タバコはなぜいけないの?

阿部真弓先生著  月刊「ヘルシートーク」,1996、12月号(転載許可済み)

 

受動喫煙とは→きれいな空気はみんなのもの

タバコ煙には4千種以上の化学物質が含まれていて、そのうち有害物質は確認されているだけでも、270種。COや習慣形成の主犯であるニコチンのほか、多くの発ガン物質や発ガン促進物質、粘膜を障害する物質なども含んでいます。喫煙すると、心拍数や血圧の上昇、末梢血管の収縮など、循環器系への急性影響が出ますが、これはニコチンによるもの。COは赤血球液中のへモグロビンと結びついて、酸素運搬機能を阻害するので、ヘビースモーカーは慢性的なCO中毒や酸欠の状態になり、また、血管が傷みやすくなったりします。

 

循環器系や呼吸器系への影響は特に顕著で、例えば心筋梗塞や狭心症で死亡する率も1日25本以上吸う人では非喫煙者の1.7倍、50本以上吸う人では2.2倍高いと報告されています。また、喫煙者は咳や痰などの呼吸器症状のある率が高く,肺機能の低下も観察されています。当然、慢性気管支炎や肺ガンなどの発症も高率で、特に日本の場合、肺気腫は、喫煙者にしか発症しないと言われている程です。

 

2000年には全ガンのトップに立つと予測されていましたが、男性の肺ガン死亡率は、すでに胃ガンに代わりトップになりました。このほか、喫煙者では口腔、喉頭、咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、腎臓、膀胱、子宮など、ほとんどのガンのリスクが増大。特に喉頭ガンは、原因の96%を喫煙が占めています。ほかにも、胃・十二指腸潰瘍をはじめてする消化器系疾患や脳萎縮、聴力低下、骨粗しょう症などなど、喫煙は多くの病気の発症や進展と深く関連しているんです。

禁煙後しばらくは、イライラ、集中困難、不快感、疲労感などの離脱症状に悩まされる人もありますが、生理学的機能は改善の方向に向かい、COによる害など、は真っ先に良くなります。数週間後には効果が実感できて、当外来でも「目覚めが爽やか」「顔色が良くなった」「食べ物がおいしい」「手の震えや咳・痰が止まった」など、さまざまな感想が聞かれます。もちろん、肺ガンや虚血性疾患などのリスクも低下します。たとえば、禁煙と肺ガンの関係では、禁煙後4年以上経つと、死亡率が喫煙者の3分の1に軽減し、その後、さらに漸減しています。また、禁煙後10年以上経つと、総死亡りスクが非喫煙者のレベルまで低下すると言われています。

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