□melody □environmental


Alvin Curran
Songs and Views of the Magnetic Garden
(Catalyst-BMG Victor,1973,1993)

cover

1938年、アメリカ生まれのアルヴィン・カラン1973年の作品。
はじめにカラン自身の言葉を。
「音」と環境は、私の作品において、きわめて特別な関係
にあります。なぜなら、環境からの音、環境の音、環境の
なかの音は、(どんなものでも)すべて音楽ないし一種の
「潜在的」音楽であるからです。
「MUSIC TODAY No.19」(リブロポート,1993
所収のアンケート回答より引用)

環境音を作品に取り入れることによって、聴き手のいる場所から別
の場所へと、疑似的な空間移動の感覚をもたらすという点では、ブ
ライアン・イーノ『オン・ランド』に非常に近い性格の音楽に仕上
がっている。「(作曲された)長い、浮遊する旋律と自然音が対話
し、複雑な対位法が生み出される*」音響は、蜂の飛ぶ音、蛙の鳴
き声、波の音などとシンセサイザーとの組み合わせによるものだ。
カランの言葉通り、自然音を<潜在的音楽>と捉えた作品であり、
犬の鳴き声なども音楽とのコラボレーションを通して普段以上に面
白く聴ける。

このアルバムのもう一つの特徴は、特定の地域性をイメージさせる
音が含まれていることだ。しかしガムランやイタリア民謡など、地
域は飛ぶがアルバム全体としてのまとまりの良さは驚くほどだ。そ
れは絵巻物に向けられた視線のような、変化を内在しながらも断絶
することのない時間の経過に対する感覚に似ている。

全体の感触は、さまざまな音素材がコラージュされた複雑なものだ
けれど、余白を十分に取っているためにひとつひとつをじっくりと
味わう楽しさがある。もっとも長いトラック5"On My Satin Harp"
は、テリー・ライリーにも似たミニマル素材による即興的キーボー
ドの多重録音が中心となって、パターンの細分化が徐々に進んでい
くプロセスと環境音の密度がシンクロしていて、静かながら高揚感
も持っている。
*作曲者による原文ライナーから引用者が要旨を抄訳


1999 shige@S.A.S.
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