用語集 −Another Diary-                             TOPに戻る 
  
PLUTO(プルートウ)  2005/6/2
  
三田紀房が発展途上の作家であるとすれば、浦沢直樹はあらゆる意味において完成された巨匠である。通常コミックの中の登場人物は、いくつかの類型的人物の髪型や服装を変えたバリエーションにすぎないが、浦沢直樹はあたかも実写の映画のように、一人一人の人物を丹念に造形し、あらゆるアングルからその表情をとらえることにおいてほとんど天才的である。一枚一枚の絵が現代絵画に肉薄する重みを持ちつつ、そのプロットの緻密さや重さは現代の若い世代の日本の純文学を軽く凌駕し、19世紀から20世紀にかけての世界文学と張り合うことができるほどであり、そこには言葉によっては語りきれない部分を持った思想を感じさせる。類型的・観念的でしばしばコミカルに見える「悪」ではなく、人間の現実を直視したところから生まれる悪の認識は、時にドストエフスキーのように、時にカフカのように現代の人間を亡霊のような不気味さで描き出し、その世界はあまりに重いので、初期の「YAWARA!」や[HAPPY!」はともかく、「Monster」や「20世紀少年」などの最近の作品はそうすんなり入り込めるものではない。だが、いったん入り込んでしまえばずぶずぶと中毒に陥ってしまうことだろう。

プルートウは、ご存知のように「鉄腕アトム」の1エピソードのリメイクなのだが、ここでは徹底して浦沢直樹の世界としてインテグレートされている。実は、手塚治虫の子息にして、映像クリエーター手塚真の挑発がその背後にあったことが第2巻の末尾では語られている。作品のあちらこちら、特にそのキャラクター設定において、手塚治虫へのオマージュをとどめ、原作のイメージを解体できていなかった初稿に手塚真はNGを出し、浦沢氏本人の作品として描くよう注文をつけた。苦闘に次ぐ苦闘の末に出来上がったのが、トレードマークの角がなく、現代の少年少女と外見上は全く区別のつかないアトムやウランであったのだ。御茶の水博士も、その面影はとどめつつ現実に存在しうる範囲の姿にまで引きおろされている。そうした中で、アトムに他の登場人物にない光を与えるのは至難の業だが、その力業を見事になしとげているという点で最大級の賞賛に値する。その光とは10万馬力や7つの威力のそれではなく、人間的な、あまりに人間的な心の光、輝きなのである。

   
浦沢直樹 PLUTO(プルートウ) 第1, 2集 小学館ビッグコミックス 
 

ドラゴン桜  2005/6/1
ふだんは漫画は買わないのだが、気になるとまとめて全巻買って、一気に1日から2日で読んでしまう。「ドラゴン桜」もそんな作品の一つだ。三田紀房作のコミックで、東大合格者を出すことによって三流高校の再建をはかるという話で、現在7巻まで刊行されている。そのアイディアは盛り沢山でどれも理にはかなっているし、その半ばはすでにどこかの中学・高校か塾・予備校で行われてきたものである。ただ、実際にこのコミックを買った生徒が家庭で実行し東大合格までたどりつけるかというと十中八九挫折する。基礎にこだわりつつ、東大レベルまで持ち上げてゆける力技が可能な人材はきわめて稀で、それだけのスタッフを全教科揃えるのは不可能に近い。小難しい数式を振り回す理系教師ははいて捨てるほど巷にいるが、基礎の基礎である小学校の数学まで戻って東大2次に至るまで自由自在に数学空間のナビゲーションを行える教師は、特殊な人種に属し、周囲の理解を得られず通常の学校ではやってゆけないか、カリスマ性を持った受験業界の巨匠となるかのいずれかである。また、今の青少年は丸暗記が苦手で、語呂合わせによる暗記などは、オヤジ系ギャグとしてバカにするだろうし、その先入見を打破することから始める必要があるだろう。それを併走するための忍耐も並外れたものが必要である。

それでも、受験生やその親はこの本を読むべきだと私は思う。ある程度のレベル以上の高校生・浪人生は、直感的にそのおいしい部分を取り込み、それをプラスαすることで、東大合格圏まで達してしまうはずである。漫画なんて・・・という先入観を持ってそれを一顧だにしない頭の硬い受験生や親との差は一層顕著なものとなるからだ。

三田紀房の人物設定は余りに類型的であるし、特に女性の人形のような目は好きではないが、御茶ノ水駅周辺の光景は実にリアルで見事に描かれている。それが「新世紀エヴァンゲリオン」における芦ノ湖周辺の風景と同様に、奇妙な新鮮さを与える。そして、それは同時にこの風景を身近なものとして生活する高校生や予備校生の中に、おそるべき親密さで浸透してゆくことだろう。この手のバックはEazyと呼ばれる市販のものがあるが、ここまで色々とアングルや時間帯を変えてとなると、市販のものではなくデジタルカメラの画像をコピーにしてそれを原画にトレースしたものではなかろうか。しかし、広角レンズのディストーション(歪み)を抑えつつワイドな画面の中に巧みに人物を配置する。この部分において、カメラの画像を越えた人間の目の、あるいは人間の脳の働きの統合力がある。同じアングルで幾たびとなくシャッターを切ったことがあるだけに、そのうまさが身にしみてわかるのである。

