音楽鑑賞

ディスクレビューを書くために、最近は古いもので10年前に聴いて
いたアルバムを聴き直すことも多い。当時、高校生ではないか!
全身で聴いて、同じディスクを毎朝登校前にかけて遅刻して、とい
う幸福で無邪気な喜びは、よみがえっては来るけれど、やはり過去
なのだ、と思う。今のほうが断然、音楽が近くにいてくれる。

情報が蓄積される。
このことはイコール

ある意味でははまりまくる身体感覚を失ってしまったと言えるかも
しれない。距離ができてしまうし、慣れてしまう。
それでも今のほうがいい。
知恵がつくことで、ある感動した音楽の魅力が神秘ではなく既存の
ジャンルの一変奏であることに気付く、なんていうことを嘆く人が
いるけれど、それは違う。好きなものを<知って>しまうことを怖
がっていては、その程度のモノしかゲットできないはずだ。
単なる知識を得ることでつまらなくなるその先の段階、その奥に、
音楽はあるはずだ。それが本来いい音楽であるなら。

多くを聴くことで、より一つひとつを深く。
対象へ分け入るような創造性を持った耳になっていく過程。
それを誰もが履歴書に書くあの言葉、
<音楽鑑賞> と本来は呼ぶのでは、なかったか。

April 16,1999

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