グローバルな連帯と改革で世界的危機の克服を   

         −社会主義インター第23回大会開く−         

                   解説・抄訳 労働運動研究所 柴山健太郎

                                               労働運動研究 通巻405号

ソ連・東欧の現存社会主義が崩壊し国際共産主義運動が消滅して以降、社会主義インターナショナル(Socialist International)は、文字通り唯一最大のグローバルな社会主義運動体になった。この社会主義インター第23回大会は、630日から72日にかけてギリシャのアテネで開かれたが、大会には全世界120カ国から150政党・団体代表の約700名(日本は福島瑞穂・社民党首が出席)が参加し、活発な討議が行われた。注目されたゲスト参加の中国共産党代表団は、気候変動の問題に関して発言した。

本大会のメイン・スローガンは「グローバルな連帯:世界の状況に重要な影響を与える勇気を」(Global Solidarity:The courage to make difference)で、世界が直面する最も重要な4つのテーマ@気候変動、A平和と紛争の解決、Bサブプライム・資源・食糧問題などを含む世界経済の危機の解決、C人間の顔をした移民政策などを採り上げて審議し、声明(statement)を採択した。以下に紹介する大会の経過と各テーマに関する「声明」は、社会主義インターのホームページからダウンロードしたテキストの抄訳である。激化する金融危機の現状を考慮し、[声明]は世界経済、気候変動、平和と紛争の解決、移民政策、食糧危機の順に紹介する(柴山)

 

 持続可能な世界社会の実現を目指して

 

 大会第一日は、主催者の汎ギリシャ社会主義運動(Pasok)指導者のゲオルグ・パパンドレウ社会主義インター議長の挨拶で始まり、引き続きルイス・アヤラ書記長が社会主義インターの活動報告を行った。

 報告に続き、大会のテーマT「今こそ気候変動のために行動を:持続可能な世界社会を実現するために」に関する討議が行われた。まず「社会主義インター持続可能な世界社会委員会」共同議長のリカルド・ラゴス(前チリ大統領)とゴラン・ぺーション(前スウエーデン首相)の発言に続いて、オーストリアのアルフレッド・グーゼンバウアー首相を含む世界社会委員会のメンバーや世界の各地域の指導者や政党代表が発言した。

 気候変動に関する討論は、@ポスト2012(ポスト京都議定書)体制を成功させるためにはどうするか、A持続可能な未来に関する多角的構造をいかにして強化するかなど2つのパネル・デイスカッションに分れて行われ、スペイン、インド、アメリカ、ロシアや中国などの代表がメイン・スピーカーとして発言した。

 大会のテーマU「世界平和のための活動:紛争を解決し、不安定を克服するために」の討議では、中東、レバノン、アジア及びバルカンなどの紛争地域の主要当事者が一堂に会して活発な討議が行われた。

スウエーデン社会民主党幹部のモナ・サーリンの司会で進められたこれらのパネル・デイスカッションには、中東からのメイン・スピーカーとしてパレスチナ自治政府議長のHE・マホメド・アッバス(フアタハ幹部)、イスラエル国防相エウド・バラク(イスラエル労働党幹部)、イスラエル国会議員のヨッシ・べイリン、パレスチナ・イニシアチブ(PNI)幹部のムスターフア・バルグーティ、エジプトの国家民主党(NDP)のモハメド・アブデラが参加した。ノールウエイ労働党(DNA)のヨナス・ガール・ストア外相(社会主義インター中東委員会共同議長)やイタリアのピエロ・フアッシーノ(左翼民主全国書記)らも発言した。

パネル・ディスカッションの第一のテーマ「平和への道」に関する討議では、イラクのクルド愛国者同盟(PUK )幹部のH.E.ジャライ・タラバニ大統領、レバノンの進歩的社会党(PSK)幹部のワリド・ジャンブラット、及びパキスタン人民党のアシフ・アリ・ザルデイが、各国の紛争解決の努力について報告した。

この討議でバルカンの状況について報告したのは、ブルガリア社会党(BSP)幹部でブルガリア首相のセルゲイ・スタニシェフ、セルビア大統領で民主党(DS )幹部のボリス・タデイック、モンテネグロ国会議長でモンテネグロ社会民主党幹部のランコ・クリボカピック及びルーマニア社民党幹部のミルセア・ゲオアナだった。

第二のテーマ「国内紛争を根絶するための民主主義のための闘い」に関するパネル・デイスカッションでは、独裁下にある全世界の人々に対する懸念が表明され、抑圧の経験を共有しているカメルーン、ミヤンマー、イエーメン、ベネズエラの代表が発言した。

本大会のテーマV「グローバル化経済を新しい路線にすえること:すべての人々に機会を与える成長と開発を」に関して発言したのは、ハンガリー首相でハンガリー社会党(MSzP)幹部のフェレンス・グイルツアーニ、社会主義インター経済・社会的団結・環境委員会議長で、ドイツ社民党(SPD )のクリストフ・ツォッぺル、カメルーン社会民主戦線(SDFC)のチャンタル・カンビア、イタリアの左翼民主(DS)議長のマッシモ・ダレマ、チェコ社民党(CSSD )幹部ジリ・パルーべック、イスラエル労働党議長のミヒヤエル・ヒギンズ、ドミニカ共和国のドミニカ革命党(PRD )議長ラモン・アルブルケルケなどあった。

