Liz Story



Liz Story
Solid Colors
(Windham Hill,1982) WD-1023



リズ・ストーリー25歳当時のデビュー盤。ジャズの語法を用いなが
ら、リフや、ひとつのテーマに基づく長いアドリブといったこのジャ
ンルの魅力であり、かつ音楽を持続させる手法を敢えて抑制した凝縮
されたピアノが聴かれる。それはある程度演奏前に作曲され練り上げ
られた自作をソロで演奏するという側面にもよるのだろうけれど、そ
ういった演奏時間・形態の問題以前に、なによりもこのアルバムでの
作曲の霊感のみずみずしさはそう簡単に褪せるものではないはずだ、
と言い切ったほうがこのディスクの素晴しさをよく説明したことにな
るのかもしれない。

立ち上がりの鋭い音色と、鍵盤の端から端まで縦横に移動するドライ
ヴの気持ちよさ。強い色彩のスペクトラムがくるくると交錯する。注
意深く聴くと実に多くの音が鳴っているのだが、それが難解さに陥る
ことなく、耳に残るハミング可能な旋律と共存しているところが、こ
のアルバムの奇蹟であり、今後も失われることのない価値であると思
う。




Liz Story
Unaccountable Effect
(Windham Hill,1985) WD-1034



こちらは1985年のセカンド。音色的にはより陰影が深くなって
いる。パレットの寒色、あるいは暗さに支配される領域への広がり
が加わったことによる静謐さが魅力だ。前作とのなんと大きな違い
だろう。この新しく得られた色彩が静かな独白の音楽 "Mostly the
Hours" に、暗く熱い情念の音楽 "Rope Trick" へと、生かされて
いる。

デビュー作での旋律の明快さは幾分抑えられているが、ここではイ
ンプロヴィゼーションのスリルを聴くことになる。"Starfinder"で
はリズムの休止と疾走という二つの動きが、左右の手のインタープ
レイとなって、緊張をはらむ。前述の "Rope Trick" でのパワーと
集中の持続は、6分というジャズとしては決して長くはない演奏時
間ながら、弛緩することを知らない音楽の流れのなかで幾つものモ
ティーフが過ぎ去って行く。

本作は確かにジャズと呼びうるものだが、しかし最初と最後のトラッ
クにはマーク・アイシャムならではの金属的光沢を持ったシンセと
エフェクトが加わっており、ジャンルフリーの抽象性を実現してい
る。


1999 shige@S.A.S.

・h o m e・ ・Windham Hill・