TOYGUN IMPRESSION


DERRINGER "Silver"
マルシン
ガス式
重量:80g
装弾数:8発
購入価格:2,380円



・5月10日(金)あめ
 時の流れは速いものだ。ナガノブローニングとの衝撃的な出会いと別れからはや一年が過ぎた。型ばかりの一周忌も済ませたものの、誰も集まらない法事というものは何とも淋しいものだ・・・
 さて、この一年間俺が何をしていたかというと、アカデミーのコルトとの出会いこそあったものの(この時、私は何かの使命感に燃えていたはずなのだが、過去のことは忘れた)、それ以降は特に何もしていない。奴等との協定が成立し、以前ほどの危険な立場ではなくなったため、常時懐にしのばせる相棒を必要としなかったのだ。
 しかし、この日俺はすっかり製造は終わっていて、入手不能と思い込んでいたデリンジャー、そう、ヤツが馴染みのガンショップで注意書きの黄色いシールをベッタリ貼られて光り輝いているのを発見してしまった。

おまえ・・・生きていたのか?

 俺がしばらく忘れていたあの熱きものが沸々とこみ上げてきた。奴の値段は・・2割引以上。よし、許容範囲内だ!
 早速レジへダッシュ!・・と言いたいところだが、狭い上に妙に混んでいるこの店で、そんなことをしたらパクリ野郎と思われるのがオチだ。
 店のマスターは「たまにはカスタムでも買ってけ」とでも言いたげに、ぶっきらぼうに奴を茶色の紙袋に放り込み俺に差し出す。俺はそれをぶんどり「へっ、あの正体不明のガラクタを!?」と心の中で言い放って店を出る。入手不能と思っていたものを手に入れたこの喜び。松屋のカレ牛で幸せになってしまう俺は2400円のガスガンで至福へと至ることができるのだ。俺は軽い足取り(ただし周りからはそうは見えない)で家路を急いだ・・・はずだったが、金曜の夜の赤提灯の誘惑に打ち勝つことはできず、しこたま飲んで這々の体で帰宅した俺には、奴のことどころかパジャマに着替える余裕すらなかった。

・5月11日(土)くもり

あたま・・・いてぇ。

 体内に摂取されたアルコールは肝臓で分解されアセトアルデヒドとなる。このアセトアルデヒドは毒性が高く頭痛、吐き気、眩暈などの原因となるかどうかはともかくアセトアルデヒド満タンといった感じのひどい二日酔いだ。
 しかしこんなものに負けるわけにはいかない。酒は飲んでも飲まれるなと言うではないか。ちょっと違うような気もするが気合いを入れて布団から這い出した。
 吐き気と闘いながらヤツを箱から取り出し、注意書きのシールを剥がして箱の発泡スチロールに貼り直す。手放すときにもシールがあった方が心証がいいだろな〜などと考えてしまう俺は筋金入りの貧乏性なのだ。
 まばゆいばかりに輝くメッキは一目見てもブローニングやコルトとは一味ちがう上質な仕上がりだ。さすが値段が倍以上もするだけはある。まるで中折れできてしまいそうなほどの外観なのだが、よく見るとバレルとフレーム一体のパーフェクト・モナカ構造なので不可能だ。ここら辺はさすがは俺の相棒といったところだ。
 2連のバレルの上側を弾倉にすることで、このサイズでありながら8発の連射が可能となっている。なんと実銃の4倍だ。リアルではないかもしれないが、装弾数が2発のガスガンというのも何だろう。ブローニングの足元にも及ばないものの、確実に弾が出るという安心感ではこちらの方が上だ。
 さっそくガスを充填する。2〜3秒でチャージは終わるが、一回チャージすれば22〜23発撃てる。8発という装弾数を考えるとなんとも微妙だが、弾を込める作業の方がずっと面倒なので大した問題でもあるまい。もし弾数が不足なら10丁でも100丁でも持てばいいだけの話だ。
 ターゲットに向ってツーハンドで構える。グリップは小さく小指は完全にフリーだが、なぜか異常にグリップ感はよい。ちょっと納得がいかないくらいだ。
 シングルアクションなので1発撃つごとにハンマーを起こしてやらねばならないが、ハンマーは軽いので慣れれば連射もできそうだ。トリガーはストロークが極端に短く、引くと言うよりもボタンを押すという方が感覚的には近い。
 「ぽしゅっ!」短いバレルから放たれたエクセル0.2BBは軽い弧を描いてターゲットへと吸い込まれ、やや左上方ではあるものの、みごと得点圈にへばりついた。・・・バカな、偶然に決まっている!この短いバレルと俺の腕、そして何よりも一発目は必ずターゲットを外してきたという自信が俺の心の中でこの現実を受け入れることを拒否していた。
 2発目。BB弾は同様に軽い弧を描き同様にターゲットの左上にヒットした。3発目。ターゲット中心のやや右下を狙う。BB弾はみごとターゲットのセンター、赤丸くんにヒットした。

・・・いいじゃん!

