「あなたの賃金偏差値は?」  解説



 「偏差値」とは、いうまでもなく受験を前にした中学、高校時代にさんざん聞かされたあの「偏差値」です。受験用語と思われている方もおられるかもしれませんが、実はれっきとした統計用語です。
 偏差値の求め方は、つぎの式で求められます。
 (X−平均値)/標準偏差*10+50
 あなたの点数が77点で、平均点は68点、標準偏差は18点であるとします。あなたの偏差値は
   (77−68)/18*10+50=55   となります。
 点数が平均点と同じ68点であれば、その人の偏差値は  (68−68)/18*10+50=50 となります。
 点数は平均以下の55点であれば、偏差値は  (55−68)/18*10+50=42.8 です。
 つまり、平均点をとった人は50、平均以上の人は50以上、平均以下の人は50以下になるのが偏差値です。式で、最後に50をプラスしているのは、各人の偏差値が50の数値を中心に散らばらせるための操作です。

 式の最初の部分(X−平均値)の意味は説明するまでもないでしょう。点数と平均値の差、つまり平均点より何点上回っているか(あるいは下回っているか)を求めているわけです。統計用語では、これを「偏差」とよんでいます。
 「偏差値」のミソは、「偏差」を「標準偏差」で割っているところにあります。「標準偏差」とは、文字どおり標準的な偏差、つまり「平均点との距離の平均値」です。一人ひとりについて、平均値との距離を求め(80点の人の平均点との距離は12、45点のひとのそれは23)、それの平均値が「標準偏差」です。
 したがって (X−平均値)/標準偏差 の式の意味は、標準的な偏差に対して当人の偏差は大きいのか、それとも小さいのかを計算しているということです。点数が高ければ数値は大きく、低ければ小さいということになります。
 その値に10をかけ、さらに50を足す意味は、標準偏差の値だけ平均値を上回っている人は偏差値を60とし、標準偏差の値だけ平均値を下回っている人は偏差値が40になるということです。

 通常には、偏差値が40から60までの間に全体の68.28%が分布、偏差値30から70までの間に全体の95.45%が分布することが確かめられています。いいかえれば、偏差値70以上は100人中2.3人前後、偏差値60以上は100人中16人前後ということになります。偏差値30以下も100人中2.3人前後、偏差値40以下も100人中16人前後ということです。こうして偏差値を計算することによって、おおよその各人の順位を知ることができるわけです。

 これを賃金に適用したのが、「賃金偏差値」です。基礎資料として、労働省の「96年版賃金構造基本統計調査」を用い、男女別に年齢階層毎の平均賃金と標準偏差を計算して、各人の偏差値が求められるように工夫しました。
 広く用いられている手法かといえば、実はそうではありません。賃金関係の本をみても、こんな計算はみたことがありません。もしかしたら、このページがはじめての試みなのかもしれません。
 ともかくも、「偏差値」は相対的な順位を知るのには格好の手法です。自分の賃金が世間の賃金の分布のなかでどのあたりに位置しているのか、計算を試みてください。自分の賃金について考えるきっかけとなれば幸いです。

計算の基礎数値となった、性年齢別の平均所定内賃金と標準偏差はつぎのとおりです。



 計算