Meredith Monk





Meredith Monk
Do You Be
(ECM,1987)

cover


ヴォーカル・パフォーマーのメレディス・モンクは、舞台芸術と
のミクスト・メディアとしての大規模なシアター・ピースを数多
く制作・上演してきたが、このディスクでは比較的短い曲を集め
たもので(劇作品の一部を含む)、彼女の音楽においてのミニマ
リズムの位置付けも多様なアルバム。

モンクにとってのミニマリズムは、自在な声の動きのために用意
された背景、ビートであるというのがひとつの捉え方。伴奏パター
ンがミニマル的で、そこへヴォーカルが乗る。しかしそれだけに
はとどまらない声とビートの融合の緊密さを持ち合わせていると
ころが面白い。
「ダブル・フィエスタ」を聴いてみると、ヴォーカルが緊張感を
高めていく過程とミニマル的ピアノパートのリズムの細分化(速
度の上昇)がシンクロするプロセスが見事だ。このヴォーカルの
自在さは、例えばフィリップ・グラスのオペラのように比較的均
質なリズムに流し込まれる歌とは対照的だ。この曲ではヴォーカ
ルが次々に変化していくが、背景がミニマル的一貫性を保ってい
る点がユニークである。パターンの組み合わせそれ自体が構造で
あるという多くのミニマル・ミュージックとは確実に一線を画す
るモンクの音楽の典型と言える。

声によるミニマルパターンを土台とする曲もある。背景も前景も
ミニマル的なトラック8"Panda Chant2"など。伴奏ではないヴォ
イスなので、メインのヴォーカルと等しい関係にあるだけに、よ
り複雑な声の交錯が楽しめる。

このディスクはミニマリズムの見本帳のような趣があり、そのさ
まざまな形態を実証しているようでもあるけれど、実験それ自体
に終始することなく、生の「声」の存在感が聴き手に伝わってく
るという素晴しさがモンクの作品すべてに共通する魅力だ。反ア
カデミズムとしてのミニマリズムという出自も健在な、フィジカ
ルな興奮。






・h o m e・ ・minimal・