TOYGUN IMPRESSION


COLT25-T
ACADEMY
エアコッキング式
重量:120g
装弾数:15発
購入価格:1,000円



・6月16日(金)あめ
 降りしきる雨の中、俺は近所の量販店へと向かっていた。
 相棒のBABY BLOWNINGの死からはや二か月。さすがにショックは大きかったものの、四十九日も済ませた今では心の整理もついた。それに俺の微妙な立場ではいつまでも丸腰というのはあまりにも物騒だ。新しい相棒を見つけ出す必要があった。
 とはいっても俺は次の相棒もBLOWNINGにしようと決めていた。あの素晴らしいギミック、銃との一体感、アレを超えるモノなど考えられようはずもない。
 量販店に入るともう心がはやる。待っていろBLOWNING!・・だがいつもと様子が違う。模様替えか?・・銃のコーナーは・・あった。安物・・いや安価な銃はここだな・・アレ、無い、ないっ!
 なんてこった! BABY BLOWNINGは店頭から姿を消していた。バカな・・アレが売り切れなど有り得ない・・生産停止?返品? そんな・・・そんなことは無い、いやあるはずが無いいいや無いに決まっている!
 そう思い立ち上がった目の前のその棚に・・奴はいた。


↑奴

 う・・チビっこい奴・・。だが、最近アイなんとやらで流行りのスケルトン1)じゃないか! 江田島平八も真っ青の硬派こそが俺の新庄、いや信条。こんなミーハァなモノは俺は絶対に買わん!買わんぞッ!

「税込みで千と五十円になりま〜す。」

 気がついた時、何故か俺はレジに立っていた。気の迷いがそうさせたのか、いや、俺の心はそれほどまでに渇いていたということか・・・店の前で包みを手に茫然と立ち尽くす。幼い頃新刊のマンガの発売日が待てずに別の本を買ってしまい後悔した時のことを思い出す。・・ぶるぶる。雨の中歩き続けていたせいか体が冷えたようだ。帰ったらすぐ寝よう。

・6月17日(土)あめ
 うっ、この体のダルさは・・・。どうやら風邪をひいたようだ。風邪か・・ふ、俺らしくもない。・・イヤ、まずい! こんな状態で敵に襲われたらひとたまりも無いではないか。急いで武装せねばならない。
 テーブルの上のM19(但しカートは入っていない)を取る。う・・磁石がくっつきそうなほど重く感じる。どうやら体力の低下はハンパではないようだ。こんなものを振り回すことはとてもできない・・どうする?  そうだ! 昨日買ってきた奴がいたじゃないか。フフ、さすがは俺、抜かりがないぜ。昨日無意識のうちに買ってしまったのも、僅かな体調の変化を感じ取った俺の防衛本能がそうさせたに違いない。  さっそくカバンから取り出し奴の包みを開く・・むむっ、セロテープが引きちぎれない。何てことだ、こんなことすら今の俺にはままならないのか?
 今になってパッケージをよく見ると、ACADEMYと書いてある。あのグロック26Sを作った韓国のメーカーだ。26Sは安価ながら高い命中精度を誇る名銃だった。アイツと同じメーカーなら俄然期待が持てそうだ。
 手に持つとかなりズシリとくる。金属部品を多用していることもあるが、体力の低下の影響が大きい。
 スライドを引いてみる。「カチッ」短いストロークで軽々と引けた。・・え、軽々と?
 トゥリガーを引く「ビンッ」もう一度スライドを引く「カチッ」。軽い。
 M19を手に取る。うっ・・重っ! 間違いない。今の俺は最強に弱まっている。
 この状態でスライドがこんなに軽い・・・導き出される答えは一つ。マガズィンに弾を込める。装弾数十五発はこの大きさにしては立派だが、今はそんなことより気になることがある。
 マガズィンを装填し、スライドを引く。的に照準を合わせ・・にくい。スケルトンのおかけで照準が正面に向いているのかどうか判別しにくいのだ。それでも何とか合わせてトゥリガーを引く。
 「ばすっ」マルイ0.2BB弾はみごとな放物線を描いて3m先のひっつく的の左下に当たり、はじき返された。2発目。今度は的から50cm近くも左にそれてこちらに跳ね返ってきた。3発目。どこいった?