食糧不足と価格高騰の問題に関する討論「食糧危機の可決:長期的視点」に関するパネリストは、ハイチ、インド、オーストラリア及びセネガルだった。

次いで大会のテーマW「人間の顔をした移民政策:人間尊重の新しい移民政策を作り上げるために」では、移民のもたらすグローバルな影響が取り上げられた。この問題では、社会主義インターの移民委員会議長で、メキシコ民主革命党(PRD )のサカテカス州知事アマリア・ガルシアが、世界のあらゆる地域で移民現象によって生ずる諸問題の取り組みに関する委員会の活動について報告した。この討論の主要な参加者は、モロッコ社会主義人民勢力同盟(USFP )の前外相のヌーザ・チェクローニ、スペイン社会労働党(PDOE)の前法相ジュアン・フエルナンド・ロペス・アギラー、エルサルバドル国会議員でFMLNのジグフリード・ライエスだった。

23回大会は、議事の最後にアヤラ書記長の活動報告を承認し、新規加盟政党を承認した。次いで新しい諸機関の役員選出に移り、ゲオルグ・パパンドレウ議長とルイス・アヤラ書記長を再選するとともに、定款に基づき地域やジェンダーなどの諸要素を反映した37名の副議長を選出して大会を終えた。

      

[声 明]@

グローバルな経済を新しい路線にすえよう

―すべての人々に成長と開発の機会を―

 

社会主義インターが目指すのは、全世界の70億人近い人類が、譲渡することができない何人も認める人権が保障され、人間らしい生活を営むために同じ機会を持つ−経済的、社会的及び環境的に−持続可能なグローバルな発展である。

 同時にすべての人類は、環境を維持し保護する同じ義務を有する。現在の世界社会は、これらの目標から遠く離れている。

 持続可能な発展は、あらゆる諸国と地域のグローバルな任務である。国が貧しければ貧しいほど、経済成長の必要性は高まる。発展途上国の経済成長は、先進諸国の利益である。経済成長は−貿易ですら−ゼロサム・ゲーム(訳注:競争者間の利得と損失の合計の和がゼロになるゲーム)ではない。

 

 一般的な情勢

 

 1975年から2005年にかけての世界のGDP の平均成長率は、1990年代以降に加速されて1.5%だった。この期間のOECD( 経済協力開発機構)諸国の成長率は平均2.0%だったが、1990年以降はやや低下している。世界最大の人口を持つ諸国は、グローバルな成長を増大するのに寄与する傾向を強めている。中国の成長率は平均8.4%で、インドは3.4%である。これら2国の成長率は1990年以降に異常に勢いを増し、中国が8.8%で、インドは4.2%である。それにもかかわらず、購買力平価の範囲内の1人当たりの所得格差は、依然として高い。OECD諸国の1人当たり所得は29,197ドルだが、中国では6,757ドル、インドは3,452ドル(2005)である。サハラ以南のアフリカでは1,499ドルに過ぎない(2004)

 二酸化炭素排出によるグローバルな環境に及ぼす影響に関して言えば、アメリカは1年21トン、ドイツは10トン、中国は4トン、インドは1トン、アフリカの西サハラは1人当たり0.5トンだった。

2005年以降、グローバルな成長率は年5%に伸びたが、ロシアでは6%以上だった。ラテン・アメリカの成長率は比較的弱く、ブラジルで3%以下だった。最貧諸国がキャッチアップするために、依然として必要なのはOECD諸国より高い成長率である。グローバルな経済成長率は、先進国と発展途上国との間で均等にバランスが取れていなければならない。この過程で発展が比較的に進んでいる諸国は、遅れている諸国を支援しなければならない―この方法以外に貧困を克服することはできない。社会主義インターにとって、生長はすべての人々に機会を与えるものであり、それは環境に配慮した持続可能な発展を意味する。

 同時にグローバルな経済発展は構造的制約に苦しんでいる。それは単に所得と富の不公正な分配だけでなく、これらの構造的制約を克服するための国家的及びグローバルなレベルの政治制度の無能である。

 最近の金融市場と原料市場の2つの主要な危機は、効果的かつ公正な経済発展を推進するための管理体制が不適切であることの見本である。

 社会主義インターは、長年にわたりグローバルな経済制度における新自由主義的なイデオロギーと、アメリカの一方的な利害と支配関係に基づくアプローチに反対してきた。社会主義インターが考えていることは、グローバル市場と社会的、エコロジー的及び民主的価値の持つ活力を結合することである。

社会主義インターは、グローバリゼーションが福祉国家の経済的・社会的秩序のきわめて基本的な諸要素に異議を申し立てていることを知っている。1世紀以上にわたり政治的、社会的及び経済的秩序の中心的な要素になってきた国民国家は、新たな挑戦を解決する能力を失いつつある。大きな人口と経済力又は軍事力に依拠して、依然として強力で制度的に重要な地位を占めているのは、アメリカ、中国及びインドのような比較的大きな国々だけである。

