■FISHING REPORT 8月12日 俺は釣り師でなく漁師じゃ!


午前中のリベンジの為、おじさんが夕方からしきり無しに気象情報を電話で聞いている。さすがに漁業の町、気象情報の内容の濃さが違う。しかし状況は思わしくないようだ。おじさんが師匠と崇める漁師も今晩は出船しないことに決めたようだ。

おじさんの息子で私の従兄弟が浜田市下府川でアユの群れを多数認めているということでその晩は親父、私、妻を含めた5人で投網を打ちに行くことにした。投網なんて邪道だなんて言わないで欲しい。あくまで釣りと同じ狩漁手段なのだ。妻は最初は嫌がっていたが、おじさんの猛烈な誘いに根負けし行くことになったのだ。

漁の方法は全員川に入り2人が網を打つのを懐中電灯で照らして手で押さえて取るという簡単なものだ。はじめは慣れた動作でおじさんと従兄弟が網を打つ。それを私たちが捕まえる。アユはおもしろいように網に入り、妻も夢中で捕まえる。たまにカニ(ツガニという美味しいカニ)やイダ(ウグイ)、ハエ(カワムツ)が網に入るがほとんどアユだ。驚いたのはセイゴ(スズキの子)が3匹ほど入ったことだ。確かに海に近い清流なのだがアユと共存しているとは驚きだ。下流から上流へ川歩きしながら、どんどん網を打っていく。途中おじさんに懐中電灯の光を上流へ向けるとアユが逃げると何度もどやされる。

たくさんのアユを捕まえた手のひらには懐かしい匂いがした。良くアユの香りをスイカの匂いとたとえるが、それはまさしくワカサギの匂いと同じであった。種は同じくキュウリウオ科、そして1年魚と共通している。

アユのつかみ取りに専念していると、どうも私の狩猟本能が頭をもたげてきた。おじさんに頼み網を打たせてもらうことにする。一応の指導を受けて1投目、うまく開いた。しかしアユは入らなかった。20歳のときに1投だけ打たせてもらったことがあるのだが、それ以来である。続けて打つ。今度はあまり大きく開かず楕円形に落下し、絶望と思われたその時、網にピクピクと伝わる魚信がある。アユだ!妻に逃がしたら一生怨むぞといいながら、取らせたら本当に逃がしてしまった。そのあともどんどん上流に向かって投げていく。川の流れに足を踏ん張り投げるのは腰と腕が猛烈に辛い。渾身の力を込めて暗闇の中に打った投網の真横になんと大岩が偶然あった。網から伝わる魚信でアユを確信し妻に捕まえさせる。なんとこの一投には4匹のアユが入っていた。有頂天である。

3時間ほどの時間であったろうか、私たちは40匹ほどのアユを獲り、意気揚々と引き上げたのである。そしてなんとこの天然アユの美味しいこと!香ばしい香り!大満足である。妻も初めての体験に満足したに違いない。ちなみにこの川、漁業権設定なく無料です。


Back