■FISHING REPORT 9月25日 かくして船上は戦場となる。


なんと平日釣行してしまったのである。実は船上釣然草のなんまる師匠とワラサを釣りに行く予定であった、が、海や釣果の様子が悪く、急遽、相模庵のホームの萬司郎丸で、前日東沖で様子の出たメジマグロ、カツオの船に乗り込む事になったのである。

6時出船の予定だったが佐島へイワシを買い付けに行った匡司船長が帰ってこない。相模庵はホームなので少しだけなんまるさんに悪いなあと思いながら待っていた。すると「メジのお客さん乗って!」、洋平船長が沖まで釣り客を運んでくれ、沖で匡司船長の舟に乗りかえるのだ。活き餌のイワシは真水に弱いため片瀬川の河口まで船を入れるのは危険というのがその理由である。

仕掛けを説明しておくと、ちょうど走り高跳びのバーのような竿、20号位のハリスに大きな針がついているだけの単純なもの、延べ竿のごっついのと思って欲しい。これに活きイワシをつけて投げるだけである。で、この単純な道具が魚との死闘に最高なのである。まさに魚とのフィフティフィフティな戦いである。

三戸輪沖に到着すると早くも船団が形成されており、その中に本船も突っ込んでいくが周りは釣れている様子がない。しかし親方(大船長)の掛け声とともにカズ船長がイワシを海面にばら撒くと、すぐさまカモメが集まる、が、「ウォー!!!」と大声を上げ驚かして追い払うとすぐにメジの群れが船に付いた。
船首からは散水して親方と匡司船長がブッペを叩く。見事なまでに連続して宙を舞うメジマグロ。ドスン、ドスンとどんどん船内に取り込んでいく。
我々もうかうかしてられない。なにしろ船の下にはメジやカツオが弾丸特急のように泳ぎ回るのが見えるのだ。針に活きイワシをつけて海に投げれば、とろとろと泳ぐイワシを奪い合うように襲うメジ。ガツーン!と当たればググググググッーっと強い引きとなる。そして腰にためて腕を引き寄せれば海面からズボッと抜き出るメジマグロ、船の上に上がっても特有のバイブレーションでバタバタバタバタ!なかなか針をはずさせてくれない。しかも彼らの体からは血が噴出し、我々のカッパを鮮血で染める。顔にも血しぶきが降りかかる。2キロ級のメジが掛かればチョイと勝手が違う。簡単に抜けていたはずが2度3度と海中に突っ込み、その激しさから道糸はビュー!っと空を引き裂く唸りが入る。ビュー、ドスン、バタバタバタバタ、見る見るうちに足の踏み場がなくなり、鮮血で船内が真っ赤に染まった。まさに阿鼻叫喚、戦争だ。

一本釣りは男の釣りだ。漁師になった気分で気合も入る。釣りとしては単純でテクニックなどはあまり難しくないので、続けてやるような釣りではないと思うが、狩猟本能を呼び覚まされる何かがある。また体育会系の釣りかもしれない。汗は出るし疲れるし、手のひらは傷だらけ。たくさん釣れれば今度はサイズだ。なんまるさんが大きめのイワシをつけると小型メジはイワシに近寄るものの食い込もうとはしなかった。しかし2キロ級のメジは違う。イワシを飲み込むまで少し間を置いてガツンと合わせれば道糸がビューである。2キロを超えるとゴボウ抜きはかなりしんどく、その重さから、船べりにゴチンと魚を当てたりもする。体力勝負の一本釣りなのである。

1回の流しでクーラーが満タンになってしまった。まだ9時前である。生け簀のイワシはたんまりある。最終的には3流ししたのだが、これよりなんまるさんと相模庵、にわか職業漁師となった。釣れたメジは全部船底の貯蔵室へ送り込む、時たまナイスサイズが出ればキープするが、それ以外は床でバタバタバタ。親方と匡司船長はマシーンと化しブッペを叩きつづける。カズ船長がタイミング良くイワシを撒き寸断なくメジを興奮状態に陥れるのも見事としかいいようがない。結果は当日700Kgの魚を市に卸したことでもその凄さがわかろうというものである。とにかく釣れているのは活き餌を持っている船だけ、周囲のカッタクリ船団が船を横につけても食わないのだ。イワシの爆発力を思い知る1日だった。イワシの力は魚だけにとどまらず、なんまるさん1羽、相模庵2羽のカモメも釣ったことを付け加えておこう。

なんまるさんです。メジが舞うぅ〜。

もういっちょなんまるさん。相模庵にメジを当てないでぇ〜。
船首右匡司船長、左親方。

足の踏み場もない床を見よ!。
メジマグロで埋め尽くされ血しぶきが上がる。