国境を越えて活動する新たな組織、又は多国籍企業は、国家に委任された役割を引き受けつつある。多くの経済分野では、国内的解決だけではもはや不十分で、グローバルに調整された努力によって代替されるか、または並行的に遂行されねばならない。それは重層的な責任である。国家はこれまで以上に有効に協力しあわなければならないし、とくに今後も決定的に重要なのは地域統合である。グローバルなレベルでもっと有効な政策が必要である。現在、グローバルなレベルの諸機関の難点は、適法性が欠けていることである。国連安全保障理事会は、第二次世界大戦後の強国によって支配され、発展途上国の利害は過少にしか代表されていない。国際金融機構(IFIs)に対するアメリカの影響力は容認できない程度に達している。グローバルな組織の有効性を向上させる条件は、グローバルな民主主義の増大である。

近年における成長率の加速は、グローバリゼーションが富の強力な源泉であることを示した。将来の全世界の職場の増大は国際貿易に左右されるか、又は国境を越えた投資によって創造される。グローバリゼーションは、とくに中国やインドのような第二次大戦以後の時代の経済秩序によって利益を得てこなかった諸国に対して飛躍への機会を開いた。

これまで統合されてこなかった諸国家は、グローバルな貿易に統合され、新しい技術・生産センターが出現した。

同時にグローバリゼーションはグローバルな規模で多くの諸問題の発生源になった。その一つが貧富の格差の増大である。その結果が、移民である。

新自由主義的グローバリゼーションは、資本の投機的運動を放任した。その結果、1990年代に東南アジア、南米、ロシア及びトルコなどの一連の金融危機を引き起こした。2006年以降は、アメリカ市場で発生したサブプライム危機は先進国と発展途上国の経済を巻き込み、経済成長の機会を減らした。さまざまな国々の多くの人々が職を失った。長年にわたって、責任ある政治家やエコノミストたちはこの種の危機を予測してきた。ワシントン・コンセンサス(訳注)に基づく金融秩序は失敗したが、今に至るまで世界をこの失敗から保護するに足る民主的責任が存在しないことが明らかになった。

(訳注:「ワシントン・コンセンサス」とは、1989年の「ベルリンの壁」の崩壊以降、IMF、世界銀行及び米国務省の間で広く合意された米国流の新古典派の対外経済戦略を意味し、「小さな政府」「規制緩和」「市場原理」「民営化」を世界中に輸出し、米国主導の資本主義を押し広げるのに利用された)。

グローバリゼーションの効果は、−現在のように新自由主義的な金融論理によって支配されていれば−不均衡に表れる。したがってグローバリゼーションによる主要な挑戦は、民主的政策によりグローバルなレベルで福祉国家の機能を果たすことを可能にする挑戦である。そのためには下記のそれぞれのレベルの責任を伴う重層的な統制の必要である:

―国家的レベル、

―超国家的な地域的レベル、

―グローバルなレベル。

これらのすべてのレベルで、同一の価値、原則及び政策手段が無制限に適用されねばならない。

 

国家的レベルに関して

 

すべての国家の経済政策は、福祉国家の依拠する諸原則、つまり一方では市場経済及び他方では規制、再分配及び公共財の諸原則により運営されねばならない。諸個人のグローバルな連関を有する社会への統合を達成することができるのは、市民の人権を保護する社会的統合以外にはない。いかなる単独国家も社会的統合を達成する責任を有する。

減税、規制緩和及び国家予算の削減による国家間の競争は、社会的統合を保障する国家の能力を破壊するおそれがある。持続的発展を推進することを望む小国は、進んで地域的統合を追求すべきである。

 

超国家的地域レベルに関して

 

社会主義インターは、有効な超国家的地域統合過程を追求すべきだという2003年のサンパウロ大会の提案を再び強調する。地域は、経済的・社会的・移民的・文化的な交流地域として増大する役割を引き受けなければならない。地域の経済統合の主要な障害は、隣国に対する一方的な制裁措置と障壁及び政治的措置である。グローバルな超国家的地域内部及び相互間の強力の増大が必要である。まず第一にこれらの統合計画は経済的利害及び次元に対する対応であるが、地域統合計画はより多くの次元を有している。欧州連合は明らかにこの点で先頭に立っている。

地域は少なくとも次の2つの次元で、中間的レベル又は制度的枠組みを創造する:

地域は、国際貿易の中間的レベルの共同市場を創造し、それにより経済的には専門化、学習効果、幼稚産業及び技術の育成、「規模に対する収穫(scale returns)」などで、発展途上国の企業を世界市場における競争に耐えうるようにする。

地域は、国家的レベルは超えるが、グローバルな次元ではないような超国家的な問題及び事件の問題解決の制度的枠組みを新たに創り出すことによって、連帯に基づく社会的団結の領域を確立する。

中国及びインドの人口は、地域的に統合しうる人口の重荷になるおそれがある。これらの両国に比べると、サハラ以南のアフリカ、南米、EU、北米及び中米、ロシアや旧社会主義からの移行国家、中東及び東南アジアの1,2の諸地域は、地域統合を達成する可能性がある。

 

グローバルなレベルに関して

 

