静止する時間を聴く



夜の鳥から朝の鳥たちの鳴き声へと入れ替わるまでの
わずかな時間、完全な静寂を持つ1分間を、眠らずに
待つ二人がいた。しかし一度目は自動車が通過したた
めに、静寂は聴かれなかった....


こんな映画の解説文をもう何年も前にどこかで読んだ
ことが忘れられない。タイトルも主演者も思い出せず、
調べることもできずに、長い間そのままになっている。

音のない時間をこんなにも待つということに、私は強
い共感を覚える。夜明け前の弱い光は、音を消さない
から。音楽を聴く時間として、それ以上のタイミング
を他には思いつかないから。

防音室は完全な沈黙を得られるけれど、それは人工的
に閉塞している。もっと、より開かれた場所である、
夜明け前の私室のように音源が最小限にまで少なくな
るゆえの自然の静寂は、音楽の邪魔をしないだけでな
く、静寂自体を聴くことを促すようだ。

音楽が鳴っている時間も惜しいくらいに、鳴らない瞬
間を待つ。休止符や終始を。「音楽的沈黙」の意味は、
徹夜をしてみるだけで案外簡単に体験できるものなの
かもしれない。

少しの間、プレーヤをポーズしたくなるような、
あの時間。
西の空へ傾く白い月。
大きく、動かない紫色の雲。

静止したカーテンの綾を見つめる、私しかいない時間。



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