはずもないのだから。 だが、いつかは立ち直らなければならない。 そうでなければ、新たな悲劇を生むだけだから・・・ そう、悲劇。 シンジが家事を放棄したため、葛城家の内情は惨澹たるものとなっていた。 え、そうじゃないって? そして、追い討ちをかけるように、レイが、シンジの前で死んでいった。 マナを失い、自分の殻に閉じこもっていたから。 ただ一人、出撃したレイを、誰も守ることが出来なかった。 使徒の攻撃にさらされて。 それでも街と、そしてシンジを守るために、彼女は戦った。 だが、勝てないと悟った時、レイは一つの決断をした。 使徒を道連れの、自爆。 相討ち。 それしか街を、世界を、人類を、何よりシンジを守る術がなかったから。 だからレイは、迷わずその道を選んだ。 最後に、確かなシンジへの愛を、感じながら。 そして綾波レイは、ただ一人、死んでいった。 「僕のせいだ、何もかも、僕が・・・」 そう慟哭するシンジを、アスカは抱き寄せた。 役得、とアスカが思ったことは言うまでもない。 「自分を責めないで。アンタにはまだ、アタシがいるんだから。」 その言葉は、だが、やはりシンジに届くことはなかった。 うーんシリアス。 それにしても、我ながら、何でこんなシリアスな話にチャチャ入れてるんだろ。 ふと思ったのだが。 何かおかしくはないだろうか? そう、綾波レイの事である。 彼女は死んでも、代わりはいるはず。 しかし、シンジの前に、レイは2度と姿をあらわすことはなかった。 そこに隠された真実に、シンジと、そして何よりアスカは、気付くことはなかったのである。 それが後に喜劇の元になるという事も・・・ あれ?喜劇?なんで? その謎は、もう直、明らかになる。 −つづく <次回予告> 次々に死に逝く人々。 最後の一人の死とともに、シンジの元にはアスカだけが残った。 全ての、悲しみとともに。 次回『最後の、死者』 運命はいつも、そこにある。 |