国連の21世紀的改革を

社会主義インターは、グローバルな調整機構、すなわち経済、社会及び環境問題に関する新しい国連安保理事会、「持続的発展のための国連理事会(United nations Council for Sustainable evelopment)」を設立する提案を再び繰り返す。この理事会は、現在の国連安保理事会が直面する諸困難の解決に役立つような構成と機能を持たねばならない。常任理事国は、全体として数を増やし、中国、インド、EU、アメリカ、アフリカ、ラテン・アメリカ、中東、アジア及びオセアニアを含む主要な経済地域で構成しなければならない。この理事会は、1945年ではなく、2008年の世界を反映しなければならない。

持続的発展のための理事会は、安全保障理事会から独立し、経済・社会問題に関しては、安保理事会が平和と安全保障問題に関して持っているのと同じ地位を持たねばならない。この理事会は、国際経済・財政・社会及び環境政策間の調整を改善できる地位を持たねばならない。

この理事会は、国連憲章及び国連ミレニアム発展目標の達成に基づく世界の社会的及び経済的正義、安定と繁栄への貢献を審議するフオーラムでなければならない。

この理事会の任務は、次のようなものでなければならない:

−世界経済の状態を継続的に評価すること;

−潜在的なグローバルな不均衡に関してこれまで以上に強いマクロ的調整を促進すること;

−持続可能な発展のための長期戦略的な枠組みを構築すること;

−国際経済、社会及び環境機構、とくに国際金融機構(IFIs)、世界貿易機構(WTO )、国際貿易機構(ILO )、国連開発機構(UNDP)及び国連環境計画機関(UNDP )の政策目標と活動の間の一貫性を確保すること;これらの機構は、グローバルなアジェンダを優先させた共通のガイドラインを持たなければならない;

−貿易、雇用及び環境のもたらす側面的効果を調整すること; 

−持続可能な発展及びブレトン・ウッズ機構の問題を扱うすべての国連機構の最高責任者を任命すること;

−持続可能な発展に関する主要なグローバルな機構の最高責任者は、国家元首レベルと年に一度会合を持たなければならない。

 

 福祉国家の地位

 

  新自由主義的グローバリゼーションは、完全雇用、成長又は再分配的課税のような目的に基づいて国家が自国の経済を運営する能力を侵害している。だがこれらの諸目的はグローバルな目的である。これらの目的を達成するためにはより広範なグローバルな協力と調整が必要である。

  規制、再分配及び公共財は、福祉国家の依拠する原則であり、いまや社会的に包括的なグローバルな秩序の基礎になっている。

  規制は、持続可能で有効に施行されねばならない。

  再分配は、社会的に公正でなければならない。

  公共財は、何人もアクセスできなければならない。

 

グローバルな貿易

 

世界貿易機構(WTO)の現在の制度は、依然として不適切かつ不十分である。多くの発展途上国はいまなお経済的には取るに足らない存在であり、世界市場に統合されていない。WTOは、今に至るまでこの挑戦に適切に対応することができないでいる。 

 現在の交渉ラウンドは、開発ラウンドと称されている。カンクンの閣僚会議がデッドロックに乗り上げた後、交渉過程にはG21のような新たに加入したアクターが含まれた。グローバルな貿易秩序には、発展途上国に有利な基本的改革が必要である。その方向は、貧しい国のための自由貿易であろう。市場への自由参加権は、まず第一に最貧国に与えられねばならない。互恵主義は、発展段階が等しい諸国間−発展段階が低い国と低い国の間、発展段階が高い国と高い国の間−で実施されるが、発展段階の低い国と高い国の間では実施されない。この原則には、木綿を含む農業市場改革が含まれる。WTOにとっての長期的挑戦は、環境、基本的労働基準、国民文化の保存、投資とジェンダー差別に関する規則の諸問題を処理することである。

 

 原料とエネルギー

 

世界は、有効な技術を利用することによって100億人以上の人々に栄養とエネルギー需要を満たすのに十分に豊かな原料を有している。

−現在の食料不足の諸問題は、分配の不平等、食料品の拙劣な管理と金融投機から生じている。短期的には、飢餓に苦しむ人々を有する諸国や地域は国連が組織する有効な分配組織により援助されねばならない。とくにアフリカの農業部門の生産性は、OECDの経済協力によって支援され、公共援助の割合の重要な増加は農業に向けられなければならない。

発展途上国の農業部門に向けられた援助基金を増加させるための幾つかの提案と機構は、最近の国連食糧農業機構(FAO)のローマ・サミットで発表された。恐らくは最も重要な提案の1つは、世界の飢餓と貧困と闘うための、石油1バレルあたり1ドルを世界連帯基金に割り当てることにより国連世界連帯基金の資金に寄与するというチュニジアからの国際社会への呼びかけである。

連帯に基づくイニシアチブ、とくに基本的商品の価格の規制撤廃及び消費者の諸権利の容赦ない侵害などのようなグローバリゼーションの行き過ぎの思い切った是正措置などは、目的達成により良く役立つように思われる。

「重要な影響を与える勇気」は、このようなイニシアチブ及び全ての国民の長期的な利益の持続可能性を示すことからはじまる。

エネルギー及び金属資源の現在の諸問題は、OECD諸国の過剰消費と省エネ技術の利用のためらいである。いまやより広いグローバルな発展部門としてのエネルギーの生産と消費に対して、国連の責任に基づく規制と統制が行われるべき時機である。

