冨山房の「英米故事伝説辞典」A Dictionary of English & American Phrase and Fable 1979年版
Santa Claus サンタ・クロース。クリスマスの前夜、こどものくつ下におもちゃを入れて行くサンタ・クロース。オランダ語の Sint Klaas(=Saint Nicholas) から出た語で、この風習は米国が起源である(1828)。 Nicholas は小アジアの Myra の僧正 (bishop) で、 326年に死んだキリスト教の聖者の St. Nicholas の名からきている。学徒、ことに男生徒の守護聖 (patron of scholars, esp. of school boys) である。《OED》。
 Santa は聖人に冠する尊称で、昔の習慣では人でも品物でも、この語を冠した。 Sancta, San などの変化があり、これは英語の Saint に当たる。 Santa Claus は赤い夜服を着た太ったにこにこ顔の老人で、 Christmas Eve に reinder sledge (となかいのそり) に乗り、たくさんのおもちゃを携えてきて、 chimney から家の中にはいり、睡眠ちゅうのこどもらに与えて行くとされているので、こどもらはその贈り物を受けるため寝台にくつ下をぶら下げておく習慣のあること、また St. Nicholas はいろいろ善行をした人で、かれについての伝説もよく知られている。
  1. ある時 3 人の金持ちの兄弟が旅館に一泊したが、宿の主人が盗賊であって、その 3 人を皆殺しにしてしまい、そのからだを切れ切れにしてしまったのを、この St. Nicholas がもとのとおりに生き返らせたという。
  2. 伝説によると、 St. Nicholas は性質が非常に親切で、だれにも好かれていたが、特にこどもに好かれていた。かれの隣家に貧乏ではあるが高慢な老人が住んでいた。 Nicholas は、この老人に金銭を与えようと思うが、老人はなかなか受け付けない。そこである年、Christmas Eve に屋根に上り、その煙突から金を落としてやった。すると、その金はおりから下の炉辺に干してあったくつ下の中へはいったのである。翌朝、老人は目をさまして、この金を見て娘に Christmas gift として与えたという。[→下記の〔参考〕]。
  3. また、一つの伝説は、ある日 St. Nicholas が町を歩いていると、ある家の中から悲しそうな泣き声が聞こえてきたので、しばらくたたずんで、中の様子をうかがってみると、きわめて貧困な親がその 3 人の娘をしかるべき人に結婚させたいと思いながらも、嫁入りのしたくが不如意のために、結婚ができず、やむをえないで恥辱の生涯に身を沈めようとしていることがわかった。 St. Nicholas はさっそく家へ急ぎ帰って、黄金の棒を持ってきて、ひそかに窓から投げ入れてやった。つぎの晩もまたそのつぎの晩も、娘の父は初めは神様からの賜り物とばかり思っていたが、最後の晩に Nicholas の姿を発見した。そのとき、 Nicholas はその父に “Give thanks to God, for it is He who sent me to you.”(神様に感謝しなさい。わたしをあなたのところへおつかわしになったのは神様ですから) といった。
 この伝説から、 St. Nicholas の命日と考えられている12月6日の前夜に、人知れず贈り物をする習慣が古くはあったが、これがのちにクリスマスと結びついて、現今の習慣ではクリスマスの前夜にこどもらが眠っている間に、 Santa Claus がくつ下やまくらおおいの中におもちゃやその他の贈り物を置き去るものとされ、こどもたちは翌朝目をさまして、これらの贈り物を見いだして喜び興ずる。それでクリスマスの前夜には、こどもらは自分のほしい品物を書いた手紙を Santa Claus あてに書いて、かまどの中にくべる。それがよく燃え上れば、 Santa Claus が承知してくれたのだと信じ、明朝を楽しんで床につく。
 St. Nicholas は慈善家で多くの施し物をしたが、常に人に知られないように与えたので、かれは今日は Santa Claus として敬われ、こどもたちの守護神 (patron saint) となってクリスマスの前夜に chimney から家にはいって、こどもに贈り物を持ってくるものとされている。なお、 Santa Claus は主として米国で呼ぶ名で、英国ではたいていは Father Christmas(クリスマスのおじさん) と呼んでいる。日本では最初、米国人の宣教師が多く来て伝道した関係から Santa Claus の名がよく知られている。
[注解] chimney からはいるというと、あんな細い穴からではどうしてと、こどもでも思うであろうが、英米の古い家の居間などにある fireplace の chimney は大きなもので、人が通れるくらいである。何か勝負事でもして負けたとき、わが国ではよく顔に墨を塗ったりするが、向こうではときどき chimney の中へ下から登らせたりすることがある。 chimney の下から天をのぞくと星が見えるなどは珍しくない。


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