・・・ダメじゃん。

 軽いデジャヴを感じながら床に戻った。こんな雨の日に襲ってくるほど奴等もヒマではあるまい。

・6月18日(日)くもり
 今日も体調はイマイチだ。しかし風邪特有の咳やクシャミ等の症状が無い。ただダルイのだ。
 奴を再び眺めてみる。スケルトンなので内部のメカがよく見える。コッキングガンとしては本格的なメカニズムを持っているため、作動を眺めるだけでも結構楽しい。所々にちりばめられている金属パーツは重量アップと外見に貢献している。インナーバレルはプラ製だがアウターバレルは金属製だ(普通逆じゃんなどと言ってはいけない)クリアーなフレーム&スライドとシルバーのパーツの組み合わせはなかなか美しい。
 そうして眺めているうちに俺の頭にキュピ〜ン2)と閃くものがあった。
 それはあまりにも衝撃的な事実だった。この銃はスケルトンブームに便乗した安直な製品ではない! この銃の生まれは韓国。そう、首都ソウルが国境からわずか40kmに位置する国の製品だ。この銃には恐るべき思惑が込められている。
 さしてトイガンに詳しくないものがこの銃を見たらどう思うだろうか? そう、透明な銃、それはすなわち水鉄砲だ。仮に君が韓国軍と対峙する立場だとしよう。韓国兵がこれを構えていたらどう思うだろうか?

「プ!な〜んだあいつ、水鉄砲なんて構えてやがんの〜。」

と思いっきり気を抜いてしまうに違いない。しかし、韓国兵がトゥリガーを引いた瞬間、マズルからは何とBB弾が! 殺傷能力や精度は必要ない。ホップ効果を受け(言い忘れていたがこのガンは一応ホップ付だ)へろへろと飛ぶBB弾。君はそれに思わず目をとられてしまうに違いない。その間わずか2〜3秒。だがそれは訓練された韓国兵のホルスターに収められたデウDP51の9mmが君の頭を吹き飛ばすのに充分な時間なのだ。
 さすがだ。平和ボケした日本とはトイガンというものに関する考え方が全く違う。この銃は紛うことなき実戦兵器なのだ。金属パーツはおそらく日本に輸出するに当たって水鉄砲らしさをなくすための対策であろう。クリスタルボディは冷血の証。俺はこの銃の輝きに背筋にゾッとするものすら感じた。決して体調のせいではない。


・6月19日(月)くもりのちはれ
 平日には体調が回復してしまうのは俺の困ったクセだ。おそらく変なモノでも喰ったのが不調の原因だろう。心当たりはいくらでもある。
 この銃の本来の使い方に気づいてしまった俺は、パワーや精度などとは別次元の深い満足を得ることが出来た。しかしここは日本。この銃の本来の性能を活用する機会は全く無いといっていいだろう。残念だがこの銃は俺の相棒にはなり得ない。
 だがこの銃には別に気になっていることがある。
 それは一昨日の体調絶不調の際の一発だ。わずか3mのレンジにもかかわらず、左に50cm近くも逸れた。ダメだって? 違う。これは実にスゴイことなのだ!
 いかにローパワー&ショートバレルといえども、3mで50cmである。考えてみてくれ、君が仮にカスタムの達人だとしてもここまでの弾道の逸れが作れるだろうか? しかも時々とはいえまっすぐ飛ぶ時がある状態を維持しながらだ。ここまで言えば解っていただけるだろうか。
 これほどまでの凄い秘密がありながら、雑誌やネットでのレポートでは何も触れられていない。もしかしたらこの銃は私にたまたま当たったワンオブザサウザンドなのかも知れない。
 F1のエンジンの開発者は馬力を上げるためにガソリンをどれだけ食わせるかを考える。そうすると逆に燃費の良いエンジンを作る技術も得られるという。
 そう、この銃の弾道の逸れを研究することによって、高精度の銃を作るための画期的な発見が出来るかもしれないのだ! もしかしたらHOPシステム以来の大発見となる可能性もある。
 普通の人間ならこの銃はただのゴミとして処分されてしまったかもしれない。そう思うとこの銃を買ってしまったのは俺の防衛本能などではなく、銃自身の意思で己の真の価値をわかってくれる人間の元に来たということなのかもしれない。となればこの銃の研究は俺の義務であり、これからの重要な課題だ。

 ・・・さまざまな銃たちとの出会い、それは決して偶然ではない。
 この銃も俺にさまざまな発見、驚き、そして未来への希望の光を与えてくれた。
 俺の相棒探しの旅はまだまだ続く・・・


この記事は多くの脚色が加えられておりますが、ある程度は事実です。

1)いつの話でございましょう?
2)おなじみ妄想電波の着信音。




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