 

グローバルな金融市場

 

 グローバリゼーションの進行は、金融市場に影響を与える。グローバルな持続可能な発展に基づく金融市場の形成とは、何よりも現行の金融秩序の改革を意味する。アメリカは、もはや世界通貨の発行者として誰もが認める地位を持っていない。アメリカは、ますます中国、日本及び東アジア地域からの資本の流入への依存を深めている。

グローバルな金融制度と国際金融機構を改革することは、現下の急務である。社会主義インターナショナルは、世界のすべての国家とすべての市民に対する有効な解決策を策定するための金融市場に関するグローバルな会議を開く必要性を強調する。

2008年の最新の改革で行われた発展途上国が従来よりはるかに大きな代表権を持つような役員割り当て制度(quota system)の改正を含むIMF と世界銀行の改革の目的は、次の点にある:

−危機を防止し、グローバルなリスクを管理すること;

−投機ファンドを統制し、マネーロンダリング(訳注:麻薬や犯罪に関わる不正資金を送金などを繰り返して違法性を隠蔽すること)と闘うこと;

−金融当局間の有効な協力を組織すること;

IMF(国際通貨基金)の意思決定の透明性−加盟諸国、議会、市民社会及びメデイアに対する―は増大させなければならず、IMFの管理方式は基本的投票権を改革することにより民主化しなければならない

世界銀行の改革は、外部的圧力に対して脆弱な経済と社会を保護する選択も含めて、新自由主義的な市場学説を超える幅広く包括的な理解の方向で強化しなければならない。

地域開発銀行は、地域統合をより有効に推進するように活動しなければならない。なぜならばこれらの銀行は国際金融機構よりは自らの顧客に密着していると認められているからである。改革された制度では、グローバルな機構と地域的機構間の協力に問題が生じてはならない。

金融市場に関する最新の危機は、金融制度内部の新たな規制の必要性を増大させる。一方では、民間格付け機関のシステム的に正循環的なビヘイビア(procyclical behaiviour)を、例えば国際決済銀行(The Bank for International Settlement)による厳格な公的監督によって断固としてやめさせる必要がある。他方では、金融証券と金融商品の複合性は、証券市場における予期し得ないリスク状況を避けるための独立機関により監視し規制されなければならない。監督機関は複合的な金融商品に対する合意された手続きに対して責任を持たねばならない。

資本要件は、それぞれのリスク評価により特定されねばならない。極端な場合には、商品の同意が否定される可能性もある。国際的金融機構への資金繰りは、例えばグローバルな課税制度の設定により改善されねばならない。

 

開発金融

 

さまざまな国家間でより公正かつ平等な分配を行うためには、より多くの資源が必要である。まずOECDやその他の先進諸国は、0.7%の開発金融目標を達成しなければならない。原料生産から利益を得るのは、多国籍企業だけでなくて、主として産出国の市民である。国連は、この所得を利用する最良の方法で産出国を援助しうるコンサルタント機関を設立すべきである。債務は非常に多くの諸国の開発にとって最も重要な障害である。重債務貧困国(Highly Indebted Poor Country)に対する負債棒引き計画は継続され、良きガバナンスを改善するための社会的・民主的な性格を持つ諸条件に基づき改革されなければならない。

 

グローバルな労働

 

 労働は、人間の生存を保障するために不可欠である。包括的かつ公正な労働市場は、グローバルな水準で富を再配分し、貧困問題に有効に取り組むフイルターである。グローバルな開発政策の焦点は、常にグローバリゼーションの労働市場に与える影響でなければならない。いまこそ持続可能で人間らしい雇用を国際金融機構(IFIs)中心的なマクロ経済の目的にし、マクロ経済政策と構造政策を結合し、経済政策と社会政策を連結すべき時である。

次の10年間で約10億人の青年たちが労働年齢に到達することになる。だが彼らの技能と知識に根本的な格差がある。彼らの一部は、これまでに例を見ないほど最高の教育を受けた世代だが、それ以外は教育の機会も与えられない世代である。21世紀のグローバルな雇用戦略は、職の創出の前提条件としてすべての人々を教育することに焦点を当てなければならない。これらの職は、青年たちに人間らしい雇用を保障し、世界社会に完全に統合されるようにより有望であるとともに持続可能でなければならない。

 

民間部門の責任

 

多国籍企業は、グローバリゼーション時代の大いなる勝利者として、自己の社会的、環境的責任を引き受けるように強制されねばならない。多国籍企業は、グローバルな競争や消費者の権利の分野で国際的規制が導入されれば、これまでより有効に統制することができるだろう。多国籍企業は、現在の社会における課税ギャップの中心的課題である。規制緩和政策により、資本は課税を免れ、消費と労働に対する国家財政の重荷になっている。この傾向を逆転させるために、共同の国際的努力が必要である。

 

[声 明]A  

 “今こそ気候変動のために活動を”

 −持続可能な世界社会を実現するために−

 

