How to feel 'repetition'
ミニマルぎらいな方へ






ミニマル・ミュージックは怖い、という人は、反復が不快であると
いうことが原因として多いのでしょう。それはきっと、反復するも
のの構成要素ひとつひとつを真面目に追いかけているからではない
かと思います。一般的な音楽を聴く用意ができている人にいきなり
ミニマルを聴かせる時のネガティヴな反応の多くは、いつまでも変
化しないことへの退屈と、繰り返しによる目眩にも似た心理状態で
はないでしょうか。

それはちょうど視覚的な連続模様(「ぶつぶつ」「びっしり」への
不快感)にめまいや吐き気にも似た気分を催すことがあるように、
快適なものではないということがありえます。が、反復するもの、
つまりビートは眩惑そして快楽へとつながる可能性も持っているも
のです。筆者もつい、よせばいいのに、しめじを料理するときなど
びっしりと並ぶ小さな生えかけと一番良く育ったデカイのまでの無
限の反復とグラデーションを裏側から覗き込みぞっとすることがあ
りますが、そういった怖いもの見たさというか、反復に感じるある
種のひかれかたは私たちの内に根強いものだと思います。

反復を構成しているひとつひとつが怖い、のではなく、反復が怖い
のです。例えばたいていの人は一匹でさえ毛虫は嫌いですが、そう
いうことではなく、無数の毛虫が葉裏にびっしり並ぶという状態そ
のものでしょう。ポイントは、それが毛虫ではなくとも、ずらっと
並ぶものはなんでもイヤという、反復それ自体の不快と恐怖の可能
性です。

対象を、単位ではなく、ましてその展開を期待するのではなく、連
続体として聞き流すこと。これをミニマルの楽しみ方として提案し
ます。

車窓を流れ去る風景を素早くまばたきしながら見ていると静止画像
として知覚することができます。しかし目が疲れることもあり、あ
んまりそればかり続けると車酔いするものです。そうではなくて、
薄く溶いた絵の具を紙の上で吹き流したような、流動する色彩の帯
として風景を楽しむには、そう、まばたきなどせず、ただただ受動
的であることが必要なのです。ひとつひとつの対象をではなく、ス
ピードに溶ける、連続した響きを聴くということ。

これが、ミニマル・ミュージックを怖がらないためのおまじないで
はないでしょうか。

不快と快楽。両端の間を往復する可能性を常に持っているという、
反復することの、基本的性質です。

2000.01.10 1999 shige@S.A.S.




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