 思えば命中精度という点においては、これまでの相棒はあまりにも心許ない奴等ばかりだった。ドジな相棒というのも憎めないものではあるが、やはり大切なのは信頼関係なのだ。初めてココロから信頼できる相棒に出会えた。俺のココロは今までにない喜びで満たされていった。

よろしくな、相棒。

 新しい相棒に満足至悦の俺だが、無意味にいじくっていては奴の寿命を縮めるだけだ。せめてオフの間くらいは箱に戻して休ませてやろう、と思い箱を手に取ると、俺の目に「スーパーソニックバレル搭載」という文字が飛び込んできた。その瞬間、突然俺の頭にキュピ〜ン1)と閃くものがあった。
 私は、偶然にも、このバレルにかくされた、重大な秘密に、気づいてしまったの、だった。
 賢明なる読者諸君は言霊信仰というものをご存知だろう2)。そう、日本に古来より伝わる、言葉には霊力が内在しており、その言葉は発せられることでその霊力により現実に実現されるというもので、当然ながら人や物に与えられた「名」にもその力は働くといわれている。俺の勝手な想像だが、よく「名は体を表す」と言うのはこれを端的に示したものではないかと思うのだ。
 デリンジャーのバレルは、一見したところただのホップバレルにしか見えないが、「スーパーソニックバレル」という何とも大げさな「名」が与えられている。
 スーパーソニックバレルと聞いて君は何を頭に思い浮かべるだろうか?「衝撃波で崩れ落ちる巨大な塔」?「裸にひんむかれた某ゲーム会社の青色ハリネズミ」? 正解だ。とにかくそれぐらい凄いバレル、その名の持つ霊力により驚異的な力を持ったバレル。これこそがこのデリンジャーの命中精度の秘密だったのだ。タニオコバのスーパーツイストバレル、WAのマグナブローバック、マルゼンのアドバンストシュートシステムなどにも同様の力が働いているに違いない。俺は余りの衝撃的な事実に眩暈すら感じた。決して二日酔いのせいではない。

・5月12日(日)くもり
 すっかりコイツを気に入ってしまった俺は今日も室内シューティングレンジ(3m)で射撃訓練に勤しんでいた。TVで笑点の大喜利が始まろうかというその時、それは起こった。
 突然窓が開け放たれ、奴等が乗り込んできたのだ。

敵襲だ!

 ばかな!週一回の約束のはずだ! 多少うろたえたが、なーに、協定を結んだとはいえ奴等の本性は十分承知だ。幸い射撃訓練中の俺の手にはBB弾がフル装填された相棒デリンジャーがある。エクセル0.2BBは奴等にはやや強力すぎる気もするが、約束を破る奴を俺は許さない。多少痛い目に遭わせてやるのもいいだろう。
 奴等にシューティンググラスの装着を促し、きちんと装着したことを確認すると、俺は素早く応戦態勢に入った。
 デリンジャーを腰だめに構え、左手で素早くハンマーを起こしトリガーを引く。「ぽしゅっ!・・・ぽしゅっ!・・・」22発/sec.の素早いファニングで奴等に0.2BBを叩き込む。

「うわっ、やられた」「いたいいたい」「死んだぞ〜」

 奴等の断末魔の叫びが六畳間に響き渡る。敵は3人。すべて倒したはずだ。だがそのうちの一人はいまだ俺にエレクトリックDEを向け続けている。
 私は「どこであろうと弾が当たった時点で死というのが我々のルールだ。例外は許されるべきではない。」という旨を告げたが、「やられたのは足だけだ。まだ戦える。それに年上の貴方は年下の我々に対して寛容であるべきだ。」というようなことを言ってきた。どうやら話の通じる相手ではないらしい。このような相手には間然たる敗北を突きつけてやるしかあるまい。
 だが、俺のデリンジャーはすでに弾切れだ。まずい、ゾンビ発生という事態を予期しなかったのは迂闊だった。何か武器は・・・
 ふと脇のテーブルをみると、そこには放置され埃を被ったM19が。ただしカートは入っていな・・・いや、入っている! そうだ、あれは確か調整中の秘密兵器。冬場にはとても使いものにならなかったため、そのまま放置していたのだ。だが、陽気も良くなってきた今ならば・・・(やるしかない!)
 「ばしゃこ!」奴のエレクトリックDEが気を吹くと同時に俺は素早く床に伏せた。マルイ0.12が頭の上をかすめる。だが俺は怯むことなく、ゴキブリのような素早さでテーブルへと這い寄り、M19を掴むと奴に向け躊躇なくトリガーを引いた。
 「ぶばっ!」マルイ0.12が7発同時にマズルから噴き出す。そう、秘密兵器とはデジコンターゲット用散弾カートを仕込んだハンドショットガンのことだったのだ。これにはさすがの奴も驚いたのか身動きもできない。俺は立て続けにトリガーを引いた。「ぶばっ!ぶばっ!・・」セブンバイシックス、42発のマルイ0.12のシャワーが放物線を描いて奴の身体に降り注ぐ。たちまち奴の身体はBB弾まみれになった。さすがに観念したのか、奴等はBB弾を撒き散らしながら退散していった。

「ふぅ・・・危ないところだった」

 一息ついて俺は戦後処理にとりかかった。床をはいずり回ってBB弾を拾い集めること15分。バラまかれた弾は8+1+42の51発のはずだが、拾えたのは41発・・まあいつものことだ。
 しかし奴等がこんなにも早く協定を破ってくるとは・・・どうも奴等は甘やかされ過ぎではないのか? デリンジャーが無かったら一体どうなっていたことか。当然、奴等のボスには強く抗議するつもりだが、あのボスにどれだけ部下の躾ができるのかははなはだ疑問だ。
 全く先が思いやられるが、不安はない。そう、俺には最高の相棒、デリンジャーがついているのだから。

この記事はわずかながら事実が含まれてはいるものの、基本的にはフィクションです。

1)マサルさん?
2)つーか陰明師ネタと思われ。




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