社会主義インターは、200712月にバリで開かれた国連気候変動会議に180カ国以上の代表が参加して緊急の意思表示を行い、さらに地球温暖化を防ぐ措置が遅延すれば脆弱化している世界のエコロジー体系に対して否定的影響を増大させるという会議全体の合意により勇気づけられた。このために社会主義インターは、摂氏2度を超えるグローバルな平均温度の上昇を容認することができないこと、及びこの摂氏2度の目標が2009年のコペンハーゲンで合意に達することをすべての包括的な協定の土台であると宣言する。われわれは、今後10年ないし15年以内に、グローバルな温室効果ガス(GHG)を摂氏2度の目標以内に抑制する方針に移行しなければならない。

われわれはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最も野心的なシナリオ及びそれに対応するダメージ抑制のためには、温室効果ガスのグローバルな排出を今後1015年をピークに非常に低いレベル、つまり21世紀の中ごろまでに2000年の半分以下のレベルまで削減することが必要であると認識している。

社会主義インターは、とくに排出量削減の短期的、長期的、野心的かつ国際的拘束力を持つ諸目標に関してもっとも困難な作業に直面していること、及びこの任務の完遂には世界の諸国民間での前例を見ない規模の協力的努力が必要になることを確信している。

この過程はアッカラで8月に開かれる次期会議と本年12月にポーランドのポズナンで開かれる国連気候変動会議に移っているので、社会主義インターは、2009年末までに包括的協定に達するのには1年半しか残されていないこと、及び諸国民はこの種の合意の一部として処理しなければならないこれらの重要な諸問題に対して断固として集中しなければならない。

気候変動により、世界ではすでに国家の所有する資源に対する需要がいっそう増大するとともに緊急性を増し、エネルギーや天然資源の獲得をめぐる紛争の潜在的な発火点が生まれ、環境移民が増大し、伝染病の蔓延その他の健康問題や、至る所で貧困層や貧困諸国や地域に対する圧力の増大による緊張が高まりつつある。

このような挑戦に対応できる国際的制度を確立するために必要なのは、発展途上国と先進国間の指導性と相互尊重が必要だが、そのためにはこれまで示されたよりはるかに大きな連帯感が発揮されねばならない。この点に関して、グローバルな統治のより公正で効果的な形態を実現するために不可欠な問題は、国連改革である。これは国連加盟諸国が諸国家間の民主的な相互協力と、世界が今日直面する挑戦に対してより強力で、より調整され、多面的な反応に基づき、この不可欠な制度を再活性化し改革する努力を倍化することを意味する。

社会主義インターは、次のことを確信している。それは気候変動に対処するグローバルな行動計画は、貧困を減らす努力の強化と結び付けなければならないことである。さらに貧困諸国の債務を棒引きする努力を強化し、発展途上諸国の市場へのアクセスを容易にするための努力の強化を含まねばならない。さらに経済発展はただ単に活気を与えるだけでなく、公正かつ持続可能なこと、さらに気候に関する関心が国内的、国際的開発政策の重要かつ不可欠な要素を占めることを保障しなければならない。

決定的に重要な任務は、−新しい国際的な金融機構の創設を通じて−とくに発展途上諸国に対し低炭素的で持続可能な成長を推進し、グローバルな温暖化と発展途上地域への必要なテクノロジー移転の問題を解決する有効な技術的進歩を援助することである。

さらに現に適用されているか、今後適用が予定されている燃料税のかなり多くの割合、その他の設備投資及び補助金は、代替のクリーンな発電やエネルギー貯蔵計画に向けられなければならない。

社会主義インターは、炭素排出量取引のような適切な市場メカニズムの有効な利用には大きな潜在的可能性があると信じている。それにもかかわらず、われわれは気候変動が世界のこれまでに経験した中で最大かつ最も広範な市場の失敗であること、さらに市場による解決策だけでは不十分であり、かつ排出量の徹底した削減、すでに変化しつつある気候条件への対応、エネルギー保障及び公正かつ環境的に健全な経済開発の必要性の組み合わせを達成するのに必要な金融的支援や資源を供給することはないという事実も承知している。

先進的世界と発展途上世界の間の積極的連帯には、排出ガスの削減能力が比較的少ない諸国と気候変動の影響に適応するための技術的及び経済的援助が含まれなければならない。個々の諸国民の責任は、「共通だが差異ある責任」(common but differential responsibility)とそれぞれの能力の原則に基づく、過去、現在及び未来の排出水準、及びその国の排出水準の削減の能力に基づかねばならない。最大の排出量を持つ最も豊かな国民は、自国の排出量を真っ先にかつ最大量を削減しなければならない。

 

[声 明]B

世界平和のための活動

 −紛争を解決し、不安定を克服するために−

 

 (訳注:この声明では、現在世界の平和を脅かしている地域・国際紛争が、パレスチナ・イスラエル紛争、レバノン、イラク、クルド問題、キプロス、バルカン、コソボ、コート・ジボワール、ジンバブエ、ソマリア、ダルフール、スーダン、パキスタン、イエーメン、西サハラ、ネパール、ミヤンマー、コロンビアなどヨーロッパ、アジア、アフリカ・ラテンアメリカなど広範にわたって挙げられているが、ここではスペースの関係で一部だけ紹介する)。

 

平和と安定が脅かされている場合、多国間協調主義(multilateralism)、対話及び交渉こそが解決への道でなければならない。平和と相互依存に対するグローバルな危機の脅かされている現代のような時代には、平和と安全保障に対する国連の基本的役割は強化されねばならない。公平な国際経済及び民主的政治秩序は、民主的社会主義にとっては、平和と安全保障を持続化する決定的に重要な基礎である。

