Hostages

       

       93年英米合作のテレビ映画。米イラン間の緊張が高まった80年代から90年代初頭、

      イスラム原理主義者によるテロが多発し、また中東で多くの西洋人が誘拐されました。

      この作品はレバノンの首都ベイルートを舞台に、実際に誘拐された6人の西洋人(アメリカ人、

      イギリス人、アイルランド人)と、人質解放のために必死の努力を続けた家族や恋人たちの

      苦渋に満ちた5年間を当時の報道フィルムをまじえてドキュメンタリータッチに描いた意欲作です。

      

      コリンが演じるのは、実在のイギリス人ジャーナリスト、ジョン・マッカーシー。

      ベイルートでの4週間の取材を終え、恋人ジル(「ひと月の夏」でも共演していた

      ナターシャ・リチャードソン)の待つイギリスへ帰国する日に誘拐されてしまいま

      す。目隠しをされた上に、衣服を全てはぎ取られ、足には鎖をつながれて、不潔き

      わまりない独房に監禁されるジョン。排泄も自由にできない環境下で味わう屈辱、

      孤独、暴力と死の恐怖。やがて、ジョンは独房から別の牢屋に移され、そこでアイ

      ルランド人ブライアン・キーナン(「待ちこがれてPersuasion」のキアラン・ハイ

      ンズ、いい仕事しています)と出会います。後に、他にも4人も人質と合流します

      が、ジョンとブライアンの2人がストーリーの核となっています。

      

      一方、彼らの家族や恋人たちは、「テロリストとは断固として妥協しない」という

      政策を理由に何の手も打たない政府に頼ることもできず、唯一の手段は大衆の関心

      を高めることと信じ、マスコミを通じて、あるいは街頭で必死に呼びかけ続けます

      。もっとも精力的に活動したのがアメリカ人フランクの姉ペギー(「ミザリー」の

      キャシー・ベイツ、一応彼女が主演ということになっています)。しかし、彼女だ

      けでなくジョンの恋人ジルも、自分たちのこうした活動がかえって人質たちの命を

      危険にさらしているのではないかという不安にさいなまれます。

      

      家族や恋人たちの活動は人質たちの耳にも入り、それが彼らの心の支えになってい

      きますが、いつ解放されるか、生きて帰れるかすら分からない日々を6年近くも耐

      えなければなりませんでした(本当にすごいことですよね)。しかし、ホメイニ師

      亡き後に、まずブライアンが、そして湾岸戦争で米イラン関係が劇的に変化した91

      年、ついにジョンが解放される日がやってきます。

      

      コリンの作品の中では不潔度ナンバーワンで、ちょっとロマンチックな気分になる

      のは難しいでしょう。実際にレバノンとイスラエルで一部撮影を敢行したそうです

      が、映像から察するに、肉体的にも相当ハードな仕事だったに違いありません。し

      かし、このような挑戦的な社会派ドラマで、しかも演技派との共演となると俄然は

      りきるコリン君であります。全裸もいとわず(でも人間としての尊厳が奪われる姿

      は痛々しくて、ヨダレなんか垂らしてられないの)熱演してくれています。彼を含

      め人質を演じる6人は、最悪の環境下で味わう屈辱、死の恐怖、かすかに見えては

      奪われる希望、絶望と焦燥、苦しみを分かち合った人質たちとの友情を迫真の演技

      で見せてくれます。コリン演じるジョンはシニカルなユーモアのセンスの持ち主で

      、極限状態でも黄ばんだ歯を見せながらキレのいいジョークを飛ばしてます。でも

      、コリン以上に強い印象を残すのが、キアラン・ハインズ。鋭く光る瞳とよく通る

      声、それに知的で思慮深い人柄をにじませた演技は秀逸。彼がジョンが死んだと勘

      違いして悲しみのあまり狂ったように叫びまくるシーン、それにジョンより一足先

      に解放される時に「ジョンと一緒でなければイヤだ」と抵抗するシーンは胸を打ち

      ます。この作品ではえらく汚い2人ですが、後にオースティンの2大ヒーローを演

      じることになったというのもおもしろいですね。(ハインズ氏のCaptain Wentworthはこちら

      

      特筆すべきは、人質たちが移送されるシーン。全身ガムテープでぐるぐる巻きにさ

      れてミイラのごとき姿で運ばれるシーンは誠においたわしい。運ばれた後にテープ

      を剥がされるわけですが、考えても見て下さい。全身脱毛テープ状態ですゾ。コリ

      ンも、世の女性の苦労が身にしみて分かったことでしょう。それはさておき、とに

      かくバリッバリッとテープを剥がされるのは、いくら俳優のお仕事とはいえつらか

      ったことでしょう。

      

      この作品、もともとは人質解放を呼びかける活動の一環として企画されたものです

      が、マッカーシーらモデルになった人たちからは、「我々自身がまだこの経験の意

      味を十分に把握していないのに、こんなに早くドラマ化するのは心外」として喜ん

      でもらえなかったそうです。

      

      臭ってきそうな哀れなコリンのお姿を拝みたい方はこちら

      

      なお、一部の情報はChrisが書いたRole Projectのページを参考にしています。

  Thanks to Chris for the use of information and review, and Meluchie and Sharon for photo links.

       


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