オピネル展示室

その三

大型オピネル


さて、No.8からNo13までが普通に市販されておりますが、No.11はNo.1と同様に現在欠番となっています。100年も前にはあったそうで、当時のNo.11は現在のNo.8程度の大きさだったようです。私も実物はまだ見たことがありません。もし美品ならば結構な値段で取引されるそうです。何かの縁でお持ちの方は大切にして下さい。なんなら私に安価でおゆずり下さい。これも何かの縁です。
サイズ No.8 No.9 No.10 No.12 No.13
全長(mm) 194 210 227 282 505
刃長 85 90 100 122 225


オピネルの用途で最も普通なのは食卓ナイフとしての使用だと思われます。そのための主力モデルがNo.8です。そのためか最も種類が豊富なのもNo.8です。あとで説明させていただく記念モデルの多くもこのサイズです。
左下は旧モデルの数々。右下が最新モデルの炭素鋼&ステンレス。
ボルドーの下町に住んでいたころ、近所に Bien Etre というビストロがありました。いまどき東京のビストロはナウいヤングが集まるところらしく、おじさんになってしまった私には恥ずかしくて行けない場所ですが、本場のビストロは店も汚く、むさいおじさんが客層の中心です。しかし、料理だけはうまかった。学生だった私もそこでよく食事をし、赤ワインやコーヒーを飲み、近所の人たちと一緒にボショボショとシャンソンをハモったもんです。音声を送れるようになったら私のアズナブールでもお聞かせしようかと思います。 
 
オピネルのNo.8は Bien Etre の客ならば誰でも持っていました。昔アルジェリアでサーカスのピエロだったトントンが、私のコレクションに協力してくれました。コルシカ出身のバスの運転手のロジェも彼の使い古したNo.8をゆずってくれました。30年ほど前のオピネルにはNo.8でさえビロブロックがついていなかったようです。


ボルスターには模様が彫ってあります。これは1860年まで存在したサヴォワ国の紋章らしいです。今のモデルもこわしてリングをはずすとこれがみえるのでしょうか?やったことがないのでわかりません。だれか試してください。私にはできません。オピネルを壊すなんて・・・。
** 1998/08/13, 刃物愛好家 shigenobu氏からの報告です。
13年使い続けたオピネルのリングをはずしたところ、
この紋章は見あたらなかったそうです。とても寂しいです。
いずれにせよ貴重な情報をよせていただいた shigenobu氏に感謝いたします。
ちなみにこのリングをはずしても壊れるわけではないそうです。これは吉報です。
 
99年四月、サンテチエンヌの高校教師アランは日本に関するルポルタージュを書くために来日しました。そのおり、彼の家族の持つ古いオピネルの一本を私のために持ってきてくれました。これも古いのでビロブロックはありません。ハンドルはなんでしょう?アランの推測ではトネリコだそうです。たしかに色、木目はそのようです。ブレードも研ぎ減って細くなっております。

最近はNo.8にもカラーモデルというのがあります。6色くらいあるそうですが、すべてステンレスブレードを持ちます。家族中で使う場合にどれが誰のものかをはっきりさせるためではないかと私は憶測いたします。またこのNo.8には多くの記念モデルがありますが、私が所有するものだけでもあとで紹介させていただきます。
 
白と黒が追加になりました。これで6色。しかも白のおかげで青、白、赤のトリコロールも完成します。なんだか花札でもやっているみたいな感じです。
どういうわけか、フランスの食卓セットというのは6が構成単位ですよね。日本はどうなんだか、私は知りません。どなたかご存じでしょうか? 
何となく、5の倍数ではないかという気がしてます。たしか番長皿屋敷でもお皿は10枚あるはずでしたよね。
No.9と10もまた大柄な男性に似合う食卓ナイフとなります。No.10などは食事用にしてはヘビーデューティーです。むしろキャンプにでも持っていくと、始めは包丁、あとでナイフという使い方ができて便利かもしれません。
 

まぼろしのNo.11が欲しい。
 
私はNo.12を包丁として使います。中型の魚や肉のブロックでも何とかさばける大きさです。
極端に使い古したものが一本写っていますが、これは兵役にいった友人にもらいました。フランス陸軍は当時12ヶ月の任期で、入隊と同時にこれが一本配給されたそうです。彼は一ヶ月たつごとにハンドルに刻みを一本入れ、除隊までのカウントダウンをしていたのです。刻みは11本しかありません。12本目は当然必要ないですもんね。
 


No.13は日本ではほとんど実用しません。これはストラスブルグの友人一家が日本に来たときに土産にもらいました。現物はステンレスモデルですが、かつて私が持っていたのは炭素鋼のものだったと思います。それは日本へ輸送途中で盗難に遭い、とてもがっかりしました。いま思い出しても腹が立ちます。ドロボー野郎は許せません。見つけたらこれでスッパリと・・・。
これもかつては実用してました。フランスの肉屋ではウサギや鶏を丸ごと買えますが、冷凍されていてもこれならばバスッと一刀両断できます。なにせ刃が重い割に薄くできてますから、こういう使い道があるのです。しかしながらそのように使っているフランス人は見たことがありません。私がやっているのを見てたまげた友人はいます。じゃぁ、連中はいったいどのように使うのでしょう。わかりません。なにせ、自分以外に持っている人を見たことがないのです。

このモデルは木箱に入った贈答用豪華版もあります。フランスでは本来ナイフを友人への贈り物にしてはならないと言いますが(友情を断ち切るとか・・)、私はこういうものをくれない人を友達にしたくありません。ナイフでも送りつけて絶交してやりましょう。

ちなみに写真の人物は、自宅でくつろぐ某オピネル愛好家です。



 サンテチエンヌの高校教師・アランがここのところ毎年のように日本へ遊びに(?)来てます。今回は夏休みを利用して子供達まであとから来るとか。
 オピネル一族が彼の高校時代の友人にいたそうで、その人に頼んで私の名前をNo.13に彫りつけたものを持ってきてくれました。こりゃまたうれしいです。
 飛行機に乗るときに、うっかりしてこれを持ち込みそうになり、一悶着あったそうです。この大きさでは洒落になりませんねぇ。


茨城県のナイフマニア・AKIRAさんが送ってくれました。白い柄のオピネルNo.13ははじめてみました。入手してから塗ったわけではなく、最初からこうだったそうです。一緒に移っているのは紫檀ハンドルのNo.8です。