4月18日(月)デブなおばさん
TVの再現ドラマ、たまにお仕事をいただきますが、例えば20分〜30分の再現
でも、その撮影にはたいてい3日くらいかかります。自分がメインで出るとなると
まるまる3日間拘束されます。
再現ドラマはドキュメンタリーやレポーターものと違って、筋書きがあり、時間経過
があるため、ロケも多い。以前やった仕事では、子供の病気を苦に自殺を図るシーン
を撮るため、秩父の山奥まで行ったこともあります。
先日、ひさびさ自分がメインのお仕事がありました。かなりハードだったのですが
その様子をちょっとご紹介。
★オーディション
ある日プロダクションから電話。「ポチャとした奥さん役ってことなんだけど..」
聞けば、先月のオーディションでずっとKEEP(候補)で残っていて、最後にNGと
なった番組でした。
マネージャー曰く「今回は受かる可能性が高いと思う」
案の定、オーディション会場では、ディレクターが待ってました!って感じでニコニコ
と迎えてくれて、演技テストでもかなりウケがよい。他にも何人か受けてたけど、大抵
こういう好感触のオーディションは合格だわね。翌日「OK」の即決でした。
★スケジュール
撮影日前日、マネージャーから「スケジュールが出たんだけど、かなりタイトなのよ。
3日間の予定が2日間になってるわ」
FAXされてきたスケジュール表をみると、初日朝7:00〜23:30、2日目7:00〜23:00。
なんじゃ、こりゃ?!!
実はこうした撮影スケジュールは大抵、押す(時間が延びる)。なので元々のスケ
ジュールがこれじゃあヤバイ...
マネージャー「タク送してもらってくださいね」
私「でも翌日また7時なら泊まりの方がいいかも」
★初日
朝7時に初台の病院集合。ここは病院シーンではよく使われ、私も3度目かな。今は
スタジオとして使われている病院です。夜になると幽霊が出るとか...朝の撮影
でヨカッタわん。
私は病院に運ばれICUに入っているシーンなので、酸素マスクしてベッドで寝てるだけ。
私が運ばれて、ご主人が医者から病名を告げられるというだけなんだけど結構時間がかかり
ました。
12時ちょい前くらいに初台から船堀へ移動。この時点で既に2時間押し。
休業中の居酒屋をトンカツ屋に見立てての撮影です。セットの準備をしているうちに
昼時間となりました。この居酒屋さんが桜並木に面していて、ちょうど満開の桜の時期。
みんなで古新聞敷いてお花見弁当タイムとなりました。なかなか豪華なお弁当。
(「ひまわり絵日記」にアップしました)
昼食後ロケ再開。今回の役どころはご主人とトンカツ屋を営んでいる奥さん。
しか〜し!!
ロケが始まると衣装さんが「ちょっと待って!」。カメラを通した映像を見て、どうも胸
とか腰、背中とかにもっと肉をつけたいと言い出しました。衣装の下にバスタオルだの
ハンドタオルを仕込み、ぶっくり太ったスタイルになってしまった!!
今回の設定は47歳ということだったのですが、メイクさんからも「ちょっと若く見え
ちゃう」とクレームがつき、鼻の脇に線を入れ老けメイク。(確かにご主人役の方は
50歳くらいの方で最初、アレ、釣り合う?って思ったのよね。)しかも、よりふっくら
見せるため頬にハイライトを入れ、頬もますます丸々となりました。
つまり「ポチャとした奥さん」から「デブなおばさん」へと変身〜!!
(心の声:だったら、もっと太った年上の人を合格させればいいじゃん!)
さて、このロケ場所にはトンカツ屋さんのお客さんとして、エキストラの方が10名。
我々の到着が2時間遅れ、しかもその後も一向に撮影が進まない。
というのも、ディレクターが若く、カメラを前にして「う〜ん、どうしようかなぁ」と考え
出す。「カメラさん、すいません、こういう角度からも撮ってもらっていいですか?」
「すいません、xxと○○と両方撮ってもらっていいですか?」と、とにかくありと
あらゆる角度で撮りたがる。現場では監督(ディレクター)の言うとおりなので、とに
かく時間がかかるの。
この辺がベテランのディレクターだと、このシーンはこういうカットとカット割りが
事前にきっちり決まっているんだけどね。
そんなこんなで、エキストラの方たちは延々待たされていて、朝10時に到着したのに
夜7時すぎまで出番のない方もいました。それはそれで大変だなぁ。
私は今回食べるシーンが結構あって、ひとりカウンターで賄いを食べるシーンでは、昼
のロケ弁が豪華だったためお腹いっぱいで、バクバク食べてるように見せるのに苦労
しました。実際には野菜炒めの「もやし」をつまんでゴマかしたんだけど...
