■FISHING REPORT 6月24日 教官と教習生


子供には教育が不可欠である。星一徹と星飛雄馬とまではいかないまでも、それ相応 の方向性を見出してやらないと子供はうまく育たない。それに母恋しさを一時でも忘 れさせるために強制的にも釣り堀へ連行したのだ。

教習生をその気にさせるのにもま ず餌が必要だ。釣り堀の受付でラムネを買ってやり機嫌を取る。ビー玉に興味を持っ た教習生は満足げにラムネを飲んでいる。教官が練り餌を練り始めると面白がって真 似をするようだ。大きさを教えて丸めさせる。

そのうち教習生の目の前に数匹のコイ が集まり始めた。教習生が餌を投げてやるとコイの数はたちまち10匹くらいに増え ていた。次に不真面目な教習生は竿を持とうともせず集まったコイを玉網で追いかけ る。コイは慣れているのか逃げようともせず教習生の玉網に捕まってしまう。周りの 人の目が気になるので玉網を取り上げてしまうと今度は教習生はベイブレードで遊び 始めた。

教官は教官たる立場を明確にして教習生の範となるよう努めなければなら ぬ。しかし教官の餌は百戦錬磨のコイに馬鹿にされてすぐ無くなってしまう。おまけ におびただしい数のクチボソが餌をつつきまわすようだ。

時間も残り15分となり、 教官は最終手段に出る。どんな時でも諦めず策を講じ、それがたとえ恥ずかしい策と しても目的を敢行するということを自ら示して教習生に教え込むためである。教官は ウキ下を20センチと短く取り、足元に集まったコイの群れに餌を運ぶ。これなら簡 単に釣れそうである。

コイの掛かった竿を教習生に渡し教習生がどういう行動に出る か観察してみる。教習生にとって25センチほどのコイといえど大人が楽しめるほど の引き込みを見せるならば、それはかなりの手応えだったらしい。両手で竿を持ち、 踏ん張って引き寄せる。泳がせておくのではなく魚が引けば引き寄せるという行為を 教習生が取るということは自分の手元に魚を寄せたいという意識があることの表わ れであった。

あっという間の1時間が過ぎた。教官の胸には教習生が一人前の釣り師になってくれるのだろうか?との不安がよぎる。今後の教習生の成長に期待するしかあるまい。

まだじっと竿を握っているのが苦痛らしい。待つことも釣りと教えたり。

3匹のコイは3本のうまか棒になって帰ってきた。教習生もこれにはご満悦である。

教習生2号である。