社会主義インターは、核兵器の不拡散と非核化、及び大量破壊兵器の拡散を含む政治に対する闘いに今後とも参加し続ける。社会主義インターは、これが世界平和を保障する最重要課題であると確信する。

中東の平和を追求する社会主義インターの活動は一貫している。イスラエル-パレスチナ紛争の解決は、依然としてこの地域全体と地域外の平和と安定の保障にとって決定的に重要である。これら2つの国家の解決に基づく持続的平和は交渉によって達成しなければならない。

社会主義インターは、最近のエジプトの調停によるガザ回廊(Gaza Strip 地中海に臨むガザ市を含む回廊状地帯)に関する休戦協定の締結を歓迎すると同時に、この協定に引き続き、静謐を国境にまで広げることができ、さらにウエストバンク(West Bank ヨルダン河西岸地区)を包含するまで拡大できるような追加的信頼醸成措置がとられることを希望する。

イスラエル領土内へのロケットの発射とガザ回廊の封鎖は直ちに停止しなければならない。安全保障が持続的たりうるのは、占領の終結とこれまで長く引き延ばされてきた独立的、民主的、平和的、発展的で主権を有するパレスチナ国家の成立に向けた政治的進歩の具体的展望が存在する場合だけである。

社会主義インターは、イスラエルとパレスチナ当局の双方が、ロードマップ(工程表)の第1段階(Phase 1 )に基づくそれぞれの義務を果たすことを要求し、とくに和平過程や2国間解決自体の概念の信頼性を害し絶望と過激主義を生み出す、グリーンライン(Green Line レバノン・ベイルート東部のキリスト教徒区と西部のイスラム教徒区の境界)を超えたすべてのイスラエル建造物の完全な凍結、及びパレスチナ側における単一の政府−権力の行使とあらゆるテロ行為の予防活動に関する独占権を有する政府―の下へのいっさいの安全保障勢力の統合を強調する。

毎日のようにイラクで発生している重大な衝突にもかかわらず、この国は国家再建の途上にある。独裁の35年間に基本的な市民権や政治的諸権利が否認され、倫理的及び宗教的迫害や近隣諸国との武力衝突が遂行されたが、それ以降の今日のイラクがたどる自らの民主的及び政治的制度の確立と、完全な主権の回復への道は支持されねばならない。統一した連邦制イラクのための新たな計画を推進するタラバニ大統領の努力は国際共同体によって支持されねばならない。社会主義インターは、自らの努力を前進させるイラク人民の決定と一貫した努力に対する評価を表明する。

社会主義インターは、この地域の諸国にイラクの内政に対する不当な干渉をやめ、イラクの主権を尊重せよという呼びかけを繰り返す。同時に、われわれはテロリズムという容認できない行為に反対するために国際的共同体が動員され、財政的援助と支援を与え続けなければならないということを強調する。社会主義インターは、イラク人民に自らの未来の建設を遂行するための必要な措置は外国軍隊の撤退であると考える。

全世界の紛争状況に置かれた女性と子どもたちは、拡大し計画的な性的暴力の下に置かれ続けている。社会主義インターは、市民に屈辱を与え、支配し、恐怖を植えつけるための戦争の戦術としての武力紛争における女性に対する暴力に関する報告を、深刻な憂慮を抱きつつ追及する。

 

[声 明]C

人間の顔をした移民政策を

人間を第一にする新しい移民計画を目指して―

 

 ”移民は人権“

移民は、世界的な現象になった。今日、国際的な移民の動きは数百万の人々に影響を及ぼす気候変動や石油や食糧の値上がりと同様に重要性を持つものと考えなければならない。民主的社会主義者として、われわれは社会主義インター移民委員会が設立された時に掲げられた“移民は人権(Migration,a Human Right)”というスローガンに基づきこの問題にアプローチしたいと思う。

われわれ民主的社会主義者が移民を犯罪視する政策に同意しないのは、−とくに移民の原因を解決するために何もなされなかった場合−、これは貧困を犯罪視するのに等しいからである。

欧州議会が最近採択した“送還指令”は、送還手続きと移民の基本的人権に関する諸結果によりラテン・アメリカにおける憂慮と否定的反応を燃え立たせた。

社会主義インターは、欧州連合の新たな移民政策を施行する過程において、移民の人権と労働権は、とくに子どもたちのそれが‐子供たちが自らの家族から分離されないことを含めて‐常に国際的移民の複雑な現象のあらゆる側面を考慮して、完全に保障されることが妥当であると考える。

われわれが再び主張することは、人民の第一の権利は自らの力の及ばない理由により母国を放棄することを強制されず、母国の開発に必要な諸条件でそこにとどまり、それらの条件を当てにすることができるということである。

マニラ宣言において、われわれは移民と開発の間の密接かつ複合的な関係を認めた。多くの事例において、国際的移民は出身国の経済と同様に派遣国の経済に貢献しているし、又は貢献することができる。このことが意味することは豊富な労働力、投資、資金の送金、資格を有する労働力の移転、“頭脳輸出”及び移転集団の内部でのネットワーク的つながりの構築することなどを意味する。