 
三田紀房「ドラゴン桜」(講談社モーニングKC) 1〜7巻 
 

H2〜君といた日々  2005/3/11
TBS系列で木曜9時より放映中の高校野球をめぐって展開される青春ドラマ。名作「タッチ」26巻を上回る、あだち充の34巻のコミックを11回で消化するわけだから、試合の流れは大幅にスキップされ、国見比呂と橘英雄、雨宮ひかりと古賀春華のすべてHで始まる名前を持つ4人の人間模様中心に描かれる。原作に輪をかけて茶化された部分も周囲の人物に関してはあるが、この4人の関係に関してはシリアスだ。雨宮ひかり役の市川由衣は表情に癖があり、やや原作との距離を感じるが(ほとんど完璧な女性として理想化されているからやむをえないが)、橘英雄役の田中孝太郎(やや線が細い)、古賀春華役の石原さとみ(やや関西風)ははまり役で、国見比呂役の山田孝之の存在感は原作を越えている。実写版という違和感なく、ストレートに感情移入できる好演であり、誰もが送れるわけではない理想化された青春群像に、毎回メロメロにされてしまうのである。Kの歌う主題歌 「over・・・」もメロディーのうねりの中に青春のやるせなさを巧みにとらえて、なかなかのお気に入りだ。
  
TBS H2公式サイト http://www.tbs.co.jp/H2/

Blog  2005/3/11
本来Weblog呼ばれていたが、最近では略されてBlogと呼ばれることが多い。Webつまり、インターネット上に置かれた日(log)のことで、広義ではSense of Wanderも含まれるが、現在眞鍋かをりや古田敦也などで話題となっている狭義のBlogはCSSとHTMLの混合形態で、トラックバックなど他サイトとの連携機能のあるものを指す。個人的にもBlogを導入するための環境はすでに整えてあるが、いざとなると二の足を踏んでしまう。というのも、Blogでは作り手から見ればいつも意味があるわけではないリンクとレイアウトのためのスペースだけでそれなりに表示面積が占有され、1ページ当たりのパフォーマンスはよくないからだ。更新頻度の少ないサイトなら、枯れ木も山の賑わいで嵩上げに利用できるが、毎日更新をかけるとなると自分自身で過去のページ全体をスルーするにも手間暇のかかるBlogは、いささか敷居が高い。それでもアクセス数を上げ、新しい読者層を獲得できる魅力はそれなりにあるのだが、従来のコンテンツをそのままBlogに切り替えるかというと、答えはノーだ。新たなプランはあるのだが、現時点では予定は未定ということで・・・
 
眞鍋かをりのここだけの話 http://manabekawori.cocolog-nifty.com/
古田敦也の公式ブログ http://blog.so-net.ne.jp/atsuya-furuta/

Neat Image  2005/3/11
世界最強のノイズ除去ソフトと言われる。特に、デジタルカメラの夜景との相性は抜群で、高感度での撮影でも、優に2段分くらいは下げた画質が得られる。多少解像感が損なわれる部分もないわけではないが、従来のソフトに比べればそれも僅少である。F10の例を見ても分かるように、カメラ本体によるノイズ除去技術はまだここまで進歩していないだけに、どのデジタルカメラの画像をとっても間違いない効果が得られるはずだ。詳細は以下のページが詳しく、リンク先から無料の体験版(英語版のみ)をダウンロードできるので、まだ導入されていない方は是非活用されたい。
 
http://members.shaw.ca/ansel/Gekkan/Neat/Neat.htm

マジック・アワー  2005/2/20
TVで紹介していた映画「天国の日々」の紹介の中で、マジックアワーという言葉が耳に残った。マジックアワーは、日没後20分間の時間で、一番事物が美しく見える時間だそうだ。この時間は私もよくシャッターを切る。最近十条で撮った画像も、その時間の画像が含まれているが、DiMAGE A200のNaturalモードでは色は冴えず、デフォルトのE-300はほどよい色合いだった。マジックアワーはあっという間に終わってしまうが、そのつかの間の時間だけで数多くのシャッターを切り、いつかギャラリーを作りたいものだと思う。ちなみに、「天国の日々」のカメラマンは、ネストール・アルメンドロス。フランソワ・トリュフォーやエリック・ロメールの数多くの作品を手がけ、その色彩と光と影の表現で多くのヌヴェル・ヴァーグファンを魅了してやまなかった伝説の人である。彼は映画「光の魔術師たち・ビジョンズ・オブ・ライト」(1992)にも出演している。

コエンザイムQ10  2005/2/20
最近、この手の健康食品に凝っている。きっかけは中野サンロードのドトールで、見つけたR25という無料雑誌の記事だった。コエンザイムQ10は、ビタミンQで抗酸化物質、本来人体内部で生成されるものだが、20代をピークに減少の一途をたどる。昨年末より、大ブームとなっており、芸能人・アスリートにも愛好者の多い奇跡のサプリと呼ばれているそうだ。はたしてそのせいかどうか、このところまともな運動は全くしていないのだが1週間にして、蜘蛛にかまれたピーター・パーカーのように腹筋が分かれてきた。原因を特定できないのは、並行して他の栄養食品もとりだしたからだ。サンクス系のコンビ二に置いてあるマルチビタミン(250円)と、マルチミネラル(380円)がそれで、手ごろな値段と薄っぺらなパックながらも半月は持つ。この二つをとり合わせると大体身体に必須のビタミン・ミネラルをほとんど網羅する。よって、栄養のバランスなどに頭を悩ませず撮影先で出会った好きなものを食べることができるというわけだ。おかげで風邪をひきそうになっても、一日の摂取量を補うとその日のうちにおさまってしまう。うーむ、おそるべし、健康食品。