夜は私以外の出演者は夜9時ころ夕飯用のロケ弁を食べました。でも、撮影が押してる
こともあり、私は出ずっぱりなので食べるタイミングがない。しかも私はずっと立ち続け
のシーンで、夜10時頃には頭はボーっとして、フラフラでした。そこでカメラの位置
変えの合間をぬって、肉まんを1個パクリ。
なんとか夜中12時前に撮影終了〜!!
「ロケ弁ありますよ」と言われたけど、もう食べる気力もない。朝の7時からずっとだ
もんねぇ...ち・か・れ・た。
で、タクシーで送ってもらうか、泊まるか、どうするか。
制作サイドとしては安い方がいいんだけど、実はご主人役の方が横浜の方にお住まいで
タクシーだと2万5千円くらいかかると言うので、池袋のビジネスホテルを取ってもらう
ことになりました。翌朝も早いので、こういう時は泊まりの方が楽ちん。
ホテルでは風呂に入ってビールを飲んでバタンキュー。
★2日目
2日目は自宅のシーン。ロケ場所は西武線沼袋にあるハウススタジオです。
実は初日のスケジュール表ではトンカツ屋から移動して、自宅シーンを2シーン撮る
という無謀な予定になっていました。つまり、当初の2日目のスケジュールに2シーン
追加です。元々の2日目スケジュールが23時終わりだったので、どう考えても終わり
は夜中2時過ぎかなぁ。
ここでは台所のシーンや食事のシーン、食後にくつろぐシーン、また布団に入って
胃痛で苦しむシーンなどとにかく着替えが多い。しかも前日同様、デブに見せる
ため、衣装替えの度に衣装の下にバスタオルを仕込まなきゃならない。ただでさえ丸い
のに、さらにデブになるのはちょっと複雑な心境。まあ、お仕事だからしゃーないね。
2日目ともなるとご主人役の役者さんとも仲良くなって、待ち時間に芝居の話とか
劇団の話とか...都内の劇団の役者さんで吹き替えのお仕事とかもされている方
でした。奥さまは劇作家なんですって。役者だけじゃ食えないから、普段は劇団の
営業をやってらっしゃるそうです。私も普段はコンピュータの仕事やってるんです
よって言ったら驚かれました。
2日目も食べるシーンが多く、極めつけは、店で余ったトンカツをバクバク食べる
というシーン。しかもこのディレクター、1シーンを何カットも撮るんで、トンカツ
を何度も食べなくちゃならない。
撮影後「当分、トンカツは食べません。見たくもない」という気分でした。
ご主人役の方と時計は見ないようにしようと話してた(ショックを受けるから)
のですが、途中、夜中の12時前の時点で「こりゃあ、3時かねぇ」と。
最後は夜中1時すぎから、布団の中で胃痛で苦しむというシーンでした。
寝ていて胃痛で目が覚めガバっと起き上がり、苦しむという絵にしたいらしいん
だけど、ガバっと起きたとき、布団の位置がそんときによって、右寄りだったり
盛り上がったりして、なかなかOKにならない。欲しい絵はわかるんだけど、不可
抗力だからなぁ...何度もやらせられるとこっちもイライラ。あっちもイライラ。
朝7時から夜中の2時すぎまで休みなしだもんねぇ..気力も体力も限界に近い。
照明さんはレフ板という明かりを役者の顔に当てる板を持ってるんだけど、時々、
睡魔に襲われカクっとなってる。音声さんも棒に付いたマイクを持ってるんだけど、
マイクを降ろしてるときは目を閉じてる。カメラさんもしかり。ディレクターは
元気だなぁ。限界に近い状態でも、諦めない姿に、番組制作に対する熱き情熱を感じ
ました。
みんな頑張ってるんだ、私も頑張ろうっと!
そして、なんとか夜中3時頃、撮影終了〜!!でも私だけはまだ録音が残ってる。
ご主人役の方とは「共に戦った戦友のような気分ですね。またどこかの現場でお会い
しましょう」とお別れしました。
その後、映像にかぶせる心の声のセリフを録音し、私も3時半すぎようやく終了。
それからタクシーに乗って、自宅に着いたのが4時半前。ほんとにハードな肉体
労働の2日間でした。
あっ、番組言ってませんでしたね。テレビ朝日の「最終警告!たけしの本当は怖い
家庭の医学」という番組です。
「デブなおばさん」姿なので、あんまり見て欲しいという気分ではありませんが、
5月放映です。もしたまたま見ちゃったら醜い姿ですが笑ってやってください。
By Toshiko