2002年のメキシコ・モンテレーの開発金融サミットと2003年のアメリカのG7サミットのいずれもが強調したのは、発展途上諸国への資金移転コストの管理費用に対する広範な協力が必要なことと、その費用を50%まで削減することである。

また「移民の女性化」の結果として、女性と子どもたちの諸問題を取り扱うためには、彼らの肉体的、道徳的な完全性が脅かされている場合には、受入国における彼らの保護が必要である。家族の再統合及び女性たちを人身売買や売春のようなリスクから保護するための国家的及び人道主義的施設とともに、協定、基準及び法的枠組みが策定されねばならない。

民主的社会主義者は、このことを考慮に入れて、移民の原因を調査し解決策を講ずる政策及び労働者が移民する諸国の開発のための補償金の支払いを支援することを約束する。また社会主義インターは、メキシコ・アメリカ国境の壁やイスラエルとパレスチナの間の壁のような国と国とを分割する壁の構築に対する断固たる非難を表明する。物理的障壁は、グローバル化した世界の移民を阻むことはできない。それどころか、障壁の存在は新しい世界を求めようとする人々の死を増やすだけの結果をもたらすに過ぎない。

社会主義インタ−第23回大会は、すべての加盟諸党に、移民を人間として、市民、社会、文化及び雇用権を持つ男性及び女性として扱うことを中心とする移民政策の創設委員会に協力する専門家を提供するよう訴える。

 

声 明]D

 グローバルな食糧危機

  −社会民主主義者の評価−

 

社会民主主義者は、グローバルな食糧危機が世界、とくに発展途上国の中でももっとも弱体な諸国ではとくに平和と安全保障に対する重大な脅威の一つであると信じ、世界の農業制度の現在の運営方法に対し徹底的な再検討を加えることを主張する。

昨年末以降、最低36カ国以上で−アジアからアフリカ、ラテン・アメリカ及びカリブ海諸国にいたる−食糧不足の急拡大やここ数十年間で最高にまで食糧価格を押し上げた世界的な価格高騰に反対する暴動、抗議及びデモが発生した。

国連開発計画によると、約10億人は11ドル以下の生存限界ぎりぎりで生き、さらに26億人−世界人口の約40%−は、12ドル以下で生活している。そうした状況下で、価格、とくにコメ、穀物及び小麦のような基本食品の価格の急騰は悲惨な結果をもたらしている。

食糧危機の根源は、エネルギー価格の高騰、殆ど無統制の農業市場、金融投機、新興経済の需要の増大、幾つかの諸国の武力紛争、増大するバイオ燃料に対する過大な補助金にある。

危機は、気候温暖化による気候の激変による複合的なもので、それには世界の主要な農業生産者であるオーストラリアの小麦とコメに壊滅的打撃を与えた旱魃や、中央アメリカやアジアの一部やその他の地域に壊滅的な打撃を与えた近年の嵐の猛威の増加などが含まれる。

重要な科学的研究によると、気候変動−とくに穀物栽培に必要な水資源に否定的影響を与える方法は−、10年以内に世界の重要な地域の半数の食糧生産を減退させる脅威を与えている。

同時に最大量の水、化石燃料製品と化学集約的な工業的農業を利用するグローバル企業の2つの地域は、地球温暖化の主要な貢献者の一つである。

現代政治の最悪の効果は、発展途上諸国の国内農業を否定し衰退させたことである。ここ数十年、国内生産から先進世界の政府による手厚い補助を受けた基本穀物と加工食品の輸入へ重点を移す変化は、現実にあらゆるところで小農民を農業経営から駆逐しつつある。

その上、政府と国際機関による農業研究・開発予算の削減は、国内農業制度が今日の生産増大に対する要求の高まりに応ずることを不可能にしている。

これが最もはっきりしているのは、発展途上世界の基本穀物の不足の増大である。ここでは高い生産力を生み出すノウハウや技術を持たない比較的に少数の農民だけでは、もはや値上がりを続ける輸入価格を支払えず増大する人口を養うことができない。

社会主義インターは、食糧危機を避けることは可能であり、かつこの危機は思考、アプローチ及び政策の再転換によって克服することができると信じている。

社会主義インターは、発展途上地域、とくにアフリカでの食糧穀物の国内生産と流通における女性の重要な役割を認識し、新たな農業政策の発展に完全に関与できるよう教育水準と経済機会を高めることの必要性を強調する。

バイオ燃料生産は改革されねばならず、基本食糧の生産と流通を阻害しないように規制されなくてはならない。

国際的水準では、OECD諸国、世界銀行と国際通貨基金(IMF)などの国際諸機関、米州開発銀行、アジア開発銀行を含む地域諸機関での農業生産と食糧流通の援助計画を再修正し強化しなければならない。重要な農業研究センターの予算の増加と発展途上諸国の農民を援助して農業分野で改善された手法を採択させるローンと資源をとっておくことにとくに重点を置くべきである。

人災及び自然災害による最も直接的影響を受け、又は飢饉により脅かされている諸国に関しては、人的資源と金融資源の双方に関して、とくに国連による緊急食糧配給計画を格上げし、強化すべきである。

 

 

    表紙へ戻る